しかも、ムフムフ~!
私は今、エヴァンゲリオンのテスト機に乗っていた。何故そうなっているかというと。遡る事、数時間前。
『彼に、ネルフ基地へ来てもらいたい』
液晶ディスプレイの向こう側で、ネルフ基地の司令官。碇ゲンドウが言う。絵里は表情を曇らせた。
「…それは、倉本さんを『そちらへ異動させて欲しい』と言う事でしょうか」
『…ああ』
絵里の問いに、そう答えるゲンドウ。司令室には、絵里と希。綾波レイとモナーク、エンタープライズ、ビスマルクとベルファスト、天城がいた。勿論、当事者の私もいる。
「申し訳ありませんけど。お断りします」
絵里はキッパリと断った。私はその言葉に、視線を向ける。
「倉本さんは私達に必要な方です。それに、私達を助けて頂いた恩があります」
(…おっと?急に、対応が変わったぞ?)
『……そちらの言い分は分かった。だが、こちらも彼に来てもらいたい理由がある。レイ』
「……はい」
ゲンドウの言葉で、レイが何やら資料を絵里に渡した。それを手に取り、絵里と希が目を通す。驚いた表情を見せる二人。
「…こ……れは」
『数日前、予兆もなく現れた』
絵里の手に持っていた資料が、モナーク達に渡される。やはり、資料を見て驚いた表情を見せた。天城が、私にも資料を回してくれ、私は資料に目を通す。
(…マジかぁ)
その資料に書かれていたのは、正体不明の巨大人型兵器が複数出現。ネルフ基地へ向かっているという内容。
「碇司令の仰りたい事は分かりました。ですが、それが倉本さんとどういう関係になるのですか?」
『…彼に、エヴァに乗ってもらいたい』
(…はい?今、何と?)
「待って下さい。私達の知り得る情報だと、そちらには、複数のパイロットがいる筈では?しかも、年齢も14歳の少年少女達だと」
『あぁ、そうだ』
「それに私達が調べたところ。倉本さんの年齢は二十歳を越えています。その時点で、無理なのではないですか?」
(おっと、私の身元はバレてるのね。私自身は知らないけど)
『それは試してみないと分からない』
ゲンドウの言葉を聞いて、絵里は小さく息を吐く。
「……倉本さんをそちらへ出張という形でなら、協力します」
『…それで構わない。出来れば、今すぐにでも来てもらいたい』
「分かりました。準備が整い次第、向かわせます。それと、こちらから一人、同行者を付けます。宜しいですか?」
『ああ、構わない。そちらに任せよう。…では』
それだけ言うと通信が切れ、画面は真っ暗になる。しばらく無言だった面々は、緊張の糸が切れた様に、盛大な溜め息を一つ。
「倉本さんの情報、どこで知ったのかしら?」
「……私は知らない。碇司令に命令されたから、ここに来ただけ」
絵里の問いに、そう答えるレイ。
「それに、倉本さんがエヴァに乗れたとして。打破出来ると思う?」
その問いにも、レイは無言で首を横に振るだけ。
「……ふぅ、それより。同行者を誰にするか」
「絢瀬司令。私が行きますわ」
天城が言う。一瞬、みんなの視線が私に向けられた。でもすぐに、天城に戻る。
「…分かったわ。天城、お願い出来る?」
「はい、ちゃんと千尋さんを連れ戻しますわ」
そう言って微笑む天城。再び、私に視線が集まり、反らされた。
(…うわぁ、超気まずい…。しかも天城、みんなの前で名前呼びしちゃった)
私は心の中で溜め息をついたのだった。
数時間船に揺られて、辿り着いたネルフ基地。私は挨拶もそこそこに、いきなりエヴァのテスト機に乗せられ、そして、今に至る。
「どう?」
「…ダメですね。シンクロ率、0%です」
ミサトとオペレーターの会話。私は少し気分が悪い。肺に、満たされたL.C.Lのせいだった。
(…肺に液体が入ると、こんな感じなんだ。溺れてるみたいで、気持ち悪い)
とりあえず、私は操縦席に座り、じっとしている。その間も、ミサト達が、様々な方法でアタックを試みるも、0%。周囲からは、落胆の溜め息が溢れた。
「…なんや、全然だめやないか」
「まあまあ、もう少し様子を見よう」
「無駄よ、無駄。そんな事しなくても、私がいるんだから、そんな奴いらないわよ」
カヲル、トウジ、アスカの三人が口々に言う。その間も、色々試みた。それでも0%。何とも言えない雰囲気が漂う。突如、警報アラームが鳴り響く。
「敵襲!?」
「モニター!早く!」
ミサトとリツコの声に、オペレーター達が慌てふためく。そして。巨大なスクリーンに映し出される敵。それは、サキエルとゼルエルが混ざり合った様な異様な人型の敵。さらに、それは一体ではなく、軽く20体はいる。
「みんな、出撃準備!」
「はい」
次々に各自の機体に乗り込むパイロット達。ミサトとリツコも指示を出している。私の事は、すっかり忘れ去られた。
(…終わるまで、ここで待ってよう)
操縦席に映し出される戦闘模様。みんな連携しながら敵を攻撃する。しかし、その攻撃はほとんど効いていない感じだ。
『…何よ!?コイツら』
『弱音吐くのは早いよ!』
『五月蝿い!えこひいき!ちゃんとやってるの!?』
『…やってるわ。貴女もちゃんと狙って』
『まあまあ二人とも』
『惣流は五月蝿いな。耳がキンキンするわぃ』
『何ですってぇ!?』
『…アスカ、そんなに怒らないで。綾波も頑張ってるんだから』
『バカシンジは黙ってなさいよ!』
戦場はてんやわんや。
(…おっかしいなぁ。シンジ、レイ。アスカ、トウジ。カヲル。マリの総メンバーいるのに苦戦する?)
敵は、真っ直ぐ基地向かっている。みんなの攻撃もしっかりとコアに当たっている筈なのに、まだ一体も倒せていない。よく見ると、コア全体を守るように、A.Tフィールドが展開されていた。さらに気が付けば、基地に攻撃され始めている。爆発で建物が大きく揺れ、天井が崩れる。私の目に、天城が衝撃でバランスを崩し、その場で転倒。その頭上に、天井の瓦礫が落下していくのが見えた。
(天城!?)
私は無意識に天城の側に転移。素早く天城を抱き上げると、基地の外に転移した。転移先は基地の上。目の前には複数の敵。私は、抱き上げたまま天城に視線を向ける。
「…千尋さん」
「大丈夫だ。俺が天城を守る」
(…イメージしろ。天城を守る為に)
強くイメージすると、天城の身体が宙に浮き、その周囲を透明な障壁が天城を丸く囲む。天城は驚いた表情で、私を見つめる。
「すぐに終わらせる」
そう言うと、私はさらにイメージした。
(A.Tフィールドを貫通出来れば、コアを破壊する事が出来る筈)
イメージが形になる。私の身体を淡い光が包み込み、そのイメージが具現化した。その姿は、以前武装した『極振り』の『機械神』と『ガンダムSEED』で出てくる『ミーティア』を融合させた武装だった。私の身体に異変が生じる。激痛が全身を駆け巡った。
「…ぐっ…はぁ、はぁ…また」
痛みに耐える私。サキエルとゼルエルを混ぜ合わせた様な異様な敵が、私を掴もうと手を伸ばす。私はその間をすり抜け、コアに砲撃した。バキッという音と共に、コアが砕け散る。核となるコアが無くなり、霧の様に霧散する人型の敵。私は次の人型の敵に向かう。最初と同じ様にコアを破壊する。
(…埒があかん。私、面倒臭いの嫌いなんだけど!)
痛みでイライラMAXの私。全身の武器を人型の敵全てに向ける。
(ああ!クソッ、イライラする!さっさと沈めや!)
苛立ちと共に、全砲撃を開始。無数のレーザー砲、ミサイルが人型の敵に命中。それらは全て、A.Tフィールドを貫通し、コアを破壊していく。次々と霧散していく人型の敵。敵が全ていなくなり、私の武装も次第に空気に溶けるように消える。
「…がぁ…はぁ、はぁ…」
全身の痛みで、私の意識は朦朧、そのまま急降下。海面に叩き付けられた。
「千尋さん!?」
透明な障壁に守られた天城が、ゆっくりと降りてくる。そこで私の意識は途切れた。
真っ暗な空間を漂う。
(…あぁ、またここか)
『やっほ~』
転生案内人の声。
『さて、君に問題です。何故ここに来たのでしょう?』
転生案内人の質問に、私は思案する。
(生命エネルギーのオーバーヒート?)
『正解です。前回言ったよね?生命エネルギーの放出は、エッチするのが良いって』
(…あぁ、えっと)
『別にさぁ、毎回ここに来ても良いんだけど。君死なない身体だし。痛みが好きなら、止めないけど』
(やっぱり、エッチしないとダメかね)
『それは君次第だよ。でも、多分身体の方が暴走するかもね』
(それって)
突如、何とも言えない気持ち良い感覚が走った。その感覚は次第に鮮明になり、私の意識が薄れる。
『本能には抗えないか』
転生案内人の言葉を聞きながら、私の意識が現実に戻る。我に帰るように、私は意識を戻した。周囲を見渡すと、見知らぬ部屋。私はベッドの上にいた。そして、下半身に感じるぬるぬるした感覚と温かさ。
「…あぁ…はぁ」
真下に聞こえる天城の声。私の視線が下へ。そこには、全裸の天城の姿。さらに、私の分身が、天城の中に入っていた。私は天城を組敷いている。
(…あぁ…やっぱり、こうなったか…)
私は、心の中で悶絶したのだった。
次回が楽しみだ!