信頼度200%になったプラマニクスの会話バレあります。
イェラグとか巫女の設定やらも想像の範疇。
ドクター側の視点もあげるかは悩み中です。
雪境の小さな宗教国家イェラグ。
天災の影響は少なくとも年中雪に鎖された過酷な環境と閉鎖的で文化の進歩も遅れた国。
そんな国で私は、3族貴族会と言う名家の1つシルバーアッシュ家の長女として生を受けた。
優しい両親としっかり者の兄と、そして産まれて間もなくてぷくぷくと柔らかく愛らしい妹…何不自由のない生活。
しかしそれはある日終わりを告げた。
政敵による両親の死と、もみ消された事実。
そこから失意と悲しみに包まれた暗雲の中で目まぐるしく変わってしまった日常。
そんな生活が続き、お兄様が私と妹を育て留学した後……私は。
兄の決断は許せないものであった。
選聖され過酷な巫女に至るための道すがら、私はカランド神の加護を受けれず道半ばに倒れた少女達を見ながらそう思いつつ進んだ。
進む道中、決まりを決して違えぬ様に進みながら脳裏に幾度も過ぎったのは過酷な雪境であれど温もりに溢れていた家の中、家族の団欒と陽だまりの中で感じていた母の膝の上で一緒に楽しんだ編み物と、父に読んでもらった本や兄に背負われた思い出……泣いてばかりだった妹が私を「おねえちゃん」と呼んだ日の事だった。
負けてたまるか、こんな所で。
全てを奪われ続けたままで、終われない。
そうして私は、意地と…きっと神の加護もあったのかもしれないが天道を進み山頂の神殿へ鐘をかけるに至った。
巫女になり神の伴侶などと謳われる頃には、お兄様と身内として会話する事は……無くなった。
私は私の願う事の為に行動していたはずだった。
なのにそれが、ロドスに駐留するようになってから揺らぎ始めてしまった。
最初は変な男に気に入られたと思ったのだが、ロドスの切り札とも言える司令塔である『ドクター』相手であったし、上手く接していれば自分に不利益はないと思っていたのだ。
もし裏があったとしてもきっと伊達に蔓殊院の長老団や政治家達との腹芸をこなしてきていないのだから、こちらがやられっぱなしにやる事や利用される事ばかりではあるまい、と。
……しかし実際はどうだ、ドクターと呼ばれる彼は私に裏なんて持ち合わせていなかった。
秘書として付き添う様になってから分かった事は、司令塔として仕事をしている時は的確な判断を瞬時にくだすのに平常時はまるで考えず物を言う事。
『プラマニクス………あぁ、また昼寝か。』
『ちょっと返事が遅れただけでそういう事言わないで貰えませんか?』
『……今日はいつもより、髪の毛のクセが激しいな。』
『……それ女性に言うにはすっごく失礼ですよ。』
『お前の戦い方は……相変わらず、危なっかしい……いっそ部隊から外そうかと、たまに思う。』
こういう物言いのせいで何度オペレーター達が頬を引き攣らせ、目を点にしたり言い返してきた所を見ただろう。
その度に「事実だ。何故怒る」と言われたオペレーター達が何度ドクターに言い返すだけ無駄だと肩を落として呆れただろう。
『…いい事があったか?今日は何時もより、笑顔が多い……俺も嬉しくなる。』
『流石だな……すごい度胸の持ち主だ。あそこで、震える事もせず、退かないとは。』
『プラマニクス、今日は…顔色が優れてない……寝ておけ』
その癖たまに私の容姿や行動を表情1つ変えずに褒めてきて、私の体調を1番に心配する。
私が、何度面食らった事か。
もう1つ、ドクターは幼い相手にはとても優しく……接する事。
初めて見た時は驚いた。
戦場に立つには些か早すぎる歳の頃のオペレーター達にこっそりと補給部から盗んだお菓子を配っては怪我をしてないか聞いて、しっかり寝ているか、怪我をしていないかを聞いて回って……その時も表情が変わる事は無いけれどそれでもドクターなりに心配しているのは伝わった。
そしてなりより妹も、疑いを一切向けずに懐いて揶揄いの対象としていた事が私から警戒心を奪う切っ掛けだったかもしれない。
そんな風変わりなドクターと過ごす内、私はいつしか巫女として貼り付けるのに慣れた巫女としての笑顔の仮面を捨てていた。
常にベッタリと背中に張り付いているかのように背負わされたイェラグ全土の名誉、あらゆる思惑の中に立たされる自分自身の立場、あらゆる職務の重責…その全てが彼の傍に居る時だけは軽くなっていくのが分かった頃に、私はドクターに恋をしたのだと気付いた。
いつか本で読んだ物語のように、母に『いつかエンヤにも分かる』と言われた心が落ち着かなくなる感覚を…けれど巫女の立場になって……『プラマニクスである私』はフワフワとするその気持ちに気付いた時に蓋をしなければと理解して、泣きたくなった。
唇を噛み締めて、きつく目を閉じて…数珠を手に祈るように合唱して膝をついて何度も何度も1人蓋をしようと育ちつつある想いから目を逸らした。
だからドクターとどれだけ距離を縮めても、どれだけ心地よく思える言葉をかけられても一定以上心を近付けない様にした。
これ以上、彼の傍にいる事でまるで家族と過ごしたあの暖かくて陽だまりの中にいた頃の様な穏やかさを生み出してどんどん私の心の中で存在を大きくしていく事は……避けなくてはならなかったのに。
『どうやってここに来たのですかっ!?くっ、貴方の脚、二度と使えぬよう凍らせてっ』
ドクターとの事を考えるのに没頭していた私が佇むお気に入りの場所に、不意に現れたドクターにそう言い放った時の眉を寄せて明らかに表情が変わった姿を見た時…
(あぁ……きっとドクター、こんな顔を見たのは……、私が初めてなのでしょう。)
と思って私の心が満たされるのを感じた。
『その物騒な物言いは……シルバーアッシュ家の、血筋なのか………。』
それだけ言ってすぐに何事もないかのように私の前にぶっきらぼうに突き出されたコーヒーの缶を、私は受け取っていた。
『……ドクターも、ここで少しのんびりしませんか?えぇ、サボりってやつですね。………ここからの眺めは格別です………2人だけの、秘密…ですよ?』
コーヒーを受け取って尚立ち去る気配の無いドクターに私はそう告げていた。
ドクターの言葉に言い返すでもなく、ただ私のお気に入りの場所を……他の誰でもなくドクターと、彼と共有して一緒にその場所からの景色を眺めたかった。
そのまま1口コーヒーを口に運んで『苦い』と呟く私の横で
『子供舌…か……。』
そう言って少し笑ったドクターが、私の気に入った景色を眺めている横顔を見ている。
『……確かに、良く見付けたな……、とても綺麗だ。』
子供舌と私を揶揄った言葉では無いのはドクターを知るうちにもう理解していた。
ただドクターは事実を述べているだけで、続いた言葉もきっと私の顔を見ながら言っただけの、彼の何時も通りの何も考えていない……感想で……。
(そう、何も無い。私とドクターの間にこれ以上進む物なんてあってはならない。)
『そう、でしょう?……本当に、本当に……特別…なんです。』
『なら………今度から、サボりの邪魔はしない。………すまなかった。』
『サボりではありません。ですが……、これからも来てくれて構いませんよ。』
私が、邪魔をしたのだと謝るドクターに間髪入れずにそう返した時…私は既に手遅れだったのだろう。
もう、蓋をする事なんてままならない程に大きくなっていた癖にそれでも私は『蓋をして目を背ける事』に心力を尽くし『これは決して好意なんかじゃない』と思い込む。
ドクターの顔を見ることもせずに、苦いコーヒーを口に入れてはひたすら込み上げてくる想いごと押し流して飲み下す。
これを飲み終えたら、何事もない何時ものドクターと『プラマニクス』に戻るのだ。
私ならできる。
なんせ私はカランドの巫女……凍てつかせる事は得意なのだから。
けれどそれでもこの後何度も何度もドクターは私の心を溶かそうとして踏み込んできた。
どれだけ私が冷たい返しをしてもどこ吹く風で、自分の言いたい事を言いたい様に言っていく。
表情の1つも変えないで、それに加えて強引で自分勝手で振り回してきて。
『やりたい事をやっているだけ』
なんて言って私と過ごすための道具をどんどん執務室に揃えていって。
私が言われる度に嬉しくなる言葉をどんどんこぼしていく。
『この時間が、続けばいいな。』
貴方と一緒飲むお茶も、貴方と食べるお菓子も誰と口にするよりも美味しいって感じるんですよ?
『えぇ、本当にそうですね。』
絆されてしまう、凍てつかせようとした心がもう『限界が近い』と悲鳴をあげる。
それでも、耐えなければ……私達に待つものはきっと幸せでは無い。
それなのに、ドクターは私に贈り物をする。
本に、裁縫道具一式に、特別な組み紐に。
どんどん彼を忘れる事が出来なくなる物を渡される。
そして私もそれを喜んで受け取るのだ、私に贈り物をしてソワソワと落ち着かないドクターや私が受け取ったのを見てその仏頂面が解けるように柔らかくなる顔を見て心がトクリ、トクリッと熱く脈打つのを感じながら。
私だけ…私だけに見せる顔でいて欲しい…紡ぐ言葉も私だけに向けていて欲しい。
だけどきっと叶わないし、いつか私達に訪れるのは最悪の別れかもしれない……
ドクター、もし貴方と離れることになってもそれでも私は心の何処かで想い続けるのだろう……貴方の、特別になれたら。と。