「お二人共体調が悪くなったりはしてませんか?」
「あぁ……その辺は問題ない。プラマニクスもそうだろう?」
「えぇ…今のところは。」
後方で待機していたアーミヤが、先程サルカズ術師の逃げる寸前の最後っ屁的な攻撃を食らってしまったドクターとプラマニクスを心配するも、2人曰く「ダメージらしい物は感じなかった」との事だった。
共に任務をこなしていた医療オペレーターのフィリオプシスも「問題は見当たらない」との見解を示している。
「最後っ屁にしては、随分と意味が分からない事したよねぇ…。それにしてもドクターを狙うなんてね、せのせいで驚いて仕留めそこなっちゃったし。」
ブンッ、と口元を歪めながらも不機嫌そうに愛刀を振ったラップランド。
「まぁ、ネコダマシ的なやつだったんじゃない?」
と、そんなラップランドに苦笑いを浮かべながらエクシアも返す。
「……そう言えば、ドクター。」
オペレーター達が2人に大事無いと分かり安堵から談笑気味に意見を交わすのを見守っていたプラマニクスが、隣に立っているドクターをマジマジとみる。
「なんだ、プラマニクス。…今日もお前はとても可愛いな。」
プラマニクスに呼ばれたドクターが返事を返し…突然そんな事を口にした為にオペレーター達が一斉に2人に振り返って動きを止めたあとぎこちなく…シルバーアッシュとクーリエを見た。
この任務にはこの2人もいたのである。
流石のシルバーアッシュも突然の事で面食らったような顔をしているし、クーリエも愛想のいい、いつもの顔のまま止まっている。
(これはプラマニクスが怒るやつだ…)
と誰もが思った時、
「えぇ…ありがとうございます、ドクター。ドクターも、その…とてもカッコイイと思いますよ?先程、私の手を引いてくれた時なんてドキッとしてしまいましたから。」
「っ」と息を飲んだのは果たしてオペレーター達の誰だったのか。
全員が全員言葉を失って2人を見つめる。
皆より後方にいるシルバーアッシュの方に向いて、その言葉に出来ない顔に「ぶふっ!」と吹き出したのはラップランドでそれを手で抑えて制したのはエクシアだった。
「そうか、プラマニクスの…綺麗な声でそう言われると、今にも抱きしめたくなってしまう。」
そう言いながらドクターがプラマニクスに手を伸ばしかけたところで『流石にこれはおかしい!』と慌ててアーミヤがドクターの腕を掴んで止めに入った。
「ド、ドクター!?ほんとにっ、ほんとにっ体に異変はないんですよね!?」
慌てたアーミヤにプラマニクスに触れるのを邪魔をされた事で不快に感じたのかジロっと見ながらドクターは「ない」と短く返す。
そのドクターとアーミヤの様子を見ていたプラマニクスが口を開く。
「むぅ……仕方ないとはいえ妬いてしまいますね。離れてください。」
と言うなりドクターの片腕に抱き着いて引っ張る様にしながら少しむくれたプラマニクスの頭を、いつの間にか離されている手でドクターが撫でた。
「安心しろ、俺はプラマニクスの物だ。」
目の前で繰り広げられ続ける事態に『なんだこれは』と一同が思う中、口を開いたのはエイヤフィヤトラだった。
「あ、あのっ…もしかしてさっきのアーツは身体へのダメージでは無くて精神に干渉するやつだったのでは…。」
目の前の出来事に呆然としすぎてその考えにたどり着くのが遅れたとしか言えない。
聴覚に問題を抱えるエイヤフィヤトラからドクターとプラマニクスのやり取りは明確に聞こえないものの明らかにおかしい2人の行動を見ながらそう言った傍から2人の距離がもっと近くなっている気がする。
「ドクターの手は……大きくてとても男らしいのに見た目と裏腹にいつも優しく撫でてくれますね。」
「当然だ。俺は、お前が世界の何よりも大事だからな……。」
そう言いながらプラマニクスの頬を撫で、それに甘える様にすりついているプラマニクスの姿に見てはいけない物をありありと見せ付けられている状況になってしまいフィリオプシスがよく状況が分かっていないイフリータの目を覆う。
「ねぇ!これってこのままどこまでいくのかな!?最後?最後までイッちゃう感じかな!?」
「オイ!なんで隠すんだよ!!なんだぁ!?ドクターとあのシロモフモフはなにしてんだ!?」
ラップランドがとうとう決壊した様に笑い始めたらイフリータもそれに合わせて大声でフィリオプシスに文句を言う。
「ちょっ!それはさすがに……いややっぱダメダメ!!リーダー!!」
ラップランドに『そんなことあるわけがない』とエクシアが言おうとした時には既にお互いゴロゴロ言いながらおでこをすり合わせドクターがプラマニクスの首筋に顔を埋めようとした辺りで、エクシアが駆け出した。
それに合わせて茫然自失となっていたシルバーアッシュをクーリエが引っ張りまくって正気に戻しドクターを止める為に駆けていく。
しかしラップランドは『このまま行くとこまでいかせようよ!』と制止するのに乗り気ではなく逆にエクシアを止めようとするし、アーミヤは思考停止だしエイヤフィヤトラはそんなアーミヤを気にかけながらドクター達を見ないようにして、フィリオプシスは無言のままイフリータの情操教育に良くない物を見せまいとしている中「あっまてよ!オレサマあんな感じの見たことあるぜ!!サイレンスとサリ」と言った辺りで口を塞ぐ方に移行していた。
なんとも阿鼻叫喚の大騒ぎである。
その中で唯一自由に動けたのは今の今まで理解が追いついていなかった為無言でフリーズしていたメテオと、ドクターサイドを止めに行ったシルバーアッシュとクーリエのみであったが、なんとか引き離しに成功した。
「おっ、落ち着いて!?」
この2人の睦みあいを見ていると昔、森でたまたま動物の交尾を目撃してしまった時の様ななんとも言えない気まずさを感じてしまう、と…メテオは思いながらとりあえずプラマニクスを止めれば、心底不服だと言わんばかりの表情を向けられた。
「メイユウ、ドウシタ…。」
「シルバーアッシュ様の喋り方がっ!それにドクターも、おちっ…力強っ!!」
ドクターの方は戦闘慣れして鍛えている男2人掛かりでようやく止められているといった感じだった。
それにシルバーアッシュは多分心が何処か遠くに旅立っている。
クーリエは最近、シルバーアッシュがドクターとプラマニクスのイチャつきを目撃してしまう度に酒の相手をさせられて少し疲れているので『これはまた面倒くさくなる』と内心辟易していた。
すったもんだありながら、なんとか両者を落ち着けたはいいもののまた油断すると引っ付き兼ねないととりあえず少し距離を置かせた。
「プラマニクスさん、あの……今はどんな気分ですか?」
「早くドクターに抱き締めて欲しいですね。」
エイヤフィヤトラの問に、手持ち無沙汰なのか豊かで兄妹の中で1番大きな自分の尻尾を抱き締めて撫でながらプラマニクスは不服そうな顔をしながら返した。
「少なくともアーツを受けて少しの間はこんな事なかったのに……時間差ですかね?」
「そうかもしれませんね。」
と、アーミヤとエイヤフィヤトラが話始めてその辺はあの二人に任せようとエクシアは「つまらない」と文句を言い始めたラップランドを放置してプラマニクスに話かけた。
「いやぁ、なんだか大変な事になっちゃったね?」
「大変……ですか?特にそうは思わないのですが。」
「うん……いや、周りがね…。」
「むぅ?むしろ折角ドクターといい感じになっていたのに邪魔されて私の方が大変です。……もっとずっとドクターと一緒に居たんですからね?私。」
と三つ編みを弄りながら少し拗ねながらも恋する少女の様に頬を赤くするいつもの様子とはかけ離れているプラマニクスを見ながらエクシアは心の中で(主よ……どうか早くこのアーツの効果を終わらせてください)と祈りを捧げるしかなかった。
一方ドクターの方と言えばなんとか正気を取り戻したシルバーアッシュと、肩で息をするクーリエにたち塞がされていた。
「俺はプラマニクスの所に行って今すぐ抱き倒した……違う、抱き締めたいんだが。」
「抱きたお……時と場所を考えろ盟友。ではなくて、そういうのは2人きりの時に……これも違うな。とりあえず落ち着くといい。」
「シルバーアッシュ様も…はぁ、落ち着いてください。」
最早この場に正常な状態の者は自分しか居ないんだとクーリエはため息を吐いた。
なんだって大変な労働である戦闘を終えた後こんな目に合わなければならないんだ……ヤーカの兄貴が居てくれたらと考えずに居られない。
「………シルバーアッシュ、この際だが……俺はとてもとてもプラマニクス…もといエンヤを愛しているのだが。」
「なに。あぁ、そうだろうな。ん、そうだろうな?」
「それこそシルバーアッシュとエンヤが兄妹であろうがその情に勝りそれよりも深く愛していと言う自負があるのでこの先も何をしてでも一緒にいるつもりなんだが…………義兄さん、もしくは兄弟と呼ばれるならどっちがいいんだ?」
「…ん??
ん?……今日は口数が多いな盟友よ。」
「誰かこちらに増援をー!」
ドクターの熱烈な妹への愛と、突然の義兄さん呼びに戸惑い顎を触りながらとりあえず思った事を遠い目をしながら言うシルバーアッシュに『もう1人では手に負えない』と匙を投げたクーリエが女性陣に助けを求めたらそのままプラマニクスも追従してきて結局また2人はゴロゴロと抱き合って「ようやく抱きしめられた」「ずっとこのまま腕の中に居させてください」と語り合いながら擦り寄り始めたせいでイキのいいラップランドまで舞い戻ってきて最初の状態に戻る事になったのだった。
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「盟友が……私を兄と……エンヤの兄は私で、盟友の兄も私…」
「今日の若君はいつも以上に飲むな…。」
「いやぁ、目の前であれだけエンヤお嬢様とドクターの仲睦まじい様を見せ付けられて良く真銀斬しなかったなって……。」
虚ろな目でロドス内に併設されたバーカウンターにてひたすらショットで酒を飲むシルバーアッシュとそれに付き添わされる男2人の背中はどこか疲れを滲ませていた。
「エンヤ、ところでシルバーアッシュの事をなんと呼ぶかなんだが………」
「あの人の事は好きに呼んだらいいでしょ!!!それよりっ!…………も〜〜っ!私は!!!!」
これはドクターの自室で平然としているドクターと、顔を覆って布団に潜ったまま出てこなくなったプラマニクスとの間で起きたやり取りである。
アーツを受けた時の記憶が消える事は無かったのであった。