人類の大半が女性になった世界でも、Hをするのは大変なんです。 作:冴木凛
まずは一番軽い連絡、つまり雲雀シエルへ落とし物の連絡をする。
『初めまして、一年の深山レントと申します。今日、ぶつかってしまってすみませんでした。お怪我はなかったですか。その時に、紫色の万年筆を拾いました。雲雀先輩のものではないでしょうか。心当たりがある場合はご連絡ください』
ちょっと硬すぎるか? そう思いつつも、学内メールの送信ボタンを押す。
さてその次は……ヤヨイさん、かな。
『お話したいことがあります。会えませんか。返事待ってます』
文面が深刻過ぎて笑えるが、まあ、いいか。
とりあえずその二つを送り終え、何か飲もうとキッチンに行くと、端末の電子音が鳴った。
早いな……
端末を見てみると、シエルからの返事だった。メールを開いてみる。
『初めまして、レントさん。あ、でも、もう会ってるのだから、初めてじゃないですね。連絡ありがとう。どこに落としたのか分からなくて探していたので、とてもうれしいです。万年筆は、明日、レントさんの教室まで取りに行くので、持ってきてもらえますか。お願いします。』
随分と丁寧な人だと思いつつ、俺はそれへの返事を書く。
『分かりました。では明日、持って行きます。こちらこそお願いします』
よし、これでとりあえず一件終わり……そう思っていたら、再び返事が返ってきた。送り主はシエルである。
『ご丁寧にありがとう。こうやってレントさんからメールをもらうと、ぶつかった時のことを思い出します。痛くはなかったですか? 気が動転してしまっていたので、謝罪もできずにごめんなさい』
こちらの心配をしてくれている。あの時の印象とは違い、明るそうな人のようだ。
『全然大丈夫です。先輩に怪我が無かったか心配でした』
『心配してくれてありがとう。とてもうれしいです。あ、でも』
そこでメールが切れている。続きがあるのかとしばらく待ったが、そうではないらしい。
『どうかしましたか?』
『いえ、大丈夫です。いえ、大丈夫じゃないかもしれません。思い出した途端、レントさんに触れた肩、握られた腕が、熱く火照ってきて、少し苦しいです』
メールを見て目が点になった。この人は、何を書いているのだろう。何か……何かが違う。相手の名前を確認してみたが、確かに『雲雀シエル』と書いてある。
サブウィンドウで生徒情報を確認してみたが、登録してある写真は、階段の踊り場でぶつかった、長い黒髪をした少し重たい雰囲気のあの女性のものだ。
『あの、どこか怪我したのですか?』
『いえ、怪我ではないです。体が火照ってるだけで、手が止まらないです』
……何、これ。
唖然としてしまって、何をどう返せばいいのか分からない。その間にもどんどんとメッセージが送られてくる。
『シエルの、恥ずかしいアソコを、レントさんが握ってくれた手で触ると、電気が走る様に痺れます』
……ちょ
『シエルは今、イケないことをしています。まるでレントさんが触ってくれてるようです。レントさんを思い出して、シエルは今、オナニーしています』
……待って
『手が、止まりません。クリトリスをいじる手が止まらないんです。レントさんが触ってると思うと、止まらないんです』
……いや
『あ、ああ、いきそうです。シエルはいけない子です。シエルの恥ずかしい姿、見てくれますか?』
そこで少し時間が空き、そして、写真が送られてきた。そこには、生徒情報に載っていた写真の女性が、制服姿のスカートをまくり上げたあられもない姿……ピンク色のオマンコを愛液でべとべとにし、中指でクリトリスをいじっている姿が写っていた。処理しているのだろうか、毛は生えていない。
目が……今日会った時は眠そうな半目だったものが、今は大きく見開かれ、切なそうに歪んでいる。
『シエルの恥ずかしいオナニー姿です。レントさんも、私の姿を見て、オナニーしてくれますか? 私の恥ずかしい姿をオカズにしてくれますか?』
これは想定外だ……どうしたらいいか、困ってしまう。
『動画の方がいいですか?』
『待ってください、先輩。どういうつもりですか?』
素直にそう送った。そして、そう送ってから、もう少しソフトに言うんだったと後悔した。シエルからのメール送信が止まる。まずかったかと思っていると、一文が送られてきた。
『ごめんなさい、許して』
なんだか、やばそうな予感しかしない。
『気にしてません。大丈夫です。大丈夫ですよ。ビックリしただけです』
そう送り返したのだが、
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい』
と返ってきた。句読点無し。やばさマックスか?
『謝らないでください。大丈夫です』
この場を収めないと……とりあえず思いついた言葉だけを送った。しかし、次にシエルから送られてきたメールには、『ごめんなさい』という言葉が何行にも渡って書かれていた。
それに返信しようとして、またメールが来る。そして次々と。それらすべてが『ごめんなさい』で埋め尽くされている……これ、どうしよう。
サアヤに聞こうか、そう思ってから思い留まる。そして俺は覚悟を決めた。
『先輩、怒ってないですから! というか、先輩がエッチ過ぎて興奮しました!』
そう書いて送信する。と、シエルからの『ごめんなさい』メールが止まった。しばらくの無音の時間。そしてメール着信の音。メールを見ると、
『ほんとうですか?』
と書いてあった。
……怖い、怖すぎる。
『ほんとうです、ほんとうです。こんなに興奮していいのかな、なんて思うくらいです』
なんだか、どんどん深みにはまっていってるような……さすがに不安を感じたが、また着信音が鳴る。
『うれしいです。レントさんの優しい言葉を読んで、シエルのエッチなオマンコから、お汁があふれてきて止まりません。音も聞いてください』
音声ファイルが……再生すると、くちゅくちゅという卑猥な音が響いた。
『興奮しましたか? シエルのイケないオマンコの音をオカズにしてくれてますか?』
そして更なるメール。しかし、事ここにきて、雲雀シエルに対して興味がわいてきた。あの雰囲気から想像できない、卑猥なメール……一体どんな人なのだろう。
『はい、興奮が止まりません。先輩、よかったら一度二人でお会いしませんか?』
Qかもしれない。五年生か……ソフィーアなら何か知っているだろうか。
そんな風に考えていたのだが、しかしそれ以降、シエルのメールはもう来なくなってしまった。