※この作品はR-18です。

波間の向こうを目指して(パラレル)   作:夢枕 七変化

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待ち続ける仲間

 妙な音が聞こえて俺は顔をしかめる。その音はゾロやウソップにも聞こえている様子から、どうやら気のせいや聞き間違いではないらしいと判断する。

 となれば何か大切な事がある筈なのに、思い出せない。折角あった知識は何故か脳の奥底に眠ってしまっている。

 

 「ナミゾウ、前方に山が見えるぞ!」

 

 マストの上からサンジが言うけれど、地図ではそんなものは無かった。双子岬を超えたなら、このには偉大なる航路が広がっている筈なのだから。

 そう思っていた次の瞬間にルフィが発した言葉ですべてが走馬灯のように思い出される。

 

 「山じゃねぇ!クジラだ!」

 

 双子岬、鯨。頭の傷。治療。骨。留守番。歌。ブルック。ラブーン……ルンバー海賊団。

 頭が、割るかと思った。倒れなかった自分を褒めてやりたい。

 戦うには大きすぎて、舵は壊れている。

 ならここでやるべきなのは、なんて考えている間にルフィがラブーンに攻撃を仕掛ける。それは、止める間もないもので、船首も折れてしまい、ルフィを止める方法がもう既に分からない。

 ここでは、何をしたらいい。

 俺は自分の中に突然蘇った知識に翻弄されながらも、とりあえず暴れるルフィを見て言葉をかける。もちろんやめろと止めているゾロ達がいるから、それ以外でだ。

 

 「ルフィ!海に落ちなければまた会えるから!」

 

 俺の言葉にルフィは1瞬動きを止めて、大きく頷いた。

 

 「ナミゾウが言うなら信じる」

 

 無条件に寄せられる信頼に、俺は気恥しさを感じながらも笑って頷いた。その次の瞬間、ルフィを残してメリーごとラブーンに飲み込まれていった。

 船が安定した時、ゾロとサンジは夢だろうという言葉を繰り返していた。でも、ここで俺が説明する訳にもいかずに無言で目の前にある家を見つめる。

 中から出て来た人物を見て、俺は再び頭を抱える。それは他の人から見たらただ花のような爺さんとの会話を聞いて疲れたようにも見えるだろうから、俺としては、むしろ良かった。

 蘇る記憶には、必要な知識が大量に含まれている。分かっているからこそ、痛みと引き換えだろうとも逃げる訳にはいかない。

 クロッカスさんと、レイリーさん、シャッキーさん、赤鼻とシャンクスさん、海賊王のクルー。俺は記憶の本流に飲まれないようにするのが精一杯だった。

 皆が出口を知って、更にクロッカスさんを誤解しているのに気付いても、揺れる船では外に放り出されないだけで精一杯なのだ。

 でも、それでも、伝えるべき事はあるし、やるべき事もある。

 

 「ゾロ、サンジ。ルフィと他2名が降ってくるから、助けてやってくれ。ルフィは……泳げない」

 

 そう、大切な伝えなければいけない事は確かにあるのだ。ただ、呆然としている訳には行かない。

 

 「ナミゾウ?……まぁいい、任せろ」

 

 ゾロはそう言ってルフィの姿を確認すると同時に助ける体制に入ってくれて、サンジは不思議そうに俺を見たが、すぐに他の2人を引き上げる事を協力してくれた。

 ルフィが船にあがったのを見て、俺はルフィに頼む。

 

 「とりあえずその2人を気絶させて貰えるか?」

 「おう、わかった」

 

 何の気概もなく、今はバロックワークスの手下でしかない2人を眠らせてから、漸く落ち着いて話が出来ると安心出来た。

 そこから先の説明はクロッカスさんに任せて、俺はドクターに渡されていた鎮痛剤と解毒剤を飲みに船室に入った。

 俺が船室から出ると話は大体終わっていて、ルフィがクロッカスさんを仲間に誘ってすげなく断られていた。本当に、仲間になって貰えたら助かるけど、こればかりは仕方無い。

 我が船にはいずれ、万能薬になるトナカイが来るから、それでいいだろう。ルフィとの掛け合いをしているクロッカスさんの様子に少し笑ってから、俺はクロッカスさんに声をかける。

 

 「ラブーンは大分悪いのか?」

 

 クロッカスさんは1瞬なんとも言えない眼差しで俺を見てから、激突をやめない限りは永くないと悲しそうに言った。それはそうだろうと思うから、俺はそれに頷く事で答えた。

 船が外に出るとクロッカスさんに言われるままに2人を海に捨ててからは、俺は皆の話を大人しく聞いていた。けれど、サンジの言葉につい、口を開きかけて止める。

 

 「死んでんだよ。帰って来やしねェ」

 「彼らは逃げ出したのだ。確かな筋の情報で、確認済だ」

 

 サンジの言葉では耐えられても、クロッカスさんが続けた言葉に耐えられなくなる。俺は思わず言葉を口にする。

 

 「そんな事はない。彼等は確かに離脱した者もいたけど、今も船で約束を果たそうとしている人もいる!」

 「……何を、知っている」

 

 俺の言葉にすぐに反応を返され、言葉に詰まった時、俺は話を中断して咄嗟にルフィに飛び掛った。ルフィがメインマストを折ろうとしていたのだ。

 

 「ルフィ!辞めろ!やるなら自分の拳とかを使え!メリーも大切な仲間だろうが!」

 「ナミゾウ……ごめんなさい」

 「分かればいい。俺達の傷は治っても、メリーの傷を直せる仲間は居ないんだ。無理させるなよ」

 

 ルフィは俺の言葉に頷くと、ラブーンに自分の拳等を使って戦い始めた。ウソップには、ルフィがもしも海に落ちた時頼むと言ってクロッカスさんの元へと戻る。

 会話は途中だった。俺は静かにクロッカスさんに視線を向ける。

 

 「こちらも確かな筋の情報だ。ラブーンの友達であるルンバー海賊団は、伝染病にかかり、病気になった者は他に感染を広げない為に、ルンバー海賊団の船で凪の帯から離脱した。その中には船長が含まれていたそうだ」

 「なら、儂が得た情報はそれか!?」

 

 俺は頷くと首を傾げる。続きを話してもいいかとの意味を込めて。

 それにクロッカスさんは頷くから、ゆっくりと口を開く。

 

 「恐らくは。だからこそ生き残った彼等は船を変えて、偉大なる航路の続きを進んだ。そして……他の海賊船との戦いに敗北したんです」

 「……そうだとするならば、どちらにせよ、もう」

 

 俺は無言で首を横に振る。それによってクロッカスさんは不思議そうに俺を見た。

 

 「1度全滅しましたが……1人だけ、悪魔の実の能力により生き延びたんです。その人物が今も偉大なる航路で約束を果たそうとしています。……もしも逢えたら、ルフィは仲間に引き入れるだろうから、何年かかるかは分からないけどきっと約束は果たされます」

 

 ルフィがラブーンに約束の印を描いている間に、俺はクロッカスさんにそう言う。その話を聞いていたゾロとサンジの視線が突き刺さる。

 

 「……そうか、ならばお前達の活躍を追えば、誰が生き残りかもいずれ分かるか?」

 「……出逢えれば、ですよ。偉大なる航路は狭いけど広いですから」

 

 苦笑しつつ答えれば、クロッカスさんは納得したように頷き、ルフィはいつの間にかラブーンと仲良くなって歌っている。それを見てクロッカスさんに聞いてみる事にした。

 

 「ところで、ログポースの余りと、使ってない楽器はありませんか?ローグタウンで手に入れるつもりでしたが、入手に失敗しまして」

 

 クロッカスさんは俺を見て、微かな笑みを浮かべるとスっと立ち上がりログポースと武器を内蔵してある楽器を取り出してきた。シンバルの1番外側の円が刃になっていて、間を紐で繋いで使うブーメランに近い武器が歴史上でも存在しているのは知っている。

 笛を鉄で作り、殴ったり刃を止めるのに使う鉄笛や三味線がボウガンになる物は比較的有名だ。他にも笛の形をしたライフル等も存在した筈で、それに至っては演奏出来なかったと記憶している。

 それでも、脚付きの琴の脚が銃で作られているのは初めて見た。確認させてもらえば、2つの銃で作られたその脚は取り外すのは面倒だがそのままでも1応使えるようになっているらしい。

 

 「俺は狙撃手ではありません。それでも、貰っていいのですか?」

 「ああ、ついでに銃弾も持って行け。使い方はわかるな」

 

 分からないとは言わない。日本でも玩具としてなら親しまれている武器が銃だし、琴を運んだり収納する時のように立てれば銃として普通に使えるのは見ればわかる。

 俺の様子を見ていたクロッカスさんが満足そうに頷いて寄越してくれた楽器を見て、爪の存在を確認すれば微調整は自分でやれと言いながら爪を12本くれた。見ればそれは角爪と丸爪を6本ずつで、予備にもなるし有難いと思って礼を伝えれば、その様子を見ていた2人は不思議そうにしている。

 

 「貴重な情報の代わりになるならば、そいつらも本望だろう。ここには色々と流れ着くからな」

 

 俺はその言葉につい笑ってしまう。それからお礼にと言って早速音の調整をしてからビンクスの酒を演奏した。即座にそれに気付いたルフィとラブーンが楽しそうにしているので、これはこれで正解なのだろうと思う。

 そうして演奏を終えると、ルフィがラブーンに頭の印を消さないようにと言って笑っているのが見えて、俺は自然とそれに釣られたように笑う。クロッカスさんもそれ以上何も言わずに、ルフィとラブーンを見て、穏やかに笑った。

 ルフィはラブーンと仲良くなったとわざわざ報告に来るから、頭を撫でながら見ていたよと言えば嬉しそうに笑う。その笑顔が見られるならそれで十分だと思った時、ルフィが飛び付いてきた。

 

 「ナミゾウは演奏も出来たんだな!シャンクスにも聞かせてたのか!?」

 「いや、演奏したのはお前達の前が初めてだよ」

 

 この世界に産まれてから、楽器に触れたのは初めてだった。だから、嘘はついていない。

 どうせなら、ドラムを琴の左右に置いてドラム付きで演奏したかったが、中々に難しいのも分かっている。ドラムは全身使うからなぁ。

 ルフィを見れば驚いたような顔をしてから、俺に擦り寄るからその頭をよしよしと撫でておく。

 

 「ナミゾウはさ、俺の願いをいつも何でも叶えてくれるよな」

 「ルフィが望むなら、何でもするさ。お前が笑うなら、それだけでいい」

 

 俺が笑ってそう言うと、ルフィが小さく震えた。その時ルフィがどんな顔をしていたのか、俺は知らなかったし、嘘はついていないのだから、問題はない。

 暫くそうしていたが、ずっとそのままという訳にもいかないので、ルフィをはがすとそれぞれに仕事を割り振る。楽器を見ていると、妙な見た目でも懐かしく思えるのだから不思議なものだ。

 ゾロ以外がそれぞれ働いていた後で、サンジの作ってくれた食事を食べようとテーブルにつく。俺は皆が働いてる間に楽器を収納して海図と灯台の地図を描いておいた。

 可能なら近いうちに、ナミちゃんの話を蜜柑からレモンに変えて書きたいと思いながら『金太郎』と『人魚姫』も書こうと決める。食事を終えたら航海日誌を書けるようにと近くに持って来て置けば、それを見たクロッカスさんが懐かしそうに瞳を細めた。

 

 「……ルフィも、海賊王になりますよ」

 

 俺が言えばクロッカスさんは少し驚いたような顔をしてから、呟くように知っていたのかと言うので、頷いた。そしてニッコリと笑いかける。

 

 「情報は命綱なので。所で、少し俺の診察して貰えたりしませんか?」

 

 俺の言葉に全員の視線が集まった。それに気付いたらしいクロッカスさんは、1度頷いていいだろうと言ってくれた。

 

 「良かった。出来るだけ早くこの薬の弊害を治したくて」

 

 そう言って飲まされ続けていた薬を差し出せば、クロッカスさんが驚愕の眼差しで俺を見た。そして叫ぶように言葉を発して立ち上がる。

 

 「どのくらいの期間飲んでいた!?」

 「8年程、濃度もそのままで、毎日2本、朝晩飲んでました」

 

 クロッカスさんはそんな言葉は信じられないと言うように俺を見て、すぐに薬の作り方や材料の書かれた紙を差し出して来た。更にあるだけで悪いがと言って、薬草と薬もくれて、何故歩けているのかわからんと呟いた。

 

 「きっと……俺が長い事、ルフィと冒険したいと願っていたからですよ」

 

 俺はそれに笑ってそう返す。それを聞いていたメンバーがクロッカスさんに話を聞こうと身を乗り出した時、爆発音が響いた。

 

 「サンジ、今の爆発音の中に女の子の悲鳴みたいなのが聞こえたが、どうする?」

 

 ビビを殺すわけにはいかないから声を掛ければ、サンジとルフィが海岸に近付いて行った。これで、先へ進むルートが決まると俺は微笑ましくそれを見送り、ラブーンを見上げる。

 待たせてごめんな、何年かしたら、きっと戻るから。心でラブーンに声を掛けて、静かに微笑む。

 俺は優雅に食事を終えて、クロッカスさんに1応話を聞いておく。出ている症状等を話して、治る途中でどのような症状が出やすいか等を確認しておけば、クロッカスさんが呆れたように俺を見た。

 

 「媚薬飲んだ状態で、抜きもせすに居たのか!それで効果があまり出なかったのだな。感情の起伏も少なかったのも幸いしたのだろう」

 

 そう言って妙なものを見るように見られたが、現在も過去も基本的に淡白な質だから仕方無い。これまでの毒と同じような間隔で飲んでいけば、半年程で薬の効果は無くなるらしい。

 ただ、治る過程で媚薬効果に苦しめられる事は考えられると言われれば、冷水浴びるか海に潜ればどうにかなると笑って終わらせた。その会話を聞いていた4人がギョッとした表情で俺を見ていたけど、何かおかしい事を言っただろうか。

 それからルフィが行き先を決めたので、新たに2人を乗せてクロッカスさんに別れを告げて船は動き出す。次の場所を目指して。

 今日の天候は冬、時々春。リバースマウンテンの麓双子岬を出た船は、1路ウィスキーピークを目指す。

 甲板に積もる雪で遊ぶルフィとウソップを眺めながら、客のように振る舞う居候2人を叱り飛ばしていた俺は、空の変化を目の当たりにして息を呑む。これは気を抜けばヤバい。

 

 「分かっていたつもりだったけど、確かにここは難所のようだな」

 

 俺は外に飛び出すと全員に指示を出していく。勿論例え相手が姫であろうと何であろうと構わずに、居候達にも働いてもらう。

 それでも、船はその場を回転したりと忙しなく、なかなかに前へ進んだ気がしない。疲れ果て、倒れ込んでも休む暇はまだ無い。……ゾロを除けば。

 そんな中でも、努力はいつか報われる。そう。

 

 「島が見えたぞー!」

 

 目的の島に、到着出来たのだから。しかし、上陸の直前で2人の居候はその姿を消してしまう。

 それは手品のように鮮やかに。その直後到着した島では、大歓迎で俺達を迎え入れる人達。

 それの怪しさに気付いていても、俺は口を噤んでその雰囲気に溶け込む事で、1番無難に解決しようと決めた。それに、飲めるうちに酒は飲んでおきたい。

 それにしても、ビビをどうやって助けたものか。出来るだけ国民の被害も少なく……か。

 俺は難しすぎるビビの願いに頭を悩ませつつも、とりあえずは飲み尽くせるだけ飲んでやろうと決めたのだった。

 だって、お酒もタダじゃないんだぞ?

 歓待を受けてそれぞれが思い思いの時を過ごす中で、時々ゾロの視線が気にはなったが、何か用事があるのかと適当に流す。用事があるならば、後で話をして来るだろうと思うのでその時に聞こうと決める。

 そうして、怪しすぎる歓待の中で、それなりにお酒を楽しんだ後で酔い潰れたように見せかけて寝た振りをすれば、それから程なくしてゾロが暴れ出した。何か起きるのは、記憶に頼らなくても分かる。

 ゾロが暴れ出したのを期に、人が居なくなった為俺は何か金目の物は無いかと物色しつつ、今後について思案する。

 ビビを保護しない選択肢は無くて、でも、保護するとあの子のドジ属性で命が危険になるのは覚えている。今の俺にバロックワークスのメンバーと戦えるだけの強さがあるのかは不明だけど、可能な限りビビを無事に過ごさせたい。

 相手にロビンがいる時点で難しいのは分かってるんだけどさ。とりあえずのところは、この身体でどこまで動けるのか……だよな。

 俺は集めたそれを船に置きに戻って、再び島へ行ってみる。そこではちょうどゾロに、命を助けてくれと縋るイガラムの姿があった。

 

 「莫大な恩賞って、本当か?」

 

 うちの可愛い船長の胃袋のお陰で、頑丈で鍵付きの冷蔵庫が必要だったりするのもあるし、エンゲル係数高過ぎるし、傷薬とかいくらあってもたりないから、ベリーは必要なんだよな。

 

 「その話のった!10億ベリーでいかがかな?」

 「ナミゾウ!」

 

 ゾロの声が聞こえて来たけど、そこはあえて無視する。とりあえず今は交渉しなくては。俺のスリ技術と盗みの技術、執筆料だけで渡って行ける胃袋じゃないだろう。

 胃袋だけならまだしも、消耗品は多い。洗剤類は俺が作ってるとは言え、原材料は必要になる。

 それなのに、ゾロは止まらずに聞いてくるからそれに適当に答えてから交渉を再開する。

 

 「で?10億の恩賞約束してくれるのか?護衛隊長さん。でもな、俺達に助けを求め無かったら……王女様は、死ぬんじゃないか?」

 

 ニンマリと笑えば、色々と言い訳を重ねられるけど、メリーも直したいしそれ位は欲しい。

 

 「まさか、1国の王女の値段がそれ以下だって言うのかよ?出せ」

 

 完全なる脅迫に見えたのかゾロは何やらボソボソと言ってるけど、聞きたくないから聞こえない。それでも何とか交渉は纏まったので俺は気だるそうに立ち上がって、言った。

 

 「わかった。ビビ王女は助けてやるよ。さぁ、行けゾロ!」

 「行くかアホ!」

 

 それから俺はゾロとの小さな押し問答の末に仕方無く耳打ちする。

 

 「敵のボスは七武海のクロコダイル。戦ってみたくないか?」

 

 その瞬間、ゾロの気配が変わったのを肌で感じる。野獣を檻から解き放ったような感覚に少し肌がビリビリとする。

 

 「良いだろう」

 

 眠っていた獰猛な獣を叩き起こしたような気持ちになり、少しあれ?っと思わなくもないけど、とりあえずビビは助かりそうだと満足する。

 イガラムさんはブツブツ言ってるけど、だいたいは理解してるから簡単に傷の手当をする。

 

 「安全は約束出来ないけど、泣く事を忘れたお姫様1人を届けるくらいなら、やってやるよ。最終的には船長判断だけど、少なくともこの島からは脱出させる事だけは俺が約束する」

 

 大人しく治療を受けるイガラムさんは、不思議そうに俺を見るが、すぐに感謝すると震える声で返してくる。……女の子1人位守れなくてどうする。

 俺はそれには何も答えずに、静かに立ち上がるとそろそろかなと辺りを見渡す。

 

 「さてと……加勢に行きますか」

 

 戦う力を戦える体力をもっと身に付けたい。このままでは俺が足で纏いになって、勝てるとは思えない。

 ルフィの役に立つ為に俺はここに居るんだ。邪魔になるような自体だけは避けたい。

 そして騒動の場所に到着すれば、ビビをそっちのけで戦う馬鹿2人。とりあえず2人を殴り戦いを病めさせてから、いや……辞めさせながら、ビビに話し掛ける。

 

 「姫を助けてあげて欲しいと、依頼されたんだ……イガラムさんに。だから、契約の話をしようか」

 

 そしてゾロがルフィに話をしている間に契約の話をする。全額現金でなくとも良いからと言って。

 それから顔を描かれない為に俺は詳しい事情は船長と決めたらいいと言って、と言ってその場を去る。そこで物陰に潜んで様子を伺う。

 すると2人が抹殺リストに乗り、喜ぶ姿が目に入って泣きたくなるが、そんな場合ではない。完全に飛び立ったのを見て、3人の元へ戻るとビビが申し訳なさそうにしていた。

 それを慰めている間にイガラムさんが現れ、状況についていけないルフィにゾロが家まで送って欲しいのだと簡略的に伝えれば、ルフィもそれを了承する。

 そうして、ビビがエターナルポースをイガラムさんに渡したのを確認して、イガラムさんの出発を見送り、その船が炎上するのを見た。

 ……こうなる事は、分かっていた。でも、これは必要な事だった。

 こんな時、昔のような強さがない自分が憎らしくなる。もしも、昔のように薬の影響で倒れないのならば、血を吐かないのならば、覇気の使用制限が無いのならば……イガラムさんも含め全員を守りながら行く事が出来たのに。

 涙も見せずにその場に立ち尽くすビビを抱き締めて、俺はアラバスタまで送り届ける約束をした。

 ゾロとルフィは足早に船へと進み、俺がビビを連れて船に到着した時にはルフィによりサンジとウソップも船に到着していた。すぐに船を出そうとしたが、カルーがいないと言うのでその特徴を確認していたら既に乗ってるという奇跡が起きた。

 それからバタバタと出発の準備を進め、出発した頃サンジとウソップが目を覚まして騒いだので、拳で説明しておく。だってほら、今は口で説明してる暇ないし。

 そうしている間に現れたロビンを見て、ふと表情が緩みそうになる。そのエターナルポースを使えば色々と省略出来るのは分かっていても、ルフィがそれを選ばないのだからそれがすべてだ。

 ただ、この時にロビンがイタズラでルフィの帽子を奪った事をルフィは暫くブチブチ言っていたのが妙に可愛い。……仕方ない、今夜は1緒に寝てやるか。

 そう思った直後に、部屋割について少し考える必要が出たと気付く。だが何故かビビが俺との同室を希望したので、今後も俺は通称製図室と呼ばれていた部屋を使う事になる。

 まさか、そこが気付いた時には女部屋と呼ばれて、枠としては女枠で俺が数えられる事になるとは、思っても見なかったが。ビビに船の中を案内したり細かい事を伝えたりしていたら、ルフィが何故かそれについて歩く。

 恐らくはルフィにとっても初めての女の仲間だから気になっているのだろう。俺はそう思うと少し微笑ましくて、ルフィを好きにさせた。

 その日の夜はルフィと1緒にと思ってたが、ビビが怯えている仕草を時々するので、ルフィを放置してビビと寝る事になればサンジが煩くなったのは言うまでもない。泣く事も出来ないお姫様が、微かに見せる怯えくらい拭ってやらなくてどうすると言うのか。

 落ち込むビビを慰めながら、船は進む。次なる島を目指して。

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