9Sの視覚へ接続して、2Bの今回の任務について行くことにした。
しかし、これは……酔う。どんなに頭や視線を動かしても視界は変わらないのに、自分の意思とは違うところを見る。乗り物酔いってこんな感じだろうな
「うっぷ」
ちょっと吐きそうになって口に手を当てる
『マスター? 何カ御用デスカ?』
9Sが通信してくる。俺のさっきのが会話と取られたみたいだ
「いや……ちょっと酔ってな? 吐きそうになっただけだ」
『ハク?』
「あー……嘔吐って言えばわかるか?」
『嘔吐。体調不良ヤ毒性ノ物ヲ摂取シタ時ニ行ウ行動』
「ああ、大丈夫だ。そのまま行ってくれ」
まだこれぐらいなら耐えられる。もっとひどい二日酔いとかもあったからな……そう言えば酒って無いな……
「2B、小休止ヲ提案スル」
「9S私たちに休憩なんて必要ない」
「マスターガ酔ッテイル」
「酔う? お酒でも呑んでるの?」
「否定:予想:他人ノ視覚情報ニヨル脳ノ誤認識」
「何!? マ、マスター大丈夫なのか!?」
2Bがあわてて9Sに詰め寄る。
『大丈夫と伝えてくれ。乗り物酔いの一種だと』
「乗り物酔い?」
「飛行ユニット使用後、マレニ動ケナクナル、アンドロイドガイタ」
「ああ……何かバランサーがエラーを起こしたとか……」
アンドロイドでもあるのかよ。まーヘタすれば人間より敏感だかしょうがないか。9Sのおかげで休憩、6Hが持ってきてくれた水を飲んで落ち着いた。
多少ペースを落としつつ進んでいくと、崩壊したビル郡が並ぶ場所へ出た。
「ビルから……滝? なんじゃこりゃ?」
構造としておかしい。ビルの高さは30階を超えてるように見えるが、その途中から水が流れ出ている。そのまま少し進んでもらうと……海にビルが沈んでいるというなんとも理解の範疇を超えた景色が見えた
「以前遭遇シタ、強化個体ト見ラレル」
「うん視認した。破壊しよう」
大きな金色の個体と、2B達と同じぐらいの大きさの機械生命体。戦闘が始まるが……
「ちょちょちょーぉぉぉぉ!!」
人間の反射神経を超える高速の視界に、俺は普通に吐いてしまった……
──────────ー
「マスター、すまない……」
戦闘を途中で終わらせることは出来ないため、俺が吐いたことは戦闘後9Sの報告でばれた。
『ああ、大丈夫だ。今は目を閉じてるから』
線路の見えないジェットコースターや、顔を無理やり動かされて振り回されてるような凄さだった。ちなみに俺がやらかしたのは6Hが掃除、着替えも手伝ってくれた……トイレの世話までしようとしたから、さすがに止めたけど
しかし、これからはどうしよう……今後大きな戦闘に限らず、正直途中の戦闘でも地味に来たからな……ちょっと考えよう
「マスター脳波ノ安定ヲ確認」
「落ち着いたという事か?」
『ああ。このまま寝ながら続けるよ』
今ホワイトに膝枕されながら寝ている。多分これ言うと2Bが怒るからここは黙っている。目を開けると再度海が見えた。色々、ビルが生えてるからおかしい景色でもあるけど、久々に見た外の世界にため息がもれた
「マスターハ海ガ好キナノデスカ?」
「特別に好きってわけじゃないけど、久々の景色だったからな……今度は家族全員で見に行きたいものだ」
「……行ケマス」
「ん?」
「僕たちガキット、ダカラ、行けマス」
「ああ……。ありがとな」
「ハイ」
「9S? ミサイルの防衛にいくよ?」
「了解」
さっきの金色の個体を撃破したところから、沈んだビルを飛び越えて船の近くに行くと、再度戦闘があった。さっきよりゆっくりではあったがやっぱり吐きそうになった。しかし、次のホワイトの指示が今回の事を後悔させることになる
「2B、9S。補給船が機械生命体に襲われています。飛行ユニットを送りましたので、それで救援へ行ってください」
ぉぅふ……そ、空を飛べるのか……
「マスター……問題ガ……」
「いや、大丈、夫だ。ドッグファイト。Gの影響受けないから、きっと純粋に楽しめる……はず」
「了解」
……もっとFPSというか、コックピット視線のゲームやっとけばよかったな……2Bが飛行ユニットに乗る。乗るというよりパワードスーツのように装備しているように見えた
9Sの視界もそれに近づき、くるっと後ろを振り向いてユニットに乗り込む。
心臓が痛いぐらいどきどきしている。緊張とちょっとした楽しみ。色々な感情が渦巻くけど
「9S……ちょっと楽しみだ」
「……了解」
そして俺は空を飛んだ
──────────────
「お、おお、お、おおお!」
言葉がこれしか出ない、どうやら飛行している時は地面を向いているようで、今は海が高速移動しているように見える。頭の上や横から何かの爆発音がすることから、戦闘中であろうとは思える。
すると空中で視線が回転した、今度は正面に敵が見える。空中で変形するなんてかっこいいじゃねぇか! でも、この視線は結構くる……そうやって空中戦を繰り返していくと大きな船が見えてきた
「こちら空母ブルーリッジ2!」
船上に炎が見える、結構攻められてる雰囲気だ。さっきから救援の信号というか通信が入ってる。2Bと9Sが小型の敵を大方倒すと
「大型エネミー接近」
「あれか!?」
円盤というか、Uの時のような形の敵が来た。が、動きが遅いため2人の敵ではなかった。
「大型兵器の破壊に成功。これより周囲の警戒に移行」
「……イイエ。マダ大型ノ敵ノ反応」
「それはさっき破壊を……」
「……ソレヨリサラニ巨大……コレは!?」
巨大な空母、それが海の中から突き上げられて『食われた』。巨大なんてものじゃない。表現するならクジラ。巨大クジラだ
何か体に黄色い輪があって、なにかそれによって攻撃がうまく当たらないみたいだ。そのバリアの発生源と思える黄色い物体をいくつか破壊して衛星攻撃を当てる。しかし、奴はまだ倒れない
「……本体内部ニモ、EMP装置ノ可能性」
『さっきのビームでも死なないってのか!?』
「ムシロ、電磁波阻害装置ノタメ」
『……じゃあミサイルか何か物理攻撃じゃないと当たらないってか!?』
「……物理……」
どうにか小さい敵を蹴散らしつつ、なんとも状況が開けないが心強い増援が来てくれた。しかし、彼女達の攻撃も決定打になっている様子もない
「どうすれば……」
「……提案:沿岸ノ迎撃装置ニヨル攻撃」
「沿岸? 上陸阻止用の何か?」
「肯定:検索……発見。マップヘポイント」
「行こう!」
また変形して飛んでいく。正直大分きつい……でも、命を張ってる人たちがいるのに、弱音は吐いてられない。……全部終わったら、俺何も吐くことできないだろうけどな
海岸の淵に、巨大な砲台がある。
「これか!?」
「肯定:コチラデアシストシマス。コノレールガンデ」
「わかった!」
2Bが何発か撃つ。頭に当たってもはじかれるが、敵が攻撃を仕掛けようと開けた口にぶち込むことが出来た。口の中に何発かぶちこむと……奴が立ち上がった!
さっき破壊したと思っていた黄色い装置が、背中にびっしりとついていた。それが光ると周りに飛んでいた増援部隊が落下していく。
「防御!」
「9S!?」
9Sが2Bの前に出て、波のようなものを防ぐ。見えている視界に不快なノイズが入る。テレビを見ているときに電波の受信がおかしくなった時のようなノイズで、頭が痛くなった
「早急ニ退避」
そう言って飛行ユニットに二人が飛び乗るが、奴の手の方が早く、レールガンが破壊されて、かろうじてユニットに乗った二人が吹き飛ぶ。ユニットの起動が間に合わず、そのまま墜落かと思いきや……
「大丈夫ですか!? 2Bさん!?」
なんかえらく可愛い声が聞こえたが……機械生命体??
「パスカル!?」
空を飛んだパスカルと、彼女? の仲間によって9Sのユニットを空中で受け止めてくれていたから助かった
「あれだけ攻撃してもまだ動くのか……」
「あれは私の記録にも残ってます。最後は暴走して私たちも手に負えませんでした……」
「……物理……」
「9S?」
「……提案:再度物理攻撃」
「でもレールガンは……」
「サッキ護衛シタ、ミサイルノ利用。シカシ、背中ノEMP装置ノ妨害ガ予想サレル」
「それを壊せばいいんだな?」
「肯定……2Bオ願イシマス」
「……わかった……」
9Sが戦線から離れる。マスターに見守ってもらえないのは寂しいが贅沢は言ってられない。装置を壊さないと!
──────────
「うう……うう──」
きつ、い……視界だけのはずなのに、なんだか風を感じているような錯覚だ。でも急がないと2Bが危ない。結構長い間飛んでた気がするけど、なんとかミサイルの所にまで戻れた
「ミサイルノ状況ヲ確認……発射可能状態」
『9S行けるか!?』
「肯定:発射します」
でかいミサイルが大きな火を吹いて飛んでいく。固唾をのんで見守っていると無事命中。思わずガッツポーズをするが敵が大きく光ると、俺の意識がそこで途絶えた
うまくまとめられた・・・と思います