話は現在に戻る。
CMの撮影現場に連れてこられた
垂れてきてしまうかもしれないのだ。自分のあそこの奥にある
前日の夜は一晩中たっぷりと子宮の中に精液を出されたあと、樹のおちんちんでそれに栓をするように繋がりながら寝て早朝までをすごした。膣の中にあった分は軽く流して拭いたものの、奥からたまに溢れてくる量に関しては予想がしづらい。
以前も何度か平日前の夜に樹に抱かれたことがあった。中学生時代は自宅で。高校に入ってからは自宅とホテルで。一応きちんと学校には行ったのだが、樹が激しかった日はどうしても寝不足になるので、次の日の学校は睡魔との戦いになってつらかった。
中に出されてしまった分が次の日の学校で早々に垂れて出てきてしまって困ったこともなくはない。さすがに匂いとかでバレたりしたら恥ずかしくて死にそうになるだろう。薄い本みたいに脅されるのも嫌だ。そんなときは早退するなり休むなりするようにした。
今日も、あきれるくらいに出されたし、学校に行こうかどうしようか迷っていたのだ。登校途中に眠気に襲われて、帰って休むほうに傾きかけたところでヒゲ男に攫われてきたのだが。そこだけ見ればたいそう迷惑な話だった。
さすがに撮影中に垂れてきてスカートに染みたりしても困る。空想上のお父さんも困るだろう。柊さんに生理用品がないかどうか聞いてみることにした。
タンポンとナプキンを併用すればなんとかなるだろう。いくらなんでもスカートのなかを撮影したりはしないだろうし。
表情に疲れが出たり、寝不足でくまが出ていないかも気になった。準備にまだ時間がかかると聞いて、すこしでもいいので仮眠させてもらうことに決めた。
撮影前には、衣装を決めて簡単な化粧をする。化粧はカメラ映えするように少し整えるだけだ。すっぴんで調理しているように見えなければいけない。
制服が自前なのだけれども、そのままでいいのだろうか。聞いたがかまわないというか自然な感じでいいらしい。普段から着ているものなので、傷んでたりほつれが映像で目立ったりしないかだけが心配だった。
エプロンを制服の上から付ける。制服のリボンとかは見えているが、それほど特徴のあるかたちでもないし、問題にはならないだろう。
景はいきなり最初の撮影テストで、何も考えずに普段どおり手際よく調理してしまって叱られた。
たしかにCMのコンセプトに合っているとは言いがたい。まだすこし頭が回っていないのかもしれない。
「お前、『芝居』を何だと思っている?」
「…………思い出すこと?」
「分かってるなら、早く
「……父親に料理を作ったことないの」
「相手は誰でもいい。初めて手料理を作った日を思い出せ。俺が撮りたいのはお前の愛情だ」
愛情を持って、初めて誰かのために作った料理。たしか、ルイとレイのために作ったカレーだった。お母さんの代わりにおいしく作ってあげて、ふたりにおいしいねって笑って欲しかった。
実際には失敗して、コゲて苦くて、食べきることもできなかったけど。
あんまりなひどさに、三人で顔を見合わせて、笑ってしまった。それって一応、目的は達したと言えるんだろうか。
いまの景の料理の腕を知ってる者が聞いたら、誰もが驚くだろう。でも三人にとって、それは大切な思い出だった。
「カット!! OKだ!」
墨字の声がスタジオに響いた。景は過去の感情から戻ってくる。
いまのでいいのだろうか。確かに愛情は出ていたと思う。はじめてのぎこちなさも。
でも、父のためにというのなら、たぶんもっと別の――。
「……黒山さん。いまのでもいいんですけど、できればもう一回撮影お願いしても、いいですか?」
なんとなく、私の父ではなく、私の子の父に向ける愛情が見えるCMのほうがいい気がした。
『父の日にシチューを』
脳裏に大好きな樹のことを思い浮かべる。過去の記憶ではなく、未来の記憶。彼が子供の父親で、幼い子のために一生懸命働いていて、そのために私は美味しいシチューを作ってあげたくて……。
料理には苦手意識があってこれまでシチューは作ったことがなかった。でも市販のシチューのもとは買ってきた。箱の説明どおりに作ればそんなにおかしなものにはならないはず。鶏肉と玉ねぎ、人参にじゃがいも。皮を向くのはピーラーでもいいんだろうか。包丁では自信がない。
表情が緩む。先ほどまでに感じたのとは違うかたちの愛情が胸の中に湧き出てくる。
70億分の1の相手。彼と出会い、結婚し、彼の子供を授かって、無事に産むことが出来たという奇跡への感謝。生まれてきた子供にきちんと愛情を注いでくれる父親という存在に対する憧憬。
母というよりは女の顔が混ざってしまったかもしれない。自分で提案してはみたけど、あまりよい映像は撮れていないような気がする。
シチューをゆっくりと作り終わると、墨字の声がかかった。
「カット!! こっちもOKだ!」
「……OKなの?」
「ああ。いい表情の演技だった」
それで、ひとまず撮影は終了となった。
ずっと撮影を横で見ていたプロデューサーとクライアントも、あっけにとられたような表情ではあるけれども満足そうだった。いい撮影になったのかもしれない。
これが、
「どっちを使うの?」
「……プロデューサーとクライアント次第だな。俺はどっちもいい出来だったと思う。だが方向性はかなり違う出来になった」
撮った映像のチェックをする墨字の後ろから、景はモニターを覗き込んでいた。カメラで切り取られて映像になった自分を見ると、なにか不思議な気分になる。
「最初のコンセプトからすれば前のテイクでいいだろう。ただあとのテイクも風変わりだがかなり面白い映像になった。父への料理を作る姿にはちょっと見えないが、クライアントがOKを出せば世間の話題くらいにはなるかもな」
自分で思っていたよりも、映像の自分は綺麗だった。
「まあ、枠や方向性がかっちり決まってるテレビCMじゃなくてウェブCMだからな。両方採用で同時掲載っていう可能性もある。コンセプトがボケるって嫌われることもあるから、なんとも言えないが」
墨字の映像監督としての腕がいいからだろうか。流れている映像に見とれてしまう。何時間でも見ていられそうだった。
帰ったら、樹とルイとレイのためにシチューを作ろう。そして皆で一緒に食べて笑顔になろう。
話されていた墨字の言葉は、半分も聞こえていなかった。後で叱られた。
『父の日にシチューを』
とある食品会社が自社のシチューのもとのウェブCMとして公開したその映像は、父の日にはじめてシチューを父親のために作っている清楚な美少女のあどけなさと家族への愛情あふれる表情が一部で話題を呼んで人気となった。
そして、しばらくして公開された別バージョンのCMでは、その美少女がはじめて異性に料理を作ってあげようと頑張る、愛情に加えて女としての恋と色気がにじみ出す表情がさらなる話題を呼び――。
二ヶ月後、その16歳の美しい少女が、子供を授かったためにイトコの幼馴染的な男性と結婚するという話題で、日本中の青少年を絶望の渦へと叩き込んだ。
のちの出産日から数えると、CM撮影の半月ほど前には妊娠していた計算になり、おなかに愛しい命を宿した状態であのCMを撮影したことが知られることになる。
人生経験が深いある程度以上の年齢の人間は、CMで見せた少女の表情にその事実で納得し。
若い青少年の一部は、そのCMで少女の見せる表情と色気と裏の事実に勃起し、性癖をこじらせたという。
ある意味、少女が出演するCMとしては伝説となった。
当初は未成年の妊娠出産と、それを助長するような食品会社のCMへの扱いに非難もあったが、その後に結婚した夫婦の仲睦まじさなどが伝わるとそれも下火になり、未成年の妊娠出産への偏見をわずかばかりとはいえ解消してみせた。撮影に偶然立ち会い、掲載を強烈に押した役員の評価も上がったという。
そのシチューのもとは、品質自体はやや上質だがシリーズの食品としてはありふれたのものであったが、一時期話題をさらったことで幅広い世代が知る人気商品となり、長きに渡ってヒット商品として世に流通しその会社を支えることになった。
ささやかな感謝として定期的に食品会社からはそのシチューのもとがまとまって贈られ、彼女は妹弟を含めた家族みんなでシチューを作って食べているという逸話が残っている。
『
妊娠結婚の事実が知られたのちに別バージョンのCMに誰かが
いまでは子の父になった、当時は恋人だった夫に手料理を食べてもらうときには、彼女はいつもCMに似た笑顔を見せるとは、友人たちの談である。
< 父になる日にシチューを 終 >
いただいた感想とその返信からこのお話は生まれました。
この場を借りてお礼申し上げます。
とある日のトレンドワード
#美少女CMネトラレ