※この作品はR-18です。

悪の組織は不死身の少女に殺してと言わせたい   作:Kaisu

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47:幕間 魂と記憶の罠

 

 

 

 起きたとき、お風呂場じゃなくてベッドの上だった。

 

「ひっ」

 

 冷房の風の流れがやけに強い。

 効きが良すぎる。

 朝着させられていた大きなシャツ1枚を今度はパジャマ代わりに着させられている。

 下着もブリーフだけで足は全部出ている。

 下半身はほとんど露出していたから余計に寒い。

 

「痛ッ」

 

 体も酷い。肉がギシギシしている。

 筋肉痛、だと思う。

 股間のあたり全域に無視しにくいうっすらとした痛みと疲労と熱がある。

 それに、ちょっと動くたびに正座の痺れのようなものがある。

 喉もカラカラに乾いていて、飲み物がほしい。

 

「ッァひっ」

 

 立ち上がって、痺れの質が変わった。

 よく冷えたフローリングが足裏のツボを全て押し込んだよう。

 痛くなくて、でも歩けない。

 

「あぁぁ」

 

 一歩。一歩。細い足場を進むようにしか動けない。

 床の冷たさがやたらと刺してくる。

 膝が笑っている。足の小指まで間違いなく感覚があるのに、なぜか自分の足とは思えないぐらい痺れ、そして重い。

 

「レオくんおはよう。体、すごいことになってるでしょ」

「なにこれ……」

「吸血鬼の毒の力だね」

 

 寝室の引き戸を開けた先。リビングルームに座ってノートパソコンを触っていたお姉ちゃんは、こいこいと手招きする。

 丈の長いオレンジ色のシャツはお姉ちゃんの大きな胸の膨らみを隠せず、紺色に白ラインが入ったドルフィンパンツから吸い込まれるような長い生足も出ていて目に毒。

 長時間の正座で痺れているのを無理矢理歩くようなもので、膝腰がうまく二足歩行にならない。足裏は平らなはずの床を砂利道にすら感じるよう。

 

 耳もよくわからない。

 聞こえているが、冷蔵庫のモーター、エアコン2台の駆動音、ノートパソコンのファン、そのノートパソコンが流している高校野球のブラスバンド、そんな気にも留めないような音まで全て聞こえる気がする。

 目も、寝室の暗い部屋だから差を感じなかっただけで、明るい部屋に行くとちらちらとちょっと眩む。

 南向きの窓は全てシャッターが降りていて、他窓からカーテン越しの直射じゃない光が入っているだけなのに。なんとなく、部屋が広く見える気すらする。

 

 鼻もなにか変。

 摂理(せつり)お姉ちゃんは、いい匂いがする。

 だけどそれは腕を伸ばさずに触れ合えるような距離でようやく認識できる程度のものだったはず。

 舐められるほど近くにいるならともかく、何メートルも開けて嗅ぎ分けられるものじゃなかった。

 空気清浄機とエアコンがちゃんと稼働していて、寝室入り口とリビング端にいるお姉ちゃんではだいぶ距離があるのに、お姉ちゃんのいい匂いがわかる。

 じゃあ近づくと強く匂いを感じるということでもなくて。なんとなく発生源の場所がわかるような。

 

「お姉ちゃん、部屋、寒くない?」

「今26℃設定だから、室温28℃ぐらいだよ。それは寒いんじゃなくて、体が過敏になってるだけ」

 

 お姉ちゃんが注いでくれたオレンジジュース。

 ガラスのタンブラーで出てきたそれは、やけに酸味と甘味が鋭いものだった。

 

「味がなんか変」

「昨日飲んだのと全く同じパックのジュースだけどね?」

「……なにしたの?」

「んーとね、体を開いてあげた、っていうのがお姉ちゃんが思う1番しっくりくる表現かな」

「意味わかんない」

 

 開いてあげた?

 体を?

 いったいなんのことを。

 

「眩しいって思わない?」

「思う」

 

 電灯を見続けているような、見えているけどなんとなく見え方が明るい。

 窓の近くやスマホの白背景みたいな明るいところを見たくない。

 

「これが夜だとさ、よく見えるってなるんだって。夜目がきいてる状態になってるから、昼だと眩しいみたいなんだよね」

 

 言いながら、お姉ちゃんは部屋の全部のライトを消した。

 お姉ちゃん家のマンションは西窓がなくて、南窓を完全に遮光しているからだいぶ暗いはずなのだけど、あまり暗いと感じない。

 

「レオくんさ、テレビゲームとかやる?」

「友達のところでやったことはある」

「攻撃アップの魔法とか、素早さアップの魔法とか、そういうのわかる?」

「わかるけど?」

「いまのレオくんは全能力アップ状態、って感じかな。攻撃力が上がったりするわけじゃないけど、いろんなことが見えるし、聞こえるし、普段わからないようなことが感じられる。普段サボっているようなところが全部働いてくれるし、その増えた情報をうまく理解できるようになる」

「意味あるの?」

「かくれんぼしたら凄いよ? 遠くからでも鬼の位置が見えなくてもわかったり、絶対に見えないような場所にいる人が息の音で場所がわかったりするし」

「びみょー」

 

 かくれんぼに強くなってどうする。

 

「それにさ、全部がはっきり伝わる、ってことはだよ? 気持ちいいことがもっと気持ちいいことになる」

 

 急に至近距離に来られてお姉ちゃんの匂いが際立ち、身動きができなくなる。

 耳たぶをつままれて、そこからすーっと指1本降りていき、ほんの少しだけ首筋をくすぐる。

 それがたまらなくくすぐったい。

 

「だけど、さっき言った眩しいっての以外にも全部が全部良いってわけでもなくてね?」

「なにかあるの?」

「体験してもらうのが1番かな。南のシャッター上げるし、直射日光入ってかなり眩しくなるから目閉じて手で隠しててよ。見えなくても大丈夫のはずだし」

 

 言われた通りに目を閉じて、手で影を作る。

 お姉ちゃんが南ベランダに出られるガラス戸を開けてシャッターを上げると、夏の暴力的熱風が一気に部屋に流れ込んできた。

 フローリングに照り返した光を薄目で見るだけでも目が眩む。

 

「足元テーブルと段差気をつけて、こっち来て」

「そのぐらい大丈夫」

「じゃあここ立ってー、片手でシャツの裾持ってー、ばんざーいしてシャツまくってー」

 

 目を完全に隠していても、家具のほとんどない部屋と、お姉ちゃんの存在感で転びはしない。

 

「そのまんま2歩前に出て窓際行って」

 

 2歩進んで、夏の日差しに肌を晒して、3秒ぐらい。

 

「いっっっっっっっったあっ!?」

 

 日差しに当たった体が燃えた。

 気持ちよさとは全く違う、火やストーブに触ってしまったような、日焼けしてお風呂に入る時のヒリヒリする痛みを何十倍にもしたような、熱のある痛さ。

 飛び退いた時にはお姉ちゃんが勢いよくシャッターを下ろし、あっという間にガラス戸も閉める。

 部屋は暗くなったけど、痛みが少し弱まっただけで消えない。

 

「ひっ、ひぃたい……いたい……」

 

 股間以外の体の胸から下、前側ほぼ全てで熱さのあるじくじくした痛み。

 とにかく痛む範囲が広くて、ぼろぼろと出ていく涙が止まらない。

 

「……ごめん、やりすぎた」

「お姉ちゃん、助けて……お願い……」

「保冷剤渡すからとりあえずそれ使って。ちょっと氷水でタオル絞るから」

 

 小さな保冷剤を当てると痛みが引いてくる。

 だけどサイズが足りないし、当てているところ以外にはほとんど役に立たない。

 

「シャツ脱いで脱いで」

 

 絞りはしているけど水気のある冷たいタオル。

 それを繰り返し繰り返しあてて、生傷を剥き出しにされたような熱い痛みは落ち着いた。

 

「いたかったぁあああ」

「ほんと、ごめん……」

「なんでああなったの?」

「えーとね、吸血鬼って日光に弱いって話、聞いたことない?」

「あるけど、もしかして吸血鬼になったの?」

「なってないけど、吸血鬼が日光に弱いって言われるようになった原因がたぶんそれ。吸血鬼に噛まれてあの状態になって日差しの下にいたら、どうなると思う?」

「……死にそう」

 

 あの痛みでは立つことすらできない。

 死なないとしても、めちゃくちゃ苦しそう。

 日差しを遮れば痛くなくなることもなかったから、説得力はあるのかな?

 

「これ、いつまで続くの……?」

「半日ぐらいかな? そこそこしっかり毒入ったはず。ちょっと効きすぎたかも」

「体変になってるの嫌なんだけど」

「日光に当たらなきゃいいんだから問題ないよ。体を開くっていうのはさ、さっきも言ったけど、気持ちいいことももっと気持ちよくなる。肌も敏感というか、情報の質が上がるの。だからさ、苦しそうなおちんちん、また触らせてもらうからね?」

 

 気付かないうちに、濡れて貼り付いていたブリーフを押し上げている。

 これも熱を持って腫れている気がする金玉も痛いんだか痛くないんだか、なんとなくムズムズしているし。

 日光に焼かれ、氷水で濡らされ、冷房で気化されて寒いほどになっていた体は、節操なくお姉ちゃんに期待していたのだった。

 

 

 

 

 

++++

 

 

 

 

 

 日光の何が悪いのかはわからない。

 なぜこういう作用があるのかも、閉所や暗所から逃げられないようにするとか、追ってこられないようにするとか仮説は思いつくけど確信はない。

 子供で痛みの我慢許容量が少なかったせいか、我慢関係なく子供だからよく効いたのか、修行として耐えてたあれらが我慢強いだけだったのか、根本的に大人への効きが弱かったのか、判断材料がなくて少し困る。

 ただ全能力アップもあながち間違いじゃなくて、慣れれば身体操作にボーナスが入る。

 夜間の山や森での星あかりしかないような場所での行動力なんか相当上がるし、目耳鼻肌から得られる情報が増えるということは、集中すればより高精度な行動ができるのだ。

 

 疑問に関係ないレオくんにとっては、ただの弱体化でしかないだろうけど。

 なにせ、氷水と冷房の風で凍えて鳥肌だらけの体を温めるために一緒にベッドに入ってタオルケットを被っているだけで、もういっぱいいっぱいになっているんだから。

 

 でも当然といえば当然。

 五感が活発化しているということは、魂に散々刻みつけた屈服条件となるあらゆる要素も高精度で受け取ってしまうということ。

 呼吸音、心音、汗の匂い、皮脂の匂い、髪の匂い、肌触り、息の味、私の唇の動きすらも。その程度の材料だけで悶えるまでになっている。私は手を握って部屋着で一緒に横になっているだけなのに。

 性感度という点では、一度気持ちが傾いてしまえば風呂で玉潰し遊びしていた時と大差がなくなる。なにをされても効くし、放置するだけで自分の熱で煮えていくほどの全身性感帯にジェットコースターのように落ちていく。

 違うのは、意識がはっきりしているし動こうと思えばいくらでも動けるままなこと。記憶にもしっかり残る。

 媚毒でボーナスを加算された体でオーガズムに至った時の性的快楽は通常の比ではないし、動ける体でセックスすれば、涙も涎(よだれ)もわからないような衝撃に打ち震えるしかない。

 

 1人で勝手に悶えているのは、こういう添い寝のような状況から行動させるようなことを私がさせなかったからで、許可か誘導がないから勝手なことができないと思い込んでいるだけ。

 許しのない射精はマイナス評価と教育してあるのも大きいだろう。

 本当はいますぐ私の服を剥いて、好きなところに怒張した陰茎を突っ込み、仕上がりまくった体で精を吐き出していいのに。

 

「体、もう温まった?」

「暑いぐらい……」

「じゃあ、また遊びましょ。でも、勝手なお漏らしは当然NGだからね」

「痛いのもう嫌ぁ」

「痛くはしないよ。そうだなあ、気持ちよくなっても簡単にぴゅるぴゅるしないちんちんトレーニング? それと剝き癖トレーニングの合体かなー」

 

 今日だけでも、就寝中の夢精誘導に始まり、監視オナニー、大人のオモチャによる強制絶頂、オナニー代行。正午にすらならない段階で明確な射精を伴うものだけでも4回。

 その後に毒を入れて揉んで揉んで軽く二桁空イキを繰り返し、払底させ続けている精液事情。

 一眠りしたといっても、2時間ぐらいの早起きで作れる量は知れているが、よくそんな節操なく勃起できるなと呆れもする。

 とっても遊び甲斐のある体だと、感心もしているけども。

 

 

 

 

 

++++

 

 

 

 

 

「そういえばなんだけどさ、初めて会ったとき、もうお射精ピュッピュ経験済みだったじゃない? 初めて出たのっていつ頃?」

「ゴールデンウィークにあそこの秘密基地教えてもらって、それからしばらくしてからだから。5月中?」

「寝てる間に出たの? おちんちんしゅっしゅってしたら出たの?」

「あそこにあった本見て触ってたら出た」

「おちんちんさん相当頑張ってたんだなあ」

 

 鮫澤零緒(さめざわれお)の体内は急成長を遂げようとしていた。

 小5の初夏、歳にして10歳は精通済み年齢としては早熟な部類で思春期としても早い方であり、骨格も未だしっかりとしておらず、精液の質においても未熟そのもの。

 2人が出会った7月中旬。精通、初精から3ヶ月経っていなかった。

 その時点では、精液量も少なければ精子自体もほとんど含まれておらず、多少白かろうと精子に運動能力が備わっていないので妊娠させる能力はほぼ皆無。不出来な精液をポンプ機能で出せるだけ。

 

 しかし精通早期の段階で過剰な異性への性的接触機会を得て、容易には到達しないような性的興奮と特定の異性の存在による発情とそれに紐付いた自慰を繰り返したため、彼の奥の本能は「こいつにはもう子供を作れるつがいの雌がいる」と急ぎ始めていた。

 いくら急ぎ始めても、出会って約1ヶ月未満の超急接近。肉体の成長速度に追いついていない。酷使しても生産ラインが不十分。

 精巣で生じる男性ホルモン(テストステロン)の分泌が増え、すぐに必要な生殖機能への集中的な成長投資を惜しまない。それに応えるように与えられた過激な搾精はそれが正解だと認めるもの。

 

 だというのに、体毛は削ぎ剥かれ、尻は穿たれ組み敷かれ、肌に牙が突き立ち気を失うほど執拗な睾丸潰し攻撃を受けた。

 全身が危機感を募らせるには十分すぎるダメージ結果で、雌がいるのに種を残せないかもしれないほど悲観的状況にある、と体の中だけが誤認する。

 危害を加えてくる強敵の存在を体が認識している。それを発情すべき対象ともするほとんど相反の認識もしているため、受けているのが攻撃なのか愛撫なのかの境界線が酷く曖昧なものになる。

 丹念に仕込んで結実させた成果は、遂に青い実を無理矢理に甘く熟させる時を迎えたのだ。

 

 大量に作っても全て出ていき、それでもなお足りないと経験して、年齢相応の成長速度から何歩も先を行って本物の精子と多くの精液を作ろうとする不安定さ。

 注入された毒により、加速しようとする生殖機能にすらボーナスが入った。

 健全な精子を作れるようになろうと思春期初期段階に不釣り合いなほど過剰に増産される男性ホルモン(テストステロン)は、膨らみ続ける巨大な性欲(ムラムラ)という形で子供の体に制御可能な域を超えて、常時発情に両足を踏み込ませる。

 シェイクスピアの恋は盲目という言葉、恋によって常識や理性を見失い他の人が一切見えなくなることを指すが、いまの鮫澤零緒は頭よりも体が馬鹿になっていた。

 

 あらゆる性的行為により全身に根を張った経験が、ちょっと気持ちがそちらに振れるだけで期待によって脳から逆流(フィードバック)を起こす。毒で高い感度と精度を出せる時にそんなことをしたものだから、詳細で鮮明な思い出しが起こる。

 まるでトラウマを思い出してパニックに陥るように。近くに寄られ、幾度も気持ちよくしてくれた手を握っているだけの緩いトリガーで勝手に淫靡な体験再現を体がやってしまう。

 一緒にしてもらう必要があるから1人では完全な処理ができない一種の性倒錯症。誤用的意味で、性癖が歪み、遂に完全に固まった。

 知ってか知らずか、吸血鬼の次の手は発情した脳と体をさらに煮立てる遊びであった。

 

「これはトレーニングだからね。簡単にぴゅっぴゅしない強い勃起をながーく続けるトレーニング。そして痛い先っぽも気持ちいいって思えるようにする。イけないけど勃起はできるぐらいの強さで触り続けてあげる。でもそうだなあ、男らしく精液飛ばす射精じゃなくて、涙流すみたいに、とろっ、ぽとっ、しくしく、って溢れる弱い甘イキなら何度してもいいよ。もちろん自分じゃ触っちゃダメ。時間はそうだなあ……とりあえず2時間頑張ろう」

 

 ベッドマットレスに敷かれたバスタオルに座り、羽織り衣のように背中から覆い被さって座り、浅ましくも開かれた股間に手を回す恒例の密着スタイル。

 掌中の珠にして俎板(まないた)の鯉。立ち上がれば簡単に逃れられるはずなのに、鮫澤零緒にとっては期待と恐ろしいほどの快楽記憶で心と体を完全に極められて逃げられない姿勢。

 豊かな乳房が潰れる感触に蠱惑的な囁き、体臭や吐息、汗の一粒にすら反応して悪化する発情。

 急所を簡単に他人の手に預けて、さらに特別敏感な赤い急所をまた剥かれて固定され、勃起する限り包皮の守りはもう届かない。

 

「こしょこしょ、こしょこしょ、ぬりぬり、ぬりぬり」

「う……ぐ……んっ」

 

 2本の柔らかで細い化学繊維の筆。

 性器の成長度合いを示すタナー段階におけるGⅡ段階にようやく入ったか、という小さな陰茎に吸血鬼が与えた接触はそれだけ。

 毒牙の液で湿らせた筆先が2本。開発が比較的進んでいなかった亀頭やその包皮の裾野へ毒が垂れ落ちないぐらいで何度も厚塗り。

 筆を竿の青い血管に沿って進ませ、カリ首の浅い溝の裏を撫でこそぎ、集中して存在している神経群を強制的に目覚めさせていく。

 血管直接注入ほどの効果はないが、唾液で薄まっていない原液を粘膜に塗布するのだ。微量であっても追撃には十分過ぎた。

 光るほどに先は膨らんで、腹に張り付くほどに屹立して、たった2つの筆先数ミリに負けかかる。

 

 大きいか強い刺激ばかりだったいままでとは違って、寸止めするでもなく、負けさせる気のない感度上げの撫でを維持し続け、亀頭から痛みの経験を取り去って性感に塗り替える。

 何度も口の中で毒を継ぎ足し、吸血鬼が飽きることも、少年が抵抗することもなく1時間経ったころ、焦らされ続けた体が、小さな刺激で最大限を拾う術を会得しラインを超える。

 体は絶頂しようとして、けれど刺激はあまりに弱く、言葉の鎖は正しい絶頂を縛って、約3時間分の不出来で少ない精子が睾丸から押し出されても、そこから進まない。

 筋肉や陰茎の海綿体が強く脈動せず、体外に勢いよく排出するパワーがない。自分で触ることも禁じられているからしごき出すこともできず、輸精管と尿道の中を登れずに快感の不完全燃焼を起こす。

 

「あ、精子出そう? ぞわぞわしてる。ぞわぞわまでで我慢して。出るところを筆でくちくちしてあげるから、なが〜くなが〜く引き伸ばして」

 

 本人よりも敏に変化を見通されては誤魔化すこともできない。

 滴(したた)るほどに毒に濡れた極細の筆先が尿道口を狙い、逆侵入しようとばかりに毒で出口を浸(ひた)す。

 もう1本は変わらず亀頭を責め立てるが、決定打となる強さはやはり与えられない。

 

「ぬ、に……」

 

 全身の薄い痺れと一緒になって粘性の一欠片もないような白い液が恐る恐る流れ出始める。

 こぼれるというのが適切なほど静かな、目論見通りと言われた通りの絶頂のようななにか。

 筆の運びよりも、出てから裏筋をさらさら流れ落ちていくことの方がよほど続きの遡上に役立った。

 

「ひっ、ぃ」

 

 ひとしきり精液のような液体を流し終えたものの、スッキリ出せずに中身だけ盗まれたようなものなので射精欲が悪化し、竿でイけていないので勃起も全く治らない。ただ漏らして体を狂わされただけ。

 もう漏れが止まらない。

 締めが甘い蛇口のように透明な液体がこれも目覚めた尿道を苛(さいな)みながら湧き上がっては雫となって落ちてバスタオルを濡らしていく。意識の全てが筆の接触を期待して世界が狭くなる。それでも抱えている性欲に対して乏しすぎる。

 

「イクイク〜ってなるのをオーガズムといいます。びゅびゅーっとお射精すると濡れるからウェットオーガズムって言うんだけど、お尻の中ぐりぐり〜ってしたりしてお射精せずにイクイクーってなるのをドライオーガズム、乾いたオーガズムって言うの。ちょうどいま、レオくんが射精せずにイってるのがドライオーガズムの一種。精液じゃないやつ垂れ流しになってるから乾いてるとは言えないかもだけど、連続して短い間隔で何回もイクイクってできるのが特徴かな」

 

 絶頂状態の講釈はもはや理解できていない。

 すっかり毒を浸透させた筆はほとんど動いておらず、少しでも思うところに当てたいと腰の方が勝手に動いていて宙を無限に突いている。

 腿の動きを封じる形で足を絡めて股を開かせているので長いストロークにはならず、噴き出せない淫液を振り落とし部屋の空気を染めるだけにしか役立たない。

 全身性感帯なのにオーガズムに達しつつ達さない、96%から101%の間を上下し突沸を許さない甘煮えな神技的コントロール。息を直接亀頭に吹きかけることすら危ういバランス。

 敷かれたバスタオルがじっとりし始めたころ、2時間経過を告げるアラームが鳴った。

 

「おめでとう、2時間勃起してとろとろしかしなかった」

「もう触っていいの?」

「男を見せたレオくんにご褒美ボーナスタイム発動です。これからお姉ちゃんが本気で残った精子ぶっこ抜きにいくから、射精を20秒我慢できたら、かっこいいレオくんは明日からおまんこでセックス解禁。我慢できなくてもペナルティはなし。ただ射精してスッキリするだけ」

 

 言うが早いか、覆い被さる拘束を解いて正面に回る。

 腰が溶けて立ち上がれない足をもっと広げて、反り立つ甘えん棒を見据え、20秒アラームに設定したスマートフォンを手渡す。

 

「いつでもいいよ。私に見えるようにスタートって言ってボタン押してね」

「わかった。じゃあ…………スタートっ」

 

 開始宣言から約1秒半。

 乾いた音が部屋の中で炸裂した。

 

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