人類の大半が女性になった世界でも、Hをするのは大変なんです。 作:冴木凛
01 始まり
いつからこんな世界になったのだろう。
今の世の中、生まれてくる子供の大半が女である。原因も分からないまま時は流れ、人類は今その数を激減させてしまっていた。
おかげで学校は、クラスに男子一人という状況がほとんどだ。下手したら男子がいないクラスもある。生徒も教師も、おまけに事務員まで、ほとんどが女性。
なら俺のような「男」は、どこへ行ってもモテモテハーレム。この世に現れたまさにパラダイス!
いやいや……そう、では全く無いのだ。
※ ※
「だ、だめよ、こんなところじゃ」
「いいだろ。我慢できないんだよ」
「待って……」
女の制止も聞かずに男は女に後ろを向かせると、スカートをめくりあげショーツを無理やり脱がせ始めた。
「もう、こんなにびしょびしょに濡れてるじゃないか」
「恥ずかしいから……言わないでよ……」
男は興奮した様子で自分のズボンを下ろし、取り出したイチモツを女の秘部へと当てる。
「あんっ」
思わず漏れた女の声に、男は興奮を隠せない。
「い、入れるぞ!」
「や、優しくして……」
硬くなったイチモツが、女の濡れそぼった秘部に食い込んでいく。ぬちょっという卑猥な音とともに、イチモツが女の秘部の奥まで入り込んだ。
「あ、ああっ、当たってる……ジュディの子宮の入り口に、タツヤのおちんちんが、当たってるっ」
女の卑猥な言葉に、男は我慢できず腰を振り出した。
「あっ、あっ、あっ」
女の嬌声が倉庫の中に響き渡る。荒っぽい動きがさらに激しくなり、男はふっふっふっという息を漏らしながら、イチモツの挿入と抜去を繰り返した。
「あっ、だめ、へ、変に、なっちゃう」
「お前のオマンコ、締まりが、最高だな!」
「あ、いやっ、来るっ、来ちゃうっ、ああっ」
「お、俺もイキそうだ」
「出して! ジュディの中に、いっぱい出して! タツヤの精液を、ジュディにいっぱいちょうだいっ」
「だ、出すぞっ」
その声とともに、男の腰がそれまでとは違う動きになる。突き出した男の腰に、女がお尻を震わせた。
「あ、ああっ、いっぱい、いっぱい出てるっ。ああああ……」
しばらく、二人の絶頂の声が続く。それが終わると男は、女の背中をきつく抱きしめた。
「こ、これでお前は、俺のパートナーだな」
満足そうな声でそう言うと、男はゆっくりと、自分のイチモツを女の秘部から引き抜いた。壁に手をついたまま、女が振り向く。そして、うっすらと笑った。
「ええぇ、それはどう、かなぁ」
それを見た男の表情が、この世の終わりを見たような絶望と驚愕を帯びたものに変わる。
「そ、そんな……ちゃ、ちゃんと調べたはずなのにっ。うそ、うそだろ……」
そして、女を強引に床に抑え込んだ。
「出せ、出せよ! お前のオマンコから、俺の精液、出せよ!」
指を女の秘部に突っ込もうとして、突然悲鳴を上げる。
「が、があ、い、いてえ」
自分の股間を押さえて男が床を転げまわるのをよそに、女はゆっくりと立ち上がり、冷たい視線を男へと落とした。
「サンキュー、タツヤ。エンド、バァイ♪」
※ ※
今日も教室には、黄色く姦しい声が響き渡っている。見渡す限り、女だらけだった。いやこの学校だけじゃない。今の世の中、そうなっている。しかしこれはもう、仕方がないことなのだ。
――いつからそうなってしまったのだろう。
俺はそんなことを思いながら、自分の席に座り、天井を見上げていた。
と、ポニーテールを揺らしながら教室に入ってくる一人の少女が視界の端に映った。
「ねえ、レント、聞いた? 2組のタツヤ、Qに引っ掛かったんだって! 女になったあいつ、意外とかわいいの。あいつがよ? マジ、ちょ~うける~」
タツヤは、脳筋タイプの男で、性格は荒っぽく終始偉そうにしている奴だったので、俺は奴とは距離を置いていた。そのタツヤがどうなろうが、俺の知ったことではない。
それよりも……明日は我が身というだけに、正直笑う気にはなれなかった。
一学期も終わりに近づいている。一年生と言えど、そろそろ本格的に『パートナー』を見つけていかなければならない時期だ。優秀な連中の中にはもうパートナーを獲得している者もいる。ひどいものだと、もう『二人目』がいるやつもいた。タツヤは、焦ったのだろう。可哀想とは思わないが。
「誰が『Q』だったんだ?」
「2組のジュディっていう子。ハーフなのよ。いいなぁ」
痛みの目立つポニーテールの黒髪をいじりながら、サアヤはうらやまし気にそう漏らした。
「お前、男になりたいのか? というか、お前、Qなのか?」
「ば、馬鹿言ってんじゃないわよ! 何でそうなるのよ!」
「だって、うらやましいんだろ?」
「男になったのが羨ましいんじゃなくて、ハーフがうらやましいの! 顔の作りが違うんだよぉ。美人じゃないし、かわいくもないし、女っぽくもないじゃん、アタシ。所詮モブだからさ~」
なんだか悟りきったセリフのようではあったが、レントには言葉通りに聞こえなかった。まあ、女性には女性の悩みがあるのだろう。
確かに瑞雲サアヤは彼女自身の言う通り、絶世の美少女という訳でも、超かわいいというわけでもない。胸が大きいわけでも、やはりない。細い垂れ目をした、どこにでもいそうな、中肉中背の、明るいが少し口の悪いだけの女の子だった。
「女っぽくして、露出高くして、イケメンの前で腰振ってきたらどうだ? パートナーにしてもらえるかもだぜ」
「はあ? そんなビッチ、Qと思われて避けられるに決まってんじゃん。アンタ馬鹿?」
サアヤとの付き合いが長いだけに、本当にバカにしたような口調でそう言われても、毛ほども思わないのだが、客観的に聞いてみると、サアヤの『馬鹿にする口調』にはなかなかの破壊力がある。
「じゃあ、俺とするか」
一緒に帰るか、くらいの口調で言った俺の言葉に、サアヤは一瞬動きを止めた。
「何を」
「Hを」
二人の間にしばらくの沈黙が流れる。十秒近く経った後、ようやくその言葉の意味がサアヤの言語中枢でイメージへと変換され、顔がみるみると真っ赤に染まっていった。
「な、なんでアンタと『パートナー』にならなきゃいけないのよ」
「冗談だよ」
つっかかってきたサアヤに、しかしあっさりとそう返す。それを聞いたサアヤが、今度は親の敵と言わんばかりに俺を睨みつけた。顔色が別の赤さへと変わっていく。
「バカ!」
ドカーンと爆発した一言を残し、サアヤはそそくさと教室から出て行ってしまった。
「なんだ、冗談の分からない奴だな」
何事も無かったように、座ったまま両手を頭の後ろで組んで、俺はまた天井を見上げた。
そう、この世には二種類の女がいるのだ。
本物の女と、偽物の女。
偽物の女は『Q』と呼ばれていた。外見も生態も全く女と変わらない。しかし、Qの子宮が男の精液で満たされた時、Qはその男の『性別』を『奪う』のだ……
『男性』を奪われた男は身体が女体化し、『Q』へと変わる。そしてそれまでQだった者は、身体が『男性』のものに変わり、『男』として生活を始める。
世の中にどれくらいのQがいるのか分からない。このクラスに何人Qがいるのか、誰がQなのか、誰にも分からない。
言えることといえば……自分がいつQになってもおかしくなく、そして、自分がQに変わってしまったとしても、世の中は変わらない、ということだけだった。