問答無用に放り込まれたデスアイランドでのデスゲームは進行していた。すでに何人も死んでおり、もうスマホの指示を無視する者はいない。
『○○をしろ』
『クラスメイトを一人殺せ』
『女子のクラスメイトを一人殺せ』『男子のクラスメイトを一人殺せ』
指示に逆らえばどちらにせよ誰かが死ぬ。彼らに選択の余地はあまりなかった。
だが今日はまだ誰も死んでいない。すでに男女それぞれのスマホに別々に指令は出ている。『女子のクラスメイト○○を殺せ』『男子のクラスメイト○○を殺せ』と。
指令に関してはそれぞれのスマホに来る相手の名前が異なる。誰か一つの指令が遂行されれば本日のノルマはクリアされる。カレンが情報として共有しようと声をかけてはいた。だが、成功しているとは言いがたい。
誰もが、他のクラスメイトのスマホに自分の名が載るのを恐れていた。そしてそれを知ることを。知ったら、はたして平静でいられるのだろうかと。その相手に先に手をかけはしないかと。
指令外の殺害や反撃をした際のペナルティの有無も不明。極端な話、誰かが指令を待たずして自分以外の全員を殺せば勝利条件を満たすのかもしれない。彼らには確かめるすべはなかった。
ある者は絶望し、ある者は諦め、そしてある者はこの状況で精一杯あがいていた。
スマホのアプリで女子の一人から呼び出しがあった。1対1のメッセなので受信者は自分だけだろう。この島に来るまでは喋ったこともほぼないコだった。すこし恐ろしくなるような美しさを持つ美少女。独りが好きなのかあまり他の女子と仲良くしてはいなかったけど、容姿だけでも自分とは対極にある。そもそも学校生活で接点がなかった。当然、相手の指令の内容は知らない。
呼び出されたからには殺される可能性が一番高い。複数人や不意打ちでの待ち伏せがあれば容易くやられるだろう。女子が男子から身を守るために何人か、あるいは全員で手を組んでいても不思議はない。
でも彼女が?という疑問はあった。そういったことの正反対にいそうな存在。いまの状況にも独りで淡々と対応し、出来る限り生き、ダメならば独りで死ぬ。そんな印象があった。
次点で、こっそり共闘しようという申し出だろうか。だがこっちが彼女を知らないように、彼女も自分を知るまい。よく知らない男を仲間にしようとするとは思えない。よく知ってる相手ですら、いま信用できるかどうかも怪しいのに。
もちろん、呼び出されても行かなければいいだけではあるのだが、行くことに決めていた。
これだけ大掛かりなデスゲームの舞台が整えられて、もう実際に死人も出ている。遊びや冗談ではすまない。
主催者の正体も不明。最終的には、一人か数人を残してみな殺されるのだろう。ならば自分が生き残る可能性など皆無に近い。どうせ数日中には自分も死ぬ。
今日殺されて他のみんなが生き残るというのなら、それもいい。自分の命だというのに守るのが面倒になってきていた。特に、自分を守ると他の誰かが死ぬという二択がきつい。じわじわと、心を削ってくる。お前は、他人より生き延びるにふさわしいだけの人生を送ってきたか?
指定場所は廃ビルの一室だった。念のために部屋を2階に変更してくれと送る。いざとなったら窓から逃げればいい。死んでもいいと思いつつ警戒する自分がおかしかった。
すぐにOKのスタンプが返ってくる。
部屋に着いたものの、まだ誰もいなかった。窓を開けて外を確認していると、ゆっくりと階段を下りる靴音がした。ひとつだけ。
「……きたんだ」
ケイコが姿を見せた。意外そうに、その澄んだ瞳が見つめてくる。
「呼ばれたからね。……なんの用なの?」
誰かが彼女のスマホを使って騙そうとしている可能性もあるかと思っていたのに、そうではなかった。まるでいつもと同じ淡々とした様子で話し出す。
「取引できたらと思って」
「……なにを?」
「私の身体を抱くかわりに、カレンと私を殺さない」
「え、え? 僕が?」
「そう。あとこれはカレンには秘密。それだけ」
「君とセックスをしてもいいってこと?」
「特殊な性癖とかなければ。……もしかして、初めて?」
「う、うん。経験ないと、ダメ……かな」
「別にかまわないわ。私は初めてではないから、わからないところがあればおしえてあげる」
「終わるまでは、恋人みたいにしてくれていい。まずはこうして、だきしめて」
「うわ、おっぱい柔らかい。なんかいい匂いする」
「好きなことしていいよ」
「触っても……いいの?」
「オンナノコにしてみたかったこと、ない? キスでも、胸でも、それ以外でも。彼女にするようなことならなんでもしていい。あ、痛いことはできればやめて欲しい」
「そ、そっか。なら……」
「……そのさわりかた、気持ちいい……優しいんだね」
「このままする……から」
「う、うわ……すごい、濡れてる……」
「で、でるっ……出して、いいっ?」
「いいよ、出して。そのまま」
「……あっ……あっ……すご……ぃ……」
「……なんで、こんなことしてるの?」
「カレンは誰も殺そうとはしない。だから私も殺さない。あなたもそうして。生き残っていたら、またしましょう」
「そうだな、じゃあまた……明日」
今日を生き残るために誰が死ぬのかはまだわからないけれど、あがくと決めたから。
「みたいなことがデスゲームの裏で起こっているかもしれないじゃないですか!」
どばどばと鼻血を垂らしながら、スターズ組の
「いや、極限状態やし生き残るためにそーいうコが出てくるのはまあええねんけど……原作無視でよくはないけど……なんでそれがケイコなん?」
よりにもよって男子を誘惑していたしてしまうキャラがなんで彼女なのかとげんなりした顔で、オーディション組の
横で妄想の中で役を演じさせられていた
「ケイコは友人であるカレンだけを生き残らせたいと思っているからですよ。そのためには、男性は全員死んでもいい……いえ、むしろ互いに争って死んでほしいと思ってる。でも彼女には武器がないから、自分の容姿を利用することにするんです」
「いや、まあおちつきーな」
「いえいえ、落ち着いてますよ! 男に抱かれるのはイヤだけど平気なふりをしてカレンだけを見てる、って壊れ方が切ないと思いませんか」
「身体を差し出してるにしては要求がささやかじゃないかしら」
「自分とカレンが殺されづらい状況を作りたかったとか? これが地味に効いててケイコとカレンが最後に残るとかはありえますよ」
生かしておくメリットもあり、残しておくデメリットもない相手だと頭の片隅にでも置いてもらえれば、生き残るという点で有利になることはたしかにあり得る。
「……結構、したたかなのね」
景は妄想の中の自分に感心していた。そこまでカレンを慕う想像はいまひとつ掴みきれなかったが。
「でも壊れてるで言ったら和歌月のほうがひどいやろ。リンが死んだのがショックで教室で竜吾を斬り殺したのはまあええとして、その後なんでうちら三人は追いかけられなあかんの?」
「台詞にもありましたけど、グルだと思いこんだんでしょうね。もしくは死んだリン以外なんてもうどうでもよくて、あの時点でおかしくなっていたとか」
「ケイコと竜吾がグルとかひどい言いがかりやわ。しかも逃げたうちら追って延々崖まで追ってくるし、かんなはとばっちりで斬られるし崖から飛び降りても追ってくるし」
「台本どおりとはいえ、あれはすいませんでした」
「……水は冷たくて気持ちよかったわ」
進行を遅らせたことで叱られたのに、景はあまり懲りていなかった。
「ていうか、これ相手誰なん?」
「イメージ的にはオーディション組の
「あーあのぽっちゃりしたコか。まあ実際どうかは知らんけど、たしかに童貞っぽい感じはあるなぁ。おとなしめの幼馴染とか義理の妹とかにはめっちゃ慕われそうな感じなのに、そんなんいなかったから女子にずっと縁はありませんでしたみたいな」
「茜さんあたりが幼馴染なら、わりとお似合いだと思うんですけど」
景も千も容易に想像ができた。のほほん系男子とおせっかい系女子でいいコンビかもしれない。
「なんでうちの名前だすんや。作中のキャラやろ!」
「最後は茜さんを守って泣かれながら腕の中で死ぬ。もしくは茜さんを守りきれずに呆然としているところを直後殺される……」
「名前ださんでええわ! なんか本当みたいな気分になってくるから!」
「もうそれでキャスティングしてもらったらどうかしら」
「アキラくんとカレンが似た感じだった気がするし、無理じゃないですかね」
「ていうか和歌月さんてこんなキャラやったっけ? まあオーディションでスターズに入ったのも最近やから染まってないのは分かるねんけど……なんかそういうのとも違う気がするわ」
「オーディションのときはきりっとしてたから、もっと生真面目な人かと思っていたわ」
景がそう言うと、千の目が泳いだ。自覚はあるらしい。
「うっ……ちょっとその……男兄弟の中で育ちましたので
「その憧れてる女の子の世界が男を誘惑する美少女しかおらんって、どう考えてもおかしいやろ!」
「そうなんですか? 参考になる本がないので、兄たちの本棚の奥に隠されている肌色の多い本を参考にしたんですが……」
「たぶん、参考にした本が間違ってると思うわ」
「そんな本は全部、燃やして捨ててまえっ!」
あんまりな千の認識にキレた茜によって、千の兄貴達のお宝本の行く末は決まった。景の燃やすよりも古本屋で売ったほうがいいという意見は却下された。参考書のダメさ加減については、のちほど茜と景からじっくりとお叱りがあった。
後日、帰宅した千の氷点下の視線にさらされながら、涙をこらえてお宝本を庭で燃やす男たちがいたという。
< R-18?デスアイランド 終 >
これを書くために原作で死亡シーンをカウントしたら8人分しかありませんでした。残りは生死不明。作中で3分の1しか死んでないデスゲーム……。