挿絵ちあ先生(https://www.pixiv.net/users/1749919)
「キバナさん準備できました! はいります!」
スタッフたちと一緒に撮影スタジオに現れる長身。いつものユニフォームにドラゴンをイメージしたパーカーと、トレードマークのオレンジ色のヘアバンド。
「おはようございます」
口々に挨拶が飛び交う。
「キバナさん、おはようございます」
「おー、ユウリ。おはよ」
彼はにかっと大きく口を開けて、人なつっこく笑った。
チャンピオンになって、今年で八年。
八度目ともなれば、年間スケジュールも身体が覚えている。中でもビッグイベントである、ジムチャレンジ関係の流れも慣れたものだ。一方で、こうしたモデルさんのような撮影は未だに緊張してしまうが。
「表紙用にツーショットお願いします」
今回はジムチャレンジを前にしたチャンピオントーナメント特集で、外部の雑誌用撮影に来ていた。表紙は私とキバナさんが飾るということだ。
「ユウリ、その髪型かわいい。めっちゃ似合ってるぜ」
「これかわいいですよね! ティアラ着けるためにヘアメイクさんがやってくれたんです!」
「よかったなー! 記念にあとでオレさまのスマホでも一緒に撮ろうぜ」
アップに結い上げてもらったスタイルを褒められて、撮影の緊張が吹っ飛んだ。
「キバナさんと一緒のお仕事でよかった。一人だと緊張しちゃって」
「そう言うからピンショでも割と付いてってるだろ。お陰様で何度友情出演になったことか」
「えへへ」
マネージャーのように同伴してくれるキバナさんが、現場でいきなり私の隣に立たされることも少なくない。おしゃれして付いてくるから満更でもないのだろうけど。
撮影がセット変更で休憩になると、椅子と飲み物を持ってきてくれる。アイスティーを飲みながら、私たちはツーショットの取れ高を確認していた。
「んん……こうやって見ると、キバナさんはやっぱり大きいですね。当たり前のこと言いますけど」
「はは。そうだな~。こんだけ顔の位置違うと、表紙の文字入れも大変だよな」
「チャンピオンカップのパンフとかポスターとか……色々とレイアウトがんばってますよね」
「しかし……ユウリももうすぐ十八か、早いもんだなあ」
写真をまじまじと見ながらキバナさんが呟く。
「早いですか?」
「だってオマエ、全然背も伸びてないし子どものままじゃん。最初にツーショで撮ったときと絵面変わんなくねえ?」
「失礼な! 就任したときから五センチも伸びたんですよ!?」
五センチ伸びてもキバナさんとの差はほとんど縮まらないから、彼からすればそう見えるかもしれないが。
「そういえば、今度の誕生日は何がほしい? 十八ならもう大人だもんな。アクセサリーとか?」
キバナさんは毎年毎年、私の誕生日を祝ってくれる。当日が無理なときでも、豪華なティールームでバースデーケーキとプレゼントをもらうのは、最早お馴染みのことになっていた。年若くチャンピオンになった私を、保護者のような気持ちで見てくれているのだろう。
「んんんん。アクセサリーあんまりつけないんですよね……二年前にもらったおっきいナックラーのぬいぐるみ気に入ってるから、そういうのの方がいいかなあ」
「はは。ほんと、変わんねえなあ。安心するわ」
「子どもっぽくてごめんなさいねー」
言いながら口をへの字にした。
キバナさんはほんとに面倒見が良い。
かっこいいし。
それでいて私の中で、今は大好きなお兄ちゃんで収まっていた。
……そんなキバナさんのかっこよさに舞い上がって告白したのは、十一のときだったか。
「好きです!」
そう言ったのは、チャンピオンとしての仕事を受け付けている、事務所の自室。
チャンピオン一年生の私に来る仕事のほとんどを、キバナさんが受けていた。どの取材を受けるのか、企画を通すのか、契約の期間や金額はこれで適切か。
私以上に私の仕事をしているキバナさんが、ここに長く居るのは当然で。彼とここで二人になることは多かった。
そんな彼を、服の裾を引いて呼び止めて、心臓をばくばくさせながらそう言ったことを覚えている。
キバナさんは困ったように笑って、少し考えてから答えた。
「ユウリはまだちょっと、オレさまと付き合うには若すぎるからなあ」
優しく言ってくれているけど、要はお断りされているのだ。
そう思うと涙が滲んだ。
「ああ、泣くなよお」
しゃがみこんで、俯いた私の顔を覗き込む。
彼の頬が少し赤いのは、たぶん私が泣いてしまって焦っているからだ。
「大人になったら付き合ってやるから」
「……それって何歳ですか……私、もう大人なのに」
涙を手の甲でぬぐいながらそう訊くのは、確かな約束をしてほしいというより、子ども扱いされたことへの不満の表明だった。
「うん。ユウリはもうチャンピオンでお仕事もしてるし、大人だよな」
相づちを打つ彼も、それはわかっていると言うように肯定する言葉を返す。
「でも、まだまだ成長するんだよ。今より更に大人になるから、そしたら付き合おう。オレはそれまで待ってるから」
頭を撫でてくるのは子ども扱いの局地というかんじがして嫌だったけど、そうやってなだめられて落ち着くのも事実で。
「そうだなあ……」
泣き止んだ私は目を擦っていた両手を少しずらして、優しく微笑むキバナさんの顔を見た。
「ユウリが十八歳になったら、付き合おう」
もうすぐ十八になるという今、その出来事をしみじみと思い出した。
無理なことを言って困らせてしまった恥ずかしい記憶。
キバナさんは覚えているだろうか。十八歳を目前にした今、そんなことあったよな、なんてからかわれたら、ちょっときまりが悪い。
撮影とインタビューを終えて事務所に帰ると、優しい笑顔が出迎えてくれた。
「ユウリさん、お疲れ様です」
「あ、えと、お疲れ様です!」
飲み物を差し出してくれた彼は、今年からチャンピオン事務所配属になったスタッフだ。確か、同い年の。
去年まで何年かジムチャレンジに出場していて、今はリーグスタッフとしてバトルに関わって行くことを選んだのだと言う。
ポケモンもバトルもとても好きでこの道を選んだ彼とは話も合って、今では一番仲の良いスタッフだった。
「ユウリさん、その髪型素敵ですね」
「あ、ありがとうございますっ」
ティアラは流石に取ってもらったが、ヘアスタイルはそのままで帰ってきていた。
なんだろう。急に恥ずかしいような気持ちになる。
「あの、撮影でやってくれたんです、普段は全然こういう大人っぽい髪型しないんですけど、えっと、この私服にはちょっと合わないかな!?」
言い訳をするようになってしまって、自分でも何が言いたいのかわからない。
「いいえ! すごくかわいいと思いますよ、そのお洋服にもばっちり合います」
「……っ!」
見合わせた顔が、赤い。
彼がまばたきを何度かした後、口を開いた。
「あの、ユウリさん……今度の週末、一緒に出かけてもらえませんか」
彼との待ち合わせ場所に着いたのは、十五分も前。
髪型は、あの日褒めてもらえたアップスタイルにしてある。ヘアメイクさんほど上手くはできなかったけど、中々上手く纏まった気がする。自分が映るショーウィンドウのガラスで、前髪を直した。
サテンのプリーツワンピースは綺麗で大人っぽくて買ったのだが、家で試着して写真を撮ったっきり、着ていくような用事がなくてクローゼットに仕舞われていたものだ。
普段はしないリップも塗って、少しはかわいく見えるといいな……。なんて考えて、どきどきした。
待ち合わせ場所に来た彼と、予定していた映画に。
流行っているアクション映画で、友達も何人か話題にしていたやつだ。臨場感溢れるバトルは面白かったが、ヒロインとすれ違うシーンや親友が死んでしまうシーンではとてもつらくなってしまった。もうちょっと平和な映画の方が良かったかもしれない。
でも、そんな感想を夕飯を食べながら話すのは楽しくて。
私ならもっとちゃんと話したのに、と言うと、彼は、じゃあ自分には色々話してくださいね、なんて言うから恥ずかしくなってしまった。
次は私の選んだ映画を見る、ということになって、それもうれしい。
お互いの好きなものを段々知ってゆくのも。
少し遅くなってしまった帰り道、私は上機嫌だった。
シュートシティのマンションの、私の部屋の前。
それまで彼のことを考えていたのだが。
「ユウリ」
「キバナさん……?」
部屋の前で扉に寄りかかっている長身は、一目でそれとわかる。
「どうしたんです? 来るなら連絡してくれればよかったのに! ずっと待ってたんですか?」
言いながら、急いで鍵を開けた。
彼の高い身長は目立つ。最上階の部屋は全て角部屋で四つしかないが、同じ階の住民が出入りすれば姿が見える可能性もあるだろう。
「どうぞ」
「ありがと。お邪魔します」
キバナさんも何度も来たことのあるリビングだ。案内する、というほどのこともなく、彼は自然とソファに落ち着いた。
以前にもらった、彼の好きなメーカーのハーブティーを淹れてリビングに持って行く。彼にもらった茶葉はたくさんあるのだが、その中でも夜向けにと見繕ってくれた、カフェインが入っていないものを選んだ。
ティーカップを低いテーブルに出しながらカーペットに座り、用件を聞く。
「どうしたんです? こんな時間に」
何かあったんだろうか。仕事関係の重要な話があるとか?
「ユウリはさあ、ああいう映画は好きじゃないだろ?」
「……え?」
いきなり思ってもみなかった話題を振られて意表を突かれ、私はぽかんと間の抜けた返事をした。
「お茶ありがと。ん。いいにおい」
カップを取って少しそれを飲んでから、彼は朗らかな口調で続けた。
「バトルアクション自体はわくわくしながら見られると思うけど、結果誰か死ぬとかじゃなくて、もうちょっとコメディタッチなやつの方が好みだよな」
「あの……?」
彼の言うことは的を射ていたが、そんなことよりも。
マリィにもホップにも誰にも。今日、彼と出かけることを伝えていない。
「キバナさん、私が映画観に行ったこと、なんで知ってるんですか……?」
「んー?」
答えずにはぐらかす笑顔は、どこか違和感を含んでいて。
そう考えると、おかしなことにもうひとつ気がつく。
「……それに、ここ、エントランスも鍵がないと通れないはず」
エントランスゲートではなく、私の部屋の前で彼は待っていた。
いや……持っている。
彼はうちの鍵を持っているはずだ。
ここを契約したのはチャンピオンになってすぐ。そのときに物件を探したのも、契約を結んだのもキバナさんだ。そして、予備の鍵を預かったのも、おそらく……。
「オレはユウリのことならなんでも知ってるんだよ」
笑顔。しかし、いつもとは違う笑顔だった。人なつっこく笑う無邪気な微笑みではない、含みのある視線に射貫かれ、ぞわっと鳥肌が立つ。
反射的に身体が縮こまり、テーブルの上にあった手を引く。
その手首を掴まれた。
「っ!?」
「オレ以外の男と仲良くしてんの、オレを焦らせるためだよな?」
その口調は優しく、口元には相変わらず笑みが浮かんでいる。
それが恐ろしかった。
「キ、キバナさん、離して……」
血の気が引く。
「あと二ヶ月でオマエ、十八になるよな。……約束、忘れちゃった?」
「やく……そく……」
震える声で、その単語を、記憶を反芻する。
彼はあれを、覚えていて。
それどころか、待っていたというのか。
七年前の、ほんの子どもだった私と交わした約束を。
ソファから身を乗り出した彼が私の腰に手を回した。七年前とほぼ変わらない体格差で、為す術もなく引き寄せられる。
「オレはずっと待ってたんだよ?」
「ひ」
後ろに逃げようとするが彼は簡単には手を離してくれず、もつれたままカーペットの上に倒れた。
「あ……っ!」
その上に彼の身体が覆い被さって、不意に視界から照明の光が消える。
「好きだよ、ユウリ」
逆光になって、彼の表情は窺い知れなかった。
ユウリは怯えた顔をしていた。
他の男と出かけたことに焦って、少し怒りすぎただろうか。
事務所には盗聴器……といえば聞こえが悪いが、部屋の様子がわかるような仕掛けがいくつかある。防犯カメラのようなものだ。これもユウリの身の安全を守るためだし、現にこうやって悪い虫が付いたことを知らせてくれた。
顔色の悪くなった頬を撫でると、びくりを身を震わせる。
「ユウリ……そんな顔しないでくれよ。もう怒ってないから」
ピンク色のリップは普段はしていない。あの男のためにしたのだろうか。
それをぬぐうように薄い唇を指でなぞると、色が多少落ちたそこに口づけた。
「あ、わたし……」
続けてキスをしようとすると、胸を押して妨げられる。
「だ、だめ、それは、十一歳のときの話で……!」
「良かった。ちゃんと覚えていてくれたんだな」
「そう、だけど、あの頃は子どもで……」
「……今は、オレが好きじゃないの?」
ユウリが言葉に詰まる。
その頬を両方の掌で包み込んで、彼女の泣きそうな瞳と視線を合わせた。
「ごめんな? たくさん待たせて。不安にさせたよな?」
迷いながら何か言おうと開いた口を、唇で塞いだ。そのまま舌先を差し入れると、驚いたユウリが自分の舌で押し返そうとする。その可愛い舌を絡め取った。
「ん、む!」
舌を絡めながら抱き締める。その細い身体は相変わらず、オレの腕の中で折れそうに頼りない。それでも胸のふくらみや腰のくびれは確かに形成されていて、長い間見守ってきた彼女の変化を感じさせた。
オレと愛し合うことが、今ならできる。
唇を離すと、ユウリは酸素を求めて肩で大きく息をしていた。その身体を抱き締めたまま、ワンピースの後ろのファスナーを下ろした。
「や、待って」
「ユウリ、好きだよ」
服の中に入った掌が素肌を滑って、ホックを外した。
「違うんです! ごめんなさい! 違うの、待って!」
「違わないだろ?」
焦ったユウリが抵抗しようと腕の中で胸を押し返すが、その程度の力では何の障害にもならない。
ワンピースの肩と下着の肩紐を一緒に下ろして、首すじから胸元に唇を這わす。やわらかい素肌の滑らかな感触と良い香りに吐息が漏れた。
透けるように白い胸元には跡が目立つ。オレの付けた跡が花びらのように散るのを見て、愛おしさに胸が締め付けられた。
「キバナさん……っ」
「ユウリもオレのことが好きだって、すぐに思い出すよ」
非力な両腕を束ねて頭の上に押さえつけるのは簡単なことだ。
「やっ」
「ちょっと大人しくしててな」
左手で彼女を拘束しながら、右手のグローブを噛んで外した。
その掌で鎖骨の辺りから胸をゆっくり撫でる。乳房が露わになって、ユウリが息を飲んだ。
「だめ……っ」
掌全体で膨らみを包んで、胸の先を転がすように愛撫すると、顔が真っ赤になった。唇を噛んで耐えるのが可愛らしい。もう片方を口に含むと、背中が跳ねる。
「や、はなして!」
「ユウリ」
膝を割って身体を入れ込んで、ワンピースの中、下着の中心に指を這わす。
「や、やだ! やだあ!」
「ユウリ、大丈夫だから」
何度も肉の割れ目に沿って上下させると、下着が肌に貼り付いて、形がはっきりとわかる。徐々に反応して主張するちいさな突起を中心に、指先で弧を描いた。
「ひっ、い!」
わめいていた声色に艶めいた色が混ざって、うれしくなる。
窪みに押しつけた布がじわじわと湿って温かい。反応してくれていることに高揚して、自分の吐息が熱くなる。
「いや、さわらないで!」
下着の隙間から指を差し入れて直に触れると、すぐに指先が熱い粘液で蕩けてしまった。
粘膜を上下に擦って塗り広げると、いやらしい音が響く。身体はこわばらせたままだが、指先でそっと撫でる部分がひくつくのが可愛らしい。
「そこ、やだ、お願い……ですから……っ」
そのまま充分に潤った窪みにそっと中指の先をうずめると、それまで以上に狼狽して、抗議が嘆願に変わる。
「ごめんな? 恥ずかしいかもしんないけど、ちょっと我慢して?」
努めて優しい口調でそう言って、指をもう一本、根元まで押し込んだ。
「や、ああっ」
「ここ、内側も同じとこが気持ち良くない?」
指を曲げ、腹側を指の腹で刺激しながら少しずつ動かして、様子を窺う。
両腕を頭上に拘束され、横向きに顔を背けているユウリの、オレから見える片方の睫毛が震えた。
そのまま、くの字に曲げた指でゆっくり擦り付けると、隠しきれない甘い吐息が漏れる。
「ん、良い子」
たっぷり溢れさせて下着の色が変わる頃、指を引き抜いた。
財布から避妊具を取り出す。
「あ……だめ」
ユウリがそれに気付いて我に帰り、後退った。起き上がろうとするも、ワンピースがずり落ちて足にもつれ、カーペットとフローリングの間に尻餅を付く。
「逃げちゃだめだよ、ユウリ」
「あ、あ」
細い足首を掴んで、カーペットの上に引き戻す。どろどろになった下着と膝まで落ちて丸まっていたワンピースを取り払うと、一糸まとわぬ姿になったユウリが、怯えた顔でオレを見上げた。
「初めてはこわいよな。でも、優しくするから……」
ユウリの腰が痛くならないように、着ていたパーカーを丸めてクッション代わりに身体の下に引いた。諦めたのか、ユウリは静かに、されるがままに従った。
足を開かせて昂ぶったものを押し当てると、不安げに瞳を揺らす。その頬に掌を添えてやると、ぎゅっと目を瞑った。
体重をかけると、先端が肉を割って埋め込まれる。充分に解したつもりだが、それでも狭くてこちらも痛いくらいだ。半分くらいまでねじ込んで、そこで止まる。これ以上は怪我をさせてしまう。
「だめ、いた、い……っ」
「ユウリ、がんばったな。ここ、痛いよな。ユウリが苦しいのわかってるよ。ごめんな」
「キバナさ……んっ」
覆い被さって顔と顔を寄せ、頭を撫でてやると、堰を切ったように泣き出した。
「大丈夫だから……痛いの良くなるから。ちゃんと良くしてやるから」
繋がった部分をなぞって、反応の良い突起を、触れるか触れないかの強さで掠めた。
「は、う」
苦しそうな表情に、別の色が混ざる。そのまま指の先でゆっくりと円を描いてやると、身体が苦痛から逃れようと、必死で快感を拾って反応する。
「ユウリ、ここ気持ちいい?」
「っ、だめ」
「気持ちいいって言ってみろ。楽になるから」
迷いから視線を泳がせる、涙が滲んだ大きな瞳を覗き込んでオレを映した。
「苦しいの、いやだろ?」
「あ……う」
苦痛と快感で朦朧として、目が合っているようで合っていない。
「きもち、い」
消え入りそうな上擦った声。その言葉に、意識せずに腰が動いてしまう。
「あ、はあ」
ぴくりと眉を寄せた表情は苦痛ではなくて、安心した。
「ユウリ、良い子……。もっと言って?」
徐々に奥に進ませながら、熱を帯びた内側を擦る。その動きが気持ち良いことを覚えたようで、外側をいじる指を離しても、変わらずに声を上げ続けた。
「きもちいい、あ、だめ、これ、きもちいいよお……っ」
「っ、ユウリ」
絡みついて窄まる火照った粘膜を、何度も行き来する。その吸い付くような感触から痺れるような快感を共有していることが伝わって、愛おしさがこみ上げてくる。
「あ、キバナさ、あ、は、あ」
口を開けて必死に息をするユウリが、突く度に声を上げる。その甘く悲痛な喘ぎがもっともっと聞きたい。
中が蠢いて、誘い込む。
抜き差しを繰り返しながら、その動きに合わせてより深いところまで侵入する。
「ふ、ああ、あ」
目を見開いて上擦った声を上げるユウリからは、もう恐怖する様子は窺えない。
「ユウリ、好きだよ、ユウリ……っ」
「だめ、うあ!」
太ももを抱きかかえて折り曲げ、ぐっと奥まで突き入れると、高い声を上げた。必死に腕にしがみついてくる細い指。爪が食い込んで痛いが、跡が残るだろうと想像すると、幸せな気分になった。
内側が膨らんで強く締め付けられ、彼女の限界が近いことが伝わってくる。
「っ、出すよ……っ」
奥に叩きつけた瞬間、はじける。
眩暈がするほどの陶酔感が、全身を駆け抜ける。
「や、ああ、あ!」
愛おしいユウリの、心地良い声が響く。同時に思い切り皮膚に立てられた爪の痛み。
オレの下で震えるちいさな身体を抱き締めて、余韻を味わった。
疲れたのだろう。
引き抜いて腕の中に抱きかかえたユウリは放心してしまっていて、半分眠っているようだ。
「オマエの誕生日まであと二ヶ月か……。ちょっとフライングしちまったけど」
汗と涙で濡れて乱れた、結い上げられたブラウンの髪を解いた。髪に付いたその跡が消えるまで、ゆっくりと手櫛で梳く。
「アクセサリーはあんまり付けないって言ってたけど、指輪にしようか。ちゃんとぬいぐるみもやるよ。十八歳は特別だからな、二個でもいいだろ?」
泣き腫らして赤くなった目元で、睫毛が震える。その瞼にキスを落とした。
「愛してるよ、ユウリ」
いままでも、これからも。
ずっとずっと。