城塞都市エ・ランテルを脱出して馬車に戻ると、マーシャとジルがホッとした表情で出迎えてくれた。生体型
「お前たちの
マーシャであれば
「問題なく機能しております」
「では周囲に罠を仕掛けたら中に戻れ」
彼女たちの報告によれば周辺に魔物の気配はない。本来ならそれでも見張りを立てるべきだが、今は各々の実態調査を優先したい。
「畏まりました。罠を設置後、馬車に戻ります」
マーシャが復唱し、2人が作業に移ったのを見届けてから俺は馬車に入る。
「お、お帰りなさい。早かったわね」
後ろ手に戸を閉めながら妙にどもるクラーナに目を向けると、彼女は見知らぬ少女たちに囲まれていた。十代前半ぐらいの少女が3人。なぜか全員とも下着姿だ。
「……説明させて貰えるかしら」
「簡潔に頼む」
要約するとこうだ。
クラーナはサービス終了日にハーレムを作ろうとして、生産施設の管理をさせていた
「あの3匹が随分と見違えたな」
元は〈矮小化〉させた醜い
外見は小麦色の肌、金色の瞳に黒い縦長の瞳孔。銀髪からは黒い山羊の角が覗き、腰からは純白の翼が生えている。個性と呼べるのは髪型だけで、リリがポニーテール、リエが夜会巻き、リオが三つ編みだ。
「ひとり
「この子よ」
クラーナが三つ編みのリオを前に出す。
生産施設の管理の他、ソロプレイヤー向けの召喚グッズを担当していた稼ぎ頭だ。囮役や盾役、回復役といった具合に、召喚系のアイテムは
そして、不意にリオの下着が男性用だと気づく。
つまり、ひとりだけ
「こいつだけ男なのか」
「そうよ。髪型と性別しかいじっていないから、完璧よね」
何が完璧なのか分からないので曖昧に頷き返す。
「なるほど。で、隠し事はこれだけか?」
「ええ、誓ってこれだけよ。……怒ってない?」
「この程度で怒らんさ」
呆れてはいるが怒りは無い。「状況に応じて使えるように」と余らせていたギルドポイントなのでどう使おうがマスターの勝手だ。
この転移劇自体が予測不可能だったことを思えば不可抗力。レベル1の
「それよりも、こいつを見てくれ」
クラーナの弁解が終わったのを見計らい、俺はクレマンティーヌを床に吐き出す。
「は? えぇ!?」
突然のことにクラーナは目を白黒させ狼狽える。裸同然の欠損女性を目の前に吐き出されたのだから当然だ。
そんな彼女に俺が導き出したこの世界について伝える。考察を交えながらクレマンティーヌの身体で「エ・ランテルでの出来事」を再現してみせると、初めは半信半疑だったクラーナも徐々に、しかし無理矢理に理解を示す。流石に目の前で実演されては信じない訳にはいかないといった感じだ。
事が終わり、接合されずに残されたクレマンティーヌの右足にアエラが噛り付いている。
その横ではクラーナが指で血をすくい、ペロリと味見をしていた。異形化の影響で人間の血に忌避感が無くなったらしい。その事に衝撃を受けているようだが、取り乱す様子が無くて安心する。
正直なところ、人間でなくなったことに落ち込まれてもどう慰めていいのか分からない。
「信じたくはないけれど、そういうことなのね。それで、これからどうする? 他のプレイヤーを探す?」
「その前に装備の点検とスキルの確認だろうな。戦ってみて分かったがユグドラシルと変わっている部分が多い。俺は先にこいつから情報を聞きだす。それが終わり次第、製薬関係のスキルを実験するつもりだ」
「なら効果を確かめるついでに
クラーナのもっともな提案にクレマンティーヌの鋭い声が上がる。
「まって! ま、魔法はダメ、です」
それまでなすがままだった彼女の目には怯えが宿っている。短い付き合いだが命の危険を感じていることだけは理解できた。
「急にどうした。大人しく実験を受けるんじゃなかったのか?」
「漆黒聖典、私がいた組織なんだけど、隊員は秘密保持の呪いを受けているから。知っていることはなんでも正直に話すからさ、魔法は使わないで、ください」
俺とクラーナは思わず目を合わす。
お互い知らない魔法の存在に脅威を感じたのだ。
クラーナが一早く立ち直る。
「ヴィクトル、私に任せてもらっていいかな」
「どうするつもりだ? 死なれると面倒なんだが」
時間が惜しい今、情報源を失なうことは避けたい。
「あら妬けちゃう。こういう娘が好みだったの?」
茶化すクラーナに両手を広げ、無言で抗議する。
「ふふ、冗談よ。解呪を試すだけだから」
そういいながら彼女はクレマンティーヌに手をかざす。
「
「どんなだ?」
「なにかしらの強制力のもとで3回質問に答えると“頭の中”で魔法が炸裂するみたい。貴女、転職した方がいいわよ」
「だから逃げだしたんだけど、ね」
クレマンティーヌの恨めし気な視線が俺に刺さる。あの男たちを追手と称していたので、逃げていたのは本当のことなのだろう。
俺はクレマンティーヌを無視してクラーナに向きなおる。
「解除できそうか?」
「うちの商品で余裕よ。つまり、アエラちゃんの
「確かにな」
クラーナの懸念は理解できる。レベル90代に習得できる経験値消費型の
「――アエラ、頼む」
「仰せのままに」
切断されたクレマンティーヌの脚を喰らってた狼が瞬く間に人の姿へと戻る。
口元を血で濡らしたアエラが近づくと、クレマンティーヌが僅かに身構える。
「じ、人狼!?」
「ふふふ、貴女、美味しかったわ。ご馳走様」
アエラがクレマンティーヌの頭に手をかざして
するとクレマンティーヌの額が青白く光り、次の瞬間には小さく「パリン」とひび割れて霧散した。
「クラーナ様、ご確認を」
「
「え――」
「――
クレマンティーヌが何か言うよりも早く、俺はクラーナの合図を受けて魔法を行使する。
瞬間、クレマンティーヌの顔から感情が抜け落ちる。ユグドラシルならこのタイミングで簡易的な行動指示アイコンが表示されるのだが、どうやらこの世界では単純に「術者の命令待ち」状態になるらしい。
『只今戻りました』
クレマンティーヌが操り人形になったところで罠を設置し終えたマーシャたちが戻る。
「よし、全員揃ったな。今から全員で工房に移動する。各自装備とスキルの確認だ。何か異変を感じたら俺かクラーナに報告しろ。いいな?」
『畏まりました』
工房に移動し、各々の能力を確認する。
クラーナは呪術や占術、マーシャは鍛冶スキル、ジルは料理、リオは召喚魔法、アエラは信仰魔法だ。
俺はその傍らでクレマンティーヌから情報を引き出す。
国家、物価、魔法、武技、
この世界で作られたと思われる魔法のスティレットは興味深かったが、下着めいた軽装鎧に問題があった。
「呪われてたから同情していたけど、ヤバいくらいのシリアルキラーじゃない」
途中から話を聞いていたクラーナが呆れたような眼差しをクレマンティーヌへ向ける。
鎧にあった問題。それは鎧に縫い付けられた様々な金属片からなるアクセサリーだ。数にして60個前後。初めはオシャレ感覚で付けているのかと思ったが、話を聞けば「殺した冒険者たちのネームプレート」だという。つまり、狩人が仕留めた動物の牙や角を“ハンティングトロフィー”として飾るように、彼女は殺した冒険者のプレートで着飾っていたのだ。
すでに
クレマンティーヌが縋りつく様な目を向けてくる。元からまともな出会いではないので、ことさら庇い立てする義理は無い。この女がしでかしてきた事を考えると殺処分してしまった方が
「まったく、お前を追ってた連中には悪い事をしたな」
「……」
俺の皮肉にクレマンティーヌが顔を伏せるが、俺自身は本気で悪いとは思っていない。
アバターの素顔を見られたのもあるが、スレイン法国の存在を知った今では「引き渡していたら」などとは思えない。もしも引き渡していたら「漆黒聖典を倒せる存在」として目をつけられていただろう。
あの国とは極力距離を取るべきだ。
俺はマーシャを呼ぶ。
「マーシャ、このプレートを潰してくれ。このままだと占術で辿られる恐れがある」
「別のアイテムに作り変えては如何でしょう。より安全かと思われますが」
「いや、まだ溶かすだけでいい。こいつが生き残ったら用途を考える」
「畏まりました」
実験を前に改めてクレマンティーヌの身体を確認する。最初に切り落とした左手は今も無く、右足はアエラのお腹の中。左足は接続実験でくっ付いてはいるものの、足首の腱は切断したままだ。ちぐはぐだがモルモットとして申し分ないだろう。
まともに残っているのは右手だけというアンバランスな裸体を抱き起し、製薬系スキルの実験開始を告げる。
「始めるぞ。腹の中で精製した薬を色々と試す予定だが、まぁ、最後まで生きていたら飼ってやるさ。放し飼いは、要相談だな」
「……」
無言のクレマンティーヌを飲み込んで体内で薬を精製する。
俺は現種族の
精製から数分も経たぬうちにクレマンティーヌが苦しみ悶えるが、実験の目的には
「ふむ? 手が空いたな……」
クレマンティーヌをただ観察するだけでは手持無沙汰なので、
意外と
「どう? 扱える?」
「ああ、どういう訳かな」
錬金台であれこれと調合していると、クラーナが興味深げに近づいてきた。
にもかかわらず自然とその使い方を理解している。
「理屈は分からんが名ばかり
「それは良かったわ」
「うぉ!?」
俺は
そして近場の椅子にへたり込む。
「ど、どうしたの!? どこか悪いの!?」
不安そうな顔を向けてくるクラーナになんと答えた物か。
「……漏らしやがった」
「え?」
「あいつ、俺の中で脱糞しやがった」
「あ、あぁ。その、ご愁傷様?」
俺はその言葉に首を振る。
「違うんだ。脱糞された事よりも、
「えぇ!?」
クラーナがドン引きする。
その気持ちは痛いほど分かるぞ。
「まてまて、そんな顔をするな。いいか、これは
「ああ、私も血を美味しく感じたし。な、なるほどね」
「俺の味覚、大丈夫かな」
「アエラ、すまないがジルに料理を頼んでくれ」
「畏まりました。どのようなバフをお望みですか?」
「何でも構わん。味覚を確かめたいだけだ」
アエラに実験を中断させてジルの料理を注文する。
実はアエラも専門職と呼べるほどではないが、度重なる再編成の名残りで〈
アエラを見送り、俺は改めてクラーナに宣言する。
「クラーナ。今後、俺はどんなに頼まれようと女しか飲み込まないからな」
「まあ、うん、了解」
「男の糞は御免だ」
「分かったから! そんなこと口に出して言わないで!」
とんだハプニングだったが実験再開だ。
錬金台を触って判明したことがある。ユグドラシルでは“処方書”に登録した薬しか作れなかったが、この世界ではその制限が解除されていた。馬車の外で気まぐれに摘んだ植物でも薬効があれば
レベル上限に達したプレイヤーが新たな処方薬を取得する。これは大きな発見だ。
この世界にきて不安ばかりだったが、これでいくらかは希望が持てた。倉庫で眠っている錬金術に関する本を読み直す必要があるだろう。
勉強は柄じゃないが今は知識が必要だ。
ヴィクトルと名乗った化物は宣言通り、私の身体で実験を始めた。
こいつらの正体は見当がついている。本国の暗部に触れてきた者として「極力敵対してはならぬ者」の特徴を叩き込まれてはいた。でもこの状況は想定外だ。深夜の倉庫街で「100年毎の顕現」とやらに遭遇してしまうとは不運も甚だしい。
こういうのは信心深い村娘とか献身的な破滅願望に酔った神殿騎士の役目だったはずだ。
抵抗の意思はない。いや、抵抗は得策ではない。今は最悪の心証を少しでも良い方向へ誘導しなきゃいけない。何としてでも生き残る。でなければ何のために国を出たのか分からない。
実験に関して詳しい説明はなかった。要は何かしらの薬物とその解毒薬を試したいらしい。
言葉にするとどうと言うこともない。でも“解毒薬”が曲者だった。ひとつ薬物を試す度に毎回丁寧に回復される。その“
実験開始からどれくらい時間が経ったのか分からない。
肉袋の中は終始暗闇。薬の効果も相まって感覚の全てが曖昧だ。
「ふっ、う゛っ、ぐぅ!」
今、肉袋の中で一心不乱に腰を振っている。身体を支えているのは口に差し込まれた呼吸用の触手と、尿道と肛門に差し込まれた“粗相防止用”の触手だけ。欠損した身体では上手く身体を動かせない。それでも必死に身体を揺する。
視覚と聴覚、そして嗅覚が完全に利かない。辛うじて残る触覚はとても鈍く、自分の身体と肉袋の境目が分からない。ほぼ全ての外部刺激から隔絶された結果、こうして喉と肛門を抉る「内部の刺激」を求めてしまった。
肛虐趣味は無い。それでもこの刺激だけが己を感じ得る唯一の存在証明。自我を保つにはこうするしかない。
汗を滝のように流し噴水のごとく潮を噴く度に、触手を通して大量の水を直接胃に流し込まれる。脱水症状にならないよう手厚く扱われている。だけどそれは実験がまだまだ続くことを暗に示しているのだと少し経ってから理解した。
不意に回復されると声が響く。
「おい、聞こえるか?」
ズルリと口に差し込まれていた触手が引き抜かれる。
「げぇ! げほっ! き、きこえ、る」
これまでの実験が終始無言で行われていたから普通に会話ができて安堵する。
まだ受け答えできるだけの理性を保てている。
「次で最後だ。お前の所持品にあった“ライラの粉末”を改良した。この世界で記念すべき新薬第一号だな。元の効果の増幅に、感覚の鋭敏化を追加してみた。そこそこの媚薬ができたぞ。楽しんでくれ」
「もご!? う゛ぅ! ぐぇ!」
言われるやいなや再び触手が口に挿入される。
実験開始の合図だ。
ライラの粉末、通称「黒粉」は水に溶くだけで手軽に服用できる麻薬。それを口と肛門から強制的に摂取させられて、先程まで刺激に鈍かった肌が嘘のように敏感になる。
求め続けた外部刺激。肌を滴る汗に強烈な快感を覚え思わず身を震わせてしまう。
「嗚呼、乳首も
「い゛ひぃ!?」
不要な気遣いだ。既に十分な刺激を受けている。それなのに尿道と肛門に突っ込まれた触手に加え、間を縫って膣にも触手を挿入しやがった。
容赦のない嬲りに二度三度と突かれるだけで達してしまう自分が許せない。
「んひぃ! あ゛ぁ! あがぁあぁぁ!」
自ら抉っていた尻とはまるで違う。膣への刺激は格別。尿道、膣、肛門と圧迫感が凄まじい。刺激を求めていた身体にはキツ過ぎる快楽だ。
そして直ぐに悟る。今回は
「あ゛あ! あぁぁ! やっやめぇ! い゛ひぃ!」
予想した通り、触手が絶え間なく動きだすと早々に快感と多幸感で脳が満たされる。このままでは意識を保てないどころか己を見失いかねない。
「ぉお゛ぃ! き、きこえてんだろ!? 待てっ! まっ、とまってください゛いっ!」
堪らず喉に挿入されていた触手を引き抜いて静止を乞うても応答がない。股間に突き刺さった三本の触手で尿道を擦り、膣内を抉り、肛門を嬲られ続ける。
そして触手で一際深く膣を突きあげられたとき、我にも無く絶叫する。
「あ゛あぁっ!? あ゛ぁあああ゛あ゛あ゛あ゛ああぁぁっー!!」
瞬間、絶叫に驚いたのか触手の動きがピタリと止まる。
膣内を抉っていた触手が静止した場所は幸運にも損傷を免れていた子宮口。
触手が深く突き上げた時、偶然にも無防備な子宮口を引っかかれたのだ。
「ハッ……ハッ……ハッ……!」
辛うじて気絶せずに済んだものの呼吸ができない。むかし受けた拷問以来の激痛に鼓動が早くなり呼吸が荒くなる。「息も絶え絶え」とは正にこの事なのだろう。呼吸ひとつで勝敗を決する戦場に身を置いてきた者としては忌々しい事態だ。
下腹部の奥が痺れたまま治まらない。純粋な拷問とは異なり、媚薬により激痛の他に甘美な昂ぶりが確かな余韻として残っている。
快楽と苦痛、相反する刺激に脳が混乱している。
様子を探るかのように触手がヌルりと子宮口をひと撫でする。
「ひゃあ!?」
弱味を見せれば責められる。“反応してはいけない”と理性が訴えるが、自分でも信じられないほど身体が跳ね、甘い嬌声を上げてしまう。
間を置いて再びペロリと撫でられる。
「ぃひぃい゛ぃぃっ!!」
自分で自分の身体を制御できない。膣がまるで自我を持ったかのように収縮し、勝手に触手を締め上げる。己の“女”を強制的に自覚させられているようで悔しい。
不意に両肩へ肉壁がズンとのしかかる。
続いて胸部と脇腹にも肉壁が迫り、徐々に身体を圧迫されていく。肌に触れられるだけで膣が反応してしまうのが情けない。
そして、気づいてしまった。
「ま、まさかっ!? お、おまぇええ! は、放せ! はなせえぇぇえぇ!!」
腰を軽く支えられていた今までとは違い、全身をがっしりと固定されては
嬲られる。そう確信した瞬間、尿道が、膣内が、肛門が触手によって突き上げられる。下から上へ、ただ突き上げるだけでなく、脈動する触手が螺旋を描くように蠕動する。
「あ゛ぁあっ! い゛っ!? ま、まって! いぐぅ! いぎすぎるからぁあ゛ぁぁ!!」
絶頂で身体が強張り、果てたかと思えば休む暇もなく再び絶頂が襲う。寄せては返す波のように絶え間ない快楽が全身を激しく痙攣させ、何度も何度も股間を往復する触手が一突き毎に、巧みに調子を変えながら少しずつ速度を加速していく。
“ぬちゅぬちゅ”と控えめだった音が徐々に“ぐちゅっぐちゅっ”と湿り気を帯び、今は“ぼじゅるるぅっ! ぶちゅじゅるるるっ!”と下品な音を奏でながら媚薬と蜜を織り交ぜたドロドロの粘液を盛大にまき散らしている。
快感が痛みを塗りつぶしていく。そんな中、触手に違和感を覚える。
少しずつ形を変えている。膣内の感触を確かめるように撫でまわし、ひとつ反応を得ると“ツボ”を責めるのに適した形へと変化している。
だからだろうか、与えらえる快楽に
そのことに恐怖する。
私は知っている。人間は大抵の刺激にはすぐに慣れてしまう。それこそどんな拷問であれ、同じ刺激、同じ苦痛であれば10分も続ければ無反応になるものなのだ。
だからこそ、腕の良い拷問官は同じ刺激を被験者に与えない。
「いひぃぃ! いぐっ! い゛っ! んん! ふ、深すぎい゛ぃ! ああ゛ぁっ!!」
刺激が際限なく強くなっていく。いや、触手が身体に最適化されていく以上、いつかは上限があるのかもしれない。
ただ、その最適化が完了した時、それに耐えられる自信が無い。
多幸感と快感に呑まれながら、何度も絶頂と気絶を繰り返す。
夢心地のままいつしか意識が朦朧とし前後不覚に陥ると、私は無意識に腰を振るだけの存在に成り下がるのだった。
俺たちは一通りの実験を終え、ジルが作ったサンドイッチを居間で楽しんでいた。
異常事態であることには変わりないが、それでも美味しいものを食べると不思議と心が落ち着く――こともなく、俺とクラーナはその美味しさに終始感動していた。
「めっちゃ美味しいんですけど!?」
「そうだな、ここまでとは思わなかった」
もっとも、上層の連中が口にしている料理でさえ原料の多くが昆虫を粉末にしたもの。手に入ったからといって特別有難がって食べるものでもないのだが。
「良かった。普通の食べ物も美味しく感じる」
料理を普通に楽しめる自分に心底安堵する。
「味覚は大丈夫ってこと?」
「大丈夫というか、“楽しめる幅が広がった”と考えるべきかもな。味の好みは
好き好んで不浄な物を食べようとは思わない。ただそれだけのことだ。
「まあ、そう考えた方がポジティブよね。で、あの娘どうするの? まだ実験中?」
「最後に媚薬を試しているところだ。でもまあ、そろそろ終わりにするか」
薬効の効果時間については調べが不十分だが、製薬関係の
反応が無くなってから随分と経った気もするが、ひとまず床の上に吐き出す。
「うわぁ、えっぐ」
“ベチャリ”と吐き出されたクレマンティーヌを見たクラーナの率直な感想だ。
全身を体液と媚薬で濡らしたクレマンティーヌは濃厚な雌の香りを放っていた。身体は脱力し、嬲られ続けた穴という穴が弛緩して開いたままだ。意識も朦朧としているのか表情は無く、だらしなく半開きになった口からは舌が垂れている。
浅く上下する胸と痙攣する腰だけが彼女が生きている証だ。
「結局飼うの?」
「約束は約束だからな」
俺はクレマンティーヌのベトベトの髪を掴み上げ、顔を寄せる。目の焦点が合っておらず、虚空を見つめたままだ。
「聞こえるか? 俺を見ろ、クレマンティーヌ」
「う……、ぁ……あ?」
顎を掴んで強引に視線を合わしてやる。
反応は弱いが意識はある。
「約束通りお前を飼ってやる。まずは身体の再生だな」
クレマンティーヌから一旦離れ、クラーナたちに声をかける。
「欠損を再生できるか実験をする。クラーナも見ておいてくれ」
「了解」
アエラに合図を送り〈
魔法の淡い光がクレマンティーヌを包む。光の粒子が欠損していたパーツを型どると、左手首、左足、脚の腱、両乳首、
見た目には健常者そのもの。全身の汚れを流せば完了だ。
アエラに
「アエラ、すまないが外でこいつを清めてきてくれ」
「畏まりました、ヴィクトル様」
2人が出ていくとクラーナがからかうような口調で言う。
「ふふふ、扱いには気を付けなよ?」
「裏切ったら責任もって処分するさ」
「違うわよ。アエラちゃんの方よ」
「アエラが?」
てっきりクレマンティーヌの事かと思えば意外にもアエラの名前が出る。
「貴方、
「いや、そもそも
クラーナは納得したとばかりに頷く。
「やっぱりね。じゃあアドバイスをしてあげるわ。アエラちゃんとクレマンティーヌに序列を与えなさい」
「序列?」
「そう、ちょっとしたことでいいの。いいえ、違うわね。
「それに意味はあるのか?」
要領を得ない会話だ。
クラーナは真面目な表情で続ける。
「大有りよ。貴方が出かけている間に聞いたんだけど、
「なに?」
突然明かされる事実に困惑する。
「間違いないわ。この馬車に乗り換えてからだから、だいたい4年かしら。ユグドラシル換算だと80年近くもアエラちゃんは貴方に尽くしたことになるの。それなのに貴方の注意が新参者のクレマンティーヌに向きっぱなしになってごらんなさい。間違いなく疎外感を覚えるはずよ。顔に出さなくてもストレスは心を蝕む。気を付けなさいな」
「なるほど、なんとなくだが理解した。俺としてもアエラをないがしろにするつもりはないさ」
「それでいいわ。――言っておくけど、あの子たちの忠誠心は異常よ。死ねと言えば喜んで自害するレベル。接するときは下手なことを言わないことね」
「そんなにか」
自我を持たなかったNPCたちがユグドラシル時代を覚えているとはにわかには信じられない。しかし、それを前提に接したほうが良さそうだ。
「クラーナ、あの三つ子はどうなんだ?」
「記憶を持ってるわ。“新規”じゃなくて“編集”だったから記憶が残ったんじゃないかしら」
「なら、お前も気をつけないとな。マーシャとジルを含めると5人だろ? 大変だな」
「も、もちろん平等に可愛がるわよ」
クラーナが5人の世話を焼く姿を想像し、思わずニヤついてしまう。
「設定は変えたのか?」
「使用人のままよ。たださっきも言ったけど、“狂信者の使用人”ね。あの子たちも絶対服従なのは間違いないわ」
「そうか。まあなんにせよ、お前がああいう趣味だったとはな」
「いいじゃない、着せ替えくらい楽しんだって。せっかく夢が叶ったんだから」
クラーナは実験に先立ち、三つ子を着せ替えていた。それもなぜか
一見するとオーソドックスなメイド服を踏襲しているが、クラーナの意向で全員下着を付けていない。リオだけが納まり悪そうにしているのは、独りだけ“付いている”からだろう。同性のよしみで彼には優しくしてやりたい。
マーシャが工房から戻ってくる。
「ヴィクトル様、プレートを全て溶かし終えました」
「ご苦労、少し休むといい。そういえば、マーシャは飲食できるのか?」
ふとテーブルのサンドイッチに目がいき疑問に思う。
マーシャとジルは
そして当の彼女らは、“ダグザの大釜”から自動補給するようにAIを組まれていた。この世界ではどうなのだろうか。
「可能です。補給に言及するならば、摂取する対象は吸収効率の面から液状が望ましく理想的です。または以前いただいた“賢者の石”のような高エネルギー体であればバフ効果込みで長期間補給の必要が無くなります」
「賢者の石か、そんなこともあったな」
賢者の石。錬金術を題材にする作品では何かともてはやされる賢者の石だが、残念ながら世界観を北欧神話からとっているユグドラシルでは
高レベル帯の
「今はマスターよりお預かりしたリング・オブ・サステナンスを装備中ですので飲食自体が不要となっています」
食事と睡眠が不要になる指輪。そんなアイテムもあったなと思いだす。
となると気になるのはアエラだ。彼女にはリング・オブ・サステナンスを装備させていない。ギルドの運営コストを切り詰める必要があるのなら指輪を用意しなければならない。
「クラーナ、アエラにもリング・オブ・サステナンスを装備させた方がいいか?」
「その必要はないわ。
クラーナが腕章と指輪を取り出す。
腕章はリリたちが付けていたものと同じ物だ。
「はい、これ。アエラちゃんに」
「この指輪は?」
「不老の指輪よ。作ってみたの」
「ユグドラシルには無かったよな?」
頷くクラーナは誇らしげだ。
この短時間でユグドラシルの魔法に手を加えて作りだしたのならその表情にも納得だ。
「私たち異形種には寿命が無いじゃない? 老化が止まるにしても、この手のケアは若いうちからしていた方がいいのよ」
「そんな設定よく覚えていたな。で、どうやって作ったんだ?」
「神秘と禁術の合わせ技よ。あと言い忘れてたけど、マスターソースを開けたわ」
「おいおい、そういう大切なことは忘れずに頼む」
転移後一番の朗報だ。
「報告が遅れたのは悪かったわ。私の部屋でしかまだ試していないし、無くなっていた項目があったけど、ギルドの運用には支障無さそうね。後で貴方の部屋でも試してみて」
「部屋、か。ユグドラシルじゃどこでも開けたのにな。不便だが開けないよりはマシか」
「マシなんてもんじゃないわよ! これで馬車をあれこれいじれるんだから。でも、ひとつ問題があるのよね」
食い気味に反応したクラーナが急に声を落とす。
「なんだ? バグでもあったのか?」
「そんな大袈裟な問題じゃないわ。ほら、生理現象があるじゃない? お風呂とトイレを追加したかったのよ」
「ああ、そういう」
相槌を打つものの
「水は流れたわ。ただ、排水管が繋がってなくて」
クラーナ曰く、風呂もトイレも「機能はする」という。お風呂もトイレも本来はジョークアイテムだ。お風呂は入浴できても何かバフ効果があるわけではなく、トイレも水が流れる演出こそあるものの扱いは“
この世界でも水が流れることから、恐らく「水が流れる」というジョーク機能がこの世界にローカライズされた結果、
そして部屋に設置したアイテムは基本的に壁を越えてパーツがはみ出ることはない。それがこの転移世界にローカライズされた結果、下水管問題になっているわけだ。
「排水か。部分的に床を上げて、その下に排水用の
「そうよね……、うん、マーシャに作ってもらうわ」
成るようにしかならないのでこの件はクラーナに任せる。女性陣には気の毒だが最悪オマルなり簡易トイレを作れば解決する問題だ。
「話を戻すけど、内装を変更できることは確認したから。まあ、相変わらず小型か中型しかダメだったけど。アエラちゃんと一緒なら色々必要でしょ?」
「そうだな。あとで外装データを漁ってみるさ」
新たに模様替え問題が浮上したところでアエラとクレマンティーヌが戻ってくる。
「ヴィクトル様、クレマンティーヌの洗浄を終えました」
アエラは仕事ぶりを披露するかのように裸のクレマンティーヌを居間の中央に立たせる。
髪は濡れたままだが体液に塗れていた身体はすっかり綺麗になっていた。
「ご苦労、アエラ。よくやった」
「も、勿体ないお言葉! ――あぅ!?」
クラーナの言葉を思い出し、試しにアエラの頭を撫でてやると顔を真っ赤にして顔を伏せた。流石に頭を撫でるのは子供扱いしすぎたかと反省するが、口元がわずかに緩んでいるので喜んでくれているのだろう。
クラーナへ目を向けると「それで良いぞ」と言わんばかりに大きく頷いている。
「クレマンティーヌ、お前は俺の個人的な所有物だ。いいな?」
「……畏まりました。誠心誠意、ご奉仕させていただきます」
クレマンティーヌにしては謙虚な言葉だ。
後で聞いたところ、どうやらアエラが入れ知恵したらしい。“
クレマンティーヌはただそれを静かに聞き、なすがままに洗われていたらしいが、その間、彼女が何を思っていたかは分からない。
独自設定
・情報漏洩防止用の魔法の位階。
・ヴィクトルの取得種族、
・主人公たちの成長。原作ではレベルがカンストしていると成長の見込みはない。当二次小説ではものによっては可。魔法、アイテム、レシピ等、アレンジという手段で新しく生みだせる。