乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまったが追い出されてしまった… 作:蒼樹物書
夜の闇が深まって。
今宵も、私はそこを訪れる。
学園の外れにある、倉庫の中。隠し扉の先。
そこに。
「……」
私――カタリナ・クラエスの姿を見ても、何一つ言葉を発することはない。
片足を鎖で繋がれたまま、ただ私を睨んでいる。
半月近く経っても、まだ心は折れていないようだ。
「可愛そうなマリア。どうすれば貴女は、屈してくれるのかしら?」
そのいじらしい姿に、嗜虐心が煽られる。
マリア・キャンベルは、ずっとここに囚われている。
……私が私を取り戻して、アンでお人形遊びに耽った後。居場所はすぐに分かった。
夢のお告げとも言うべきか。誰かが教えてくれたような気もするが、記憶は朧げ。ただ、薄れてしまった野猿の為に教えてくれたようだ。
それを今は、こうして私が悪用している。否、カタリナ・クラエスは『私』なのだから利用することに何の罪があるというのか。
殺風景なレンガ敷の部屋には、ベッドと椅子、机が運び込まれている。だが長期の収監の為明り取りの窓には鉄格子が嵌められ、ベッドと机は床に固定。
トイレにあった仕切りも取り払い、まさしく罪人の為の牢獄となっていた。
食事などの面倒はアンに見させている。この部屋のことと、マリアのことを知っているのは私とアンだけだ。
ここにマリアを閉じ込めていた元々の主は……消えてもらった。公爵家ともなれば、そういった汚れ仕事を喜んでする人間を何人も影で飼っている。
お父様にも内密に処理し、今この部屋の主は私だ。
「返して、ください」
「はぁ……また、それなの? 私がカタリナ・クラエスだと――」
「違います!! あの、方は……っ」
平手で、打つ。
狭い室内に鋭い音が反響し、マリアの白い頬が朱に染まる。
「っ、返して……」
翻る手の甲で打つ。
側頭部に刺さるように骨同士が鈍い音を立て、長い監禁で消耗したマリアは硬い床に倒れた。
「……返してください、カタリナ様、を……」
「いい加減、認めて欲しいのだけれどね」
気に入らない。
マリア・キャンベルはこうしてずっと、私を私と認めていない。
ふぉーちゅん・らばーとか言う、絵物語の主人公。野猿を深く慕っていたマリアは、野猿こそがカタリナ・クラエスであると信じている。
全くもって気に入らない。
私を破滅に導くこの女を破滅させようと。
囚われのままにしたというのに、心折れずにずっと野猿の帰還を望んでいる。
最初は、痛みで認めさせようとした。
考え得る全ての痛みを与えた。
拘束し、突き刺し剥がし搔き乱した。私が私であることを認めるまで、死なせる訳にはいかなかったので加減はしたが。
――いくら痛みを与えてもマリアは屈しなかった。
苦しめて、アンに応急手当をさせ、自身の光魔法で自身を治療させる。それを何度繰り返しても、結果は変わらなかった。
メアリやソフィアの調教を進めて、利用すべきかしら。
お優しい聖女のマリア・キャンベル様なら、親しい友人が共に墜ちようと囁くか……いや、目の前で痛めつけでもすれば墜ちるだろうか。
だが、それでは心から私を私と認めたことにはならないだろう。
「そうね。こういうのは、どうかしら」
「……何を」
言葉の、彩を変える。
「マリアっ」
……ああ。これが、正解だったのね。
「やめて」
「マリア、大好きよ!」
「やめて……! おねがい……!!」
「マリア、愛しているわ!」
「やめ、やッ、あッあッ――ッ!!!!」
マリアが酷く狼狽し、叫び声を上げる。
見てはいけないモノを見てしまったように。聴いてはいけない声を聴いてしまったように。
この私が、野猿の真似をすることは不快極まりないが。
野猿のしていたように彼女を純真そうに見つめる。野猿のしていたように朗らかな声で名を呼ぶ。
そして、愛を囁く。
望んでいたからこそ、この囁きは心を壊す。野猿の愛を欲していた、マリアだから。
目の前にいるのは間違いなくカタリナ・クラエスである。マリア・キャンベルが慕い、ずっと一緒にいたかった存在。
今までただの友人で。
王家に嫁ぐカタリナとは、いずれ遠ざかってしまう運命にあった平民の彼女には。
「マリア……愛してあげるわ」
「かたりな、さま」
あまりにも惨い、欲望の毒だった。
カタリナに愛されたい。例え、それが偽りであったとしても。
疲弊した精神と肉体はその毒に縋ってしまいたかった。
「結ばれましょう。ずっと、一緒にいましょう」
「は、い……カタリナ様……」
認めた。
マリアは、私をカタリナ・クラエスであると認めた。
心が澄み切ったように、晴れやかになる。
マリアと堕としたことで、ようやく私は野猿から全てを取り戻したと確信できた。
「ああ、大好き。大好きよマリア」
その途端、マリアのことが心から愛おしく思えた。
ああ、なんて愛らしいの。
私を見つめ、虚ろな目で微笑むマリア。私を私と認めてくれた、彼女が愛らしい。
その頬を優しく撫でる。先ほど私が打った、赤い痕が痛々しい。
もっと、もっと私を刻み込みたい。
「んぅ……」
「あっ、んっ」
口付け、舌をすぐさま捻じ込む。マリアの甘い唾液の味。
蕩ける甘露を掬い取って、喉に落とす。甘美な香りが鼻孔を満たす。
初めての口付け、それも深いそれに怯えるマリアの舌を舌で襲い絡みつける。
「ぢゅ、じゅるっ、んぁ……」
「ひぁ……ぁ、カタリナ、さまぁっ」
マリアが恍惚として、私に奪われるに任せている。夢にまで見た私の愛を、全身で受け取るように強く抱き付く。
不慣れながらも、舌の絡み合いに応じ始めたマリアがより愛おしくなって私も抱き締める。
もっと、強く。
より強く繋がりたくなって、邪魔な衣服を互いに剥いでいく。舌と舌が舞踏のように踊っている内に、気づけば互いに全裸だった。
ベッドに押し倒し、その裸体を見下ろす。
拷問の最中、羞恥を煽ってみようと前にもその裸体は晒させたが。
「綺麗よ、マリア……ほんとうに、綺麗……」
今は、こんなにも美しい。
前は私を睨みながら羞恥に耐えていたマリアは、今こうして私の言葉に恥ずかしそうに。嬉しそうに、俯いて目を逸らした。
メアリや私ほど大きくはないが、椀型に整った形の乳房に優しく触れる。ふるり、と怯えるように震えた仕草も可愛くて。
「っ、あっ、ひぅ!?」
ぷっくりと慎ましそうに膨らんだ、薄桃色の頂に吸い付いた。
小指の先ほどの小さな乳首は舌先ではっきりわかるほどに隆起していて、劣情を煽り立てる。
性的な刺激に慣れていないマリアを安心させるように、ふわりとした金髪を撫でる。
それだけでマリアは落ち着き、貪るような愛撫で与えられる快楽を受け入れようとしている。
「あっ、ん……ぁっ」
マリアの反応を見ながら、愛撫を続けていく。
これまで何人もの処女を奪ってきた。時には乱雑に、時には優しく。
経験を積んだことで、初めての娘の扱いには慣れていた。その全てをマリアにぶつけ、彼女の身体を解いてく。
メアリの香り袋を使えばもっと簡単だが、マリアとの初めてにそんな無粋なモノは使いたくなかった。
「いっ、あっ……これ、あっ、こわいですっ、カタリナ、さまっ」
「大丈夫よマリア。すべて、ゆだねて……んぅっ」
秘所に口付け、秘核を羽で撫でるように刺激する。
自慰すらしたことがないのでは、と思うほど綺麗に閉じたマリアの秘所はじっくりと時間をかけ薄っすらと開き始めている。
おそらく、そろそろだろう。
「さあ、マリア……繋がりましょう」
「あ、あぁ……っ、カタリナ様……嬉しいです……っ」
このまま絶頂に導くことも出来たが、愛撫を切り上げる。最初の絶頂は、繋がって迎えたい。
マリアは私の男性器に、狼狽えはしたが。
「愛しているわ、マリア。私の子供を、産んで欲しいの……」
「あか、ちゃん……私と、カタリナ様の……」
男性器をマリアの秘所に押し当て、望む。
彼女を、孕ませたい。
マリアの子宮を私の精液で満たしたい。中出し。種付け。子作り。
「私も、カタリナ様のあかちゃんほしい、です……カタリナ様」
愛しております。
その言葉を受け止めて、男性器をゆっくりマリアの膣に埋めていく。
充分に愛撫したとはいえ初物。痛みは消しようがないが、気遣いながら慣らしていく。
マリアの処女を奪う。
それはあまりにも甘美な行為で、少しでも長くこの瞬間を感じていたかった。
じっくり、じっくりとマリアの膣に男性器を進めてゆき。
最奥に、辿り着いた。
「これで、マリアは私のモノよ」
「っ、ぅ……は、いっ……ああ、なんて、幸せ……かたりな、さまぁ……っ」
目尻に雫を浮かばせながらも、マリアが花咲くように笑う。
私も、多幸感に胸が満たされる。
「ゆっくり、動くから。無理をしてはだめよ」
「はい……っ」
もどかしい程、男性器を緩く動かす。マリアの膣肉は固く、締め付けは強すぎる程だ。
具合の良いだけの娘は、これまで何人もいた。具合の好みだけで言えばメアリの方が良い。
だが。
「ちゅっ、んっ……」
「ふぁ、あ、っ」
啄むようなキス。髪、耳、頬。首、腕、おなか。尻、太股。両の手でマリアの至る所に触れる。
触れれば触れる程に愛おしさが増していく。
ほとんど男性器を動かしていないにも関わらず、快楽は天井知らずに高まっていった。
愛おしい。
たったそれだけで、こんなにも気持ちよくなれるだなんて。
「マリア……っ、好きよ……っ」
「私もっ、愛して、おりますっ……!」
正面から抱き合い、愛の言葉を交換する。
長い時間をかけている性交で、互いの身体は体液塗れ。それでも気遣いから緩い動きを続ける姿は、ナメクジの交尾のようだった。
いつまでもこうしていたい。
互いに互いが、そう思っていた。だが、終わりはくる。
「ふっ、ぁ、マリア、まりあっ」
「かたりなさまっ、かたりなさまぁ……!!」
限界を互いに迎え始める。
蕩け切ったマリアの膣、その僅かな緩みを頼りに腰を小刻みに。震わせるように、捻じ込む。
射精を我慢し続け膨らんだ男性器、それを大きく動かすことはできない。
「まりあ、でちゃう、でちゃうよっ」
「ください、かたりなさまっ」
だが、愛という麻薬に沈み切った私達は全てが劇物のような快楽になっていた。
愛おしい。マリアと、子供を作りたい。
その一心で最奥に。最後に、全力で深く貫いて。
――どぷ。どぷっ、どぐんッ、びゅりゅ、びゅっ……びゅッ……!!
しがみ付き合いながら、吐精する。
勢いの強い射精ではない。漏れた、と言う表現が相応しい。
だからこそ吐き出た精液は濃く、多い。
永遠に思える程の射精。
これまで何人とも交わった。
だが、これほど濃厚で大量の精液を一度に射精したのは初めてだった。
自身の中にある全ての精を、出し切った。性欲が全て吐き出され、それをマリアが受け止めてくれているという幸せ。
マリアの膣も小刻みに震えていて。絶頂を共有できたことを感じられた。
「あっあっ、あっ……っ」
「ふあ、あ、ああ、ぁ……っ」
溶け合って。
全てを出し切り。
最後には、愛おしさだけが残った。
「マリア……」
まだ繋がったまま、視線と視線を絡ませ合う。
激しさとは無縁だったが、長時間の交わりで体力を互いに使い切った。
心地よい疲労感。マリアの温もりが、肌に馴染んでいる。マリアも、私の温もりをそう感じてくれているだろうか。
「カタリナ様……お慕い、しております……」
杞憂だったようだ。
世界一美しい顔で微笑むマリアと抱き合ったまま、眠る。
私は、私になれた。
野猿のように、純真で誰にでも優しいカタリナ・クラエスではない。
だからジオルド王子や、他の殿方に愛されることはできない。
けれど、一番欲しいモノを手に入れた。
私は、私のままで。
――私は、カタリナ・クラエスだ。
これにて乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまったが追い出されてしまった…完結となります。
短い連載となりましたがお気に入り、ご感想、ご評価、UAとありがとうございました。
あとがきは例によって活動報告にて。