※この作品はR-18です。

悪の組織は不死身の少女に殺してと言わせたい   作:Kaisu

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23:pop a blue cure bubble.

 久川(ひさかわ)親子に抜いてもらった膝の水。

 持ち込むのは同じ階にある臨床検査室で待っていてくれたのは、病理専門医の蔦古鐘(つた こがね)さんと、初夢トリオの一角で臨床検査技師の藤川火鉢(ふじかわ ひばち)さん。

 特に蔦さんは、十字源裁(じゅうじ げんさい)という解剖学の輩(ともがら)にとっては一種の先輩であり、もしかしたら後ろを歩いていたかもしれない道の先にいる人。

 

「で、これが吸血鬼の関節液と」

「成分分析お願いします」

「はい藤川承りました。っても数日かかるから分析結果出たら連絡入れるしまた今度」

「よろしくおねがいします」

「しかし解剖大好き人間とは、また変わった新人が来たな」

「今後ともよろしくお願いします、蔦さん」

 

 

 

 病理専門医。

 腫瘍や心筋等、病変組織や細胞組を臨床検査技師が薄く裁断し、それを病理専門医が顕微鏡で観察して病理診断を行い、病気の最終診断を行う、もしくはその確定への大きな割合を占める専門医。

 腫瘍治療では良性か悪性かを調べ、がん治療ではがん細胞の有無を調べ、といった具合。

 また彼らは病気で亡くなった人を対象に、遺族の承諾があれば死後すぐに病理解剖を行う。

 これは死因の特定、診断の妥当性、治療の効果を確認する、などの目的がある。

 動物解剖を嬉々として行い、医学教育課程で最初に履修する人体への「解剖学実習」、いわゆる系統解剖(正統解剖)すらも、祓(はらい)教授と医学部を拝み倒して学科外参加していた大学時代の俺が法医学か病理学に転科を勧められた理由でもある。

 

 病理専門医は日本にわずか2500人ほどしかいない専門医であり、対して日本の病院数はおおよそ8300。3〜4つの病院につき1人しかいない計算となる希少性のある医師である。

 参考までに、人員不足が叫ばれて久しい麻酔医は日本では8000人ほど。病理専門医の蔦さんと蔵元(くらもと)さんが所属する大捷製薬兵庫支部は2人もいると評すべき。

 形は違えど解剖で手に職を持っている方なので、俺はどことなく病理専門医の蔦さんと蔵元さんには親近感を持っていた。

 

 

 

「吸血鬼解剖は蔦さんはやらないんですか? 役職を鑑みれば束村(つかむら)さんより蔦さん達の方が適任に思えますが」

「初対面でズケズケ聞いてくるやっちゃな。でも遠慮されるよりはええか。まず蔵元はトラウマ持ちで内臓が見れん。牛豚レバーや鳥の砂肝や魚の血合いなんかでも生だと直視できんレベル」

「……それ病理医として大丈夫ですか?」

「全く大丈夫ではない。だから兵庫支部にいるん。ここで病死なんてまずないし。病理解剖とはかなり縁遠い」

「血が嫌いな医者は聞かないでもないですけど、内臓見れない病理医ってどうしたらそうなるんですか」

「通勤時に電車に人が飛び込み、千切れた上半身が駅の天井を激しくバウンドして蔵元に降りかかり、崩れた脳漿と腸まみれになって肉体面でも精神面でも重傷を負ったしニュースにもなった。今は駅のホームにも立っていられない」

「あぉう……」

 

 変な声しか出ない。そりゃトラウマにもなるわ。

 

「聞いておいてなんですが、喋っちゃっていいんですか?」

「医療科は全員知ってるし、隠してる話でもない。むしろここに内臓ダイレクトで突然持ってこられたら蔵元が吐きかねないから君は知っておいたほうがいい。君は医者よりも内臓摘出して検査依頼持ってきそうな人種に見える」

「否定できません」

「だろう?」

 

 大学時代に動物の内臓標本と骨格標本めっちゃ作りましたとも。ええ。

 俺が作った標本が大学と提携してる動物園の片隅に飾ってあるよ。

 

「蔵元さんは解剖できない理由わかりましたけど、蔦さんの理由は?」

「こっちは単純にヘタクソだ。人間の死体への病理解剖はできるが、吸血鬼の再生速度相手じゃ手が追いつかない。だから君は束村(つかむら)から技術盗んで自分で頑張れ」

「理解しました。スキルアップに努めます」

 

 吸血鬼の解剖をする場合、結紮(けっさつ)をしなくていいという易さはあるが、チンタラしている暇は本当にない。しっかり剥離しないと肉はすぐ繋がる。

 

「束村さんは簡単そうにズバズバ切ってましたけど、いざ真似すると全然思い通りにいかないんですよね」

「嫌ってほど切って体で覚えろってのが束村の持論だが、嫌ってほど切って慣れる機会なんて日本の大多数の医者には巡って来ないから空論に近い。医療ミスで訴訟のリスクを考えるとなるべく難しい手術は切りたくないと考える医者も多い。ヤクザの闇医者やらずに救急医になるべきだったんだよ。暇ってよくほざいてるぐらいなんだから」

「……実際、兵庫支部の医療科って暇なんでしょうか?」

「人による。医者として活動登録してるが、なんらかの個人研究を抱えているのがほとんど。脳神経の那須原(なすはら)なんて特能科研究で相当リソース振ってるはず。明確に暇なのは切ることにしか興味ない束村と、産婦人科の殿野(でんの)お婆ちゃんだけじゃないかな。お茶飲むのが仕事みたいな」

「なんですかその仕事……」

「セーフティーネット枠やもん。外出られない分、女性的な悩みの相談役として必要なん」

「ああ……」

 

 兵庫支部の男女比はざっと8対2。必要ではあってもそりゃあ産婦人科の仕事は少ないだろうな。

 

「束村と大地さんの闇医療提供組は患者がいなけりゃ暇になるのは当然ではある。忙しいときは忙しいんだろうけど」

「つまり今はお客様がいないということですよね?」

「そーそ。暇を持て余して葵ちゃんと君の育成モードに入っているわけ。束村は自分の技術伝承できる奴がきたってかな〜りはしゃいでたからな」

「ありがたい話ですけど、オモチャにされそうでなんだかなあ」

「損にはならないだろうから付き合ってやれ。個人スキル上げ切ったから伝える弟子が欲しいお年頃なんだよ」

「弟子……」

「馬合わねえの?」

「いや馬は合うほうです。弟子枠として見られていたのが意外だっただけで」

「なら頑張りなさいな。こっちとしても、君が病理解剖まで担当してくれるようになると大変助かる」

 

 いや、俺に病気に対する知識はないんですけども。

 手の技術が身についても、それはアテにしないでもらいたい。

 

 

 

 

++++

 

 

 

 

 4日後の夕方、藤川さんから成分分析が完了したという連絡があったので、再びの臨床検査室。

 

「おまちどーさん」

「思ったよりも時間かかった印象ですけど」

「いやだいたいこんなもんよ?」

 

 

 臨床検査技師。

 その名の通り臨床検査を行う技師のことであり、国家資格。

 臨床検査というジャンル自体が非常に多岐に渡る検査の総称であり、代表的なところでは血液検査・寄生虫検査・尿検査がこれに含まれる。

 心電図に脳波、CTおよびMRI画像診断、変わったところでは、体外受精および不妊治療の分野でも活躍している。

 また病理学的検査もこの臨床検査に含まれており、病理医が検査に使用する病理標本を作成するのも臨床検査技師の仕事。

 一方で検査機器の進歩も著しく、多くの検査で機械が担当する部分が増えており、医療以外にも活躍の場を見出している。

 医師ではないためか女性従事者の比率が高く、男女比は3対7程度なのだとか。

 日本の病院だけでも54000人は働いており、1病院あたり平均5〜6人はいる計算。兵庫支部の場合、医療科に2人しかという感想になる。

 

 

「藤川さんと大河(たいが)さんだけで臨床検査技師の仕事回るんですか?」

「回る。麻酔科兼薬剤科にはそっち専属がいるし。医療科を標榜しているものの、滅多に患者は来ないし。調べるもの自体がないのさ」

「吸血鬼調べないんですか?」

「一通りのことは仮死体が運ばれて来る時に終わらせる。十字君以外で熱心なのは感染症内科の猛城(たけしろ)だが、今は病原体が発見できずに煮詰まってる。今度喋りに行ってやれ。なにか変わるかもしれない」

「適当な時にアポ取ってみます。そういえば感染症でしたね」

「そういえばって、特級のヤバい感染症なんだから頼むぞオイ」

 

 おそらく血液感染である吸血鬼症候群(ヴァンパイアシンドローム)。

 束村さんにも口を酸っぱくして言われたが、解剖する際に粘膜へ血液が飛ばないようにゴーグルとマスクは必携。手袋や術衣は当然着るのだから、術後にふと手で目元や鼻を擦ることをやりかねないから、作業中よりも終わった後に気合を入れろと教わった。

 

「それでだ。これが受け取った吸血鬼症候群患者の膝関節液成分表。わかる?」

「普通の人間の場合の成分自体知らないので、正直さっぱりわかりません」

「ふむ。じゃあ人間のそれとの違いをメインに説明しようか」

「よろしくお願いします」

 

 藤川さんいわく。

 人間の関節液はヒアルロン酸を主成分とし、リンタンパク質・コンドロイチン等とタッグを組み、関節のクッションとして重要な働きを担う。

 十字靭帯断裂症等の損傷が起きた際には破れた血管から血液が流れ込み、場合によっては白血球等の死骸や細胞成分である膿も混じる。

 

 今回受け取った関節液では、靭帯を切っただけの左膝と、軟骨すらも取り去った右膝で違いがあり、また人間のそれともまた違うものであったという。

 

「左膝はまあ常識の範囲内ではあるのかな。成分的には化膿してただけだ。特段目立った所見はない。標本作って蔦にもパスしたが、既知の病原体しか発見できなかった。たぶんそのまま再生するだろうというのが蔦の予測」

「昨日改めてMRI画像診断かけたら左膝はもう靭帯全部繋がってましたし。当たりですね」

「なんだ、もう先に見てたのか」

「経過観察のために毎日同じ時間に撮ってたんですよ。左膝は十字靭帯も側副靭帯も全部繋がってました。たぶん左膝関節は伸びてグラグラですけど」

「治るだけでもすげーよ吸血鬼」

 

 俺もただ成分分析が出るまでボケッとしていたわけじゃなく。

 毎日吸血鬼仮死体安置所とMRI室を往復させて連日の撮影を行なってもらって膝の経過を確認し続けている。それ以外の時間は束村さんと内視鏡の練習。

 久川(ひさかわ)親子が行った関節洗浄の効果は劇的で、左膝はあっという間に炎症が治ったし、右膝もまだ多少腫れているものの変な色ではなくなっていた。

 

「話戻して右膝の方だが、細かな軟骨のカケラが混じってるのは当然、化膿しているのも左膝同様。1番でかいのは液体コラーゲン成分がやたら大量に含まれてることだな。普通こんなことにはならない」

「コラーゲンって軟骨成分でしたよね?」

「そうだな」

「MRIで見ると、昨日の時点で切除した半月板がほぼ完全に再生し終わってるんですよ。十字靭帯はまだですが。そのコラーゲンはおそらくそれに使われるためのものではないかと」

「首落ちても繋がるんだから軟骨再生しても不思議じゃないが、よくできてるなあ」

「これが早いのか遅いのかはわかりかねるところではありますが」

 

 このままいけば十字靭帯の自己再建もそう遠いことではないだろう。

 

「あと変わった成分として、多くはないが両膝の関節液からモルヒネに近い成分が検出された」

「モルヒネ使ってないですよ?」

「だとするなら、自力で生成したことになるのか。なんでって考えるまでもなく鎮痛用かな」

「再生に時間のかかる受傷に対しての回答ですかね」

「もっと単純に、受傷による激痛で行動不能になることを無視するための分泌だと思ったがな。人間でも脳内麻薬のβ-エンドルフィン(報酬系に作用する神経伝達物質)分泌で痛覚を抑えようとする」

「戦闘前提、なんでしょうかね?」

「可能性はある。再生能力が高いからといって、痛いことは痛いんだろうからな。痛くなければ傷が多少大きくとも吸血鬼にとってはないようなものだろう」

 

 人間であれば余程の興奮状態でもなければ動きが鈍る巨大な裂傷でも数十秒で元通り。

 話に伝え聞く内臓に達するような傷でも行動を継続できる理由は、強力な鎮痛薬を自己分泌できるからか。

 生物としての性能を活かすための進化ではあるが、痛感は本来警告。

 活動限界の認識が難しくなりそうなものだが。

 

「なぜモルヒネに近い成分なんでしょうか? 鎮痛成分って結構多いですよね?」

 

 モルヒネの親戚であり、麻酔に使われ合法ヘロインとも呼ばれるフェンタニルも鎮痛薬。

 ヤナギの樹皮から採れるサリチル酸およびサリシンも鎮痛薬として古来より用いられてきた。

 

「んー、モルヒネの鎮痛に有効限界がないから、痛みを抑えるには単純に分泌量増やすだけで済むからおそらく好都合って医学的には言える。けどモルヒネ含むアルカロイドってアホほど種類あるし、モルヒネに似たのは鎮痛を求めて進化した末の偶然じゃないかという気もする」

「収斂進化ということですか?」

「収斂進化とはちと違う気がする。けれどもベースが人間からの派生となると、効く成分は似るのではないか?」

「麻酔科の人も麻酔効くから助かるって言ってましたね」

「完全変異した個体に効くかどうかわからないが。効くことを願うよ」

 

 さすがに大丈夫だと思うけど。

 

 

 

 

 

++++

 

 

 

 

 

「……このコラーゲン、抽出して人の膝に注射したら半月板再生してくれるだろうか?」

「不純物多いでしょうし、微妙では?」

「いやコラーゲン分離だけならできるから。でも半月板痛めてる人で実験するわけにもいかねえか」

「一応血液感染らしいですからね。病原体も見つけられてない状態ではさすがに厳しそうです」

「人体実験に使える人間が手に入らないかな。競争率高そうだが」

「あー、そういうのやっぱりあるんですか」

「あるよ。治験は大事。けど生かして帰すかは保証しない」

 

 悪の組織ムーブしてるなあ。

 

「募集ってどうやってするんでしょう?」

「調達っていうほうが近いな。金のために命担保にした者、戸籍のない不法入国者、こっそり消したい裏の重犯罪者、知ってるのはこれぐらいか」

「兵庫支部は移植手術ってなにやってるんでしょう?」

「ウチの闇手術は基本的には心臓移植と腎臓移植と整形」

「心臓移植と整形はわかるとして、腎臓?」

「腎臓移植の待ち時間平均14年だぞ? 心臓以上にドナー待ち多いんだよ」

「うわ、なっが」

 

 心臓移植の待ち時間も平均で約3年と長ければ、葵(あおい)ちゃんが罹患した突発的拘束型心筋症は事実上国内での根治不可能。

 だからこそ速度が売りにできる訳だが……。腎臓の待ち時間もすげえな。

 

「心臓以外の臓器は親族間生体ドナーが効くし、正規の手段踏んでいけば保険適用も効くから兵庫支部でやるよりはよほど安い。腎臓だって親族説得できれば早くはなる」

「しかし待っていられない人も多いと」

「そういうこと。そこをすっ飛ばすのが俺らだからな。面倒な手続き飛ばしてただ金で時間短縮。術後のことはもともといるであろう主治医にお任せだ」

 

 無責任なんだかそうでもないんだか。

 

「そもそもとして、心臓移植に関しては表側とグルだぞ。日本で正規の心臓移植ができるところは僅か11病院。心臓移植関係のスタッフに絞ればだいぶ減る。小児対応可能な病院は4つしかない。根回しが不可能な人数じゃないし、金持ち相手なら『ここだけの話、日本でもすぐに心臓移植を受けられる場所があります。お金はかかりますが……』って耳打ちでコロっといくんだと」

「そこは金持ち狙いなんですか」

「斡旋する表側病院にもキックバックする必要はあるからな。寄付金が必要になる貧乏人に勧めても旨味は少ないし、金持ちじゃないと口の硬さの問題もある。闇だからできる診療報酬青天井。海外心臓移植にかかる諸費用に比べて割高だが、手続きが減るのと国内ってのも付加価値としてデカイ」

「言葉通じますし、患者のストレスもだいぶ変わりますよね」

「心臓移植のための飛行機移動自体がそれなりにリスクだからな。こっちだとドクターヘリもしくは陸路。だいぶマシ」

 

 見ず知らずの場所に行くとしても、手続きやら言語の壁やらで海外と国内では心理的障壁の程度が大きく異なるだろう。

 心臓病に限らずともストレスは病気の進行に大きく影響するのだから、横紙破りするとしても国内の方が患者のために良いのは自明。

 

 総務に行った榊場(さかきば)が夕飯一緒になった時に言っていた。

 兵庫支部の闇手術の類の金額が最低ラインで1件5000万円、心臓移植で5億円を超えることは普通だと。

 最新鋭設備使用と口止め料と実費と素材確保料の合計金額。お金はあるところにはあるんだなと思うよほんと。

 

「海外の心臓移植する場合の必要な金額ってどれぐらいなんでしょう?」

「為替次第なところもあるが、飛行機チャーターや現地滞在費とか込み込みで日本円で3億から4億の間ぐらいかな。兵庫支部だと込み込み4億後半から6億ぐらい?」

「あれ、案外、闇心臓移植手術って安いんですかね?」

 

 MRI 28億円に比べれば、という基準になってしまうが。

 

「手術直後の移動できない間の経過観察までしか担当しないと考えると割高とも言えるし、手続きが比較的楽でドナーの用意や移動手段と滞在場所の確保までやってくれると考えると安くもある。強みの方向が違い過ぎて比較が難しい」

「まず合法と非合法並べて比較するのも変な話ですかね」

「小児心臓移植に関してだけは、国内闇手術の方が海外渡航心臓移植と比べて倫理的に正しい面もあるんだぞ」

「嘘でしょ」

 

 掟破りの横紙破りのどこに正しい要素があるんだよ。

 

「まず日本では15歳未満からの臓器提供の数が非常に少ない。これは成人に比べて脳死判定が厳しいことと、本人の臓器提供意志の不明瞭さと、死因に虐待が含まれないと立証するのが面倒ということなどが原因。しかし心臓移植を求める人数とは大きな隔たりがあり、幼児や拘束型心筋症の子供がアメリカへ渡る訳だが、それはすなわち、日本国内では制度的に解決できないからアメリカの心臓移植を待つ子供の席を奪っているとも、甘えているとも取れる。これはあまりよろしくないな?」

「異論はありそうですが、言わんとしていることは理解できます」

「……だから国内で完結できる闇小児心臓移植は、その問題に関してだけは正規手順に優越をとれる。不健康な1を救うために健康な1以上を殺めるのだから詭弁だが」

 

 早死して淘汰されるであろう個体を生かすべく、比較すれば長生きするだろう個体の生や部位を奪う。

 資本社会に劣等が生かされて優等が殺されるあたり、人間病とでも呼称すべきなのだろうか。突き詰めれば弱肉強食の理論にまで到達しそうな気もするが。

 道義と倫理と人権ってなんなのだろうなホント。それらの上には、勝てば官軍理論と力が強い奴が正義のジャイアニズムが存在するから個人ではどうにもならないけれど。

 

「道義人権倫理ってあれだろ、鶏肋(けいろく)」

「どういうことですか」

「あんまり役に立たないが、捨てるには惜しい」

「……それらを捨てても批判や罰則や仕返しがなければ、問題もないですからね」

 

 実際、兵庫支部での被験体への道義人権倫理は投げ捨てられているからな。

 教育現場なんて、それらを説きつつも、それらを侵す問題が起きても子供同士のことだからと握り潰し矮小化するのが基本線だし。執行者のやる気と機嫌に左右されまくる。

 憎まれっ子世に憚るという言葉も、穿って悪しく読み取れば、道義人権倫理を軽視しても栄達できる、もしくは軽視した人が立身出世してるって話になるかもね。

 

「現時点の兵庫支部で、人体実験で1番確かめたいことってなんでしょう?」

 

 いろんな人がいる兵庫支部だけど。

 

「吸血鬼がどうやって捕食吸血するのか? どうすれば感染するのか? ってことになるんじゃないか?」

「まずは吸血鬼関連が優先ですか」

「皮算用だがおそらくは」

 

 その皮算用が現実になるまで、どれぐらい待つことになるのだろう。



















参考資料

一般社団法人 日本病理学会
病理医とは
http://pathology.or.jp/ippan/pathologist.html
日本病理専門医一覧
http://pathology.or.jp/senmoni/board-certified.html
病理診断を病理医から直接聞く方法
http://pathology.or.jp/ippan/outpatient-02.html
「病理診断」を知っていますか?
https://m.youtube.com/watch?feature=youtu.be&v=v3tSpN4m56w

解剖の種類とAiの特徴〜医療事故調査制度の視点・論点(3)〜
NDC Medical Times
http://medical.nihon-data.jp/archives/3995

川崎医療短期大学
臨床検査とは
https://www.kawasaki-m.ac.jp/jc/origin/mt/kensa.html
臨床検査技師について
https://www.kawasaki-m.ac.jp/jc/origin/mt/gishi.html

一般社団法人 日本移植学会
臓器移植Q&A
http://www.asas.or.jp/jst/general/qa/

公益社団法人 日本臓器移植ネットワーク
臓器ごとの移植事情
https://www.jotnw.or.jp/learn/about/circumstances/

日本小児循環器学会雑誌
我が国の小児心臓移植の現状と課題 福蔦教偉
http://jpccs.jp/10.9794/jspccs.33.10/data/index.html
こどもの脳死下臓器提供の現状と小児科医の役割
http://jpccs.jp/10.9794/jspccs.33.91/data/index.html




我ながらタイトル詐欺甚だしい。
そして反省せずにまだ続く模様。
科学なめんなファンタジーできるのはいつになることやら。
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