潜伏を始めて五日。毎度宿は変えていたが、ダメな方のその時が来てしまった。
「ここに、子供が二人いんだろー!?さっさと出せ!!」
「そんな客いねぇっつってんだろ!」
なんか朝から騒々しかったから、俺だけアイラから離れて受付に様子を見に来た。アイツ確かここに来た時アイラに絡んだ冒険者だったな。なんでアイツがアイラじゃなくて、アイを探してるのかわからないが急いで戻ろう。ちなみに小さなヒュージスパイダーになって天井から見ることが出来た。中々この変身は面白い
部屋に戻るとアイラは爆睡、ローズさんは本を読んでいた。
「どうし・・・んん?」
人型に変形した俺が急いでローズさんの口を手で塞ぐ。一瞬ローズさんが蕩けた表情をしたが、俺が必死に顔を横に振る。表情で表現出来ない分、なんとか体で表現したい。俺の必死な動きにローズさんは察したのか顔が変わる。話が出来ると思った俺はゆっくり手を離した
「・・・何かあったんですね?」
ゆっくりうなずく。
「わかりました『アイラ』を起こします」
「おう。でぇじょうぶ・・・だ」
ゆっくりアイラが起きてくる。
「起きてたんですの?」
「いや『寝てた』ぜ。何が起こるかわかんねぇから半分だけどな」
「それ体は・・・」
「問題ねぇ。冒険中はいつもこんなんだ。」
あのテントのおかげで、そこまで大きな危険はなくても、やはり警戒は必要なんだろうか?アイラの冒険者としての心構えが見えた
「ここしばらくはエステの添い寝で、色々楽だったがな」
・・・こいつはまれに、俺を感動させ
「たまに、体まさぐっていい感じなのがまたな」
・・・シテナイカラネ?
俺自身細かい事は伝えられないが、入り口に手を向けて両手でバツ。しゃべれない分いつものボディランゲージで伝える
「入り口で何かトラブルのようですね」
「だな。なんか声も聞こえる」
「では、迷惑料を置いて窓から出ましょうか」
荷物をまとめて窓から出て行こうとする。
「エステ、今日は全身だ」
言われるままに飛びつき、スーツ状態へ装備変形する。この五日間何もしてなかったわけではなく、こういったスキルの鍛錬も行っていた。面白いことにスキル横の数字が増えれば増えるほど、上達しているのが実感できる。
「いつでも出せるように頼むぜ?」
肯定の右乳揉み・・・ぺったんで残念とか思ってないYO?
急いで窓から外に出たがこれがいけなかった。
「あーいたー!ガイアさーん?こっちー」
そういえばコイツもいた。あの男を止めるとき、やたらアイラを貶めた奴だ
「お姉ちゃんだれー?」
ローズさんが子供のフリをする。アイラはこういったのは苦手で、しゃべらないようにする打ち合わせしていた
「あーそーゆーのいいからー。アンタ達連れて行くのが依頼ー」
「・・・っち」
後ろからあの男がくる。挟み撃ちするとは多少は頭が回るみたいだ。
「ぉうおう。確かにアイラそっくりじゃねーかー」
「・・・何の話だ?」
「まー俺様にとっちゃ、どっちでもいいんだがな。お前を連れてきゃ依頼を達成、あの女ともヤれるってな」
やっぱこいつバカだ。この状況で関わってくる女となれば、おそらくあの時の女二人のどっちか。体を差し出してまでコイツに依頼するとはよっぽど切羽詰ったのかな?
「さぁー?おとなしくついてきな?」
男がゆっくり近づいてくる。アイラを捕まえようと手を出した時、その手をアイラがはじいた
「汚ねぇ手で触ろうとするんじゃねぇ。あとしゃべんな、気持ち悪い」
「な・・・な・・・」
思わぬ反撃に男が固まる、みるみる顔が赤くなって来た。こいつ短気ってレベルじゃないな。よく冒険者務まるな。確かAランクだっけ?多分Sのすぐ下だと思うけど・・・
「てめぇ・・・せっかく俺様が優しく連れて行ってやろうってのに!」
「はっ!一回『やさしい』って意味、つか、言葉勉強してこいや!このボケオーク!」
「お、おオークだとぉ!」
「おっと悪い悪い。女を犯しても、あいつらはまだ『女には優しい』ぜ?半日10匹ぐらいに犯されるけど、きちっと飯の用意と体拭いてくれるしな!」
「お、俺様がオーク以下だってのか!?」
「・・・そう言ってんだよ、このボケ!」
「!!!!」
口で負けた男が、右手を振りかぶってくる。子供に手を出すとは本当にコイツ大丈夫か?
「エステ!『出せ』!」
この数日練習していた収納スキルを使う。単純に体から出す場合、口から出すような間隔だったが、出そうと思えば頭の上から出すことも出来た。そこでアイラが
「どっからでも出せるなら、オレが右手に装備して、直接武器出せないか?」
結構難しかった。出すだけなら簡単だが、装備させながらと言うのに手間取ったが、ここで前世の知識が役立った。RPGの装備変更画面、アレをイメージして装備をつけるというゲームの操作をする感覚で行うとすんなりいけた。
アイラの左手首についている体から斧を出していく。その斧を掴み男の攻撃を受け止める。ガキンっと金属音がして自分の攻撃を受け止めた子供に対し、男が目を見開いき驚いている
「な!なんだテメェ!?」
「エステ!『戻る』ぞ!」
これも練習していた。可能な限り早く元の姿に戻れるよう融合と捕食を繰り返していた。融合は熟練度はなかったが、慣れてくると早くできるようになった。
アイラの顔まで覆うと、敵の二人が驚いた
「な!?なにーあれー!?」
「お前がスライムだったのか!?」
そんなわけあるかい。と思いながら融合を進める。どんなに頑張っても今の俺には3秒が限界。アイの服をすぐさま収納して裸にして、全身を覆った俺の体で融合、元の体に戻るとアイラが身につけていた防具を装備させて『変身』の完了。
目の前で起こった異常事態へ、呆気にとられている二人を尻目にローズさんも同じように戻す。
「な!?お前アイラ!?どーゆこった!?」
「ネタバラシするかよ!」
男の鳩尾にアイラの蹴りが入る。すぐさまローズさんを背負い、俺はスライム形態で左肩に乗り、うずくまった男を踏み台にして逃げる
「アイラどこに行くの?」
「とりあえず広い所だ!最悪、騎士連中に連絡が行けば、捕まって後二日ぐらいなんとかなる!」
「ええー?私、前科つきたくないんだけど?」
「舌噛むぞ!?」
狭い通路を二人が逃げていく。後ろから大きな声と共に男が追ってくる。周りの被害もお構いなしだ。追いつかれる事はないと思うが、このまま行けば無駄に被害がひろがる。どうするか?とアイラを伺っていると大きな広場に出た。するとアイラは足を止めローズさんに近く建物へ隠れるように促した。
「ぜーぜー・・・やっと観念したのか?」
「ああ?その気になりゃ、あと半日は走れるぜ?」
「嘘つくんじゃねぇ!」
男が両手で攻撃を繰り出してくるが、アイラは難なく避けていた。
「おうおう。散々暴れまくりやがって。お尋ね者確定だな!?」
「はっ!俺様の依頼主はそんなチンケじゃねーんだよ!?」
「ああん!?自分のチンポが小さいって!?」
「このアマぁぁぁ」
もう滅茶苦茶である。何かスキルを使っているのか、ヤツが空振りしても地面がえぐれたり、風圧なのか屋台が破壊される。男の事は気にも止めていないアイラだったが、周りの被害に顔をしかめていた。
「当れぇぇおらぁぁぁ!」
「当たって欲しかったら土下座しな!」
「そこまでーよー!」
声をした方へ振り向くと、男のパートナーがローズさんを人質にしていた。
「よくやった!オラァしねぇぇ!」
「ちぃぃ!」
「アイラ!?」
おそらく渾身の一撃だろう。今まで以上に男のガントレットが輝きアイラに襲いかかる。急な事態にアイラも虚をつかれ回避出ない。ちきしょう。こんな事ならもっと攻撃方法を練習すればよかった。ずっと2人のサポートばっかりで、捕食の時もアイラにばっか頼って・・・
防ぐ方法が思い浮かばない俺に対して、アイラは冷静だった
「はん!なめんなぁ!」
「はぁ!?」
襲いかかってくる男の右腕に対して、アイラも「右腕」で殴りかかった。
「ばっ・・・」
男が拳を振り下ろす前に爆発が起こった。おそらくスキルの暴発と思う。一瞬強い光が出て爆発。どんなスキルか分からないがかなりの威力のようだ、その証拠に・・・
「ぎゃぁぁぁぁ、お、お、俺様の腕がぁぁぁ」
男の腕がへしゃげていた。
「はん!スキルなんざ発動する前なら、なんとでもなるんだよ!」
「あ、アイラ、貴女・・・」
「ローズ無事か?」
すぐそばにローズさんが駆け寄る。拘束していた女は?と元いた場所を見ると腰を抜かしていた。
「あ・・・あ、あ・・」
何に対してショックを受けているのかわからないが、なんとかなったようだ。
「無事何も!貴女・・・あなた・・」
ローズさんが言葉にならないようだ。アイラの胸に顔を埋めて泣いているように見える
「『右腕』一本。死ななきゃ安い」
驚いてすぐ右肩へ行く。俺も固まってしまった。女がショックを受けてたのはこれだったのか?とひどく冷静な観察をする。
アイラの右腕は、二の腕から先が無くなっていた
「何か大きな爆発だと思って来てみれば、アイラ様じゃないですか?」
「やっぱてめぇか・・・」
そこにいたのは俺を欲しがった夫人と執事の二人組だった
コメディどこ行った・・・?
書いてて自分が行方不明です