神様のいたずらかなんなのかは解らないが、突如、森のなか――異世界にいた。しかも獣人となって。どうやらエルフとの混血のようだが、見た目はキツネミミとしっぽを持つかわいらしい女の子である。青い目で胸の大きな女の子!
属性ありすぎぃ!と少々混乱するが、時すでに遅し。落ち着きを取り戻せば、人里目指して転移した森のなかを(野宿しながら)歩いていれば、孤児院で暮らしている獣人ちゃんに拾われ、孤児院でともに暮らすことになった。だが、そこはギリギリの生活。
とある日、王都から奴隷商がやって来る。ほかの子が助かるならと自ら身を差し出したが――なぜか姉さまとなつくオレを拾ってくれた獣人ちゃんも一緒に行くと言い出した!?
オークションの結果、オレたちはとてつもない金額で競り落とされ、新たな生活を始める。
――類い稀な美貌を持つお貴族様の邸宅で。

注意
*(気恥ずかしさに素直になれないツンツン?)TS転生獣人ちゃんとご主人さまのいちゃらぶです
*「TSウサミミ女子は今日も愛される」( https://syosetu.org/novel/213737/ )(携帯版 http://m.syosetu.org/?mode=ss&nid=213737&guid=ON )のウサミミちゃんとご主人様に萌えに萌えて創造したお話になります
(作者様がおられるのかは定かではありませんが、勝手にすみませんと謝っておきます)

1 / 1
【 まえがき 】

■旦那様とメイドがいちゃいちゃするだけの話だよ!スローライフっぽいところもあるね!

2020.04.30


旦那様には甘くない!

「姉さま、今日も頑張りましょうね!」

「おー」

 

 今日も今日とて()()()()()()()()()()()()、床磨きのために用意された縁に雑巾をかけた空バケツをそれぞれ手に歩く、オレとリーリカの獣人ふたり。といっても、オレはエルフとの混血のようなんですよね。エルフっぽさは無きに等しいからか、混血と言わなければ解らないぐらいだ。強いて言うのならば、耳がちょこっと尖っていることと黄金色がエルフっぽいだろうか?

 

 少しだけ幼さが残るリーリカの方は見るからにやる気満々で、金色の目にも闘志があふれているようだ。銀色に輝くオオカミミミとしっぽもゆらゆら揺れているのが微笑ましいよね。オレことミュレットの方は普通である。金色のキツネミミもしっぽも普通。音に反応して揺れるだけ。何度もあくびをしているので青い目は潤みっぱなしであるのだが、こちとら睡眠時間が短かったんですよね。解放されたのは六時少し前――。つまり、リーリカが起こしに来る前なので、オレは二十分かそこらしか寝ていないのだ。差し込む朝日が眩しすぎていけない。これもすべて旦那様の所為なのですよ、旦那様の。

 

 ミミが無防備なのは、ヘッドドレスやキャップが与えられていないからである。髪はふたりともシュシュっぽいものでうなじ辺りでひとつにまとめていたりします。頭を飾るものがないのは、おそらくはミミが関係しているからであろう。はっきりいって邪魔だからね。しかし首元はほかのみなさんとお揃いですよ。スカーフ――新人は赤、中核は白、ベテランさんは深緑と色が違うらしい。奴隷なオレたちは淡いピンク色である――を巻いて、ブローチで留めている。といっても、魔導具のひとつだからか、安全ピンも留め金もない。つるっつるのブローチの裏側なんて初めて見ましたよ。見た目だけなら一流感がなくもないが、下っ端も下っ端だから動きが違うことが明白だろう。

 

 廊下には絨毯が敷かれているので掃除は不要だと思われがちだが、掃き掃除はするらしい。役目はオレたちではないので、どんな風に行われるのかは解らない。オレたちはオレたちで三階から一階に下りて、与えられた玄関周りの掃除を進めていく。大理石を思わせるつるつるの床を磨くのだ。滑って転ばないように慎重に。

 

 掃除や調理など、生活するのに人力なところもあったりするのだが、この世界には魔法も存在しているので、ある程度の楽は出来たりもした。バケツの持ち手の隅に取りつけられた魔石に魔力を込めれば水が作り出せたりするのもそのひとつだろうか。水が入った重いバケツを運ばなくていいのはよすぎる。魔法様々ですよねー。まあ、オレはリーリカと違って、魔力量は庶民レベルでしかないようだが。といっても、魔法の特訓はしていないのでなにもおかしくはない。現在進行形でエルフとの混血が宝の持ち腐れになっているが、旦那様が難色を示しているのだからどうしようもないだろう。オレは逃げないのにね。というか、逃げられないのになあ。

 

 四階建ての邸宅はその名のとおりに外観も内装も見るからに立派で、オレのような庶民は外から眺めるだけでも御の字だろう。そんな場所に住み込みで働けるとは、人生なにがあるのか解らないものだ。――とてつもない金額で競り落とされた奴隷だけれども。

 

 せかせか忙しなく移動するほかの使用人たちを眺めつつ、マイペースに玄関ホールを磨くオレたち。いい匂いが広がってきたので、もう少しで朝食だなあ、今日はなんだろうかなどと考えていると、「姉さま姉さま」と明るい声とともになにやら距離を詰めてくるリーリカがいた。それが解ったのは、オオカミミミが視界いっぱいに広がったからだ。

 

 鼻をくすぐる位置にきたオオカミミミから一度顔を逸らし、「どうした?」と問いかけると、「姉さま、ここ」とそっと耳打ちしてくる。ついで、襟元から覗いた首筋に指を添わせながら、「――濃くなってますね」と息を吹きかけてきた。「ん、んっ!?」というどこか甘い声とともに躯が竦まるのは、不意打ちに等しいからである。「不意打ちはやめろ、不意打ちはっ」と慌てて耳を――獣人だがなぜかオレたちには耳もきちんとある――を押さえると、リーリカは「ごめんなさい。姉さまがかわいいから、つい意地悪したくなったんです」とオオカミミミを垂らした。ぐぅ……っ、かわいい。

 

 怒るに怒れず、はあと短く息を吐いて怒りを散らす。こんな風にリーリカには勝てないことが多々あるが、しかたがないのだ。垂れミミ美少女に勝るものはないのだから。

 

「『つい』で意地悪される身にもなってくれ」

「はぁい。でも、姉さまだけが頑張る必要はないですよ? 私も一緒に買われたんですから、私も頑張りたいです」

「リーリカが別のところで頑張ってることはちゃんと知ってるから、大丈夫だよ」

 

 不満げな顔をするリーリカの頭を撫でてやると、ふにゃりと顔を崩した。もっと撫でろと言いたげに「姉さまぁ」と頭を擦りつけてくる姿はなんとかわいらしいことか。続けざまにうりゃうりゃと頭を撫でているとがしりと腕を――手首を掴まれてしまう。背後から伸びたらしい白い手で。袖から覗く手首を辿ると、黒い瞳とかち合った。

 

「ミュレット」

「旦那様……」

 

 ――それ以上触れるのはいけませんよ?

 

 リーリカとは反対の耳元でそんな言葉を囁いたのは、黒い瞳を細める男――この邸宅の持ち主たるカルド・ラルストン様。少し前までベッドのなかでオレを哭かせまくって楽しんでいたまさにその人である。いや、いまだって、「ひょえっ!?」とふたたび肩を竦めるオレの様子を眺める姿はどこか楽しげだが。抱き起こすように腹に回された手の細さは儚さを感じさせるがしかし、強い力でオレを引っ張り上げていく。旦那様に抱き上げられて胸のなかに収まると、がっしりと固定された。逃がしてなるものかという意思をしっかりと込めたようにがっしりと。

 

「ミュレット、私以外に気安く触れてはいけないと教えたはずですよ。それとも、ミュレットはお仕置きをされたいと思っていると?」

「おっ、お仕置きされたいなんてそんなこと思うはずがないです! それよりも、早く下ろしてください」

「もう少し抱きしめていたいので、我慢してください」

「う、えぇ~……、わ、解りました。少しだけですよ?」

 

 嫌ですと出かかったのを寸でのところで回避したのは、拒否をした場合を考えたからだ。答えは簡単。――寝かせてくれないのだ。それも朝方まで。もう経験済みなんですよねと言えば、解ってもらえるだろうか。哭いても哭いてもやめてくれないド鬼畜野郎に買われたのだとはっきりと解ってしまったのもこのときですわ。優しげな顔をしておいて、その実、性欲おばけだなんて騙されたものだ。

 

 ――さらに言っておくけれども、大変不本意だが、少し前までのあれやこれやはお仕置きでもなんでもなく、職務を全うするために数日間触れられなかったことに対する処置である。一日二回までの取り決めを律儀にまとめるなんて、意味が解らないにもほどがありますよね。まとめる必要なんてないんだからさ。抵抗なんてなんのそので八回続けるなんてさすが旦那様。ド鬼畜野郎ですわ!

 

 旦那様のことだから、満足するまでにはまだ時間がかかるだろうと見て、白い首に腕を回してやる。噛みつかないだけありがたいと思えよ、旦那様。落ちたら怪我をするだろう固さがあるわけだし、ここで噛みついたら洒落にならなくなるかもしれないから、しないだけなんだからな。打ち所が悪ければ、最悪死ぬかもしれないし。いや、旦那様がオレを落とすなどあり得ないが、ぐらつくのも危ないからね。しかたがないかと()()()()()()()()()()()寄りかかると、旦那様は「時間が早いですが、私は構いませんよ?」と囁いてくる。

 

「ちっ、違います! 落ちないようにしているだけですよ!? というか、もう無理ですからね!」

 

 いきなりなにを言い出すのかとぎょっとするが、旦那様はいたって普通である。普通に「お仕置きうんぬんかんたらなんたら」が出てくる人なのだ。二十三歳という若さでここら一帯――リットーと呼ばれている地を治めているお貴族様である。元は旦那様のご両親が隠居場所を作るために森を切り開いたところから始まったようだが、お蔭でいまや立派な町となっていた。いや、町ではなく、国と表してもいいかも解らない。なぜなら、小国ほどの広さはあるらしいので。オレは小国がどれほどの大きさなのかは知らないけれども、国なのだからそれなりの広さはあるのだろう。

 

 王都やその周辺の町と同じように、それぞれ区切った土地を旦那様、旦那様のご両親やご兄弟――姉と兄がひとりづついるらしい。つまり、旦那様は次男となる――、そして旦那様たちを崇拝するお貴族様たちで統べているのです。同じ町を統べている関係上、ご両親やご兄弟、ほかのお貴族様たちとも交流が盛んなようだが、オレはまだ会ったことがありません。ただの一度も。いやまあ、奴隷を連れていくということはあり得ないんだろうが。あくまでもオレは奴隷――命じられればあんなことやこんなことやそんなこともしなければならない愛玩奴隷という立場――であり、旦那様たちとは身分が違うわけだよ。奴隷だとしても、恵まれている方だとは思うけれども。

 

 王都に比べればやや劣るようだが、堅牢な砦を要した町は豊かさにあふれている。だからか、周りにあった小さな村からの転居が多かったし、噂を聞いてはほかの町からやってくる者ももちろんいた。それは冒険者であったり、獣人であったり、エルフであったり、ドワーフであったり様々だ。追随を許さないギルドだって作られているし、この町はほかの町や国よりも多種多様な者が暮らしている。王都に暮らしていた者が余生としてこの地を選んだりすることもあるようだ。主力は林業――切り出した大木から家具や小物を作ったりする――と農業のふたつのようだが、食べ物の心配があまりないのは好ましいと思う。いやはや、大変に好ましいよ、本当に。

 

 旦那様本人曰く、飼い殺しのために与えられた場所だと言ってはいたが、詳しいことは聞いていないのでよく解らない。奴隷兼メイドが雇い主、いや、飼い主の過去を探るのにも限界があるのでね。

 

 ついでに言うと、旦那様はこの地では珍しい黒髪と黒目、そして、類い稀な美貌を持つ男でもあった。ここまで美しいと思う人に出会ったことはないというほどに、人間離れをした美しさである。まさに神々しいと表すに相応しい。それに、身長だって高いのですよね。百八十は楽にあるだろうな、これは。百六十はあるはずのオレとの身長差が大きすぎるが、気にしたら負けである。そうなのだ、気にしたらやっていけない。抱きしめられたらすっぽり収まってしまうのも、最悪逃げられなくなってしまうのも気に入らないが、気に入らないままにしておこう。ぐちぐち言っても、身長差はどうにもならないからな。

 

 さらにつけ加えると、中性的な見た目ではあるが、体格はちゃんと男なので、女性に間違われることはないようだ。だがしかし、回避不能な色気を振り撒いている。無自覚に。先輩たち曰く、慣れるまでは大変らしい。いや、慣れてからもやられそうになるので、毎日気を引き締めなければならないようだ。こう、自然と目がいく、というのか、吸い寄せられる感じか。ふらふら~と近づきたくなるのだから質が悪いと思う。近づいたが最後、ですがね。

 

 ――ほら、体格差も身長差もありますし、ねえ? 離してくださいと暴れてもどうしたって敵わないのだから、もう腹をくくるしかあるまいよ。この邸宅にやって来た日から三ヶ月ほどは経っているが、何度ベッドに縫いつけられたか……。文字どおり、首輪やら手枷やら足枷やら金属棒やらを使って本当に拘束されたこともあるにはあるが、それはそれだ。羞恥心で溺れかけたのは忘れよう。旦那様、いや、ご主人様が大好きですぅなんていう恥ずかしい言葉を何度も何度も言わされたことも忘れたい。こっちは感度を上げられてぐっちゃぐちゃにされるというのに、しれっとしているのはなんでですかね。両頬を引っ張ってやりたくなるほどには気にくわないんですが、言わぬが花というやつで黙っているだけなんですよねえ。

 

 おおっと、つい夢中になってしまい横道に逸れまくってしまったが、話を戻してですね、色白であっても不健康な色ではないし、どうやら旦那様はよほど神様に愛されているらしい。何物貰っていやがるんだよ、これ。羨ましすぎるだろおおおお!

 

 ああああー、旦那様のことについて考えれば考えるほど、自分はなんて雑魚なんだろうと感じてしまうのはなんでなんだろうなあ。もう溜め息しか出てこないし、勝てるところなんてキツネミミとしっぽしかないじゃん。情けなさすぎだろと胸のなかで大きな溜め息を吐いて、旦那様に視線を遣る。もうそろそろ大丈夫だろうかと思いつつ。

 

「旦那様、そろそろ――ぉおぅっ!?」

 

 そろそろ離してもらってもいいですかね?

 

 そう口を開こうとしたが、先を読まれたのか、しっぽの付け根を鷲掴まれて背中が仰け反った。その上に揉まれてしまい、しかもどうやら感度を上げられたようで、そういうものが絶え間なく這い上がってきている。「にゃぅぇっ!? ひぁっ!? やだぁっ!」という甘い声とともに躯が跳ねまくるのも、快感を教え込まれてしまったあとだからだ。

 

「私を煽ったのはミュレットですよ?」

「ち、がっ……! 煽って、ませんっ、からぁっ!」

 

 脇目も振らず、快感を逃がすように旦那様の首筋に顔を埋める。ふぅふぅ熱い息を吐き出すオレを眺める瞳に熱が孕んでいるのは解っていたが、朝からはやめてほしい。昨日だって散々お相手したじゃないですか。というよりも、朝方まで哭かされたわけじゃないですか。それを解っていてなお、旦那様は容赦がないようだ。ド鬼畜野郎がああああ!

 

 ぎゅっと押し潰されてしまえば、ひときわ高い快感が全身を襲い、「っい゛、っ、ん゛ぅう゛ぅん……!」と達してしまう。大きく背中をしならせる姿を眺めた旦那様は――あろうことか、ふたたび付け根を蹂躙してきた。

 

「ひっ゛、に゛ゃぁ゛あ゛ぁっ!」

「――達する場合は宣言をしなさいと教えましたよね?」

「い、ぁ゛っ、ごめな゛ざっ……! だ、なさまっ、い、ぐっ……、い、ぐぅっ……!」

 

 強い快感にう゛ぇう゛ぇ泣きじゃくりながら頭を押しつけ、ふたたび達してしまう。旦那様の腕や服が汚れてしまうと焦るが、頭のなかだけだ。実際には、余韻に震えながらあひあひ息を吐き出すことしか出来ていない。「ミュレット」と優しく名を呼ばれてしまうと、条件反射のごとく「……あ、い……」と顔が上向くと同時に顎を取られてしまい、唇をも塞がれた。悪びれる様子は微塵もなく、「よくできましたね」と、囁きにも似た低音とともに大変よい笑顔を浮かべたあとで。すぐさま、口のなかまでもいいようにされていく。必死になって旦那様の舌を追いかけては自ら絡めて深くを味わうのは、少しでも満足に導くためだ。けして自分から快感に溺れたいわけではない。

 

 リーリカはなにも見てない聞いてないですを貫いていることだろう。彼女がなんと言おうと、この役目に代わりはない。あってはならない。オレさえ我慢すれば、リーリカには手を出さないという契約なのだから。リーリカを孕まされるのも壊されるのもごめんだからな。オレとリーリカはひとつ年が違うので、リーリカは妹獣人といってもいいだろうが、オレたちに血の繋がりはなかった。けれども、彼女は大切な人なのだ。オレを拾ってくれたのだから。なにも解らないオレに優しくしてくれたから――。

 

「旦那様」

「――んんんっ!?」

 

 こほんと咳を払う音に躯が竦まるが、旦那様は舌を絡めたままだった。まるで見せつけるように。いや、まるでではなく、確実に見せつけている。ぷちゅくちゅと漏れる水音と一緒に。

 

「朝食の準備が整っておりますが、いかがなさいますか?」

「――そうですね。ミュレットを着替えさせたらいただきましょうか」

 

 舌を緩めて宣うが、聞きようによってはオレをいただくように聞こえるんですが。「き、着替えはぁ、ひとりで、出来まふよぅ」なんていう言葉になってしまうが、「リーリカを頼みましたよ」とメイドさんに言いつけて踵を返す。ひとりで出来ると言っているのに。

 

 旦那様の私室に連れ込まれたオレはといえば、ベッドに縫いつけられてしまった。魔法で生み出された腕輪で両手首をひとまとめにされて。「これは着替えじゃないですよね!?」と暴れても意味がない。ないのだが、足を開かされていても、最後の足掻きは忘れてはならないのだ。流されたら終わりなのだから。

 

「まっ、待ってくださいっ、八回もしたじゃないですかぁ……! 一日二回だって言ってましたよねぇ! ねえっ!」

 

 必死に抵抗するがなんのそので、達して湿ったそこに舌を這わせられると、「んんっ」と甘い声が漏れてしまう。

 

「嫌、なんですって、旦那様ぁ……! もう体力はありませんよぅ」

「一日二回が厳守だと誰が言いましたか? 甘い匂いを充満させているミュレットも悪いと思いますよ」

「オレのどこが――んに゛ゃぁんっ!」

 

 ヒモパンをずらされる気配がして躯が固まるが、一瞬で溶かされていった。直に舐められてしまえば弱い。啜る音も大きく、耳からも犯されていく。全身が熱を帯びていきつつも、息も絶え絶えに「どこが悪いんですかぁ」とこぼすと、「そういうところですかね」と朗らかに返ってきた。そこで口を開かないでほしいのだが、体勢的には叶わないだろう。瞳には変わらずに熱が孕んでいるのが怖い。ぐっちゃぐちゃにする気満々じゃないですか。

 

「――かわいすぎるのが悪いんですよ、ミュレット。私の前に現れたのが運の尽きだと思ってください。私はあなたを逃がさないためにはなんでもしますから」

「なっ、なにを言ってるんですか。逃げられるわけ、ないじゃないですか……。五億なんて大金、どうやって払えって言うんですか?」

 

 愛玩奴隷で買われた者の抜け道として、主に対して購入した金額を払い終えさえすれば、奴隷という立場ではなくなる――要は庶民という立場にあたるわけだ――といっても、五億という金額では無理がある。一生かけても払い終えることなど出来ないだろう。特に、魔法も満足に使えない愛玩奴隷では。

 

 力なく「初めから逃げる余地なんてまるでないじゃないですかぁ」と吐き出すと、旦那様は「ですから、私の傍にいてください」と足の付け根に口づけていく。ちりちりと走る痛みは、鬱血痕を残された証だ。

 

「んっ……、でもっ……、愛玩奴隷が、素知らぬ顔で、旦那様、の、傍にいるのは、ダメですから」

 

 わざとらしくリップ音を響かせる旦那様は付け根ギリギリのところを舐め上げ、歯を立ててきた。

 

「ぅうぅんっ!」

「この町ではなにをしようと問題にはなりません。王国の法が及ばない場所ですからね。要は版図から外れた辺境と変わりありません。同じくこの町独自の法もありますが、たとえ町のなかであなたを抱いても、咎める者はいませんよ」

「ふぎゃああああ! やめてくださいよ! 外でなにをしようとしているんですか!? 変態ですか!?」

「ええ、変態です。セックス漬けにして私なしでは生きられないようにしなければと考えるほどにはね」

 

 もたらされた言葉にほぎゃほぎゃ喚きながら左右に揺れて暴れると、旦那様に手早く動きを封じられる。どうどうと言いたげに脇腹を撫でられてね。

 

「こっ、肯定しないでください! それにっ、せっ、セックス漬けってなんなんですか! 怖いことを言わないでくださいよぉっ!」

「セックス漬けはセックス漬けです。決定事項ですので、早く私に落ちてください」

「落ちませんよ!? オレは男なんですからね!」

「あなたがどんなに主張をしようとも、あなたの見た目は女ですよ。愛らしい獣人に変わりません。何度教えたら解ってくれますか?」

「のしかかってこないでくださいよぉっ」

 

 残念ながら見た目が女の子なのは解りきっていることなので、「女の子なのは十分に解っていますがぁっ、男と言ったら男なんですよぉ!」と情けない声で叫べば、頬を潰される。むにょむにょと。

 

「そういう顔をされると本当に襲いたくなりますよ」

「襲っておいてなにを言っているんですか!」

「ただの戯れでしたが、あなたが私以外の男に落ちないようにしないといけませんね。――さて、ミュレット、ここから頑張りましょうか。私としてはミュレットがミュレットであるのなら、性別にこだわる必要はありませんからね」

「オレが嫌なんですけどー!」

 

 にこりと笑う旦那様。いや、悪魔は人の話を全く聞かずにことを進めていく。つまり、オレはぐっちゃぐちゃにされていた。舐められていたそこには旦那様の陽物がぶち込まれており、激しく揺さぶられる。下から。向い合わせで。唇を貪られつつ。

 

「ひっ、あ゛っ……あ゛っ、だにゃしゃまぁ、やぁ……っ! いぎゅっ、いぎゅぅんっ!」

「あなたをこうしてかわいがれるのは私だけですよ」

 

 囁きに返すのは熱い息と哭き声。それと、涙に濡れた顔。旦那様は「そんなに泣かせるつもりはなかったんですが」と申し訳なそうに言うが、絶対に悪いとは思っていないだろう。なにせ、口端を緩めているのだから。

 

 緩く穿ちながらも汗で張りついた前髪を優しく掻き分けると、額に唇を落としてくる。「愛しています、誰よりも」という、煮詰めたジャムよりも甘い言葉を紡ぎながら。

 

 ひとつの言葉を返したかったが、塞がれた唇からは舌を絡ませる音と嬌声しか出ません。もちろん、旦那様が離してくれるまでは。

 

 だからか、毎回毎回「愛しているのならもっと優しくしてくださいよ!」という心からの叫びはピロートークにならざるを得ないのだ。実に悔しいことに。

 

 今回も大きな胸が形を変えるまでに強く抱きしめられながら大声を出したわけだが、「愛しているからこそ、かわいがりたくなるんですよ」と譲らなかった。その上、キスまでされる始末だ。オレはそのかわいがり方が恐ろしいと言っているんですよ!? なんで解ってくれないのかね! 解せませんよね本当にいいいい! いや、解せないのは腕のなかから抜け出せない自分もだけどもおおおお!

 

「もうっ、いい加減離してください!」

「初めからそのつもりですよ。さあミュレット、汚れを落として朝食にしましょう。ああ、その前に――」

 

 なぜそこで区切るんだという文句を言うために顔を上げると、ひょいと抱き上げられて膝の上に座らされる。が、文句は彼方に消え失せた。なぜなら――、文句を言えない雰囲気だから。これでなにか言える人であったならば、奴隷にはなっていなかっただろう。

 

 シャツを着せられているから、旦那様は上半身裸。つまり、いわゆる彼シャツというやつだよ! 言わせんなよ恥ずかしい! ダッボダボだよ! ――ではなくて、目の前にある均整のとれた躯についつい嫉妬しそうになるがしかし、その気持ちもすぐさま四散していく。うん、いつもどおりではあるのだがね、違いがひとつだけあるんだよ。それはですね、旦那様の目が笑っておりません。

 

「だ、旦那様……? あ、あのオレ、なにかしましたか……?」

 

 今度はおずおずといった感じで旦那様を見ると、白い手が首筋を撫でていく。リーリカが触れた場所を。無言で。ただひたすらに無言で。すっと目を細めたあとに。

 

 あ、やばいなこれはと思ったときには遅く、鋭い痛みが走った。「いぎゃっ!?」と声を上げたのは必然である。旦那様が噛みついてきたのだから。

 

「たとえリーリカであっても、気安く触れさせてはダメですよ」

「ぜっ、善処しますからっ、顔を離してください!」

 

 胸板を押すと同時に「痛いんですぅっ!」と叫ぶと、「しかたがないですね、キスで手を打ちましょうか」ととんでもない言葉が返ってきた。ぐっちゃぐちゃにしたのにまだ足りないとかなんですかそれ!

 

「うぅ……、い、一回だけですよ?」

 

 早く終わらせるために「ん!」と唇を突き出すと、旦那様は後頭部に手を添えて唇を重ねた。舌を絡めてきたのは全くの予想外だったが。

 

 待て待て待て待って待って! と慌てながら胸板を叩くが、その間にも押し倒されて深くを攻め立てられてしまい、無に終わる。感度だってガンガンに上げられ、もはや快感に溺れるしか道はない。

 

 結果なんて言わなくても解るだろう。悲しいことに、もう一度哭かされました。幾度となく首筋に歯を立てられてな!

 

 

 ◆◆◆

 

 

 旦那様の隣――ではなく、膝の上に運ばれたあとにテーブルに突っ伏すと、「姉さま、大丈夫ですか?」と声がかけられた。もちろん、リーリカから。彼女は旦那様の右隣に座っている。いや、オレが座る予定だった場所に詰めてきたわけだが。ちなみに、まだ朝食は運ばれていません。配膳が始まるのは、旦那様が来たときと相場が決まっている。

 

 オレとリーリカは愛玩奴隷なので配膳には配置されず、旦那様と一緒に食事をすることを許されている。要は愛玩されろということだ。

 

 リーリカには「なんとか大丈夫」と返すが、ついで「朝から旦那様が容赦ないのはなんでですかね?」と吐き出した。ううう~と短く唸りながら、泣きたい気持ちを隠すこともなく。

 

「姉さまが可愛いからですよ」

「かわいいのはリーリカであって、オレはかわいくないです。旦那様には節度を持ってほしいですね、本当に!」

「ミュレットには悪いですが、ある程度の節度はありますよ。そうでなければ、いまも抱いているところですしね」

「恐ろしい言葉を返すのはやめてくださいよぉおぉっ」

 

 嫌味爆発の言葉には頭を抱えるしかない言葉が返された。そして本当に頭を抱えたのは言うまでもない。十回もしたのに満足しないなんて、やはり化け物の名は健在である。なんなの。なんでオレの精神を折りにくるの?

 

 振り返って恨みがましげな視線を向けると、旦那様は「今日はもう無理強いはしませんから、そんなに怒らないでください」と頭を撫でてきた。おい、本当だろうな? 苦笑じゃ解るものも解りませんよ。まあ、オレには旦那様の言葉を信じるしかないけれども。

 

「食後にはミュレットの好きなアイスも出ますよ」

「それならまあ、少しは許しますけどぉ」

 

 アイスに少々元気を取り戻して、前に向き直り頬杖をつく。ええええ、許しますよ、少しは。ほんの少しは。噛み痕はなかったことにしてくれましたし。まあ、歯形を残すのはどん引きますという抵抗が功を奏したわけだが。

 

 ふんふん鼻唄を響かせると、旦那様はなぜかオレを引き寄せた。躯をよじって「なんですかぁ?」と上向くと、金色の横髪を掬い、唇を寄せる。

 

「なにをしているんですか?」

「ただのマーキングですよ。ミュレットは首輪と指輪、どちらがいいですか?」

「マーキングは解りましたが、いきなりなんの話ですか?」

「あなたを私のものだと知らしめるための道具についての話です」

 

 頭にクエスチョンマークしか浮かんでこなかったが、旦那様の言葉にああと納得する。知らしめる必要性があるのかは解らないが。

 

「どちらも必要ないです。強いて言うのなら、間を取った腕輪でしょうか? ブレスレットはオシャレに入りますからね。首輪はどん引きですし、指輪を贈るのなら、奴隷ではなく恋人に贈ってください」

「では私の妻になってくれますね?」

「どうしてそうなるんですか!?」

「指輪を贈るためですよ」

「奥さんなんて絶対にごめんですからね!」

「おや、それは残念ですね」

「声音からして絶対に残念がっていないですよね!?」

 

 オレではにっこりと笑う旦那様の真意は読めないが、旦那様の奥さんになるということはお貴族様になることと同義だ。こっちは貴族の世界なんて全く解らないので、すぐさま粗相を犯して打ち首獄門にしかならないだろう。それならば、まだ愛玩奴隷の方がいい。旦那様を満足に導くだけでいいんだから。……なかなか満足してくれないのが難点だが。

 

 いやそれよりも、聞き捨てならない声を聞いたぞ、いま! ――「私としては強行でも問題ありませんが、やはり落ちてくれないことには楽しくないですね。どうしたら落ちてくれるんでしょうか」という言葉はなんなんだ! なあんにも楽しくないですよ!

 

「楽しむなやこのド畜生おおおお!」

 

 朝食が運ばれる食堂に響いたのは、オレの叫び声であった。第二の心からの叫びだというのに、旦那様はニコニコ笑っていましたよ。しっかりととオレを閉じ込めて。

 

 あとが怖いけれども、これは怖いとは言っていられない事態だ。絶対にいつか泣かす! と心に誓ったのは必然だと思います。

 

 覚悟しておけよ、旦那様!

 

 

 

 

 




【 あとがき 】

泣かすと誓いましたが、哭かされるのはミュレットだけですのでご安心を。

リーリカとミュレットの関係など、ちょこちょこ伏線はありますが、続くかは不明です。なので短編で投稿しました。
あらすじ詐欺の話ですみません。

■ おまけ ■
◆キャラクター
○主人公:ミュレット
→ミュレット:英語でお守りを意味する「アミュレット」から
・異世界転生していた人並みの男子大学生

○獣人ちゃん:リーリカ
・ミュレットを発見した獣人

○お貴族様:カルド・ラルストン
→カルド:イタリア語で「熱い」から
・高位ドラゴンの母(ほとんど人化している)とエルフの父から生まれる
・力が強すぎて一部からは腫れ物扱いされている人
・ミュレット曰く、嫌味すぎるほどのイケメン

◆参考文献◆
主要登場人物の名前はリーリカ以外こちらを参考にしました~
ファーストネーム
ネーミング辞典:https://naming-dic.com/

ファミリーネーム
すごい名前生成器:https://namegen.jp/
→生成されたものから勘で選びとりました

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【R18】TSウサミミ女子は今日も愛される(作者:らいじゅう)(オリジナルファンタジー/恋愛)

訳も分からずぽっくりいった元男なタレウサミミ獣人シルヴィは色々あって奴隷になりました。▼人生に絶望していた可愛いあんちくしょーですが、人の良い変態貴族にお買い上げされて毎日美味しい物を食べられるハッピーライフを送ったそうな。▼だがしかし、対価もなしに何かを得る事などあるのだろうか。いや、ない!━━━━という訳で、シルヴィは幸せを享受する為に、今日も今日とて変…


総合評価:2650/評価:8.97/短編:5話/更新日時:2020年05月04日(月) 16:00 小説情報


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