※この作品はR-18です。

放っておいて下さい   作:氷野心雫

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これで、とりあえず、書き貯めは出し尽くした…


恥ずかしい問題

断食を始めてから、四日目の昼過ぎ。今のところ、食事も水分も一切、口にしていない。特に、空腹も脱水もなく、トイレに行くこともない。転生案内人の話から、睡眠も不要なようだ。扉を背に、私はずっと座って、牢の天井にある、小さな換気口を見つめ続けた。

 

『…もう良いんじゃないかな?』

 

(っえ?何が?)

 

『いや、ご飯食べなくても死なないって。分かったんでしょ?』

 

(うん、そうだね)

 

『なら、普通にご飯食べたら?』

 

転生案内人の言葉に、私は思案する。

 

(う…ん、いやさ。もう食事するのが面倒臭いなぁって)

 

私の言葉に、転生案内人が溜め息をついたのが、分かった。その頃。

 

 

司令室では、監視の報告の為、土佐がいたが。何故か焦った表情の土佐。それを見つめる絵里ちゃん達。

「あいつ、おかしいんです」

「何がおかしいの?」

「もう四日も食事を一切してない。それだけじゃない。姿を確認出来ないんです」

その言葉に、絵里ちゃん達の表情が曇る。

「どういう事?」

「…気配はするんですが、確認の為、扉を開けようとしたんです。でも開かなくて」

「そんな筈ないだろ。我々は、KAN-SENだぞ?」

「…確かにそうだよ。だけど、実際に扉を開ける事が出来ないんだ」

元は戦艦や艦船を擬人化させた者達。それが、モナーク達だ。普通であれば、力の差は歴然なのだ。土佐の絶望的な表情。

「では、今からもう一度、確認してみましょう」

天城が口を開く。土佐が、天城に視線を向けた。

「…しかし」

「私もご一緒しますわ」

「何か策が?」

モナークの問いに、首を横に振る天城。何故か、微笑んでいる。

「分かりました。天城さんにお任せします」

「絢瀬司令、ありがとうございます」

天城は一礼、土佐と共に、地下牢へ向かった。

 

 

 

 

誰かが、私の部屋に近付いている事に気付いた。扉の前で、足音が止まる。鍵を解除し、ドアノブがガチャガチャと動いた。勿論、開ける事は出来ない。何故なら、私が、扉にもたれ掛かっているからだ。そして、それは私が意図して行っている。

 

(あんまり、関心を持たれたくないんだよねぇ)

 

なるべく、みんなに私の事は、放っておいてもらいたい。それは、単純にみんなを避ける為の理由。でも、それは数ある理由の一つに過ぎない。しばらくして、開けるのを諦めたようだ。静寂が訪れる。安堵の溜め息を一つ。しかし、それも、すぐに緊張に変わる。誰かが、扉をノックした。無視を決め込む私。再び、扉をノックしてくる。次の瞬間。

「…開けて頂けますか?」

天城の声。私の心臓が大きく脈打つ。私は、静かに身体を扉から退け、その場に立つ。三回目のノック。

「お願いします。開けて下さい」

その言葉に、私はゆっくりと扉を開けた。扉の向こう側で、背筋を真っ直ぐに、私を見据える天城の姿。笑みを称えている。私は見惚れた。

「…お前!?」

天城の横をすり抜け、土佐が私の胸ぐらを掴み、馬乗りになる。興奮気味の土佐。息が荒く、今すぐ殴り掛かりそうだ。天城が、土佐の横に立ち、肩に手を置く。

「土佐、落ち着いて」

「…しかし、天城さん。こいつ」

「何か理由があるのでしょう」

そう言って、土佐を落ち着かせる天城。怒りの表情のまま、土佐が、私から退く。私は、身体を起こし、立ち上がった。天城の顔が、私の肩くらいにある。ぐっと顔が近付いた事で、私の鼓動は、さらに速まった。私の身体に異変が生じる。天城に対する欲情が、一気に股間に集まった。

「倉本さん、私とお話ししませんか?」

微笑む天城。私は困惑。

 

(…天城が、私に話し掛けてる。最高!…でも、声出ないしな)

 

すると、天城が机の上に、一冊のノートを置いた。ちゃんと、ペンも用意されている。

「さあ、こちらへ」

天城に促され、私は、椅子に座る。天城は、立ったまま。

 

(何か、嫌だ)

 

立ち上がる。土佐が警戒した。私は、椅子をベッドの横に持っていき、私はベッドに腰掛けた。そして、ノートに書き込み、天城に見せる。

 

『座って話さないか?自分だけ座るのは、良い気がしない』

 

それを見て、天城はフフっと笑う。そして、椅子に腰掛けた。間近で見る天城の顔。とても美しい。儚げな表情は、庇護欲を掻き立てる。私を見る天城は、とても優しい眼差しを向けていた。

 

(…最初は、物凄く警戒していたのに)

 

初対面の時の天城は、警戒心があった。しかし、希ちゃんの悪戯の後。天城の表情は、穏やかで、私を見る目も、優しかった。その理由は分からない。

「倉本さん、お聞きしたい事があります。答えてくれますか?」

『…話せる範囲でなら』

「何故、お食事を取らないのですか?」

『今は食べたくないんだ』

「そうですか。でも、一口でも食べて頂かないと」

『言いたい事は、分かる』

「でしたら」

天城の言葉を、私は遮るように、ノートを見せた。

『俺の願い、覚えているか?』

私の問いに、天城は頷いた。

『俺を監視するのも、拘束するのも、君達の自由だ。俺は、それに従う。それは変わらない』

私は、立ち上がり、扉の横に立つ。苛立っている土佐と、どこか寂しげな天城に視線を送り。

『君達に、なるべく、迷惑を掛けないよう善処する。俺は、君達と必要以上の会話は、したくない』

アゴで『出ていけ』と、意思表示する。天城は、小さく溜め息をつく。

「分かりました。今回は、引き上げます」

「天城さん」

「良いんです。行きましょう」

天城が椅子から立ち上がり、部屋を出る。後ろから、土佐も続いた。すれ違い様、土佐が睨む。

「倉本さん、また来ますね」

扉を閉めながら、天城が私に言って、鍵を施錠した。

 

『何で追い返すの?』

 

(…天城、可愛かった)

 

『もしもし?聞いてる?』

 

(聞いてるよ)

 

『何で追い返すの?折角、仲良くなれるチャンスだったのに。あの娘、君のお気に入りでしょ?』

 

(…好き過ぎて、困ってるの)

 

『ふ~ん、でも。多分、また来るよ』

 

転生案内人の言葉に、溜め息を一つ。ゆっくりと、床に座り込んだ。

 

(…それにしても、急に警戒心が、薄れた感じがしたんだよね)

 

『ああ、それはそうだよ。だって、君が前世で好きだった娘達は、君に好意的になるようにしてるんだから。まぁでも、無条件じゃないけどね』

 

つまり、この世界は必要最低限、私に都合良く作られていて。その反面、不都合もある、という事だ。

 

(まあ、ハーレムに興味がない訳じゃないけど、都合良すぎるのも、好きじゃないんだよね)

 

でも、この時。私は、気付かなかった。自分の身体に、振り回される事になるなんて。

 

 

 

 

その日の夕方。

 

 

 

 

夕食の時間になり、私は、天城達の約束を守る為、扉の横に備え付けられている台を見つめていた。ポスト投函の様に、そこから、食事が来るのだが、何故か扉が開く。扉の向こう側で、天城が立っていた。よく見れば、天城の手に、夕食を乗せたお盆。天城の横では、明石が不安そうに天城を見つめている。私は、小さく溜め息を一つ。

「お食事の時間ですわ」

そう言って、微笑む天城。

 

『そこの台に、置いといて』

 

「いいえ。倉本さんが、お食事をするのを確認しないといけませんから」

 

天城が、部屋の中に入り、夕食をテーブルに置く。その後ろでは、明石が素早く椅子を持って、入ってきていた。

「明石、ありがとう。あとは、私がしますから」

「天城しゃん、一人で大丈夫にゃん?」

不安そうに、そう言う明石。天城は優しく微笑む。

「心配しなくても、大丈夫ですわ」

そう言って、明石の頭を撫でる天城。明石は、まだ、不安な表情を見せながらも、部屋を出ていき、扉を閉め、施錠した。

 

(…っえ?まさか、このまま天城と二人きりで過ごせと?)

 

私は、混乱していた。天城は、無言で椅子に座る。呆然と立ち尽くす私。天城は無言のまま、私に視線を送り、手のひらで『座って』と示す。緊張気味に、私は天城の向かい側に座った。見つめ合う私と天城。

 

(何?この罰ゲーム的な展開は。先に視線を反らした方が、負け的な感じがする…)

 

天城は、私をずっと見ている。

 

(クソッ、可愛いな!こっちが恥ずかしくなるわ!)

 

天城がクスリと笑う。たったそれだけなのに、私の鼓動は高鳴る。

「食べないのですか?」

『…見られたら、恥ずかしくて、食えない』

「私の事は、空気だと思って頂いたら良いですわ」

『……いや、無理だろ。存在感が半端ない』

私のノートを見て、天城の表情がさらに緩む。

「少し、倉本さんの事が分かってきました」

天城は、一度立ち上がり、扉の向こう側の明石を呼ぶ。何かをお願いしたようだ。数分後、再び明石が扉を開け、天城に何かを渡す。天城が椅子に座る。手に持っているのは、一冊の本。

「私が、本を読んでいれば、気になりませんか?」

『…正直、出ていってくれると助かるんだけど』

「残念ですけど。それは無理なお願いですわ」

『はぁ、分かった』

私は諦めた。とりあえず、夕食を食べ始める。元々、食事は不要だが、味覚はあるようだ。

 

(久々の食事、美味しい!)

 

ガツガツと食べ進め、気が付けば、天城の事を気にせず、食べ終わっていた。手を合わせて『御馳走様』をする。ふと、天城を見た。微笑んでいる天城。私の鼓動が、再び高鳴り、下半身が疼き出す。

「美味しかったですか?」

『…ああ、美味しかった』

視線を反らしながら、感想を言う。天城は読んでいた本を閉じ、私を見つめる。

「倉本さんは、とても優しい方ですね」

そう言って、天城は立ち上がり、扉の向こう側の明石を呼ぶ。扉が開いた。天城は、私が食べ終わった食器を、お盆に乗せ、部屋を出ていく。振り向き様、天城は私に視線を送り。

「それでは、また朝に」

ゆっくりと扉が閉まる。部屋に、静寂が訪れ、しばらく、私は、扉を見つめた。下半身が疼き、私はおもむろに、視線を向ける。しっかりと勃起している私の分身。私は、溜め息をついた。

 

(男の身体って。不便)

 

『どうして?』

 

(…いきなり、話し掛けないで。びっくりするわ!)

 

驚く私に、転生案内人が笑う。

 

『それで?どうして不便なの?』

 

その問いに、私は戸惑う。恥ずかしい話だからだ。

 

(女の時はさ、ムラムラしても、相手に分かりにくいでしょ?服を脱がないと気付かれないし。でも、男の身体の場合、ムラムラしたら、即バレするやん)

 

『ああ、そうだね』

 

(…私、女の時は。年中発情期だったけど、バレた事ないし。我慢出来ない時は、旦那押し倒してたから)

 

『……成る程。バレ易いし、我慢が出来るか不安なんだね』

 

転生案内人の言葉に、頷く私。

 

『でも、年中発情期って、我慢出来るもんなの?』

 

(…まぁ、何とかね。大体、自制してた。それでも、ムラムラしたら、自慰行為とかで紛らわしたりとか)

 

『それでも、我慢出来なかったら、旦那さんを襲ってたと』

 

(そう、がっつり襲ってた)

 

『そうなると、確かに男の身体は不便かもね』

 

(…そう、なんだよなぁ)

 

自分で、望んで男の身体にしてもらったのに、まさかすぐに問題に突き当たるとは。しかし、それはまだ、序章に過ぎなかったのだ。




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