リリアとかいう侯爵令嬢のおかげか、はたまた私が侍女とミランダと行為に耽った影響なのか、我が婚約者はリリアと一緒にいることが格段に増えた。
結婚して妻となる人間はいても、恋だのは自由にしてあげようというのが私のスタンスである。前世は恋愛結婚が普通であるが、この世界では余程でないと許されない。
常であれば、王族であろうと恋愛結婚していたであろうが、今はそういう訳にもいかない。
大陸統一を掲げ、各地へ侵略しては征服する帝国に我が王国は現国王の妹が今の皇帝に嫁いで親交を深めることで侵攻を防いでいた。戦わずして負けた、とも捉えれるだろう。誰も死なないことを選んだのは、はっきり言って英断だろう。
しかし、それも揺らいでいる。
現国王の路線を継ぐアルフレッド殿下に対し、その弟にして我が婚約者のカイルは何を血迷ったのか真逆のことを主張するのだ。
相当な野心家であるのが窺えるが、そんなの認める訳にもいかない。
だけど、有力な貴族が現国王の路線を支持する一方で若い貴族の間でカイルを支持する勢力があるのは事実。現国王路線を支持する有力貴族が軒並み高齢であることが、更に拍車をかけている。最近では、アルフレッド殿下もそっち方向へ毒されている感じを醸し出しており、手綱を握ることを求められていた私とアルフレッド殿下の婚約者で竹馬の友であるミランダは肩身の狭い思いをしている。飽きられてしまったのだろうか。私もミランダも。
定期的に行われる茶会で、今日も辛気臭い話が行われていた。
「それで、アルフレッド殿下はなんて言っていました?」
「帝国に他三国で同盟を組んで挑めば勝てる、と申していましたわ」
「とんだ夢想家ね。協力したところで足並みが揃うとも限らないし、そもそも帝国との国力差は歴然としているのに勝てるハズがない」
「そう申し上げましたわ。考え直すようにも伝えましたけど……」
結果は頬を叩かれたらしく、頭を抱えたい。
女の子に手を上げるなんて男の風上にも置けない輩だ。だけど、抗議したところでこちらが悪いと決めつけられるに決まっている。
「厄介だ。二大公爵や他三国がいれば帝国が勝てないんじゃなくて、あくまで侵攻しないというだけだというのに。何故それが解らない」
そう呟いた時だ。
「思慮深くてますます気に入ったよ、俺の未来の花嫁たち」
「誰だっ!?」
真っ先に立ち上がって私は声のした方へ鋭く振り向く。
ここは私の家の敷地内で、しかもミランダとの茶会で扱われる場所であり例え婚約者であろうと余程でないと立ち入りは許していないテラスだ。
そこへ許可もなく、あまつさえ他国の人間が来ていた。他人の婚約者を「自分の嫁」とか頭湧いてるんじゃないのか?
相手は帝国の次期皇帝であるアレックス様だ。婚約者がいる私とミランダに対し、やたらとアプローチを仕掛けてくる女好きだ。
私は控えめに言っても気に入らない。前世にいたヤリチン共と似たような雰囲気があるのだ。異性と付き合うのなら、誠実であることが好ましいのは私だけだろうか。
しかし、相手は大陸に覇を唱えんとする帝国の次期皇帝だ。笑顔で相対する。
「これはこれはアレックス様。ここは私の公爵家の庭です。一体、誰の許可を得て来たのですか?」
「もちろん、君の父上からだ」
親父よ、どういうつもりだね。
「仕方ありませんね。それで、なんの用事で来られたのですか?」
「未来の花嫁を迎えに来た」
はて、聞き間違いかな。
私は首を傾げ、ミランダが落ち着いた様子で尋ねる。
「私もエルシア様もアレックス殿下とは婚約した覚えはありませんわ」
「明日、婚約破棄される手筈になっているから問題ない。君たちはリリアとかいう侯爵令嬢を危害を加える悪者として断罪されることになっているからね」
「虚言ですわ。私たちをそのようなでっち上げの罪で断罪など、起こり得るハズがありませんわ」
「証拠は全て整っている。それに付随して二大公爵は反乱罪をかけられて取り潰し、王国は他三国と同盟して我が帝国へ宣戦布告、戦争になって王国は地図から消えることになる」
「そのような事……」
ミランダが蒼白になって絶句するが、私は予想できる未来なだけあってアレックスの推測は間違いない。
逆に感心しているくらいだ。
「熱心に調べ上げてたんですね。でも、まだ国王陛下が健在である限りアレックス殿下の言っていたことが現実になりませんわ」
「知らないようだから、教えるよ。今日、国王陛下は突然倒れてそのまま帰らぬ人になるだろう」
「はぁっ?」
「無礼な!」
突飛すぎて「何言ってんだコイツ?」と思ったら、ミランダが珍しく怒声を浴びせたことから驚いてそっちに気を取られた。
「国王陛下に何をするつもりっ?」
「何もしない。少なくとも、こちらから何もするつもりはない。あくまで王国が何かしてくるから、帝国は対処するだけだ」
何を知っているのか。なんて聞くだけ野暮だ。コイツは全て知っている。そして、元凶だろう。
「一体、誰を唆した?」
「あのアバズレとその父親を唆したくらいさ。国をくれてやるってね。彼女、魅了を少しばかり使えるから役に立ったよ」
「まんまと嵌められた訳か」
「好きでもない男と婚約したのに破棄されるんだったら、俺が貰っても構わないだろう」
これはアレだ。私とミランダの家は王国を見限ってる。自分たちの保身に入り、娘を帝国に売り渡しやがった。
悪いことだとは思わない。後手に回れば潰されるのはこっちだから、先手をとるために本当に裏切るということか。
「ミランダ、どうやら私たちは帝国に売られたみたいね」
「そんな……王国はどうなるのですか?」
「それは……」
アレックスに目を向ける。
「一応。俺もこの国の王家の血を引く人間だ。そのまま王位を継承してしまうのも手だ。あとは、二大公爵は国王殺害を行ったとされて反逆罪をかけられたが、そこへ心優しい第三者が公爵家が無実であることを知り、公爵家が庇護を求められたのを俺が承諾して介入。無事に逆賊を葬ったことによる功績で公爵家はそれぞれ娘を差し出す。こんなシナリオはどうだい?」
「やはり、王国と戦争することは避けられないか」
「彼らが頼りにしている他三国に関しては、二大公爵の味方に回ることは確実だから流れる血は少なくて済むハズだよ」
王国の人間が血を流すのが嫌なんだよ。それに他三国の人間の血も!
他三国は先ず1つ目が私の亡くなったお母さんがそこの王族であった。もう1つは父親がそこの王様と古くからの友人。最後の1つはミランダのお母さんがそこの現国王の妹だ。どれも行ったことがあるけど、自分の娘みたく可愛がられた。うちの母は相当に慕われていたらしい。流石に父の友人の息子から求婚されたことには、苦笑してしまった。だって相手は12歳の子供だったからだ。
まあ、つまり私たちが帝国に靡けば他三国も追随してくれるのだ。
王国のみが割を食った感があるけど、仕方ないか。
そこまで考えたところで、結論を出して行動に移そうとして先にミランダが動いた。
彼女はアレックスに歩み寄り、彼の腕に抱かれたのだ。
「せめて略奪などで王国や他国の民を傷つけないようにお願いします。そう約束していただけるのであれぱ、この身は貴方様のモノとなりますわ」
「ミランダ!?」
「エルシア様、恐らく公爵家を助ける条件に私たちがアレックス殿下の女となることもつけられていますわ。覚悟を決めましょう」
いや、そう言われても困る。奴は嫌いな人種だ。下半身が世界の中心とでも言わんばかりの人間だ。そんな人間に抱かれるなんて死んでもゴメンだ。
渋る私にミランダがトドメの一言を告げる。
「私がエルシア様と一緒にいたい……では、駄目ですか?」
「……それは卑怯だ」
国のためなら愛した男すら手放すか……先に手放したのはあちらだけにミランダには情状酌量の余地はある。
私はどうだろうか。まだカイルに表立って拒絶こそされてないものの、既に手遅れなのだろう。
最後に体を重ねた心地良さを思い出し、その時のカイルの熱に浮かされていた自分が女としてカイルをきちんと一人の男と意識していたことを今更ながら痛感する。
何もかも今更だ。私なりに長年かけた苦労も全て無駄となり、これからは自分が前世から気に食わないタイプの人間に抱かれるなんて嫌悪感で死にたくなる行為をしなければいけない。
いくら親友と一緒とはいえ、婚約者も見捨てられない優柔不断な私に奴は無理やり抱き寄せる。
鳥肌が立ち離れようとしたが、抵抗も無意味だと覚ってなんかもう全て諦めることにした。
せめて1つくらい条件をつけてやるつもりで、奴に目を向ける。160くらいある私よりも高いため、必然的に上目遣いとなって見上げる形となる。
「約束は守れ。私たちも守るから」
アレックス殿下はニヤリと笑みを浮かべる。
「じゃあ、早速前金を貰おうか」
チュッ。
唇と唇が触れ合う軽いキスだった。カイルだけじゃなく、自分自身すら裏切ったような気になって嫌だ。
不快感から噛みつきそうになる私から唇を離した後、奴はミランダに唇を重ねていた。
放心する私たちを抱きながら、彼は宣言する。
「大陸でも美姫と名高い二人を手に入れるんだ。必ず約束を果たそう」
だから、君たちの全てを寄越せ。
そう伝えられた気がして、これから何をされるのか解るだけに身の毛がよだつ思いだった。
純愛と寝取られ、どっちを先に見たいか
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純愛が先
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寝取られが先
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どっちでもいい
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純愛だけにする
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寝取られだけにする