※この作品はR-18です。

天下の大将軍になる!! ~夜の睦言~   作:oosima

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今回は主人公がまた“リア充爆発しろ”と言いたくなる女難に襲われます。
それに伴って今後のヒロイン選定について重大な御報せがあるので、興味があれば下のURLより見てみてください。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=280174&uid=48501


096 権利は時と場合に応じて変貌するもの

 ○秦始皇8年(紀元前239年)険水関攻防戦二十日目夜 趙国南西部 太行山脈西側領域南部 軹関陘西側地域 険水関対岸秦側陣地 某景勝地○

 

(…み、味方の守りが近くにあるとはいえこんな所で伽をさせるなんて…し、神経が図太いと言うか…な、何ていう人や…)

 

 白漂が藍蘭を無呼吸遊泳情事から水上へと連れ戻したその姿を、捕虜管理区画から秘かに尾行してきていたココロは赤面しつつも盗み見ていた。

 彼女自身が掛けられていた凌辱とは違い、白漂らの情事は深い情愛を感じさせつつも奇異かつ激しいものでココロの羞恥心と煩悩を刺激していた。

 

「…ハア❤️ ハァァァ……全く❤️ 一つ違いとはいえ年下の身でお姉さんをここまで善がらせるなんて…いけない旦那様だな…あ❤️ 」

 

 湖沼の中心から水辺に抱きかかえられた状態で戻らされた藍蘭が理性を取り戻して最初に目にしたものは、降ろされて膝を付かされた彼女自身につい先ほどシャーベットを思わせる濃厚子種汁を大量に注いだ直後でなお隆起したままの白漂の男根であった。

 

「藍蘭、君の舌と胸も味わいたいな♪」

「待ってくれ…私もこれを口の方でも味わいたいが…先ほど注いでもらったあの子達の弟か妹になるものが流れ出てしまうからせめて水着を…はぐ❣❓」

 

 自身の頭を撫でながら我がままを口にする白漂に、藍蘭は情欲で再び火が灯りだした瞳で見上げつつも、水面に漂いだしてきた彼の子種汁を自身の胎内に押しとどめようと両手を女陰に回しつつ慎重を促そうとするが、その隙を突いた突き出された亀頭に口を塞がれてしまう。

 

「大丈夫、流れ出た分以上に今晩は君にまだまだ注げられるからさ♪」

「…はうぅ…もふううぅぅぅ……ちゅうぅうぅぅ…❣」

 

 白漂も情欲で再び盛りだした瞳で見下ろしてくると、藍蘭は苦笑しつつも素直に愛欲を受け入れて己が高い背丈も美点に変える豊満且つ形良い褐色の双乳で、彼のビクンビクンと血流を脈動させている肉槍をムニュンと包み込んだ。

 

(う、ぅううううう…あれだけ大きい乳でも…亀頭はしっかりと出てはるし…ま、末子様のとは全然違うやなぁぁぁ…。あ、あんなのであの異人の娘はんはさっきまで貫かれておったんか…!?)

 

 それにココロは何故か自身の身にこれまでの凌辱とは異なる体温の高まりを覚え、そのままモジモジと身悶えしながら盗み見続ける。

 

「…ん!」

「…く…❣ ふ…ううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…❣❣」

 

 そして、数分後に再び高まった白濁を白漂は心地よさそうに喉を鳴らしながら精管を滑らかに通らせ、震えで感づいた藍蘭は亀頭をしっかと咥えてウットリとした表情で喉をゴクゴクと鳴らしながら胃に流し込ませていく。

 

「…ふうぅぅぅ…❤️ 全く…いつもいつもこの量でこの粘り気…口からでも孕んでしまいそうだな…」

「男として夫として冥利に尽きる言葉だね…さあ、もう一度―――」

「はいはい、戦地で弾の無駄遣いは要注意ですよー」

 

 十秒ほど経過して陰茎の脈動もおさまり、飲み切れなかった一部で亀頭との間に白く粘り気のある橋を駆けながら潤んだ瞳で見上げてくる藍蘭を、再び胎内から蹂躙すべく白漂が彼女を抱き上げようとしたところで、背後から紅華の声が降り注いできた。

 

「―――お…て…え?」

「わかったのが今日の夕方だからって旦那様に精気の無駄遣いをさせちゃいけないわよ」

「あ、ばらされてしまった」

「…え…無駄遣い…? まさか…それって…」

 

 ジト目を浮かべた紅華の言葉を受けて、白漂が藍蘭の動作を注意深く見やると、彼女は残念そうな苦笑を浮かべつつも自身の下腹部を時折大事そうに撫でていた。

 

「まだ初期なのでつわりがまだなくてお腹も目立ってませんが、私に藍蘭と杏橋、王京に庶徐共に身籠っています。わかったのは今日の夕刻での定期健診でですが…」

「え…本当なのか!?」

 

 声音は静かで動作も小さいが白漂は瞳に深い喜色を見せる。

 思いを寄せ合う女性が自身の子を身籠って自身に信愛の念をもって報せてくるのは、何度受けても男として褪せない慶事であった。

 

「だから今回の軹関陘攻略が終われば予定を変えて北の地に戻って育児と後方勤務に専念します。問題なのはその間の世話を誰にしてもらうかなのですが…その辺の説明も致しますので、どうぞ着替え直してこちらに移動なさってください」

 

 その白漂の素直な笑顔に紅華も同様の表情で素直に返しつつ、皆を引き連れて湖沼地帯の別所に設けられた大型ゲルに移動した。

 

「…さてと、皆揃ったし…久々に戦地だけど戦から離れて御家と他所の付き合い搦めて話し合いましょうか」

「まー油断は禁物だけど戦況も余裕がある状況だし、他家から戦後復興のための投資も集めなくちゃいけないから話は悪くは無いけど…何か他に話す機会はそんなにないけど身近に見知ってる顔が何人かいるんだけど?」

 

 その中には今現在、先に妊娠が発覚して咸陽王都圏へ赴任中の譜孝を除いた白漂の妻全員の他に、竜騎所属の隊員が戦闘時状態ながら兜の目元の奥には何処か不安と期待が混じる落ち着きのない瞳を浮かべた状態で待機していた。

 

「いやー、だってこれから話す内容はもう身元とかも徹底的に調べ上げてそこの了承も得てるこの子達にも聞かせた方が良いからね」

「…だからその話って何なの?」

 

 用意されていた茶を飲みながら紅華達は本題に入る。

 

「…私達全員が妊娠して前線を暫く離れなくてはいけなくなった今…、その間は貴方の夜伽を務めながらもその警護をする任務が出来なくなります」

「…まあ、普通は妊娠初期の今でもだけどお腹が大きくなったらほぼ弱みにしかならないからね紅華」

「ですが白漂様とて殿方です。戦場と言う生への執着が極限まで高まり続ける環境では…その間、夜の情念を一人だけで耐えるというのも酷でしょう…」

「いやー王京、その間くらいは自分で抜くくらい出来るけど…」

「申し訳ありません白漂様、貴方の異常に逞しすぎる肉体で数え切れない寵愛を貰っている身としてその言葉はあまり信用できません」

「…しょ、庶徐……」

 

 その話は一見すると妻が妊娠中の間に発生しがちな男性の浮気対策についてのものだったが、そこで自身がその方面で全く信用されてない状況に白漂は地味にショックを覚えた(王京を迎え入れた経緯や、姫昭と遭難先での密事があるので強くは言わなかったが…)。

 

「だがなぁ、だからと言って下手に妓女を連れ込むというわけにはいかないだろう。そういうところから情報を狙う間者や、普通に妓女を装うそれに刺客も普通にいるからな」

「まーお互い経験済みだからね藍蘭」

「それでね。対策を考えたのだけどー…皆ー、兜を脱いでいいわ」

「「「「「ハッ」」」」」

 

 紅華の指示でゲル内部の警衛に付いていたと思われる竜騎隊員らが兜を脱いで素顔を晒す。

 

「あ、この面子は確かー」

「ええ、貴方が孤児時代に戦火や人買いなどより助けたり、紫夏殿との中華行商中に救って妹弟子にしたり、北の地で恭順させた各部族で特に恩義を受けた子達よ」

 

 その者達は紅華の紹介通り、白漂にとって時期や場所に出自と経緯の詳細等では異なるが、白漂とは紆余曲折を経て背中を預け合って協力して死地を潜り抜けた者達であった。

 

「…けどさー、夜の室内での警備も任せるなら納得できる人事だけど…何で皆が女の子?」

 

 そして、前世に当たる現代とこの時間軸における中華どちらの美的感覚を持っていて、それなりに目が肥えている白漂にとっても体格や傷痕など細かい点を考慮しても十分に美女と言える共通点があった。

 総体数としてみれば白漂軍もまた大半が男性だが、大将である白漂の現代的ジェンダーレス思考と、その影響を受けて彼ほどではないが男尊女卑思考がこの時代では薄まってる方の将兵が多い同軍ではさほどさほど珍しくなかったが、それでも集められた親衛隊員が全員女性と言うのは気がかりであった。

 

「…貴方、今日からこの子達にも情を分けてあげてちょうだいね♪ 私達の腹が空いた時期になっても継続してね。正式な輿入れはしなくてもいいけど…場合によっては報酬として胤を持ち帰らせてあげてもいいから」

「…何ヲ仰ッテオイデデショウカ?」

 

 その女性達を示して紅華が白々しいまでに輝かしい笑みを添えて言い放った言葉に、白漂は思考が停止しかけるが何とか持ちこたえて棒読みで詰問した。

 

「…いやねー、この子達の今の地元は今の秦において辺境だけど成長中の要地に位置しててー、今でこそ軍の武威で静かにしてるけど…それでもそれだけじゃー不安だし、血統的にも箔を付けさせた方がさー親元である私達とも関係深められて利益を増やして繋がりを強められるの♪」

「この子らの地元の親族も正室や側室までとはいかずとも、西や北の要所に位置するこの子らの部族も一門までとはいかずともつながりはある事だけでも匂わせれば他所との商売も有利に進められるし、こっちも利益が増やせるからな。他にも私達が産む子だけでは皆の家と関係深められるだけの数は賄えないし、他にも貴方の父親の代での衰退が原因で一門は未だに少ないし…」

「もっともらしいこと言ってるようにして要は僕に種馬になれってことだよね? そんな現実の利益第一に勧められても…? そんな愛情とか二の次さんの次な理由で生まれた子供の将来とかはどうなる?」

 

 紅華と藍蘭による利益第一の反論に白漂は女性が大事している分野も絡めて辞めさせようとするが、杏橋が仏頂面で捕捉してくる。

 

「お言葉ですが今の貴方が施している教育法や育児環境は丁度良いと長老達もほめておいででしたが?」

「いやね君達!? 今はそうでも規模と時間の変化で生じる問題と言うのもあるから!」

「私達としても貴方様が他の女性をその腕に抱く光景と言うのは焦燥に駆られますが…貴方様の功績とお立場を考慮すれば他の女性とも関係を持って行かねばなりません。ならば今の内から危険の少ない道から固めていくのが一番危険性は低いです。彼女達とは気心知れていますから」

「いや普通は友人が愛する男と寝てると知ったら悔しがるのが普通の女性と思うけど!? そんないつもの事務処理みたいな感じで推し進められたら本当は好かれてないんじゃないかって思えるんだけど!? それと君達も圧力掛けられてるなら僕が紅華達を説得するからこういうことは我が身を預けられるまで好きになれた人にしてあげなさい!! そういう人が父親であってこそ子供も良く育つだろうから(今の六人でも尻に敷かれて扱き使われながら絞られ続けてるのにこれ以上増えたらマジで死にます)!!」

 

 妻達の口でテキパキと埋められて行く外堀に白漂は見切りをつけて、愛人(予定)の女性隊員達を撒き込もうとした。

 

「? 何を言われているのです将軍? 裏事情とかを考えても私達は子を設けるなら貴方の胤でしたいと皆が思ってますし、この場にいないだけで他にも何人もいますよ」

「ああ、僕達は貴方の戦場や治政で見せる勇ましくも聡い姿とは相反するその情けなくも可愛らしい姿も含めて好きだ」

「据え膳食わぬは男の恥って言葉もあんだろーが。俺が男だったら纏めて一生面倒見てやるって言うところなのにあんま情けないところ見せんじゃねーよ」

 

 だが、新人の子達からも言い方は違うがその女性としての好意も示されてあっさりとその目論見は潰され、続けて庶徐の口よりうっかり出た生々しい本音が追い打ちをかける。

 

「そ、それにーこうした申し出を断ると軍としてもまずいです。この人たちの実家や所属してる大元も大きくなって情報や資金面で大きく融通してもらっていますので…、もしも断ったらそうした所で不仲になったり、取引先との商売がうまくいかなくなる可能性もあるし、何より奥様が向こうに欲しい対価の内容を聞いたら…白漂様の血筋を分けて箔を付けさせて欲しいという内容を…今後の有利な通商内容と引き換えに受諾してしまった後ですか…あ」

 

 庶徐がワタワタとして最後にしまったという表情を浮かべたその言葉に、経歴から金銭や情報事情に鋭い白漂は完全に外堀どころか城壁まで剥ぎ取られた気分になった。

 

「…アノ…最後ニ…僕ノ人権ハ…??」

「「「「「「「「「「何を言ってるか知らないが貴方が思ってるような意味ではきっと無い」」」」」」」」」」

 

 最後に、再び思考停止寸前の白漂が放ったその棒読み懇願は女性陣一堂にあっさり斬り捨てられた。

 

(…秦の女子は強いと聞いとったけど…本当だったんやなぁ…)

 

 儒家が幅を利かせている中原で暮らす者らが見れば我が目を疑うその光景に、気付かれずに(もしくはわざと見逃されてか)接近して盗み見ていたココロは唖然としてしまっていた。

 

(…あ…きょ、羌瘣…助け―――)

(お勤め…せいぜい頑張っとけ…)

(―――え…プツン…)

 

 ちなみにココロは気付かなかったが、ゲルの頭上骨組みより羌瘣が何時の間により潜んでその様子を見ており、その存在に気付いた白漂が辛うじて少し回復した思考で彼女に助けを求めるも、助からないのに未練がましい患者を突き放す医者の如き冷笑で返されると、脳裏にその意思が言葉を介さずに伝えられて完全に止めを刺された。

 

 

 

 

 

 ○秦始皇8年(紀元前239年)険水関攻防戦二十三日目夜 趙国南西部 太行山脈西側領域南部 軹関陘西側地域 険水関対岸秦側陣地 某景勝地○

 

「…おい、白漂が淫行に耽っているという例の場所はここか?」

「ああ、昨日にこちらの手のものも確認を済ませたから間違いはない」

 

 ココロによる白漂と藍蘭の情事視姦より三日後、その現場を目指して趙軍の小隊が地下道から進み息を殺しながら突き進んでいた。

 彼らは郭開が後方から選出して送り込んだ彼の派閥に属する将兵達で、主人と自らの手柄を立てること、そして今現在険水に滞在しているある要人子弟の手柄にして次期政権で出世を狙おうとしている者達だ。

 

「おい! 見えたぞ!」

 

 やがて茂みに隠れた地下道の入口より出ると、そこには澄んだ水を湛える湖沼とそれに囲まれた衛兵付きのゲルが見えた。

 そして、その内部より男女の艶めいた声が滲み出ている。

 

「よし! あの豪華な天幕は間違いなく大将のものだ!」

「しかし…戦地まで女を連れ込んでくるなんて…こんな馬鹿を恐れる李牧らも同類か?」

「あまり大声と無駄口は叩くな! さほど敵兵の数も少ないし今こそ奴の首を討ち取る好機だ!」

 

 その嬌声と豪華なゲルの存在で、趙兵達は大手柄の匂いを感じ取って洞窟内から仲間を呼び寄せて豪華ゲルを囲んでいく。

 

「よし! それでは攻撃―――」

「開始だ」

 

 だが、豪華ゲルを取り囲んで得物を向けて夜襲を掛けようとしたその時、その趙兵達を頭上よりそれ以外の平坦な声が降り注いできた。

 

「―――い…!?」

「「「「「やれーーーーーーーーーーーーー!!!!」」」」」

「「「「「…あーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!??」」」」」

 

 それにゾッとした悪寒を感じて趙軍夜襲部隊の頭が頭上を見上げたその瞬間、樹上に隠れ潜んでいた白漂兵達が雨の如く降り注ぎ、湖沼一帯を怒号と悲鳴に剣戟の音が少々の間包み込んだ。

 

「…はい、将軍終わりました」

「うむ、紅華ご苦労」

 

 数分後、ほぼ全員半殺しにされて縛り上げられた趙兵達を尻目に、白漂は大型豪華ゲルからやや離れた本来の自分が使う大型ゲルで報告を受けていた。

 その近くから連行されていく捕虜達から困惑と疑問が怒号混じりで次々と上がり始める。

 

「…ば、馬ぎゃな!? あの…大将て、天幕の中から確かに嬌声が漏れ出ていたはず…!?」

「いやねえ、あのゲルは来賓用の接待で使うものだから。それに僕あーいうので毎晩寝泊まりする趣味無いし」

「将軍は孤児育ちの癖で今も私生活は基本貧乏しょ…倹約家ですから」

「今、貧乏性って言おうとしなかった王京?」

「いいえ、気のせいだと思われます」

「だ、だったらさっきの艶のあった声はいった…!?」

「ああ、うちに所属する別の恋仲二人に豪華天幕を使わせる代わりに中で実際に交合しながら嬌声出してもらっておびき寄せてもらっただけ」

 

 そうした質問に対し、白漂は重要機密に触れない範囲内で且つ今後の為に適当に答えていく。

 

「…ぶえっくし!」

 

 その最中に、幾つかの茂みを挟んだ持ち場にいた信がクシャミした。

 

「ん? 信君どうしたの?」

「あ、いやー玲花…何かさー…漂に接待用ゲル今晩貸すからわざと周囲に嬌声が漏れるようにして馬鹿をおびき出せっつーついさっきの仕事を思い出しらさー急に鼻がムズムズしてよー」

「…あー、うちに女の子が他所と比べて多いのが今回は功を奏したさっきの仕事だね…」

 

 信の傍らには若干頬に朱色が残っていた玲花もいて、その足は胎内に留まっている何かを留めるように閉じられていた。

 

「…で、でもさー…いつもみたいな借り家やゲルの中でやるのと違ってー…やっぱ今晩のあの接待用ゲルで使う金掛けた情交って…あー、俺達も早く将軍なって自前でああいうのしてえな~~~~」

「信君、あんまそう言うの人目に関係なく言ってるとまた―――」

 

 その様子に信は鼻の下を大きく伸ばした表情で今宵受け持った仕事の感想を下卑ながら思い出そうとしていたが、それを玲花が注意しようとしたところで彼を悲劇が襲う。

 

「人が今晩も机仕事してた最中も仕事で女を抱いた感想口にするとは良い度胸してるな!? ぇええ!!?」

「あーーーーーー!!?」

「―――あ…やっぱり」

 

 背後から乾いた笑みを浮かべつつも光が無い瞳を浮かべた河了貂の蹴りが信の股間を遠慮なく襲ったのだ。

 

「…お、ぉ…おおおぉぉぉ…!」

「あー、この馬鹿がまた調子に乗らなかったー?」

「大丈夫よ。私も詳しくは聞けてないけど…どうやら逃亡奴隷の子を装ってここに流れてきた密偵の子達の何人かがー…」

 

 下半身より立ち上ってくる危険信号でムンクの叫びの如き表情を浮かべながら蹲る信を他所に、河了貂と玲花は今晩の仕事について事後の話を進めた。

 

(…な、何だと!? では…ここの連中は…!?)

 

 それを別の茂みに隠れた地下道に通じる岩の割れ目より、地下に潜んでいたおかげで捕縛されずに済んでいた別の趙兵達は必死に聞き取っていた。

 

 

 

 

 

 ○趙国南西部 太行山脈西側領域南部 軹関陘西側地域 険水関内城○

 

「…ああ…が…アアアァ! くそぉ!? は、早くもっと酒と医者を持ってこい!!」

 

 秦軍側陣地内の湖沼地帯にて信が苦悶の声を上げ始めた時より数時間後、城主が姿を見せなくなった険水関の貴賓室にて、例の要人子弟の少年が白漂に付けられた顔の傷で呻きながら周囲に八つ当たりしていた。

 

「ま、まずい…この前は連れて来た侍女一人の耳を削いでしまったし…」

「こ、このまま行くと我らまで飛び火しかねんぞ…!?」

 

 それを壁越しながら察している、邯鄲王都圏から共に来たらしい衛兵達は面倒そうな顔を浮かべていたが、そこで河了貂と玲花の話を盗み聞きしていた趙兵達が戻ってきた。

 

「ほ、報告です!」

「お前は確か白漂を夜襲しに向かった隊の…!? 奴の首は上げられたか!?」

「い、いや、それが…更に厄介な事に…!!?」

 

 その趙兵達の報告がこの地に潜んでいた歪を更に広げていくことになる。

 

 

 

 

 

 ○秦始皇8年(紀元前239年)険水関攻防戦二十四日深夜 趙国南西部 太行山脈西側領域南部 軹関陘山間部○

 

(…うぅ! 如何にか…死体を運んでいる荷車の中に紛れて…脱出できたけど…あまりにも…時間をかけ過ぎてしもうたやなぁ…)

 

 邯鄲要人子弟らの元へ不吉な報せが届いた日より次の日の晩、ココロはどうにか秦軍陣地を脱出して険水関へ戻ろうとしていた。

 但し、最短ルートはあらかた秦側に抑えられていたため、今は大きく迂回して険水山の裏側から大幅に迂回するルートを余儀なくされていた。

 

(幸いにも秦側は何か思惑あるやろうけど…未だに麓まで進んだところで止まっとるし…今のうちに城に戻らんと…!?)

 

 だが、地下道からようやく地上へ出たココロが目にしたものは、山の裏側にある鉱山町から立ち上る赤々とした幾本もの煙であった。

 

(…どういうとやろ? あれは…作業場からではなく…焼き討ちによるものやないか!?)

 

 その正体に気付き、ココロは最悪の事態を勘繰りつつもそれを否定したくもあって煙を上げている裏山の集落群目掛けて駆け出した。

 

「…さっさと集まれ! 焼け死にたくないのならな!」

「二番区画の生き残り住民はもう集め終えました! 一番区画の方は…」

 

 一方、ココロが目指している鉱山町などの集落一帯中心部には、王都圏より送られてきた趙軍に家々から焼き出された険水の住民達が集められていた。

 

「な、何なのですか今度は!? 私達は今日も指示出されている量の鉱石を掘り出さなくちゃいけない作業が残ってるんですよ!?」

「惚けるな! 貴様らが今回攻めてきている秦軍と裏で繋がっているのは既に調べ上げているのだ!」

「そ、そんなの濡れ衣ですだぁ!!」

「黙れ! さもなければ昨晩に送り込んだ夜襲部隊が白漂の本陣で包囲されて殆ど捕まるなどと言う事態が起きてたまるか! 何より生き延びてきた味方が聞いた敵兵の立ち話より貴様らが秦と繋がっているのは明白だ!!」

 

 ちなみに、そうした光景を望遠鏡などで遠目で確認したり、間近にある茂みや物陰などに隠れて盗み見している存在がいた。

 

「…あやふやな情報を流してみれば何か起きるだろうと思ってみたが、まさかまたここまで疑い出すとはな…」

 

 集落中心部を囲う山林の一角にある樹上より、地下道を通って相応の部隊を引き連れてきた白漂達だ。

 

「…いやまー俺も金玉潰れそうな目に遭いながら流した甲斐あったけどよー…学修能力あんのか李牧以外の趙軍?」

「学習だよ信君」

「…いや、それもあるけど今回のは見せしめが第一だろう。この一月近くの間に山脈のこの辺りと近場一帯の裏側を調べてみた限り、もう何処も彼処も小火一つでも付けば一気に拡散する枯れ野状態だ。今回の内通疑惑は渡りの船と言ったところか…ん?」

 

 懐刀とその想い人の一人の夫婦漫才を聞きながら白漂が望遠鏡を覗き込んでいると、ある人物が引き出されていた。

 

(…あの娘は…確か脱走したけど湖沼に身を投げて行方不明になってたココロ?)

 

 白漂と藍蘭の情事を覗き見した何やら訳ありの少女が、趙兵に縛り上げられた状態で住民達の前に引き出されてきたのだ。




遂に険水の地における諸問題が表に噴出しはじめました。
次回からそこより大きく戦場が動き出す予定です。
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