深いキスをしながら抱き合えば、当然の結果として下半身も絡み合うことになる。
「大きくなってる」
「まあ、それなりに」
やや厚い布越しのはずなのに、景には妙にそこが熱を持っているように感じられた。しっかり見たり触れたことがあるわけではないが、それがなにであるかの知識くらいは当然として景にもある。そういう欲望を受ける対象として見られやすい少女でもあった。
自分という存在が男の興奮を呼んでいるということが嬉しいと思ったのは、景には初めてだった。それで嫌悪感や忌避感を覚えたことは、数えきれないほどあったのに。
「これ、すこし触ったりしたほうがいいのかしら」
太ももに布ごしに押し付けられるそれをどうしてあげるのが正解なのか、経験がない景にはよくわからない。苦しくはないのだろうか。一度出せば落ち着くとなにかで読んだことがある気がする。
「その、平気ならちょっとだけお試しで、してほしい」
「わかったわ」
ごそごそと身じろぎながら腕を自由にして、景の指がひとまず樹のお腹に触れる。なぞるようにして下がっていき、布の上から膨らみに触れると、試しに指先できゅっと軽くはさんだ。
「……なんかすごくその、大きくてカタいものなのね」
「そりゃ景ちゃんとこうしてるんだ。興奮してる」
「興奮した分だけ大きくカタくなるものなの?」
「まあ、限度はあるけど。っ……」
遠慮も躊躇もする気はないのか、するっとへその下から景の指先が下着の中に侵入して、樹の大きくなったものの先端にじかに触れた。漏れた先走りが溜まっているところをかすめて、竿を包み込むようにして指先が滑っていく。
指が少し濡れたせいで滑らかになった分、景の指先は敏感なところに快感を与えていった。軽く握られるだけで、樹の腰のあたりからぞくりと痺れるような感覚が背筋を抜けていく。気持ちよくて、腰がびくんと跳ねた。
「……うぐ」
景がそんなことをしてくれていると考えるだけで、樹は頭がくらくらするくらいの快楽を得ていたが、さすがにそれだけで出すわけにはいかないと、なんとか耐える。
それを不思議そうに、どこか嬉しそうに、樹の男性器を初めて手の中に握りながら景は見ていた。時折ぴくぴくと手の中でそれが跳ねるたびに、樹が恥ずかしそうに視線をさまよわせる。
「景ちゃんの指、すごく気持ちいいんだけど」
「こうかしら?」
すこしいじわるがしてみたくなる。年上のイトコをこんなに可愛く感じるなんて思わなかった。こしゅこしゅと、動かしづらい中で手のひらを前後に動かしていく。
「その、さすがにまずいから、とりあえずそのあたりで」
乞うような熱い吐息が漏れるのを聞くまで、景はそれをゆっくりと続けた。
「教えてくれれば、舐めたりしたりも出来ると思うの」
「……あとでね」
女慣れしていそうだと思っていた樹に意外と余裕がないことが、景には嬉しかった。女性に対する経験値がというよりは、景に対する興奮で余裕がなかったのだが、そこまではわからない。
手慣れた誰かに滞りなく導かれていくよりも、ぎこちない樹とわたわたしながら行為を進めていくほうがきっと楽しいに違いない。
景は今日のことを一生忘れないだろう。できれば、樹にもそうであって欲しかった。
脱がし合う……というには少しぎこちなくてうまくいかなかったが、二人は互いに協力しながら服をすべて脱ぎすてて全裸になった。
「自分で、脱ぎます、からっ」
「ダメ」
「くうっっっ」
景のブラとショーツは樹の手によって脱がされた。自分で脱ぐのを許してもらえなくて、涙目になった景を見て可愛さのあまり樹が悶絶していたが。
脱いだ服は脱衣場に持っていくことも考えたものの、ルイとレイが来たときに備えて部屋の隅に目立たないように畳んで置いておくことにした。裸なのを気にせず丁寧に服をたたむ景が日常感を醸し出す。女子中学生なのに景には新妻の風格すらあった。
気持ちを仕切り直して、裸のままなぜか向かい合う。急に互いに照れが来て、真っ赤になるタイミングまで一緒なのがおかしかった。
身体を寄せて軽く口づけると、景はそのまま逃げるように布団に身体を横たえる。困ったように上目遣いで樹を見た。横たわったまま、指を伸ばして樹の脚に触れる。
「この歳で裸の見せあいっこするなんて、なんだかおかしいよね」
くすくすと笑って、布団の上をごろんと転がる。無邪気さの中にほんの僅かに媚びを混ぜて、樹を誘った。
歳下のイトコであり幼馴染でもある
「裸を見て見られてすごく恥ずかしいのに嬉しいって、どういうことなのかしら」
「すごく綺麗で、すごくいやらしく見えるよね」
「お互い様だと思うけど、ありがとう?」
肩甲骨の下あたりまで無造作に伸ばされた景のややくせのついて跳ねた綺麗な黒髪が、布団の上に扇状に広がっている。頭頂部から一筋だけピンと立った特徴のあるくせ毛が、重力に負けずに額の前にかかっていた。髪はすこし伸ばすようになったが、髪型は小学生の頃とほとんどかわっていない。
恥じらって身体を丸めている景の裸は、樹に全部見えているわけではなかった。それでもやや薄いながらもふっくらと女の子らしく膨らんだ形の良いおっぱいと、しっかり肉が付きながらもキュッとしまったお尻と、なによりまだ毛が薄く割れ目の部分がほとんどあらわになっている股間が、樹の目を引いた。
「景ちゃんの裸は……えっちです」
「なんで敬語なの」
「いやこんな天使みたいに綺麗なのに、こまる」
「語彙が退化してない? 私からしたら、樹の身体も綺麗に見えるけど」
鍛えられているというほどではないが年相応に引き締まった樹の裸体に、景が指を這わせた。男性の身体にあらためて触れるというのも新鮮な体験ではある。皮膚の下の脂肪がいくぶん薄く、ゴツゴツしているような感じもしたが、腰もお尻も女性とは違う形状なりに引き締まっている。
景は樹の裸に見とれていた。
女性とは違うけど、これは造形美というのだろうか。もちろん映画に出てくるような肉体美というほどではない。それに景のひいき目が十二分にあるのは間違いないが、この際そんなことは些細なことだった。
ただ、股間にすごく大きな棒状のものが張り出ているのが目立ったけれども。複雑なのにどこか愛嬌があるかたちをしている。あとで景の身体におさまるであろう男性器官。
映画にも美術館の裸体像にも、そんな大きさのものはなかった。いやらしいもののはずなのに、上を向いて伸びているさまはどこか滑稽にも見える。
景は樹の裸でなごんでいた。
「景ちゃんの年齢なら、生理はもうあるんだよね?」
「あるわ。周期は割と安定してるほうだし、そういう意味での心配はあまりしなくても大丈夫。今日はたしか、かなり安全な日ではある、のだけれど。できれば、付けないでしてほしい」
ある意味男の夢である、ナマでして。というのを景ほどの美少女に真顔で請われて、樹の頭が混乱する。
「いやちょっとまって。絶対大丈夫とかないし、やっぱりよくないと思」
「もし普通ではできないはずの日の行為で赤ちゃんができたら……それはそういう運命だってことだと思うの。樹おにーちゃんのお嫁さんとして予約して、そのまま産むということでどうかしら? もちろん、ルイとレイも一緒で暮らしてくれるなら、だけれど」
プロポーズじみた言葉が出てきて、樹は思わず絶句する。現実味の少ない、実現は困難であろう未来に対して、わずかばかりの疑いも持たずに幸せな夢を語るその表情に。
ほぼ名目上だけとはいえ、景の弱みにつけこんで金銭でその身体を好きにしている相手に対する溢れんばかりのその愛情に。
そうだ、景とはこういう存在であったのだと、樹は改めて思った。
身内に対する、無条件の信頼と愛情。そしてそれを裏切ったモノに対する憎しみ。
重いといえば重いだろう。普通の男なら腰が引けるであろうそれを、だが樹は喜びを持って受け止めた。
「なら、覚悟には応えるよ」
心が弾んでしまうのを止められない。年長者として止めるべきことなのに。
景の初体験は、生えっちでということになった。それがどんな結果を生むのか、この時点ではもちろんわからない。互いのうっすらとした覚悟だけはあったが。
景と樹のふたりに共通するのは、血なのか、遺伝的なものなのか、それとも育ってきたその環境か。
それが一方通行の想いではないあたり、お似合いの相手ではあった。お互いに。
「景にこんな病んだ愛情を持つなんて思ってなかったんだけど」
「樹にこんな澄んだ愛情を持つなんて思ってなかった気がするわ」
樹は困ったように、景は嬉しそうに、一緒に昔を懐かしむ。
なんでこうなったのかしら、とお互いに首を傾げながら。