あの夜。
結局司令は3時間も私の身体を弄って満足したのか、抱き締めたまま寝てしまった。
翌朝、目を覚ました私は寝たままの司令を放置し逃げてきたのだ。
……だから、弄られて身体に残った熱は忘れる事にした。
「ねえ、不知火、眠そうだけど大丈夫?」
「大丈夫です。昨日は少し眠りが浅かったもので」
「結局どうしてたの?戻って来なかったじゃない」
「司令と遅くまで仕事をした後、寝落ちしてしまいまして。提督の私室でソファーを借りて寝ていました」
「あら〜、一緒に寝たんじゃないの?」
「司令とはそういう関係ではありませんので……シャワー浴びてきます」
「行ってらっしゃーい」
自室に逃げ込んだ後、扉の音に気づいて起きてきた陽炎と会話を交わす。
結局私は昨日の出来事を司令の「気の迷い」と言う事にして忘れることにした。嘘を付くのは少し心苦しいが、真実を喋ることで艦隊の連携・日常が崩れるぐらいなら何もしない方がいい……
更衣室に入り、服を脱いで個室のシャワールームに入る。カランを回し、頭から湯を被る。
「何故……司令はあんな事を」
いくら考えても分からない。優しかった司令が何故あの様に豹変してしまったのか。5年間の私の接し方が悪かったのか……
これでも司令とは色々あった。互いに命を預けて戦うこともあったし、信頼していた。
元を言えば欲望をぶつけて来た司令が一番の原因なのだから、私は悪くない。
それでも考えずには居られなかった。
涙が止まらなかった。
「不知火、工廠の抜き打ち検査の報告書だ。大本営に廻してくれ」
昼過ぎ。食事を終えて執務室に戻ると、検査を終えて軍服に着替えた司令が居てそういった。
3ヶ月前、砲の暴発が多発し、なんでもないはずの戦闘で中大破が続出した。異常事態と判断した司令と私が調査したところ、一部の整備工による作業短絡が原因と判明した。
司令は整備工に対して減給処分と基礎訓練校への2ヶ月再訓練を命じたが、彼らは先日帰ってきたばかりなのだ。
「了解しました」
司令の顔を見ると手が震えるが、必死に抑えて表面上は何も無かったかのように取り繕う。
「後、書類を出したら俺の部屋に来るんだ。いいな?」
「……了解しました」
「来たか……こっちに」
司令私室に入ると、窓際の椅子に司令が座っていた。ゆっくりと近付くと、手を掴まれて私は司令にのしかかるように倒れ込んだ。
「!?ちょっと司令何を……っ」
司令の右手が私の腰に回った。逃げようとしたが昨日のことを思い出したせいか、足が震えて動けない。
「……司令、お願いします。やめて……」
途端に押し寄せる恐怖心。震えが止まらない。涙声で懇願するが、彼の手は止まらない。
「へへ……」
左手がするりと臀部を撫でる。触られたところからぞわぞわと悪寒が走り、呼吸がしにくくなる……
「いい尻だな……いつまでも触っていたくなる」
司令の手は止まらない。感触を味わうかの様に揉まれる臀部。指先が沈む度に気持ち悪さが膨らむ。
「こっちを向け、不知火」
後頭部に手が添えられ、司令の方を向かされる。途端に迫る唇に、顔を背けて逃げるが
「イヤぁ……んむううう」
司令の舌が入ってくる。ぬとぬととした触感に押し寄せてくる吐き気。こんな形で司令とはキスしたく無かったのに……
(もっとロマンチックにしたかった……)
心の奥底に隠していた夢。もう叶うことは無い。
ガラガラと崩れていく音がした……