「うえっ、チクショウめ。気持ち悪い」
誰もいなくなったテラスで、私は必死に口を拭った。
あの男に体を許さないといけない、今更ながらに不快で気持ち悪くて拒否反応が酷い。
自分が嫌いになりそうだ。
何故ミランダは平然と受け入れられたのだろう。愛だの恋だのといった個人の感情は優先されてはいけないとはいえ、割り切りが早いような気がしなくもない。
私には到底受け入れられない。そもそも、私はカイルですら最初は無理だったのだ。
『君がエルシアだね。僕はカイル。君と婚約することになったんだ。よろしく』
幼い頃、軽い調子で話しかけてきたカイルを心底嫌悪した覚えがある。
将来カッコよくなるからとかじゃなく、この軽い調子が前世でいた他人の女だろうと平気で寝取る最低野郎と合致したような気がしたのだ。結局、ヤベーくらい合致してそうなのはあの帝国の皇子……名前すら思い出したくもない。
「くそっ、イライラする」
キスしてきた奴も憎いが、それを許してしまった自分も憎らしい。拒めなかったとはいえ、もっと上手いこと回避できなかっただろうか。
もう一度唇を拭い、消えない感触にイライラしていると誰かがやってくる。
「ここにいたか、エル」
「カイル?」
最近、顔を全く見せなかった人がいた。
「今更、何しにきたの?」
「エルシア、君との婚約を破棄しに来た」
ドキッ、と心臓が一瞬止まった気がした。
「……どうして?」
「俺は君と一緒にいられないからだ」
「そう、ですか」
そんなに……。
「リリアとかいう女が良いんだ。顔? 体? 性格?」
「そうじゃない」
「じゃあ、何よ! なんで一緒にいられなくなるのっ? 私がミランダやエリィとセックスの真似事してたから? それとも、帝国のアルフレッド皇子とキスしてしまったから?」
「明日、俺は死ぬからだ」
「ハァ?」
謎なんだが。
詳しく聞けば、リリアに魅了されて洗脳されている自覚があるらしい。一定距離とるか、私が抱きつくか傍にいれば魅了状態にされないらしい。でも、それも限界らしく、王宮に手段は知らないけど住み着いたリリアによって強い洗脳状態に置かれ、今回は運良く抜け出せたが、もうどうにもならないらしい。
「明日、改めて婚約破棄を告げるだろう。そして、俺は君を殺そうとするだろう。エルにはその時俺を殺してほしい」
「なんでそんなことを……?」
「どうせ殺されるなら、帝国の人間じゃなくてエルが良いんだ。君になら、俺は殺されてもいい」
「そんなの──―」
無理に決まっている。
まだ平和な日本での価値観が残っていて、おまけに親しんだ相手をこの手で殺すのなんか頼まれたって出来ない。
「そうだ。ここに泊まっていけばいい。そうすれば、あの令嬢の魅了にもかからない。明日も四六時中一緒にいれば問題ない。明日、何もしないでいれば無関係でいられるハズ……!」
「帝国に王国は占領されるだろう。たぶん、俺は良くて暗殺かな」
「そんな事させない! 私が何とかするから!」
「それでアルフレッド皇子に抱かれるのか?」
言葉に詰まった。
何とかする、と言って実際に行動しようとすれば抱かれなければいけなくなるのだろう。
出来るか出来ないか、ではない。ヤるかヤラないかが重要だ。
「カイルのためなら、何でもするつもりです」
「やめてくれ。俺は君にそんなことしてくれてまで生きようと思わない」
「じゃあ、どうすればいいの? どうすればカイルは私といてくれるの?」
不意に思いついた選択肢がある。一緒に逃げる、という究極の方法だ。誰の得にもならないだろう。私にもカイルにも他の人たちも。
王族としての責任があるカイルにそれを強いるのは、あまりにも酷だ。
なら、どうする?
フワッ、と何かに優しく包まれた。
「ありがとう。何も言わないでいてくれて」
「察しのイイやつ。そして、最低です」
「うん、わかってる」
「馬鹿だ」
「わかってる」
「なんでもっと早く言ってくれなかったの」
「自分で何とかするつもりだったんだ」
「それで魅了されてたら元も子もないじゃない」
「悪いと思ってる」
一緒にはいられないのだろう。
立ち去ろうとするカイルに何も告げられず、このまま別れてしまってもいいのだろうか。
これが最後かもしれない。
「私は──―」
どうしたいのだろう。
このまま見送れば寝取られルートへ直行します。
逆に呼び止めれば、純愛ルートです。要は全部捨てて二人だけで遠くへ逃げることになります。
どっちを先に書くか迷う。
純愛と寝取られ、どっちを先に見たいか
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純愛が先
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寝取られが先
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どっちでもいい
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純愛だけにする
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寝取られだけにする