お付き合いください。どうぞ。
藤原千花はスキップしていた。
理由は単純である。
TG部の部室が豪華になったからである。
「応接間の食器も使い放題だし、お茶会も捗りそうです」
そうつぶやき、ニコニコして彼女は扉を開け放った。
「ドーンだYO! ……っえ?」
テンション高く響き渡ったその声の先に1人の男がいた。
あきらかに秀知院学園のものではないその風貌に彼女は警戒心を強めた。
視線を窓側に移すと、夕日に照らされて伊井野ミコが倒れている。
「ミコちゃん」
こころなしか変なにおいもするし、緊急事態と感じ取った藤原千花は即行動に移した。
不審者がいるのにすぐに伊井野ミコに駆け寄るようなよくエロ同人にある愚直なことはしない。
まずは信用できる大人か誰かに助けを呼ばないと。
そう思い扉から回れ右して踵を返そうとした。
「……あれ?」
彼女の足は彼女の意思に従ってはくれず、棒立ちのままだった。
さらに、TG部のメンバーが彼女の腕をホールドした。
振りほどこうとするが、全身の感覚がだんだんと無くなってきた。
TG部の口から垂れているであろう妙な粘液性の白いものが気持ち悪かった。
ふわふわとした鈍くなっていく一方の頭でどうにか思考をめぐらせていると、
男が近寄ってきて手を彼女の頭の額に当てた。
「……あ」
完全な自我を持った彼女の記憶はここで途切れている。
そして男の目の前には服従するべく待機している藤原千花だったものが待機していた。
※
男は藤原千花に暗示を注ぎ込んでいく。
リラックス効果のある香料のおかげで特に何も邪魔されることなくじっくりと暗示をすりこんでいた。
男の最終目的は男に服従を誓わせることである。
そのためにはいきなり大量の暗示を与えすぎてもいけず、なおかつ、本人に服従の意思を植え付けなければ完全に操ることができない。
あくまで男の催眠術は常識を変え、認識を変える。そのためにはじっくりと時間をかけてその本人の常識を知らなければならない。
阿吽の呼吸にようにまずは自分が合わせてそれを自分の望むように塗り替える。
そういう工程が必要だった。
「『はい』か『いいえ』で答えろ」
「……はい」
男はいくつか質問を重ねていく。
和食か洋食ならどっちが好きかなどのどうでもいいものが大抵だった。
試行回数を重ねて男の言うことには回答するという常識を刷り込んでいった。
そして男の目的である服従を誓わせるための条件を引き出すことができた。
「私とゲームをしましょう! 勝ったらあなたに永遠の服従を誓います!」
彼女を攻略する達成条件はゲームで勝つこと。それに決定した。
言い放った彼女は目を大きく開いているものの焦点が定まっておらず、呂律も若干回っていない。
男は確かな手ごたえを感じつつ返事をする。
「何のゲームをするつもりだ?」
「何回でもシコシコしてよくてでも最低1回はシコってしなきゃいけなくて限界に達した人が負けってゲーム! バージョン2!」
男の思考がフリーズし、つい叫ぶ。
「何回でもシコシコしてよくてでも最低1回はシコってしなきゃいけなくて限界に達した人が負けってゲーム!」
しかもバージョン2と来た。普段からそんなクレイジーなゲームをしていたとすると、
さっき重ねていた質問の回答からは想像もつかないほど彼女はビッチだったのではないかという疑念が頭を過り、男は頭を抱えかけた。
「落ち着け、それでは一体どういうゲームかわからないぞ」
「じゃあ準備しますね~~」
藤原書記は戸棚から取り出した風船を膨らまし始めた。
それを見て男は胸をなでおろした。
彼女の言葉を借りて表現するなら風船をしこしこと膨らませて割れたほうが負けというチキンレースだ。
流石普段から『対象F』と言われるだけはある。
彼女のペースに巻き込まれないようにしないとこの催眠術は失敗するだろう。
男は勝算のある作戦を考えつつ、勝負のため拳を握りしめた。
次週に続く
次回更新は5月30日22時です。
「何回でもシコシコしてよくてでも最低1回はシコってしなきゃいけなくて限界に達した人が負けってゲーム!」は原作第91話「藤原千花は膨らませたい」参照です。
アニメのみ視聴勢の方でもヤングジャンプのアプリインストールすれば100Pもらえるのでそれで無料で読めます。単発かつよい回ですので是非。
次週またお会いしましょう。