山なし落ちなし中身なし
でも空っぽの方が
君と出逢えて。
その果てに強くなれたかといえば……それは少し微妙なところだ。
『発表は以上となります。ご静聴、ありがとうございました』
マイクを手に壇上へ立つ青年が恭しく頭を下げると共に、パチパチと疎らな拍手が会場内を包みこむ。
コンサートホールにおけるスタンディングオベーションに比べれば酷く寂しい。が、この厳格さ極まる気配に支配された会場内。張り詰めた緊張の空気が、まるで目に映る重しとなって圧し掛かってくるような。
その道の権威とも呼ばれる研究者が数多く集い、意地と覇権が競い争われるこの場において、拍手が起こるということ自体がどれほど珍しく、稀有なことであるか。それはこの場に在る誰もが知るところであった。
聴衆の矢面に真っ向から晒され。質疑応答という名の異端審問を乗り越えてなお凛とした姿を崩さない。
照明に揺れる亜麻色の髪。年齢にしては少し若く見える日本人特有の容姿。
ミユキ=シロガネ
本学会における
「でぁああああ!!終わったぁーー!!」
解放を悦ぶ叫びと共に、手に持ったノートパソコンごと放り投げそうな勢いで両腕を空へと伸ばすキリー。緊張と重圧に心と体を揉みに揉まれたこの数週間。それがようやく終わりを告げたのだ。
「あーもう騒ぐ気力もねぇよ……。昨日も夜遅くまで資料直して、声枯れるまでプレゼンの練習して……喉カラッカラで喋り通したせいで唇まで割れてきた」
「こらグエン、こんなところで眠るんじゃねぇよ。ホテルまで戻りゃフカフカのベッドが待ってんだからよ」
「連れを起こさないでやってくれ……死ぬほど疲れてる」
「いやそれホントに死んでるやつだから」
「ああ寝たい……泥のように寝尽くしたい……。腹も減って倒れそうなのに眠気の方が勝ってる」
春の陽気誘う麗かな日差しが照らす廊下。会場外へと伸びるレンガ作りの道を、ゾロゾロと連なって歩くスタンフォード大学のメンバー達。
メンバーと言っても所属するラボや研究内容はそれぞれ異なり、発表自体も各個人で別々に行うため、その関係はチームというよりはライバル同士といった方が正しい。
が、学会演説という同じ艱難辛苦を乗り越えた今、皆の顔に浮かぶのは一様に安堵と満身創痍の表情だった。
「ああ、のど飴が染みる……。
「肝臓めっちゃスースーしてそう」
PCを操作しながらパワーポイントを流すだけの日本の発表とは異なり、
全身全霊のパフォーマンスを終え、ホッと息を撫でおろすのも束の間。寧ろこれからが本番だと言うように、後には教授達からの質疑応答の時間が待ち構えている。だが……
「ったく、冗談じゃねーよ。何だあの教授。研究と関係無いことばっか聞いてきやがって。
“この成果による市場末端価格の上昇は何%と見込んでいるか“?
んなこと知るかぁ!経理学者じゃねぇんだぞ俺は!?」
「実際オマエ後半声震えてたぞ」
「割と半泣きだったよな」
「思い出させんなぁ!あーもう嫌っ!これだから学会って嫌い!!」
発表や資料とは全く関係のないことを質問をされることもザラ。
それでもスタンフォードの名を背負い、研究室の看板を掲げて壇上に立つ以上は、“分からない”などと不名誉な応えを返すことなど許されない。今ある知識を総動員し是が非でも答えを絞り出すか。或いは論点を上手く擦り変え、
「そういう意味じゃ、アンタってほんと
なーにが“そのことについては次期の研究目標に定めています“よ、予定も無けりゃ碌な資料も用意できてなかった癖に。私ですらビビるような
い“ーっ、と。溢れる嫌悪感を隠しもせずぶつけて来るベツィー。本学会でも見事演説賞次席を掴んだ彼女だったが、最優秀賞を盗られたのはよっぽど悔しかったらしい。
「たしかに、最近の御行って妙に自信に溢れてると言うか……なんか思わず納得させられちゃうような雰囲気があるよね」
「
「これも“あの子”のお陰ってわけ?」
ハンっ、と心底気に入らなそうに悪態を吐きだす。かつて自ら塩を贈ってしまった相手だけに、内心複雑なようだ。
そんなベツィーの言葉をーーきっと以前の自分なら、変なプライドばかりが邪魔をして意味もなく否定しただろう言葉を、「ああ、そうだ」なんて。驚くほど
それは紛れもない事実だから。
天才達に追いつくため我武者羅なまでに努力を続けてきた過去。勉学という己に許されたただ一つの武器に縋り、盲信にも似た労苦を重ねながら……けれど、ふとした時。“それが本当に自分の望んだ
きっと気づいていたのだろう。
それが決して自分の身の丈に合う生き方などではないこと。擦り切れる心の悲鳴にも耳を塞ぎ、一人孤独な道を歩み続けたところでーーその先に待つのは避けようの無い自滅だけだということも。
それでも、一度歩み出した足は止めることはできなくて。弱い自分を隠すため、必死に築きあげてきた
本当は不安に押し潰されそうだった心。いつ折れるかも分からない自信を抱えてまま、たった一人歩いていくしかないのだと……ずっとそう思い続けていた。
ああ、けれど
『そんな貴方の姿に、救われていた人がいたんです』
そんな自分でも。こんな生き方でもいいのだと、認めてくれた人がいたのだ。
この世界で出逢えた、
母に捨てられた弱い己を認められず。矛盾に震える心を独り励ますしかなかった自分にとって……その存在がどれほど嬉しく、心救われたことか。
たとえ一人で渡るには辛い道。
それでも二人ならばきっと、迷わずに歩んでいけると。
そうして迎えた今という時。
目の前に広がる世界は以前よりも遥かに広く、眩いまでに輝いて見えた。
「あ“ーーヤダヤダ、これだから童貞明けの男ってのはキモいのよ。やれ一皮剥けただの、やれ世界が広がって見えるだの!思い上がりも甚だしいわっ!」
ガァーッと、憎さ余って憤怒100倍とばかりに掴みかかって来るベツィー。どぅどぅとエイスに組み伏せられながら、尚も唾を飛ばして来る。
因みにこの3年間で一番に成長したのは誰かと言えば、間違いなく目の前の
何度も失神を繰り返し、時に胃液の全てを吐き出してまで、少しづつ自信を取り戻していった彼は、幼少期より植え付けられてきたトラウマを遂に乗り越えて、今では面と向かってベツィーと会話することも出来ている。
本人曰く、『ミユキに割とぞんざいに扱われてる姿見てたら、なんか勇気出てきた』と。
『それそれでムカつく』とは対するベツィーの談。今もこうして直に触れても蕁麻疹が出るくらいに留まっている。
「けど実際ビビったよなぁ、シロガネの彼女には。いきなり顔引っ叩くんだもんよ」
「あー……うん確かに。結局何だったの?アレって」
「いや、単に激励に来てくれただけで」
「なになに、何の話?」
「いや、発表の前にさ」
それは壇上に立つおよそ20分前。
長い大学生活を通じて培って来た己が実力の全てを披露する一世一代の舞台。それを間近にまで控えていながら、御行の持つPCはある重大なトラブルに見舞われていた。会場側が用意した機材との
「流石のミユキも、あん時は青い顔してたよな」
「昨日の時点まではちゃんと使えたんだろ?だったらPC側の問題じゃねぇか。メーカー訴えろ、高額訴訟で起訴して勝てるぞ」
「うーん。この訴訟大国」
「で、どうするかって悩んでた時に丁度ミユキの彼女が訪ねてきてよ。流石に取り込み中だから帰ってもらおうとしたら、ミユキの所まで近づくや否や、いきなり両手でパンッ!て」
突然響きわたる大きな音や突飛な行動に、他の出演者、会場設営スタッフまで驚き振り返っていたほどだ。
「こちとら緊張で一杯一杯なのに、いったい何の修羅場が始まったのかと思ったよな……」
「ありゃSUMOUのツッパリだぜ。あれ?ネコダマシだったっけ?」
「そんな力一杯に叩かれちゃいない。まあ……予想以上に大きな音が出たのは確かだが」
当時のことは鮮明に覚えている。
発表までおよそ数分。しかし用意していた資料の殆どが使えなくなった状況に、外面だけは取り繕っていたが……正直、かなり泡を食っていたというのが本音だ。
それが急遽使えないとなれば、そもそもの筋書きを……発表の根底である台本そのものを大きく修正する必要がある。
この学へ送り出してくれた恩師のためにも失敗など決して許されない。しかし発表までの僅か十数分でそんな大それた改変を行えるのか。資料に穴を開けたまま、かの教授達を納得させ得る論舌を通すことができるのか。胸の奥底から滂沱の如く押し寄せてくる焦りと不安。
発表の言葉選びはこれで良いか。表情や手の振り方に間違いは無いか。台本を見直すうちに、次第にそんな小さな一つ一つのことまで気になり始めて。
心臓の音ばかりが喧しく打ち鳴り、正直、心配する周り声など一切耳に入ってはこなかった。
ああ、そんな時だ。
パンッ!と。
響く大きな音と共に、両頬を打つ衝撃。
目の前で揺れる見知った金砂の髪。視界いっぱいを覆う、サファイアのように美しい
叩かれてヒリヒリと熱を帯びる頬。しかしだからこそ、包み込むように添えられた彼女の手の
『……』
真っ直ぐに此方を見つめたまま顔を寄せて来る彼女。
頬に息が触れるほどの距離。 2人だけに分かる日本語で、小さく。それでもハッキリと。
『ーー私だけを見てください。
いつもみたいに。
私だけに。
どうかカッコいいところを見せてください』
響く声が風となって胸の奥に吹き通る。
ああ。その言葉だけで。心に蔓延ってた迷いの霧は、嘘のように消え去っていた。
ーーそうだ。資料の穴などどうでもいい。
たとえ誰に見ていられようと。
全ては
君だけの前で、格好いい己で在ろう。
そう心に決めてからの時間は、矢のよう速さで流れていった。難しい顔を並べる研究者達の姿も一切目には入らない。その向こう、壁際で微笑む彼女へと届くよう声を張り上げるうち、気がつけば発表は終わっており、まばらな拍手が自分を現実へと引き戻した。
だから最優秀賞と言われても、あまり実感は無く……今日という日の成果も、全ては彼女がいなければ叶わないことだったのだ。
だが、そんな事情も知らない友人達は……。
「いやー美人なのは憧れるけど、あれだけ性格キツイのはちょっとなぁ」
「昔は嫉妬したけど、今は同情と半々」
「ありゃ絶対将来尻に敷かれるタイプだぜ」
ケッケッケと、何が面白いのかやたら上機嫌に寄って来るキリー。憐憫を宿すニヤついた瞳が腹立たしかった。
「あのな、何度も言ってるが早坂は」
「でも確かに、ちょっと冷たい感じがあるかなぁ。御行の彼女さんって」
「なっ、エイスまで!?」
この集まりの中でただ一人残された良心。普段なら絶対に人の悪口など言わないであろうエイスの言葉に耳を疑う。
「いや、すごく良い人だとは思うよ?でもなんか逆に良い人過ぎるというか、ずっと本音を隠してるというか……。普通に話してる時にも、なんか壁を感じちゃうんだよね」
「
「ぐっ、ぬ……」
気がつけば四面楚歌。まるで彼女一人が悪者のような扱いに、信じられないと驚愕する。
昔と変わらず、人前では仮面を被る彼女であることは知っていたけれど、まさかその様な評価に固まっていたなんて。
彼氏としてそんな現状に黙っていられる筈はなく、その後も幾度となく弁解と反論の声を挙げた白銀。
が、しかしベツィーを除き誰一人として早坂の本性を知らない彼らは、どれだけ言っても『はいはい』『惚気おつ』と、まともに取り合ってはくれないのだった。
「――と。そういうことがあってだな。早坂」
「……」
数日ぶりに帰ってきた我が家。
学会期間中はずっと近所のホテルに缶詰め状態であり、ルームサービス等の環境は充実してはいたものの、やはり家の安心感というものには敵わない。
疲れを癒すように、深くリビングのソファに腰かけながら、腕の中……今は膝の上に座り、自分の胸を背枕とするように身を預ける彼女へと話かける。
「早坂?」
「………」
がしかし一向にかえって来ない返事。友人たちの言葉に怒ったのか、或いはそれを弁明できない不甲斐ない彼氏に失望したか。不安になって覗き込めば……まるでぷくっと頬を膨らませる子供のように、無言で此方を見つめ返す彼女と目があった。
……ああ
「――と、いうことがあってだな。愛」
「はい♪」
一転、ふわりと花のような笑顔を咲かせ、抱きついていくる彼女。
会場内で見た……普段、彼女が他所行きで見せる凛とした佇まいからは遠くかけ離れ、生来の甘えたがりを遺憾無く解放した姿。昔から母親にはべったりだったというけれど、恋人となってからの
頬や首元を擽る金砂の髪。腕の中で抱きしめられてなお、まるで甘える猫のようにスリスリと。益々身を摺り寄せてくる彼女に「いや、はいじゃなくて」というツッコミも力なく流されてしまった。
胸に頬をうずめ、求めるような視線に応えて髪を撫でれば、心地よさそうに目を細める。かと思えば手の甲へと頬を摺り寄せ、愛おしそうに何度もキスを落とし――
嗚呼、そのギャップに。
まだ夕方時、日の高い時間。疲れきった体でなければ迷わず押し倒していたであろうと確信するほどに。
今はその逆。自分の方がソファへと押し倒され、学会期間中に
そう。彼女がこんな姿を見せてくれるのは、こうして二人きりで居る時だけ。
以前のように複数の仮面を使い分けることこそ無くなったが、人目に触れる際は、常に理性と演技の仮面を被っている彼女。その振る舞いは近従時代、四宮に仕えていた頃に見せていた淡白かつ冷ややかな雰囲気に似ている。
その徹底ぶりはこの学会期間中、ホテルで一緒に過ごしていた数週間においても変わらず、絶対に
元々恥ずかしがりやで、自分と同じく人目を気にしがちな彼女だからこそ、こんな
こんなにも可愛く、世界一魅力的ともいえる彼女を悪く言われて黙っていられる彼氏など居ない。叶うことなら外の世界でも思いっきり見せつけて、この愛おしく聡明な恋人のことを心ゆく迄自慢し尽くしたい想いだった。
(ああ……結局のところは
なんだかんだと語りつつ、要は自分が我慢できないだけなのだ。
ようやっと自覚する己の本心。
そう。本当はもっと自慢したいのだ。
外でだってずっとイチャイチャしていたいのだ。
世界の中心で君が好きだと叫びたくて仕方がないのだ。
いかに自分が阿呆なことを宣っているかも自覚している。自分自身、そんな浮かれきった姿を晒せば今まで築いてきた“研究室首席”としての
が、それでも構わない。止まらない。
この果てなく、儘ならない想いこそが愛であろうとーー
「
「っ…!」
ガーン、と。にべもなく飛んできた拒絶の意に、頭中にショックの鐘が鳴り響く。
何故だ。どうしてなのだ。
恥ずかしがる気持ちは分かる。彼女が自分の
が、しかしだ。こうまで頑なに拒絶されてしまうと……自分と恋人である姿を見られるのはそんなに嫌なのだろうかと、不安な気持ちも湧いて来る。
「違いますよ」
目に見えてどんよりと気落ちしてしまった自分の姿に、クスリと微笑みながら身を寄せてくる彼女。
ソファに押し倒され、天井を見上げる自分の両頬に手を添えながら、ゆっくりと。深く、唇を重ねる。
「……ちゅ……くちゅ……ん、んん…、」
熱く。甘えるような、ねだるような。時間の感覚さえも忘れてしまいそうな程に熱く深い口付け。
心の壁さえも溶かしきり、一つになることを望むような。
唇を離す頃には、銀色に引いた糸が名残惜しそうに二人の唇を繋いでいて。
視界いっぱいに広がる彼女の貌。愛おしさと、幸福に蕩け切った熱く潤んだ瞳が、自分だけを映し出している。
「ふふ…やっぱり」
「…?」
「御行くんは気づいてないかもしれないけど……キスをした後の
それは
自分の表情など分からないのだから、もしかしたら彼女の言う通りの顔を浮かべているのかもしれない。
「キスの時だけじゃない。こうして頭を撫でてくれる時も、抱きしめてくれる時だって。
もう何度も見ている筈なのに、鼓動が鳴り止まないくらい格好いい顔をしていて……。
それを他の誰にも見て欲しくない。
ずっと独り占めにしていたいって思うのは……その。いけない……ことですか?」
どこか不安げな潤んだ瞳。請うような上目遣いで見つめてくる彼女にまたクラリと意識が遠のく。
ああ、たしかに……自分だって、
こんな彼女の姿や表情を、
「私自身も、
ずっと貴方だけに……独り占めにされていたい」
放してほしくないと、そうねだるように首後ろに回した腕にぎゅっと力込める彼女。青い瞳に映るのは、変わらず自分だけ。
キリー達の風評に腹を立てた自分だけれど、きっと愛の方はそんなこと気にも留めていないのだろう。
全ては彼女自身が学会前に語っていた通り。
誰にどのような評価を受けようとも関係ない。
全ては
独占欲に共依存。傍目からすればとても印象の良い言葉には聞こえない。
ああ、けれどそれも……
「そういう風に思ってしまうのは……私、だけですか?」
「そんなわけあるか」
不安を否定するように強く抱きしめては、そのまま彼女をソファへと押し倒す。
突然の行動に驚いた様子もなく、寧ろ嬉しそうに頬を綻ばせては、またキスを捧げてくる彼女。
今度はより長く、より深く繋がれるように。呼吸さえも忘れたキスは、深い水底へと溺れていくようでもある。それでも彼女とならば、たとえどこに行き着こうとも恐れはなかった。
独占することで独占されたい。
独占されることで独占したいなんて、子供じみた願望。
それでも……2人だけのこの世界ならば許されるだろうと
君と出逢えて、そうして強くなれたかといえば、少し微妙なところだ。
外面に見せる自分は強くなっていくけれど、君の前では弱いまま……いいや、以前よりもずっと、お互いに甘えたがりになってしまったように思う。
とても強くなれたように思うし、同じように弱くなったとも思う。
けれどそれはとても
こんな喜びを。こんな幸福を知ってしまった以上、もう以前の暮らしに戻ることなんてできない。
君と在ることへの幸福が積もるごとに、失うことへの恐怖もまた増していく。
――それでいいんじゃないでしょうか、と。彼女は微笑む。
誰もがいつでも、強く居られるわけじゃない。
弱くなったのならその分強く。強くなったのならその分弱く。
ただ互いに
出会えたことに、何の変化も見い出せなかったら
別れを迎えて、何の傷みも感じないのだとしたら
それはきっと出会った事の意味さえ、無いことと同じだから。
「だからもっと甘えてください。
もっと、もっと、甘えさせてください。」
同じくらい強く、同じくらい弱くなろう
それはどちらも、君と出逢えたことで見つけた宝物だから
ただずっと、この手を離さないでいよう
*あとがき*
『依存せずして何が愛か』
――スマタイイ福音書 85節19章