水平線から朝陽が昇り始めた頃。別棟の一室で、寝息をたてる天城。
(…うぅ、今日も眠れなかった…)
目の下に真っ黒な隈。私は憔悴ぎみ。理由は明白、それは天城の存在だった。今、天城が寝ている場所は、私の身体の上。音ノ木坂基地の別棟で生活を始めてから、もうすぐ一週間になる。私が別棟に移って、初日から天城は何故か私の身の回りの世話をしていた。
(…相変わらずいい匂い)
無意識に私は天城の髪を匂う。優しく抱き締めると、天城が身動ぎした。獣耳がピクピクと動き、天城の手が、私の服をキュッと掴む。
(ああ…、可愛い~!)
私の下半身が反応し、あっという間に、分身がそそり立った。私は、天城を起こさないよう、ゆっくりと身体から下ろす。天城はまだ夢の中。私は小さく溜め息をつく。
(ああ~、超抱きてぇ!)
心の中で悶絶。私は、天城を見つめた。
(キスくらいなら起きないかな?)
そろそろと顔を近付ける。あと数センチで唇に触れるというところで、誰が扉をノック。素早く天城から私は離れ、勃起している分身を、近くにあった上着で隠した。
「倉本、起きてるか?」
「…モナークか」
「話がある。ちょっといいか?」
「ああ、入っていいぞ」
私がそう言うと、モナークが扉を開け、部屋に入ってくる。勃起していた分身は、落ち着いていた。モナークは、ベッドで寝ている天城を一瞥。私に視線を戻す。
「話って何だ?」
「…あぁ…ちょっとここでは…。司令室へ来てもらえるか?」
私の問いに、言葉を濁しながらそう答えるモナーク。
「……分かった」
私は、ベッドから立ち上がると、モナークに近付く。まだ寝ている天城を部屋に残し、モナークを連れて司令室へ転移した。司令室には、絵里と希。その他、綾波レイと碇シンジがいた。
「倉本さん、お休みのところ、ごめんなさい」
私が来ると、そう言葉を口にし、申し訳なさそうな表情をみせる絵里。
「いや、気にしなくて良い。話があるんだろ?一応、絢瀬司令の立場は分かってるつもりだ」
そう言うと、視線をシンジとレイに向けた。
「話って、この二人が関係してるのか?」
「…えっと、関係はないの」
「…っは?」
絵里の答えに思考が鈍る。私の視線が五人を見渡す。
「あの…、私達の勝手でとても言い難い事なんですけど、ここにいるモナークと碇さん、綾波さんと一緒に、挨拶回りをして頂きたい…んです…」
「………っえ?」
絵里の発言に固まる私。絵里は言葉を続ける。
「実は、この音ノ木坂基地と連携している基地に、倉本さんの話をしているのですが、他の基地を指揮している方々から、一度倉本さんにお会いしたいと言われまして…」
両手の人差し指を合わせモジモジする絵里。心なしか頬も赤い。私は、小さく溜め息をつく。
「…分かった。行けば良いんだろ」
「ごめんなさい」
「仕方ない。んで?連携している基地はいくつあるんだ?」
「ネルフ基地を含めて3つです。その内のネルフは、前回行ってもらっているので、行かなくも大丈夫です。今回、浦女基地、ギャラクシー基地の二ヶ所に行ってもらいたいのですが」
「…浦の星女学院」
絵里の言葉を聞いて、一瞬、脳裏を掠めた名前をポツリと溢す私。その言葉に、希の表情が変わり、瞳が光る。
「浦女基地知ってるん?」
「…ぃや」
すぐさま、私は首を横に振った。
(…ヤバ)
「ふぅ~ん」
希の視線は、まだ疑っている。しばらく私を見つめていたが、いつもの笑顔に戻った。ただ、黒いオーラを纏っているが。
「まぁ、エエわ。兎に角、千尋君行ってきてな」
「…あぁ」
黒いオーラを纏った希に、私は素直に頷く事しか出来ない。私と希のやり取りに首を傾げる四人。
「良く分からないけど、行ってもらえるのね」
「ああ」
絵里の言葉に、頷く私。
「ギャラクシー基地については、碇さんと綾波さんが詳しいわ」
私は二人に視線を向ける。シンジとレイは、一度お互いを見合わせた。
「…碇君」
言いながら『どうぞ』と目配せするレイ。
「…っえ、僕が!?綾波が説明してよ」
「私の説明だと、分かりにくいから。碇君が説明して」
二人のやり取りを、私は黙って見つめる。その視線に気付く二人。シンジは、若干脅えている。
「…ええっと、あの…ギャラクシー基地は、セブン島っていう島にあって」
しどろもどろになりながら、説明を始めるシンジ。
「そこにはマクロス部隊、フロンティアが周辺の空、海、陸を…その」
そこまで言って私を見る。私を見て、シンジは固まった。何故なら、私が額を抑え身体を振るわせていたから。
(…マクロスって言ったか?フロンティアにギャラクシー。まさか、シェリルとランカ。アルトがいるのか?)
黙ったままの私を、シンジはオドオドしながら見ている。その様子に気付き私は深呼吸を一つ。
「…いや悪い。説明はそこまでで十分だ」
(…敵はバジュラ?いや、もしかしたら、別の話が絡んでいる可能性も。後で案内人に聞いてみるか)
思案中の私に、絵里達は言葉を掛けられない。
(とりあえず、行ってから考えよう)
「出発は?いつだ?」
「……っえ?っあ、出来れば今すぐの方が…」
私の問いに、そう答える絵里。
「よし、ならすぐに行こう」
私はそう言うと部屋を出る。いきなり部屋を出ていった私に、慌てたようにモナークとシンジ、レイが部屋を出て、私の後を追う。その後ろ姿を、絵里と希が呆然と見つめるのだった。
穏やかな大海原を、大きな戦艦に乗り移動する私達。風を全身で受けながら、私は甲板の上に立つ。遥か先に見える小さな島。今向かっているのは、ギャラクシー基地があるセブン島。
「倉本、ちょっと話いいか?」
私の横に立ち並ぶモナーク。私はモナークを一瞥し、セブン島に視線を向けた。
「話って何だ?」
「…天城の事だ」
私は視線をモナークに向ける。モナークの頬は何故か赤い。首を傾げる私。
「その…倉本と天城は……」
その言葉とモナークの表情で、何となくモナークの言いたい事が分かった。私は視線を反らす。
「……あぁ…まぁ、そうだな…うん」
「付き…合っている…のか?」
「どうかな…。肝心な事は言ってないけど」
言葉を濁す。
「でも、好きなのだろ?私にはそう見える」
モナークが私を見つめる。
(…超恥ずい!?ってか、何でモナークとこんな話してんだ?)
モナークは、視線を私から外し、小さく息を吐く。
「天城は…お前に出逢う前の天城は、いつも穏やかに微笑んでいた。秘書艦として仕事も完璧にこなしていた。だが、今の天城は変わってしまった……別に、変わったのは悪い事ではない…ただ」
そう言って、モナークの表情が曇る。私は、モナークを真っ直ぐに見据えた。
「何かあったのか?」
「…ああ、以前の天城なら、司令の命令に背く様な事はしない」
「…ん?…んん?命令に背く?天城が?」
「ああ、今まで天城が司令の命令に背く事はなかった。いや、今でも司令を献身的にサポートしている。ただ一点を除いてはだが」
モナークの発言に、私は固まった。
「ここまで言えば分かるだろ?天城の、秘書艦としての仕事に支障が出ている」
モナークは大きな溜め息を一つ。
「別に、お前が悪い訳ではない。むしろ、あまり感情を見せなかった天城が、お前と出逢って感情を見せた。それは良い事ではある」
何故か、自ら発言しておいて納得いかない表情のモナーク。
「……そう…喜ばしい事ではあるのだが、あんな風にベッドで一緒に寝て………天城が羨ましい……いゃ!?今のは聞かなかった事にしてくれ!?」
真っ赤な顔でモナークは言う。わざとらしい咳払いをすると。
「兎に角、秘書艦としての責務は果たしてもらいたい」
その言葉に、私は困惑。
「それで、俺にどうしろっていうんだ?」
「……」
「秘書艦の仕事だが、俺は一切、口を出していない。それ以前に、天城に『俺の身の回りの事をしろ』なんて話もしてない。寝食の事も含めてな。それと、俺は最初、言っていた筈だ。放っておいてくれと」
困った表情で私は言った。しばらく、無言で見つめ合う私とモナーク。
「まぁ、音ノ木坂基地に在籍した以上、無理なのは仕方ないけどな」
モナークから視線を外し、島を見る。先程より、島が近付いていた。
「司令は、天城に何て言ったんだ?」
「……倉本の部屋で寝泊まりするな」
「……」
(…天城ぃ…)
私は額を抑え、盛大な溜め息を一つ。
「それって、いつの話だ?」
「倉本が、別棟に移動した次の日だ」
(……マジかぁ)
「司令は何度も注意したのだが、天城は『嫌です』と、拒否。秘書の仕事はしているが、倉本の話が出ると、不機嫌になる始末。司令室の空気は最悪だ」
「…分かった。俺からも天城に言ってみる」
私はそう言った。丁度、会話が途切れたところで、島の方から爆発音が聞こえ、どす黒く、巨大な煙が立ち上る。私とモナークは息を呑む。
「倉本さん!?モナークさん!?」
シンジとレイが甲板の上を走って、私達に近付く。
「何が起きた!?」
「…ギャラクシー基地に、敵が襲撃。マクロス部隊が、交戦中」
モナークの問いに、そう答えるレイ。私達の頭上を、数機のヴァルキリーが通り過ぎる。その一機が、人形に変形し、私の前でホバリング。コクピットから早乙女アルトが見えた。
『…音ノ木坂基地の方ですか?』
「ああ、そうだ」
アルトの問いに、私はそう答える。
『すみません。本来なら、皆さんを基地へ誘導しないといけないんですが』
「敵襲だろ?別に気にするな」
『ありがとうございます。自分は、ギャラクシー基地、マクロス部隊の早乙女アルトです。必ず、戻りますので、ここでお待ち頂けますか?』
「いや、加勢しよう」
『…えっ!?いや、それは』
「話は後だ。とりあえず、そのまま敵の前まで飛んでくれ。あとは俺が何とかする」
『…あぁ、はい!了解しました!』
私に言われるまま、アルトは敵に向かって飛んで行く。
「モナーク、ちょっと行ってくる」
そう言いながら、私は転移魔法を発動。モナーク達をその場に残し、転移した。
転移して、私は茫然自失。目の前にいるのは、巨大な生物。いや、巨大な昆虫だった。それも、立派な黒蟻。しかも大群で。
(…えっと、どういう状況?)
私の周囲では、ヴァルキリーとバジュラが共闘しながら、巨大蟻と戦闘中。
(ちょっと待って、私、巨大蟻が出てくる話とか読んだ事無いけど。ってか、バジュラが味方とか)
混乱する思考で、私は何とか状況を整理する。その間も、次から次へと出てくる巨大蟻。巨大蟻が出てくる場所は、時空の歪みらしき現象。
(…いやいやねぇわ~。あり得んわぁ)
あまりの数の多さに、私はドン引き。一体が私に向かって来る。私は機械神で武装し、巨大蟻を撃つ。
『ヤッホー』
間抜けな声。転生案内人だった。
(ヤッホーじゃねぇよ!どういう事か説明して!)
『っえ?君の記憶から引き出したんだけど』
案内人の発言に、私は固まった。
『…えっ?巨大昆虫を戦車とかで撃って倒すんでしょ?君の記憶の滅茶苦茶片隅に、小さく残ってたからさ。これ出したら面白いかな?って』
私は、脳みそをフル回転で記憶を思い出す。そして。
(…っあ、もしかして…。テレビのCMで流れてたやつ…)
それは、数回しか観ていないCM。その中身は、巨大昆虫を戦車で倒し、コレクション?するような内容。スマホのアプリゲームのCMだった。
(……嘘だろ?全く興味ないゲームまで出てくるんかい!?)
私は、心の中でつっこむのだった。
書きながら、昔読んでいた漫画や観ていたアニメを思い出す。最近は、忙しくてテレビを観る暇がなかった頃の間のアニメを観ています。
これが意外と面白い。京アニの作品で全然知らなかった作品もありました。そして、シュールなのに観始めたら面白いアニメも。そんなこんなで、書く時間がさらに削られていくのであります。