人類の大半が女性になった世界でも、Hをするのは大変なんです。 作:冴木凛
俺の手を握るシエルの白い手は、カタカタと震えていた。
「できません」
しかし俺がそう答えると、白い手の震えがピタッと止まる。次の瞬間、シエルの爪が俺の手に食い込んだ。皮膚が裂け、血がにじむ。それが飾り気のないシエルの爪に紅い模様を作っていった。
しばらく、シエルの爪は俺の手に食い込んだままだった。しかし俺はその爪を振りほどくことも、かと言って声を掛けることもせず、じっと待ち続ける。
と、ブランケットが持ち上がった。十九歳にしては少し幼さが残った顔。あふれた涙で頬が濡れている。悲痛な様子で見開かれた二重の目の奥で、澱んだ色の瞳がじっと俺を覗き見ていた。
「誤解しないでください。シエルさんが嫌いなわけじゃないですよ。だって、俺たちまだ知り合ったばかりで、俺、シエルさんのこと何も知らないです。俺、俺のことを好きになってくれて、俺も好きになった人としか、そういうこと、したくないんです」
ブランケットの中、シエルに向けて笑顔を見せながら、俺はできるだけ優しくそう伝える。するとシエルは、俺の手に食い込んだ爪をおそるおそる離した。
そこにできた傷跡を見て、そして再び俺の顔を見るシエル。俺はもう一度微笑んだ。
突然シエルがベッドにうずくまる。暫くそうしたあと、ブランケットをはねのけ、部屋の隅に顔を向けた。だぶだぶの長いTシャツの裾から白い脚が出ているが……下は何か履いているのだろうか。まるで平安貴族かと言わんばかりに長く伸びた黒い髪の毛が、背中を覆っていた。
壁に向かってまたメールを打ち込んでいるようだ。着信音が鳴った。
『なぜ、怒らないんですか』
「えーっと、女性に対しては怒りませんよ」
シエルの背中に向けてそう返事をした。話すのも、何か奇妙な感じがする。しかも相変わらず返事はメールだった。
『ごめんなさい。痛かったでしょう』
「平気ですよ。言うほど血は出てませんし」
『どうしてそんなに優しいんですか』
「んー、どうでしょ。自分のこと、そんなに優しいとは思わないですけど」
そこまで答えると、シエルはしばらく固まっていた。そしてメールを打ちだしたが、今回は随分と長い間……書いては消しの繰り返しだったようだ。
そして着信音が鳴る。
『好きです 好きです シエルはレントさんのこと 大好きです どうしようもないくらい好きです』
「いや、でも、まだ一回しか会ったことないし、俺の顔も今初めて見たってくらいじゃないですか?」
苦笑い交じりで、そう訊いてみる。
『シエルは、あれからずっと、レントさんのこと見てました』
「あれから? ずっとって」
『毎日、離れたところから、レントさんを追いかけてました。三年生の子と抱き合っているのを見て、羨ましいと思ってました』
「いいっ?」
ど、どこからどこまで見られてたんだろう……
「すみません、あんまりかっこよくなくて」
『そんなことないです。レントさん、年下なのに優しいしかっこいい。シエルの話をちゃんと聞いてくれて、シエルの部屋まで来てくれたのは、レントさんが初めてです』
い、いろんな男に、あのメールを送ったんだろうか……そりゃ、引かれるよな。
「褒められると、なんか嬉しいような、こそばいような」
『レントさんは、Qを怖いとは思わないんですか?』
突然の話題のように思えるが、ソフィーアと抱き合っているのを見てたのであれば、そんなことも思うかもしれない。
「怖いとは思わないです。だって、Qも一人の人間ですし」
『でも男性を奪おうとしてるんでしょう? シエルのこと、Qだとは思はないんですか? こんなはしたないシエルは、男の子からQじゃないかって、言われてます』
まあ、そうだろうな。
「正直、分からないです。でも、なんか、違う気がします」
『なんか、だけで? なぜシエルの部屋に来てくれたんですか?』
「万年筆届けないと、シエルさん困るでしょう」
『それだけですか?』
「えっと、正直に言うと、シエルさんに興味はありました」
『興味、ですか?』
「どんな女性かなって。とても丁寧な人で、なんだか一生懸命で、誰かから愛されたいのにその方法が分からない、みたいな。あ、すみません、生意気なこと言ってしまいました。すみません」
ちょっと、正直に言い過ぎただろうか。でも、俺の言葉にシエルは反応することなくじっとしている。
「シエルさんのこと、好きになってます。だから、無理矢理じゃなく、優しく愛し合いたいんです。だから、こっちを向いてくれませんか?」
俺がそう言った途端、シエルの背中がビクッとはねた。そして頭を壁にうずめるように、さらに身を屈めた。そしてまた一生懸命メールを打ち込んでいる。
『うれしい。うれしいです。シエル、嬉しすぎて涙が出ます。そんな優しいレントさんに、シエルはシエルの全部をあげたい。今、レントさんの言葉を聞いて、シエルの恥ずかしいお汁があふれて、もう太ももの内側まで濡れているのが分かります』
これがシエルのコミュニケーションのやり方なのだろう。駆け引きも無く、最初から自分をさらけ出して、相手の反応を見る。そうすることでしか、コミュニケーションができない女性。
そこに俺はきゅんとしてしまった。
「俺、シエルさんを抱きたいです」
俺のその言葉に、シエルのメールを打つ手が、これまで以上に震え出した。
『怖い、怖いんです。こんなふしだらなシエルを見たレントさんの表情を見るのも、声を聞くのも、仕草を感じるのも、全部怖いんです。だから、シエルを犯して。怖がるシエルを無理やりレントさんの物にして。お願い、あなたの物になりたい』
そのメールを送ると、シエルはスマホを横へと置いた。もう返事はしない、ということなのだろう。
シエルは、自分の体を抱きながら細かく震えていた。
どうする? その答えはもう決まっている。シエルに言ったこと――シエルがQだとは思わないというのは、実際、嘘ではない。ただ、その感覚がただの『気のせい』なのか、本物なのか、俺には分からなかった。自分を信じるしかない。
目の前の、怯えた風に俺に抱かれるのを待っている、四歳も年上の女性……俺は、ゆっくりとシエルに近づき、肩に手を触れた。
これまで以上に、シエルがビクッと大きく動いた。手からシエルの震えが伝わる。そのまま後ろからゆっくりと抱きしめる。肩に顔を乗せ、頬に口を寄せる……
ドンッ!
後ろに強く突き飛ばされた。一瞬唖然としてしまう。しかしシエルは逃げることも無く、背中を向けたまま俺を待っているようだった。
これでは、本当にレイププレイになりそうだ……そういう趣味はないのだが。
シエルの肩に手を乗せ、もう一度確認した。
「本当に、いいんですね?」
シエルが壁に向けて、こくんと頷く。
もう一度背中から抱きしめる。シエルが激しく抵抗するが、俺は力を緩めそうになるのを我慢してシエルをベッドに押さえつけた。
はっと見開いたシエルの目が俺を見据える。しかし、すぐに目をつむり、また抵抗を始めた。シエルのTシャツの裾をめくりあげたが、その下には何も履いていない。見てすぐわかるほどに、あそこの周りにはぬるぬるとした液体が付いていた。
シエルを押さえつけながら、ズボンを脱いだ。抵抗をつづけるシエルの足を広げ、ペニスを割れ目に押し当てる。
そこでシエルが微かに口を開け、「あああぁああぁぁ」と声を漏らし始めた。
ペニスの先端が膣口の中へとめり込む。そのとたん、シエルは顔を激しく左右に振る。そして上を見上げたシエルの目から、涙があふれだした。
俺は思わず、シエルを『犯す』動きを止めてしまう。シエルは俺の腕をつかみ、泣きながら声を出した。
「いや、やめないで、レントさん。お願い、お願い、シエルを、犯して」
初めてちゃんと聞いたシエルの声だった。大粒の涙を流しながら、一生懸命俺に抵抗しているにもかかわらず、シエルはか弱い声で「いや」という言葉と「お願い、やめないで」という懇願を交互に繰り返していた。
ペニスが当たっているシエルのアソコは、愛液が洪水のように湧き出ていて、ペニスをぐちょぐちょに濡らしている。それがシエルの動きによって、俺の股にもこすりつけられた。
俺は覚悟を決め、シエルの手を頭の上に組ませて押さえつける。またシエルのオマンコから、愛液があふれたのが分かった。
硬くなったペニスをもう一度膣口に当てる。そして、抵抗しながらも「やめないで」と喘ぐシエルの中へ、俺のペニスを押し込んだ。