大狼のリーダーであるフェリルは、新入りを可愛がる仲間達の様子に自然と微笑み、物思いに耽っていた。
「お姉ちゃん凄い!!!」このランカの一言で、我らが誇り高き大狼の群れに加えることとなったラーテルの穴蜜テル。他種族を迎え入れるのは初めてのことだ。なんともポンコツな奴で、ヘマをすることが多い。ただ、リーダーの私を除けば唯一のメスということもあるのだろうが、群れの者達は皆優しく接してくれている。テルが加わってからまだ二週間ほどだが、こうして見るともうすっかり馴染んでいるようだ。あの遠慮を知らない、それでいて毒のない無邪気な性格に、少なからず私も魅了されている。
「よし、今日もテルに飯を作ってもらう。」
皆の表情がギクッとこわばる。
「わーーい!」
呼ばれた当の本人だけが嬉しそうに手を上げた。
「ボ、ボス…さすがに今日は…。」
「そ、そうですよ!3日連続はさすがに…」
顔をひきつらせながら仲間が抗議する。まあ、無理もない。初日のテルの料理は食べるのもはばかるほどに酷いものだった。
「3度目の正直と言うだろ?それに、料理は継続しないと上手くならない。私の群れに入るからには、こういう当番をしっかりこなしてもらわないといけないんだ」
「ですが…」
「大丈夫さ。一昨日に比べれば昨日の料理はましだった。」
「それは確かに…」
だが昨日、仲間に教えてもらいながら作らせた料理は普通に及第点のものだった。
「なるほど。確かに昨日教えた料理は、作業工程も簡単ですし良いかもしれません。」
「そうだな。」
「確かに。俺も賛成だ。」
口々にそうかと賛同の声が上がる。こうして、テルには昨日と同じものを作ってもらうことにした。彼女自身が、もう完璧に作業工程は覚えたと言うので、彼女一人にまかせたのだが…
「見た目からしてアウトだな…」
「ボス!料理できましたー!」可愛いらしい声でテルは報告してきたが、今日も盛大に失敗したようだ。
「ボ、ボス…」
仲間達の顔から血の気が引いた。
「そうだな…これはさすがに…」
「皆さんのために僕、頑張って作ったので遠慮なく食べてください!僕は皆さんの力になれるのが嬉しいんです!エヘヘ」
そんな周りの温度などつゆ知らず、テルは嬉しそうに小さな尻尾をブンブン振っている。いかん、どうしてもランカと重なる…。こんなに心を込めて料理を作ってくれたテルを悲しませたくない…。
「私は…食うぞ…」
「お、俺も食べるっす!!」
「ウッ…」
皆、想いは一緒のようで、一口が重苦しくも頑張って胃袋に納めていく。
ただ一人、テルだけは自らの料理を美味しそうにバクバクと平らげていた。