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お互いの想いを告げ、両想いになってから1週間が経った。
オペレーター達は(前途多難だろうけどまぁなるようになるだろう)と考える者とあえてノーコメントを貫く者と様々だ。
しかし付き合いだしたからと言って第三者から見た2人の行動が特に変わった訳ではなく…そもそも元からもう付き合っている様な距離感だったのもあって目立った行動は特に見受けられない。
そう、2人きりの時ですらそれは変わらなかったのだ。
「……終わった…。」
何時もの執務室で、何時ものように仕事を終えたドクターが目頭を抑えてから深くため息をはく。
片目になってしまった視界でのデスクワークは、慣れるまで以前よりも少し疲れが溜まりやすくなってしまった様子である。
「お疲れ様です、こちらでお茶にしませんか?」
と、プラマニクスが頃合を見て用意していたお茶とお茶請けを目にしたドクターがハッとして耳と尾を立てて、プラマニクスだけが察せる感じで喜ぶ。
動きたくない事に主軸を置くプラマニクスだが、ドクターとこの関係になってからたまにだがこうしてドクターを労るべく休憩時間を良くする為の用意をする様になった。
そうして何時ものソファで、プラマニクスのすぐ横にドクターは腰掛ける。
以前より2人の間にスペースはない、無いのだがプラマニクスはハッキリと予期した。
付き合い出してから1週間経ったのに、告白の日に抱き締め合ったのが1番密着度が高く、長い時間していた触れ合いでありそれ以降はこんな風に真横に座るくらいしかしていない………そしてこの横で呑気にほんわかした空気でお茶を飲みクッキーを一口で食べている男は今日もきっとこの距離でちょっと私の頭を撫でて終わるだけだ……と。
自分から何かを強請るのは、はしたないだろうかと気にしていたが流石に抱きしめる事もキスもしないとはどういう事だ…と笑顔の裏でじわじわと不満が溜まっておりそれが爆発する事となる。
「………俺の顔に何かついているか?」
「私は抱き締めるに値しませんか?」
ドクターが自分を直視し続けるプラマニクスに上半身を向けてそんな疑問をぶつければ思いも寄らぬ言葉が返ってきて時が止まった。
プラマニクスの真摯でどこか思い詰めているかのような顔と声にドクターはたじろぎそうになりながら脳内がバグり「今の質問の答えになっていない」と言う言葉を真っ先に浮かべながら、それを口に出すより先に行動してしまった身体は思案するかのようなゆっくりした動きで手を広げたのだった。
「…………私の方からいけと?」
「………………いや、抱きしめていいか、ずっと分からなくて…。」
「むぅ……分かってはいましたけどここまでとは思いませんでした。」
そう文句を言いながらも、プラマニクスは嬉しそうにぼすっと音を立てて自分からドクターの胸に顔を埋めて腕を回してみた。
鍛えているだけあって中々の感触だ、と思って軽くスリスリと動いてみてからふと抱きしめ返して来ないなと気付いて動きを止めた。
「抱きしめ返してくれないんですか?」
「………。」
プラマニクスに言われてようやくドクターはそっと壊れ物にでも触れるかの様な力加減であからさまに恐る恐ると言った風に抱きしめると、そっと撫でてきた。
自分から抱き着いたのもあって恥ずかしさで頬を赤くしていたプラマニクスだったが、胸に顔を埋めているからこそドクターの心音が早鐘を打っている音をようやく耳が拾った。
その早く脈打つ心音と、あんまりにもおっかなびっくりな触り方に思わず笑いがこぼれる。
「んふっ……そんな、そこまで震えながら触らなくてもっ……ふふっ。」
「あんまりにも、柔らかくて……本当に雪にでも触ってるんじゃないかと思ってだな……。力加減を間違えたら傷付けないかと不安になる。」
過去は覚えていないから分からないが、目が覚めてからは1度も女を抱いたことは無く、鍛え続けた身体は司令塔と言うよりも兵士の様でその腕力や握力も強いドクターだからこそ愛しい者に触れるのを躊躇っていた。
そして今やっと、プラマニクスが胸元に顔を埋めて笑ったり喋ったり無意識なのかたまに擦り寄る様に頭を動かして伝わってくるくすぐったい幸せに包まれているのだ。
緩くウェーブしている豊かで長い銀糸の髪の毛に指を這わせながら撫でる。
髪の毛の手触りの良さと、自分に抱きしめられてちらりとこちらを上目遣いで見上げながら笑うプラマニクスに危うく生唾を飲みかける。
「そこまで脆くないですよ、それに私の手首とか何度か掴んでるじゃないですか。」
「あれは咄嗟で……痛かったか?」
「むー、そうですねぇ。痛い時もありましたけど、気にしてないです。」
「すまない。」
謝罪しながら耳の間をゆっくり撫でると少しプラマニクスもくすぐったかったのか身を捩った。
お互い抱きしめ合いドクターがプラマニクスの背中を撫でたり髪の毛を指で梳いたりして、プラマニクスがたまに深く胸元で呼吸したりしながらドクターを真似る様に背中に手を這わせて上機嫌そうにユラユラと尾を揺らして数分。
これは、流石に色々とマズいとドクターは思い始める。
愛して止まない女性が、自分の胸元に顔を埋めながらスリスリし、上目遣いで見てくるこの光景。
ドクターは顔を上げて1度心頭滅却すべく目を閉じる。
そして我慢と欲求の板挟みになった結果、
「……エンヤ、こっちを見てくれ。」
「むぅ?なんです」
か。とプラマニクスが言うより先に彼女の頬に手を這わせて自分の方を向かせるとそのまま唇を重ねていた。
時間にしてたった10秒程度のものだったそれが、逆にドクターの中で火を着けそうになってしまい慌てかけるが赤面したプラマニクスが目を逸らしながら唇を震わせて小さな声で零した言葉をドクターは聞き漏らさなかった。
「………短過ぎますよ?」
そうプラマニクスが言うと吸い寄せられるようにもう一度そっと唇を重ねる。
すぐに唇を離してからもう一度、と何度か啄むかのような唇を重ねるだけのキスを繰り返す。
いつの間にかドクターの片手はプラマニクスの腰に回されて、プラマニクスも縋る様に背中に回した手でドクターのコートを掴んでいた。
そして何度かチュッ、とリップ音をさせながらバードキスを繰り返してどちらともなく口を僅かに開けた瞬間、引き寄せられるように唇を重ねればそのままこわごわとドクターはプラマニクスの口内に舌を割入れた。
プラマニクスの身体が僅かにピクリと反応するが、ドクターがそれを拒絶だと誤解しないようにと思ったのか彼女から侵入してきたドクターの舌に自分の舌先を触れさせる。
舌先に甘い痺れを感じながらプラマニクスの小ぶりであってもしっかりとした肉食獣のようにしか鋭い牙に時折舌が触れるのを感じた。
最初は双方遠慮がちだったが、お互いに舌先を触れさせてゆっくりとザラりとした舌を触れさせ合っていると段々遠慮が無くなって本能的になり始める。
「んっ、あっ」
プラマニクスが少し離れた時に短く声を出せばそれに触発されたかの様にまた舌をねじ込む。
いつの間にか唾液の絡む音がし始めた舌の絡ませあいに、プラマニクスのコートを掴んだ手に力が入るのを感じドクターも抱いたプラマニクスの腰を更に自分の方に寄せながら彼女の口の中を貪る。
少し逃げそうになるプラマニクスの舌を捕まえる様に根元から舐めてそのまま歯列をなぞり牙の形を縁取るかの様に舌を這わせて時々それを阻止しようとするかの如く押し付けられる彼女の舌をまた自分の舌で絡めて扱く様に舐める。
ドクターの視界の先で、プラマニクスの尾がゆるりと横に逸れる様に動いているのが見えてゴクリと喉がなる。
と同時にそれが、本能的に男を受け入れようとし始めている予備動作だとドクターが察知した時最後の理性がストップをかけたのだ。
(何の準備もしていない。そもそも相手は巫女だぞ、処女性が必要かもしれない!)
と。
無駄に、理性が働いたのである。
自分の方の下半身ももう十分に準備段階に入っているにも関わらず。
内心このまま押し倒してめちゃくちゃに抱いて暴きたい本能と大事にしろ。まだ早いと引き止める理性の板挟みの中そっとプラマニクスと重ね続けた唇を離せば、お互いの口から透明の橋をかけるように糸をひいているのを見てまた下半身に熱が集中してしまう。
それに目の前の息を切らせて肩を上下させるプラマニクスの顔も既に生理的な涙で潤んで、頬の紅潮も合わさりドクターの理性を素早く減らしてくる。
「……?」
物足りなさそうに、小さくドクターの名前を呼んだプラマニクスを見てやはり理性を捨てるべきだとまた彼女に手を伸ばした時、空気を一転させ切り裂く機械的な着信音が鳴った。
驚きつつも焦ってその連絡に出れば
『ドクター今きっと仕事中ですよね?そうですよね?輸送部隊がレユニオンに狙われているそうです!!急いで護衛任務についてください!』
と我がロドスCEOの声が響く。
「了解した………………。」
と今までのどんな反応よりも地に落ちた声でドクターがそう告げるとブツンッと通話を切る。
「っっっっ!!!」
「……殲滅させましょう、1人残らず。全員雪風で凍らせて雪の下に埋めます。」
声にならない怒りで尾を逆立ててから 唸り声を上げて殺意を顕にするドクターと、同じように怒気を孕んだ目で聖鈴を手にしたプラマニクスがこの後の作戦で目まぐるしい戦果を上げたのは言うまでもなかった。