「本編」は終了です
時間は少し遡る。
「ぅぅ……あ……」
何が起こった? 2Bの偽物と戦って、自爆に巻き込まれて……
「うぐぅ……ああ」
左腕が破損してる……ダメージを理解するためにある痛覚の信号が、肘から先が無くなったことを知らせてくる
とっさに左手を出してかばったため、なんとか左手の破損だけで済んだが、これでは戦闘が厳しい。一度アジトに戻るか? A2が来るまでここで待つか?
腕の痛みのせいで考えがまとまらず、横になった姿勢のまま寝返りとうつと予想外のものが目に入った
「な!? 2B!?」
思わず離れるためにゴロゴロと転がる。
「……動かない?」
「不明:機能停止の理由」
「ポッド……」
時間差で爆発でもするのか? 全部倒したと思ったが、残っていたのか? スキャンをしてみると爆発物の検知はないから、多分爆発しないはず
「提案:破損した左腕の移植」
「あ……」
まさか、さっきの話がここでいきなり出るとは思わなかった。A2からの通信もないから合流は難しいのかもしれない。戻るとしても、帰り道に敵が出ないとも限らない以上、腕の修復は必要になる
「……試してみるか」
偽2Bに近づき、左腕を掴んでみる。全く反応が無いが見た目は2Bそのもののため、この左腕をもぐのはためらわれる。
目をつむり、力を入れて左腕を引っ張ると、めきめきといういやな音と共に思った以上あっさり左腕が取れた。意を決して自分の左ひじにその腕を「接続」すると、はじかれるような熱い感覚が接続部位から来る
「ぅぅ……ああぁぁ……」
せめて、デボルかポポルがいればもう少しマシだったかもしれないが、多分、この苦痛は他でも起こると思う。これは、これでいい情報なので、残しておこう。なんて、左腕の苦痛を感じながらどこか冷静に考えていると移植はなんとか終わった
「警告:汚染機体からの部品移植により、ウィルスの検知を確認」
「やっぱり、ただの親切じゃないってことか……」
入口の件しかり、さっきの件しかり。どうもこの塔は期待を持たせてから突き落とすのが好きみたいだ。悪趣味な……
「推奨:自己ハッキングおよび、ウィルスの除去」
「了解……」
倒れている柱の陰に隠れて、ウィルスの除去を試みる。さすがに、物理的な接触ではワクチンも効き目がなかったのかな? こういう時、自分がスキャナーモデルでよかったと思う
数が多く、少々手こずったが除去は完了した
「ウィルスの除去を確認。現在の運動能力は95パーセント」
多少違和感はあるけれど、何とか戦えるレベルにまで復旧したと思う。さっき戦っていたところと別の場所になっているのにやっと気が付いた。それでも先に進むしかないから、多分出口と思えるところから脱出。
一本道を進んでいくと、また部屋の入口のようなところが見えた。そこに行くしかないと思い、近づくとその入り口が急に閉じてしまった。閉じた入口の前に、赤い服を着た少女の映像? が出てきて、「あの声」が聞こえる
「ヨルハ機体9S……ヨルハ機体9S……ようこそ! 塔へ!」
「何が、ようこそだ……」
今までさんざんおちょくられて、正直うんざりしていたこの声。その正体は僕より小柄な少女が正体のようだ
「ここまでたどり着いた貴様に、耳寄りな情報があります」
……ん? 今、最後のほう声が……?
「この場にいる、機械生命体を全滅させたら、教えてやろう」
声が、少女のような高い声から、急に低い男の声に変わった。少女? が消えると、今まで何度も倒してきた機械生命体が出現。数は多かったがさほど苦労することなく全部撃破することが出来た
「全て壊したな……全て壊したな……約束通り、情報を見せてやろう」
こいつの言う「情報」にどんな価値があるかわからないが、くれるというのならみてやろうじゃないか。そして、データが僕に転送された
『極秘。ヨルハ部隊廃棄について』
「これが……ヨルハ計画……、じゃあ、僕たちや2B、A2のみんなは……」
「全てを知ってもなお、戦う事を望むか?」
「だまれ!!」
少女に斬りつける。それは映像のようにすぐ消えて斬った感触はなかった。僕たちの未来は決まっていた……、いや、決められていた。胸の奥がざわざわとうごめく。
「私達は、機械生命体のネットワークより生れた概念人格……攻撃は無意味だ。貴様の存在は、無意味だ」
「違う!!」
今まで感じた事のない、胸のざわつきがどんどん大きくなっていく。マスターが頑張って2B達と人類を取り戻すために頑張っている。その環境を作るための僕たちの戦いが無意味だと? 絶対違う!
さっき閉じた壁が開いて先に進むと、かなり開けた空間に出た。すると今度は飛行ユニットが飛んできた。多分操縦しているのは汚染されたヨルハ部隊。数体出てきたそれらを撃撃し、オーバーヒートしたのか何体か動きを止めた。操縦席に乗って止まっているアンドロイドを力任せに引きはがし、乗り込んでシステムチェックを行う。僕が乗ったやつは運よく停止しただけでまだ動きそうだ。このままチマチマ中を登っていてもらちが開かない。これで外から一気に登ってやると思い飛行ユニットを起動、そして飛び立った
塔の外周部から頂上をめざす。さすがに無防備じゃなく、相手も航空戦力で迎撃してくる。だが、これも今まで戦ってきた連中と同じのため難なく倒せていたが、急に巨大なボールのような機械生命体が現れた
『信じてた、シンジテタ、死んじ……神にナッタカミニナッタ、誰がなった?』
不明瞭な言葉を発するその巨大なそれに攻撃を加えていると、破壊する前に離脱されてしまった。しかし、さっきまでとはあいつらの行動がおかしい。少なくとも、ここまで言葉をランダムに選ぶような事はなかったはずだ? 何か大きな変化があったのか、状況がつかめないまま頂上へ目指す
──────────
「今度は小さいのか!?」
あのでかいのが逃げて、上へ上り続ける床へ乗っていると、次の敵はアジトの外でよく見かけたタイプの機械生命体が襲ってきた。
飛んでいる奴は多少堅かったが、何の問題もない。しかし、まだこんなに残っているとは……さっき私が「アイツ」を倒して、司令塔は無くなったと思ったのだが……こんなところでやられるわけにはいかない。一体どこまで連れて行くつもりか知らないが、徹底的に付き合ってやろうじゃないか。
敵の増援はそこまで多くなく、すぐに止まった。しかし、床の上昇は止まらない。周りの様子をうかがうと何か瓦礫が宙を舞っていた
「あのガレキは……?」
「不明。何かの資材にする可能性」
そんな事に気を取られていると、またあのでかいやつが襲い掛かってきた。さっき私が壊したと思っていた触手型の砲台から攻撃を繰り出してくる。高出力のレーザーで薙ぎ払ってきたり、砲台で攻撃を繰り返すが、やはり動きがどこか遅い。油断せず攻撃をかわし、相手にダメージを与えていく
──────────
さっき逃げた大きいヤツがすぐ戻ってきた。援軍として何体か機械生命体を連れてきたが、敵ではない
『命を奪う、イノチをウバウんだ』
「! させない!!」
それは機械生命体の本能なのか? 相手を殺す事しか考えないなんて……こいつは危険だ。確実に仕留めないとマスターや2Bが危ない。僕が殺す!
『大切なモノを失う……壊れた。だからお前たちも壊す』
以前戦ったイブの事をふと思い出した。あいつは確かに、兄を殺された憎しみで戦っていた。こいつらも同じ感情が? だからと言って同情でやられるわけにはいかない。ここは、やるかやられるか。僕にだって負けられない理由がある
どのくらい登ったかわからないが、奴が塔の中へ入っていった。そのまま追うと平らで広い空間が広がっていた。ここで迎え撃とうって算段なのか? そう思いつつ、こちらも決着をつけるつもりで挑む
『星に向かおう、歌を歌おう、ササゲル今』
戦闘の最中だというのに、相変わらず関係無い事をしゃべる。何か記憶の混雑でもしているのか?
『僕たちは機械生命体、君達はアンドロイド、私達は敵同士、戦う運命』
……そんな当たり前の事を。と思うがパスカルやさっき戦った偽2Bの事を考える。機械生命体なのに仲良くできているパスカル。見た目はアンドロイドなのに、中身が無いため戦った偽2B。敵ってなんだろう?
『君はなぜ存在するのか? 僕達はなぜ存在するのか……僕たちは空へ飛ぶんだ』
また奴が逃げた。さっき入ってきたところから塔の外壁へ出ていく。僕もそれを追って外にでて、また上昇を続ける……考えるのは後だ今度こそ壊してやる
──────────
ついに上昇する床がとまり、そいつを追い詰めることが出来た。すると、「もう一個」同じ塊が飛んできた。ついでに9Sも
「……遅かったな」
「……君ねぇ」
なんだか嬉しくて、前と同じ挨拶をする。だが、合流した嬉しさもつかの間、私が追い詰めたソレと、飛んできた同じ奴が合体した!
「なんだ!? こいつは!?」
「君こそ! 戦ってたんじゃないのか!?」
合体したそれは、さっきまでとは違い軽快に私達相手に戦う。一人だとちょっとしんどかったけど、やっぱり誰かと戦うのは何だが気が楽だ。そんな不謹慎とも思える事だったが、実際決着はすぐについた。私の斬撃で奴が合体した部分を切り裂き、9Sがポッドに命じて射撃。無事撃破出来た
「9S、無事……だったみたいだな」
「……」
多分、これでこの戦いは終わりだ。後はこの塔を破壊すれば戻れる
「A2……僕たちはなんだったんだろう……?」
「9S……?」
長時間戦闘によるオーバーヒートか? 9Sが変なことをしゃべりだす
「僕達ヨルハ部隊は、すでに滅んだ人類の存続をごまかすために作られた部隊」
「それは……」
私自身、さっきの赤いアイツに言われて実感した。私たちはヨルハ部隊を作るための実験部隊。そのため「死ぬことが決定」していた
「だから、僕達はすべての証拠隠滅のため、死ななきゃいけない……」
「お。おい……」
おかしい。私に斬りかかってきたときでも、こんな状態じゃなかったはずだ……一体……
「マスターがいる、いない、じゃナイ。僕達はシヌ存在……」
9Sがゆっくりアイマスクを外すと、その瞳は「赤く」光っていた
「お前! 感染して!?」
「ヲヲヲヲヲ!!」
9Sが斬りかかってくる。スキャナーモデルとは言えここまで戦ってきた経験値は本物だ。私も油断すればやられる
「バカな!? ワクチンがあってなぜ!?」
「予想:左腕、別部品による接触感染」
「何!?」
9Sへ攻撃しないようになんとか捌きながら左腕をみると、確かに入った時と別の腕が付いていた。ワクチンが優秀でも、永続的に接触してれば漏れも出てくるってのか?
「A2ゥゥゥゥ! サァ! 死ネバ! ゼンブ終ワリだぁぁ!!」
機械生命体と戦っていた時とは違い、やたらめったら武器を振る。逆に捌きやすくなったが、それでもこいつを止めるのは一苦労だ……最悪私も危ない。肝心の向こうのポッドも、なんらかの影響を受けているのか攻撃はしてこないが、9Sを止める事は出来ないようだ。
一瞬、最悪の事態を頭がよぎった。入口であの二人を犠牲にしておきながらさらに……そんな事を考えてためらってしまったことに、私の反応が遅れてしまった
「シネェェェェェ!」
「! しまっ……」
武器を私に向けて真っ直ぐ突っ込んでくる9S。避ける方向も方法もないと覚悟した時
『やめなさい! 9S』
私達二人とは違う別の声が響いた。9Sの刃は私の胸の直前で止まり、私は死なずに済んだ。でもさっきの声は一体……9Sとさっきの塊が飛んできた方向から何かが来た。あれは……ヨルハの飛行ユニット? それから一体のアンドロイドが離脱して私たちの近くに降りてきた。
「だから、定期連絡は必須だと言いましたよね? 9S」
「アアゥゥ……オペレーターさん……」
「……21Bか?」
ウィルスに侵食されていて、突入作戦の時にはまだ寝ていたはずだが……?
「A2!! 彼を抑えてください!」
「あ、ああ!」
あの時と逆に、今度は9Sを羽交い絞めする。21Bの乱入により動きが止まっていたが、私が抑えるとそれに抵抗しだす
「僕タチは、シヌタメニウマレタンだぁぁぁ」
「じゃあ、私にも死ねと命じますか? 9S?」
「アア……」
「それが本当に運命なら、使命なら仕方がないかもしれません。でも、貴方達は一か八かで私を助けてくれました。なぜですか?」
「殺シタクなかったァァァ」
「それでいいんです……」
21Bが抑えている9Sへゆっくり近づいていく。
「我々アンドロイドは、感情を持つことを禁止されている。それはきっと、作戦のためにって事だと思います」
21Bが9Sの頭に手を置き、ハッキングの準備に入る
「でも、私は貴方に助けて貰って『嬉しかった』この感情だけは、誰にも渡したくありません。それに……」
21Bの手に光りが収束する、ハッキングが始まってる証拠だ
「人類はいます。つまり「ヨルハ計画」はもういいんです……9S」
私も目をつむるくらい強い光になり、一瞬視界が遮られると、9Sの体から力が抜けた
「……ワクチンの投与、完了です。今度こそウィルスの完全除去終了いたしました」
21Bの声が消えて、今度こそ終わったと安心した
──────────
9Sが21Bに膝枕をされて寝ている。塔の崩壊がゆっくり続いているから早く脱出の段取りを取ったほうがいい。ここまで自動で連れてこられたから、正直方法に悩むが……
「提案:塔の破壊作戦の変更」
「何をいまさら……箱?」
私についてきてくれていたポッドが今更な事を言い出す。それに続いて9Sに付いていたポッドが言う
「9Sの左腕移植成功の事を鑑みて、この塔をアンドロイドの補修部品製造工場として掌握、管理を提案」
あー……戦ってる時、一瞬しか見てなかったが、確かに女物の腕に変わってるな。……こいつ無茶しやがって。今後、補給基地があれば私達も余裕が出来る。何せメンテナンスのフィルター一個手に入れるのにも苦労したもんな……
「でも、どうやるんだ? 管理人というか、ボスはもうすでに消したぞ?」
多分、管理していたのはあの赤い少女だ。あいつがいなくなって、維持が出来なくなったから、今崩れているはず。
「私がやりましょう」
「21B?」
「私はもともとオペレータモデルです。こういった管理、運営には向いています」
確かに、私らアタッカ―モデルより向いてると思うが……可能なのか?
「それは……僕の仕事だと思います……」
「9S!?」
寝ていると思っていた9Sが静かに答える。まだ体は動かないのか寝たまま続ける
「以前、イブとの直接接触で、一度ネットワークに情報を残したことがありました。その痕跡を追えば、僕の方が適任です」
「しかし! それは! ……」
ん? 21Bがなぜか声を荒げている。何か不都合があるのか?
「この『塔』から離れることが出来なくなります」
「これだけの規模の施設だからね……」
……あの赤い少女が、概念だとか、情報だとか言ってたけど、逆をかえせば「そうならざるを得なかった」って事なのか?
「オペレータさんには、万が一僕がおかしくなった時のストッパーとしていてください。『今回』みたいに」
確かに、そういう事態を想定するのは大事だ。でも、こいつの言いぶりだとやっぱりここに一生いるつもりか……
「なら。私もここにいます」
「な!?」
……おやおや? なーんだか変な話になってきたな? 早く脱出しないといけないのはわかってるが、ちょっと楽しくなってきた
「万が一と言いましたが、離れているとその対応も遅れます」
「ま、まぁ……」
「大体、貴方は報告は遅れる、返事は適当、その他言い出したらキリがありません」
「う、うん……」
すまん9S。私は笑いをこらえるので忙しい……
「何より……貴方の傍にいたくて戦闘型に換装した意味がありません」
「え……」
「私は、貴方の傍にいます」
「決定までの時間制限がせまっています」
ポッドの無慈悲な報告が入り、二人ははっとしてお互いの顔をそらす。何と言うか、楽しいねぇ。……今度主に同じ雰囲気で迫ってみようか?
「で? どうする9S。塔をこのまま破壊すれば、今までと同じように主や21Bと外で暮らせる」
「………………」
「ここに残れば21Bと暮らせる」
「それは、言い方としてどうかと」
21Bの照れ隠し? なツッコミはさておき
「お前が決めていいよ。私はどっちでもいい」
「僕は……」
静かに崩れていく塔の中で、死に物狂いで戦った苦しさを忘れさせてくれる暖かい話
彼の決定はきっと……
21Bの介入はちょっと強引な気もしましたが、彼女は9Sとくっついて欲しくてこうなりました
彼女がなぜ人間である主人公へ迫らないのか?
なーんも考えてませんw
ただ、原作でも、最後の最後まで9Sの思い出を大事にした彼女
ウィルスに侵されて、その辺のプログラムがふっとんだとでもとらえていただければいいと思います
この後、エピローグが続いて終了予定なので
お暇な方はお付き合いください