抱くのならちゃんとしたホテルに行こうという
綺麗なホテルの一室で樹に抱かれるのに憧れないでもなかったが、ずっと住んでいる見慣れた部屋で抱いてもらうほうが安心する。なにより無料である。景は家庭的かつ貧乏性だった。
自宅は自宅で双子が突然帰ってきたらどうするのかという問題はあったが、樹が
「そのときは風呂場にでも飛び込めばいい」と言えば
「風呂場で続きをしたら声が響くからダメよ」と景が返した。
いや、景だけ裸の理由がつけばという意味なんだけどと樹は苦笑する。樹は下だけ履いてしまえばなんとでも誤魔化せるだろう。
一瞬遅れて景も自分がなにを口走ったのかを理解して赤くなった。
まあ、ルイとレイになら見られてもいいか、くらいには思っている二人である。
樹は双子とも仲が良かった。別に見られたいわけではないし、実際に本当に二人が物理的に繋がっているところを見られたらかなり恥ずかしい思いはする気がするが。
後日、悪気もなく同席した人にぽろっと暴露されそうなところも恐ろしい。
……とりあえず、その問題は棚上げすることにした。
そういうことをする準備として身体を身綺麗にするのも恥ずかしいし、かといってそんなつもりで手入れのされていないままの身体を余すところなく樹に晒すのも恥ずかしい。これでも女の子なので。
もちろん、樹が来るのはわかっていたので今朝シャワーは浴びて身綺麗にはしていた。その後に汗とか匂いとかが増えていなければ問題はない……のだが。どうなんだろう。
している途中で色々と触れられたり舐められたりするものらしいし。変な味とか匂いとかしてたら困る。とても困る。具体的には恥ずかしくて死ぬ。
「大丈夫だよ、汗臭くもないし。むしろ景ちゃんからはいい匂いがするし、肌は綺麗だし毛は薄そうだし。まあ、どんなだったとしてもたぶん興奮するけど」
「樹おにーちゃんはそういうところ、気遣いができそうなのに残念だって女性から言われたりしないかしら?」
「……言われる。ここは一緒にお風呂に誘うべきところだったのかな……」
「残念度が増したわ。これから抱く処女の女子中学生と明るいなか裸で洗いっことか、犯罪臭しかしないと思うの」
「まあそうだよね。でも先でもあとでも景ちゃんが身体を洗ってる間ずっと待ってるとか無理。気力が持たなそう」
というやり取りの末、シャワーは浴びずにそのまま続行ということになった。別々に入って一度仕切り直したら冷静になって行為自体を続けられなくなるかもという懸念のほかに、相手の体臭やその他に互いに微妙に興味があった可能性も否定はできない。
ふたりとも、いまからする行為に緊張していた。布団を前に座り込んで向かい合っているのに、視線があからさまに泳ぐ。
景は処女だったし、樹は童貞ではないが、ある意味当たり前だが景のような年齢の初めての少女を抱いた経験はなかった。
ふたり揃って、ことをどう進めればいいかで迷う。
「できるだけゆっくりするし、景ちゃんの身体の準備ができるまではしないつもりだから」
意を決して抱き寄せると、ぽすっと腕の中に落ちてきた景の耳元で、樹は囁くように告げた。
以前より背が高くなってはいたが、それ以外はまだまだ成長途中の景の身体である。過度に痩せているというほどではないが肉付きは薄いし多分ものすごく軽い。胸も含めて脂肪は薄かった。全体的にまだまだ開花には遠いつぼみといった印象が強い。
でも抱きしめれば確かに女の子の柔らかさで、遠慮がちにしがみついてくる腕がくすぐったく、触れた布越しの身体は温かい。いまこのときの景はいまだけの未成熟な魅力に溢れていた。
景という美少女の身体はまるで麻薬のようだった。溺れれば、容易く帰ってこれなくなるだろう。
抱き合っているだけで、景は幸せだったしふわふわと身体が浮いているような気分だった。
「こうして相手と抱き合っているだけで、受け入れる準備ができたりはしないの?」
「個人差もあると思うけど、これだけだとさすがに難しいんじゃないかな」
樹はできるだけ景の身体をほぐしてとろとろに蕩かして、不安や痛みをなるべく感じない初体験にしてあげたいと思っていた。途中で樹が暴走する可能性も否定はできないが。
この男を蕩けさせる美少女の誘惑に耐えなければいけない。
「僕らが互いに触ったりキスしたりしてたら、えっちな気分になるとは思わない?」
「どうかしら。もうそういう気分な気もするけど。……身体のほうはよくわからないわ」
「それはこれからちょっとずつ確認してみるよ」
「……まずはもっとぎゅって抱きしめて」
自分より大きな樹の身体に抱きしめられると落ち着く。昔からそうだった。常に景より大きな樹に安心とともに悔しさを覚え、せめて並びたかった。樹はもう大人の男の身体をしている。追いつくのは無理だろう。
「痛くても怖くても、私のためなのはわかっているわ。だから、乱暴に扱ってもどんなふうにしても……」
いいの。
同じように耳元で囁き返されて、樹はいきなり暴走しそうになる。
控えめに言っても歳下の可愛いイトコは天使だと思っていたが、小悪魔のツノを髪の中に隠している可能性を否定できなかった。
抱きしめあったまま布団の上に移動する。景が、制服姿のままその身体をころんと布団の上に横たえた。視線は樹を見たままで、どこか楽しそうに見える。
これからすることを考えれば、どこか場違いなゆるい空気感が漂っていた。これから景がするのは未知のことだが、する相手のことはよく知っている。
すでに少しだけゆるめられた制服で布団の上に横たわる景の頬に、樹の手のひらが優しく触れた。間髪なく、景がその手の甲を自分の手のひらでさらに包む。すりすりと、猫が顔を擦り付けるような仕草で、そのまま景の顔が揺れた。
樹が顔を近づけると、景は期待と覚悟をもってゆっくりと目を閉じた。互いの唇が遠慮がちに少しだけ、でも確実に触れる。
少しだけ角度を変えて、もう一度。さらにもう一度と、どちらからともなく求めあう。
「そういえばファーストキスの値段はつけてなかったし、これは特別サービスということにしておく?」
「なんでそう、僕がむらっとする情報を小出しにしてくるのかなこの小悪魔」
「相手がいないから。これまでキスなんてしたことがなくて当たり前じゃない」
ちゅ、と景のほうから唇を突き出せば、ぷにっとした感触を楽しみながら、樹も応える。
「じつは景ちゃんが小さい頃、僕としたことあるんだけどね」
「……覚えてないわそれ。本当なの?」
「どうかな。でもやっぱりこれが最初ってことでいいや」
どちらから求めたのか、両手の指を互いに絡ませあっていた。いわゆる恋人繋ぎの状態で、それ以上溶けあえないもどかしさを埋めるように、ぐっと握りしめられたまま腕は布団の上に落ちる。
男に布団に組み伏せられた少し乱れた制服の女子中学生。作り物めいたほどの美しさを持つ顔が、ほんのすこしだけ崩れた。蕩けて、雌の表情を見せる。
「もっと……いっぱいして?」
樹は自分がこれまでにないくらい興奮しているのを感じていた。股間に昂りを感じると同時に、景と肌を触れ合わせたくてたまらなくなってくる。唇も手のひらもぴったりと隙間なく合わせ絡めても、まだまだ足りはしない。身にまとう邪魔な布は取り去って、身体中で相手のぬくもりを感じたかった。
おそらくは、景もそうなのだろうと思う。
上から覆いかぶさっている樹の胸板が、景の胸を制服の上から押しつぶした。触れたままの唇の隙間から、舌が差し出されて絡み合う。先に舌を絡ませたのはどちらだったか。くちゅくちゅといやらしく唾液を交換する音が響くうちに、二人の吐息も荒くなっていく。
「……んっ……はぁっ……。こんなキス、清純な女子中学生に教えて、どうするつもり……? 道を誤ってしまうわ。人生の先はまだ長いのに」
景のお腹の中に、痺れるような感覚が生まれていた。いやらしいキスをするたびに、それに対応するようにじんわりと湧き上がってくる。身体の芯が濡れたような奇妙な感じもした。
「……その、オンナノコの準備って、これ?」
思わず下腹部に手を当てる。女性にしかない器官が、なにやらお仕事をはじめたのかもしれない。
「あとでちゃんと確かめるから、いまはこっち」
「なにを確かめられるのかしら……」
至近距離で見つめ合う会話のあいまに、唇を合わせていく。互いに背中に回した腕できつく相手を引き寄せた。密着しても、なにか足りない感じは残っていたが。
「……このまま続けたら貞操の危機だわ。あ、もう良い値段で売れてたわね」
「買ったね。値切られたけどね……」
「一生に一度のものとはいえ自分で見たこともない小さな膜にあの値段とか、現代社会は色々と病んでると思うの……」
「痛いと思うから慰謝料的なところも含めて、と考えておこうよ」
痛くすることは前提なので、慰謝料が含まれてるのはおかしい気もしたが、そんなものかと景は納得しておくことにした。
……もし痛くなかったらどうしよう? 返金?