船に乗る
ティルミナの担当:シュリ、ノア、シア、
ティリア、フローラ
リズの担当:シェリー、チル、ヨル
ルリーナお姉様の担当:ハル、メル
町の散策
ボウ院長先生:アル
フェルネさん:エル
セーノさん:ルル
クマさんビルのお庭
ニーフさんの担当:ミル、ネル、リル
クマさんビル・部屋の掃除
モリンさん、カリンさん、ネリン、アンズさん
ベトルさん
~~~クマさんビル・タカの部屋~~~
僕とティルミナとシュリは、窓に掛けられたカーテンの
ベッドから降り、カーテンを開けると、朝日が眩しく輝き、昇り始めていた。空は雲1つない青空が広がっている。
絶好の海水浴日和。
「タカさんとフィナとミサは本当に船に乗らないのですか?」
僕とフィナとミサは前にお世話になった町の人たちに挨拶に行くことになっている。
昨日、ティルミナの話を聞いて、僕も会いに行ったほうがいいと思ったためだ。
「それに船なら、前に来たときに、クラーケンを退治したお礼に乗せてもらったからね」
「そうでした。フィナとミサも、タカさんと一緒にミリーラの町に行きましたね」
「そのときに、お世話になった人たちがいるから、僕たちは会いに行ってくるから、ノアたちは楽しんでね」
「タカさんたちと一緒に船に乗れないのは残念ですが、分かりました」
そして、船に乗るノアたちや町に出かける子供たちはクマさんビルを出ていった。
ちなみに、大人組で船に乗るのは、ティルミナがシュリとノアとシア、ティリア、フローラの保護者として、リズがシェリーとチルとヨルの担当、ルリーナお姉様がハルとメル。
町の散策にはフェルネさんがルルを抱き、セーノさんがルルを抱き、ボウ院長先生がアルを抱いて、2人の案内で散策へと出かける。
クマさんビルの部屋を掃除するという、モリンさんとカリンさんとネリン、アンズさんとベトルさんの4人は各部屋へ向かう。
僕は、デーガさんに会いに行くため、フィナとミサを連れて行くことになった。
「わたしは、タカお兄ちゃんと一緒に行きます」
「
そんなわけで、僕はフィナとミサと手を繋いでデーガさんの宿に向かう。
クマさんビルからのんびりと散歩しながら向かう。今日も快晴だ。海も穏やかで、船に乗るにはいい日かもしれない。
町中に入ると、町の人に見られるが、王都と違って、ミリーラの町だと、僕はこの町の英雄になっているので、感謝。男の子は僕みたいな冒険者に憧れて、尊敬の眼差し。女の子はなんとかして、僕とお話ししようと、キラキラの眼差しが。
そして、何事もなく宿屋に到着すると、
「いらっしゃい。うん?クマの坊っちゃんじゃないか」
「デーガさんお久しぶり」
僕が挨拶をするとフィナとミサも頭を下げて挨拶をする。
「おう、嬢ちゃんたちも元気そうだな。昨日、アンズがいきなり帰ってきたから驚いたぞ」
「アンズさんからの手紙はなかったの?」
「手紙はあったが、戻ってくるとは書いてなかった。そんなことを書くと心配かけると思ったんだろうな。アンズもこんなに早く町に戻ってくるとは思っていなかったみたいだしな」
そういえば、そんなことを言っていたね。
「坊っちゃんがミリーラに来ていると知ったときは、会いに行こうと思ったんだが、忙しくてな」
「やっぱり、お客さんが多いの?」
「ああ、あのトンネルのおかげで人の
「もしかして、アンズさんが必要?」
戻ってきてほしいと言われたら困る。
「昨日、この話を聞いたアンズが戻ってこようかと言い出した」
「そんなんだ!?昨日も今日も、そんなことは言っていなかつわたけれど」
アンズには昨日も今日も会っている。でも、そのような素振りはなかった。
「アンズお姉ちゃん、いなくなっちゃうの?」
「アンズお姉ちゃん、いなくならないでほしい」
デーガさんは悲しそうにするフィナとミサの頭を大きな手で撫でる。
「ちゃんと断ったから大丈夫だ。あいつは坊っちゃんに店を任されているんだ。そんなに簡単に戻ってくるなんて言うなと言ってやった。それに、ティルミナさんって女性から、アンズが楽しそうにやっていることは聞いた。それにアンズ本人の顔を見れば、今の生活が楽しいことは分かる。もし、苦労して、辛そうだったら連れ戻したけどな」
「そこは、一人前になるまで戻ってくるなって、突き放すんじゃないのかな」
「可愛い娘に、そんなことを言えるか!息子なら尻を蹴って追い返すけどな」
どこの世界の父親も娘には甘いらしい。
「孤児院の女の子たちにも人気者だし、それにアンズさんみたいにお料理がしたい子たちがいるから」
「そうか♪それは、ありがたい。あと、坊っちゃんさえ良かったら、うちのアンズをもらってくれ!」
「僕の彼女は、たくさんいてるので、みんながなんて言うか」
「そうかぁ~。じゃあ、両隣の嬢ちゃんたちに聞いてみようか♪坊っちゃんに彼女が増えるのは嫌か?」
デーガさんの質問に、フィナとミサが顔を見合わせて悩んで答える。
「「私たち、アンズお姉ちゃん大好きだから、大歓迎」」
「おお、そうかそうか♪」
デーガさんとフィナとミサが盛り上がっている。
頃合いを見て、デーガさんへの挨拶が終わっているので、次は冒険者ギルドへ向かう。
フィナとミサと話をしているうちに、冒険者ギルドに着いた。
僕が冒険者ギルドの中に入ると、久しぶりに好奇の視線が集まる。
「どうして、クマがここに?」
「おまえ、知らないのか。クマの坊っちゃんはお店の従業員と旅行に来ているんだよ」
冒険者の一人が
「なんで、おまえはそんなことを知っているんだよ」
そうだよ。なんで知っている。
「お店の休日のチラシを見たからな。確認済みだ。俺はあのパン屋と食堂のお得意様だからな」
慰安旅行の告知を知っているってことは、最近クリモニアからミリーラの町に来たのかな?
僕がアトラお姉様のことを尋ねようとしたとき、ギルド内にいた、男性ギルド職員が僕に気づいてやってくる。
えっと、確か、この人は。
「タカさん。久しぶりです」
「タカさんて、
「いえ。この町を救ってくれた
そんなつもりで、ミリーラを助けたんじゃないのに、なんだかなぁ。複雑。
「アトラお姉様はいる?挨拶をと思ったんだけど」
「はい、いますよ。奥の部屋へどうぞ」
セイさんの案内で、アトラお姉様がいる奥の部屋に向かう。
すれ違う他のギルド職員からは、
「なに?仕事なら、午後に回して」
アトラお姉様は書類に目を向けたまま、僕たちに向かって言う。
「ギルマス、違いますよ。タカさんが来てくださったんですよ」
「タカが?」
セイさんが答えると、机に向かって事務作業をしていたアトラお姉様が顔を上げる。
「タカ!それにフィナにミサも!」
「アトラお姉様、久しぶり」
僕が挨拶をすると、フィナとミサも挨拶をする。
アトラお姉様は相変わらず露出が多く
「ミリーラに来ていたの?」
セイさんは「お茶を持ってきますので、ゆっくりしていってください」と言うと部屋から出ていく。
「2日前に来ました」
「それで、どうしたの?また、2人を連れて遊びに来たの?」
僕は来た理由を簡単に説明する。
「子供たちを連れて、従業員旅行ね。タカは変なことをするわね」
やっぱり、変なのかな?
「僕が居た日本では、当たり前の事なんだけれどね」
「.....ニ、......ホ、.......ン???」
僕がこの世界の人間ではないことを、そして、ここまでの経緯を洗いざらい説明する。
「......そうだったのね。それで、元の世界、ニホンってとこに、タカは帰っちゃうから、旅行にこの町を選んだの?」
「違うよ♪」
「それなら、よかった」
アトラお姉様は、大きな胸を撫で下ろす。
「そういえば、昨日、アンズさんたちに案内されていた、ティルミナさんって人が来なかった?」
「ティルミナさん?ああ、来たわよ。クリモニアの冒険者ギルドの仕事だって言って」
「僕の彼女で、このフィナのお母様だよ」
「タカの彼女だったの。って、私もタカの彼女だけど。フィナとミサもでしょ?」
僕は頷く。
「フィナのお母さんも、ねぇ」
「それにしても忙しそうだね」
僕は机の上に乗っている書類を見る。
「まあね。町の警備の仕事も冒険者ギルドに回されて、少し忙しいのよ」
「アトラお姉様は、土魔法は使えますか?使えるなら、僕がアトラお姉様の土魔法に
「土魔法以外も使えるけど、魔法に上乗せなんてできるの?その、土人形が出来たとしても、私だけの魔力量では、1日持つかどうか」
「大丈夫ですよ♪僕とアトラお姉様の混合魔法で出来た土クマは、半永久的に動きますよ。僕が死なない限り、ね♪」
「......お願いしても、.....いいの?」
「はい、いいですよ♪僕の彼女の頼みならば、喜んで手伝いますよ♪この町のためなら」
アトラお姉様が、涙を流しながら、喜んでいる。
その結果、村にある2つの門番警備クマが3体づつ、海の警備クマが2体、冒険者ギルドに1体、商業ギルドに1体、合計10体の警備クマが完成した。
警備クマをアトラお姉様預けて、冒険者ギルドを後にした僕たちは、お米と魚介類を定期的にお店に届けてもらっているお礼をするため、ジェレーモさんに会いに警備クマの1体を連れて、商業ギルドに向かう。
僕たちが商業ギルドの中に入ると、冒険者ギルド同様に視線を集める。
「クマ?」「クマの坊っちゃん?」「クマの坊っちゃんが来たぞ」「海で泳いでいるって聞いたぞ」「あの格好でか?」「あの格好で海にいたらしいぞ」「暑くないのか」「流石クマの坊っちゃんだ」
僕はジェレーモさんのことを聞くために、ギルド職員がいる受付に向かうと、見知った女性がやってきた。
「騒がしいと思いましたら、タカさんが来ていたんですね」
現れたのはジェレーモさんをギルマスとして教育するために、クリモニアからやってきたアナベルお姉様だ。
「アナベルお姉様、お久しぶりです」
「お話は伺っています。タカさんのお店で働いている子供たちを連れて、ミリーラに遊びに来たんですよね。子供たちに仕事を与えるだけでなく、働く者に対して思いやる心を持つタカさんは優しいですね。他の商人たちにも見習ってほしいものです」
アナベルお姉様がチラッと周囲を見ると、商人と思われる人たちは視線を
「一生懸命に仕事をしてくれるお礼だよ。それに効率よく仕事をするには、息抜きも必要だから、ね♪」
「ふふ、普通はお店の利益を考えると、できませんよ」
「でも、アナベルお姉様。まだ、
「ええ、クリモニアに戻ることも考えたんですが、ミレーヌさんに頼んで、こっちの商業ギルドで働かせてもらうことにしました」
「あれ、でも結婚していて小さなお子さまもいてるのですよね?」
「ええ、だから、夫と子供もこっちに呼びました」
アナベルお姉様はチラッと、職員がいてるほうを見る。すると、奥にいてる細身の男性職員が頭を下げる。
「もしかして、旦那さまですか?」
「はい♪」
「旦那さまも商業ギルドで働いていたのですね」
「ええ、商業ギルドで知り合って、お互いひと目惚れしちゃって......。ってタカさん。何を言わせるんですか!」
「御馳走様です」
「タカさんこそ、どうなんですか?ミレーヌさんとの中は?」
「今は、クリモニアとミリーラを繋ぐためのトンネルやミリーラからの商人の受け入れに忙しいみたいですね」
「ミレーヌさんの仕事が落ち着いたら、
「はい♪わかっています。この、旅行を終えたら、冒険者ギルドのヘレンさんとミレーヌさんを連れて、ミリーラに2泊3日で来ますよ♪」
「それなら、安心しました。まあ、
アナベルお姉様はギルド職員たちを軽く見て、ため息を
「俺たちじゃ、アナベルさんがいなくなったあとのジェレーモさんを制御できないです」
「アナベルさんにはいてもらわないと困ります」
どうやら、アナベルお姉様はミリーラのギルドでは必要とされているみたいだ。
「そんなわけで、残ることにしたんです」
「ジェレーモさん、ギルマスとして、ダメなのですか?」
「そんなことはないですよ。ギルマスとしての素質はあります。たた、サボリ癖があるのが問題です。顔も広いし、ジェレーモさんがお願いすれば、
そんなことをクロお爺ちゃんたちも言っていたね。
「そのジェレーモさんはいますか?一応、
「タカさんの後ろを付いてきているクマですね、ありがとうございます。奥の部屋で仕事をしていますから、案内します」
アナベルお姉様はそう言うとジェレーモさんがいる部屋に案内してくれる。でも、部屋の中に入ると、ジェレーモさんの姿はなく、あるのは机の上の書類の山と、
「あの人は......」
頭を抱えるアナベルお姉様。
「はぁ、タカさんたちは椅子に座っていてください。今、☕を用意しますので」
「捜しに行かないでいいのですか?」
「すぐに戻ってきますよ」
そう言うと、アナベルお姉様は部屋から出ていく。
「タカお兄ちゃん、待つんですか?」
「どうしようか?」
「わたくしは、タカお兄様と一緒なら、待てますよ」
アナベルお姉様はすぐに戻ってくると言っていたけど、先にクロお爺ちゃんに会ってから、戻ってくるのもありだが?
その時、
僕たちが窓側を見ると、ジェレーモさんが入ってくるところだった。
僕たちが見ているにも、関わらず、ギルマスの椅子に座り、
「え.....えぇぇぇと、どこから見ていたのかな?タカの坊っちゃんたち?」
僕たちは、始めか、と答える。
「そうですよね」
ジェレーモさんの乾いた笑い声の後、扉が
「あら、ジェレーモさん。
「た...ただいま、帰りました。は....ははは」
「あははははは。ジェレーモさん?タカさんたちが挨拶に来てくれたのに、これでは、ギルマスとしての
「そ...そういえば、昨日、ティルミナさんって女性が挨拶に来たが、坊っちゃんと関係ある人なんだよな?」
「はい。この、フィナのお母様で、僕の彼女ですよ♪」
「そうか。それで坊っちゃんは俺になにか用なのか?」
「いつも優先的に良い魚介類やお米を送ってもらっていますから、お礼を言いに来たんですよ」
ミリーラからクリモニアに送られてくる魚介類は、僕のお店へ優先的に質のいいものが回されているとアンズさんから聞いている。
「それは俺の指示じゃない。
「そういえば、タカさんのお店に送る魚のことで喧嘩している漁師の姿を見たことがありますね。俺の魚の方が大きいとか、身が締まって
アナベルお姉様が思い出したかのように教えてくれる。
「でも、働いている子供たちのために休みを与えて、みんなで遊びに来るなんて、どこかのギルド職員にも見習ってほしいものだな」
「それはわたしのことですか?休みなら3日前にあげたでしょう」
「あれは視察だろう。あっちこっちに顔を出して」
「ジェレーモさんが外に行きたいと言ったから、そのようにしただけです。それに現場のことを知っておくのもギルドマスターとしての役目です」
「だから、それは仕事だろ」
「でも、行った先でお酒
飲んでいますよね?」
「な...なんで、そのことを.....」
「知っています。でも、息抜きと思っていますから、怒っていないでしょう」
確かにお酒をの飲んでいれば、仕事であって仕事ではないかもしれない。
「それなら、今後、お酒を飲んできたら、怒ったほうがいいですか?」
「......怒らないほうがいいです」
「それから、そろそろクロお爺さんが来る予定ですから、それまでに仕事を少しでも進めてください」
僕は気になる言葉があった。
「クロお爺ちゃんが来るの?」
「海に関してはクロお爺さんに任せていますので、定期的に報告をしてもろっているんです。
どうやら、これからクロお爺ちゃんはここに来るらしい。
それなら、ここで待たせてもらってもいいかな?
「フィナ、ミサ。クロお爺ちゃんに挨拶したいから、しばらくここにいてもいいかな?」
「くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんと遊んで待っていてもいいですか?タカお兄ちゃん♪お兄様♪」
フィナとミサ、2人が
僕が、女の子や女性に弱いことを知っているよね。僕の彼女だし。
僕が
「あれ、坊っちゃん。クマ、小さくないか?」
「そうね。タカさんのクマは大きいと聞いていたけど、別のクマなの?」
「同じクマですよ。僕のクマは普通のクマと違うから、小さくしたりできるのですよ」
それから、ジェレーモさんは、クロお爺ちゃんが来るまで、アナベルお姉様に仕事をさせられていた。
僕は、果汁水を飲み、寛いでいる。
フィナとミサの2人は、くまゆるとくまきゅうの手をにぎにぎしたりお腹を
「クマの坊っちゃんが来ていると聞いたんじゃが......」
部屋に入ってくると、僕を捜すように部屋を見渡す。そして、すぐに僕を見つけると、僕のところにやってくる。
「昨日はうちの者が迷惑をかけたみたいで、すまなかったのう」
会って
「クマの坊っちゃんには迷惑をかけるなとは言ってあるんだが、どうしても坊っちゃんにお礼をしたかったみたいでな。わしがいなかったから、
「ううん、迷惑ではなかったよ。漁師の皆さんには
「そう言ってもらえると助かる。だか、一応
僕が頼むまでもなく、すでに言ってくれたみたいだ。
「それで、坊っちゃんはどうして、ここにいるんじゃ?」
「タカさんはクロお爺さんを待っていたんですよ」
僕の代わりにアナベルお姉様が答えてくれる。
「なにか、いろいろと気にかけてくれたみたいだったから。お礼を言おうと思って」
「あまり役に立てていないようじゃったがな」
「そんなことはありませんよ。クロお爺ちゃんには感謝しているし、これからもよろしくお願いします」
「それが坊っちゃんとの約束だからな」
僕との約束。クラーケンの討伐の件は広めないでほしい、そして、騒がないでほしいなどのお願いを、クロお爺ちゃんは、守ってくれている。
「それで、定期報告ですが、なにか変わったことはありますか?」
僕との会話を終え、椅子に座るクロお爺ちゃんにアナベルお姉様が尋ねる。クロお爺ちゃんはカバンから紙を取り出して、アナベルお姉様に渡す。
僕たちは部屋から出ていくタイミングを逃したので、一緒に話を聞くことになった。
「この紙にも書いてあるが、もくに変わったことはない。水揚げも順調だ。困ったことといえば、バカが1人、例の島に近づいて、船を壊したことぐらいじゃ」
「大丈夫だったんですか!?」
クロお爺ちゃんの報告に驚くアナベルお姉様。
「心配はない。船は沈んだが、運よく渦潮が収まって、他の船に助けられた。あれほど、あの島には近づくなと言ってあるのに、あのバカは」
「なんの話なのかな?」
島、渦潮、船の沈没。
「ああ、坊っちゃんは知らなくてもしかたない。まあ、知っているのも海に出ている漁師ぐらいじゃからのう。今から5日ほど前に、突如島が現れたんじゃよ」
「島が現れた?」
「島が現れるなんて、にわかに信じられないのですが」
アナベルお姉様はクロお爺ちゃんの話には否定的みたいだ。
「毎日海に出ている漁師が、島があることに気付かないわけがなかろう。何十年も漁をしているわしも確認しているが、あそこにもともと島はなかった」
「確か、過去にも同様のことがあって、漁師たちが騒いでいたっけ?」
「ああ、確か3年前じゃったな。その前は5年前。その前もあった記憶がある。突如、島が現れては数日で消える不思議な現象がな」
引き潮で出てくる島ってこと?でも、話によると沖のほうだ。
「島の位置を調べたが、前回と若干違うことも分かっている」
「つまり、島が動いているってこと?」
「そうなるな」
「島って、動くのですか?」
くまきゅうと遊んでいたミサが話に入ってくる。どうやら、島が動くことに興味をもったみたいた。
「わしはそう思っておる。どこからともなく、島が流れてきて、どこかに流れていく」
浮き島ってことなのかな?
「その島って、前に現れた島と同じなんですか?」
「近くで確認したわけじゃないし、数年前のことだから、島の形なんて覚えておらんから、分からない」
まあ、それはそうだ。
「それに島には
過去に島に行こうとした者もいたが、いずれも船が沈没したりして、亡くなった者もいる。だから、あの島が現れても近づくのは禁止にしたのじゃが、若い者の1人が注意も聞かずに島に向かった。幸い、他の船に助けられて無事だったからよかったものの、興味本位で行動する者もおるから、困ったもんじゃ」
クロお爺ちゃんの言葉でも聞かない漁師もいるんだね。
「しかも、宝があるかもと、バカな言い訳をする。誰も近づけない場所に、どうやって宝を置くんじゃ。しかも、移動する島に置いたら、取りに行けんじゃろうが。そんなこともわからんバカだから島に行こうとする」
ごめんなさい。僕もお宝があるかもって考えちゃいました。クロお爺ちゃん、ごめんなさい。大事な事なので、2回の謝罪でご勘弁を。
まあ、くまゆるとくまきゅうは、水上を走れるから渦潮や岩壁は気にしなくても、大丈夫なんだけどね♪
「それじゃあ、お宝はないのですか?」
話を聞いていたミサが、クロお爺ちゃんの返答にキラキラの
「誰も島に行けないから、置けないからのう。そう言えば、嬢ちゃんたちは船に乗らなかったのかい?」
クロお爺ちゃんがくまゆるとくまきゅうを抱いているフィナとミサに尋ねる。
「わたしたちは、前に来たときにダモンさんに乗せてもらったから♪」
「だから、今回、わたしたちは遠慮させてもらいました」
「ああ、あのときか。でも、あのときはまだ、肌寒かったじゃろう。今乗ると、あのときとは違った気持ちよさがあるぞ」
「そうなんですか?」
「そうなのですが?」
フィナとミサが前のめりになる。
「ああ、違うぞ。季節によって海は、毎回違った風景を見せてくれる。1日違っただけでも、景色が変わる場合もある。海は不思議な場所じゃよ。今は温かく、気持ちいい」
クロお爺ちゃんの話を聞いて、2人は船に乗りたそうにしている。
「あとで、ダモンさんに頼んでみようか?」
「「本当ですか!?」」
僕の言葉に2人は嬉しそうな表情をする。
「一応、頼んでみるけれど。ダメだったらゴメンね」
勝手に約束をして、ダメだったときを考えるとぬか喜びをさせても可哀想だ。
「それなら、わしの船に乗せてやろう」
「クロ爺!?」
驚いたのは僕ではなく、ジェレーモさんだった。
「別にいいじゃろう。船に乗せるくらい。それにダモンの奴の船に坊っちゃんを乗せると、周囲が文句を言いそうじゃからな」
「お爺ちゃんの船に乗れるの?」
「お爺様の船に乗せてくれるのですか?」
「ああ、乗れるぞ。船の扱いも一番うまいぞ」
「「一番ですか!」」
「まだ、若い
クロお爺ちゃんは胸を張って、力強く言う。
僕たちはクロお爺ちゃんのご厚意に甘えるとこにした。
「タカお兄ちゃん、お昼ごはんはどうするの?」
「そうです。タカお兄様、お昼ごはんはどうするのですか?」
フィナとミサが尋ねてくる。確かに、
どうしようかと悩んでいると、話を聞いていたクロお爺ちゃんが提案をしてくる。
「それなら、港で食べればいいじゃろう。今頃、坊っちゃんが連れてきた子供たちが食事をしているはずじゃ」
クロお爺ちゃんの話によれば、漁師のみんなが、
感謝の言葉しかない。
港の近くにやってくると、
香りに誘われるように港に到着すると、昨日に続き、漁師のみんなが魚や貝などを焼いたり、貝やワカメなどが入った味噌汁を作っている。
クマさんビルの掃除をしていたモリンさん
クロお爺ちゃんは漁師たちのところに行くと、食事の相談をしてくれる。漁師たちはチラッと僕たちのほうを見ると、ニカッと笑い「もちろん、好きなだけ食べてくれ」と言ってくれる。
僕たちは無事、食事にありつけることになった。
焼き魚や貝などをお皿にのせ、食べようとしたとき、ティルミナさんがやってくる。
「タカちゃん、用事は終わったの?」
「軽くだけれど、みんなに挨拶はしてきましたよ。それでクロお爺ちゃんの船に乗せてもらうことになって。ティルミナさんたちは食事?」
「ええ、船に乗せてもらうだけじゃなく、食事も用意してくれたのよ。ここまでしてもらうと申し訳ない気がしてくるわ。あと、町を歩いていると、お守りとしてクマの置物や小物が売られているんですもの。タカちゃんがこの町を盗賊と魔物から守ってくれたから、クマを信仰しているのね」
ははは。
「わたしも、買っちゃおうかな?」
「クマの置物や小物なら、僕が作りますよ」
「やったぁ♪タカちゃん、ありがとう❤️」
僕がティルミナさんに抱きつかれているところへ。
「坊っちゃん、すまない」
クロお爺ちゃんは僕たちの話を聞いていたみたいだ。
「今、話にあがったクマの置物や小物のことなんじゃが。漁師たちのお守りみたいなものじゃ」
お守り、ティルミナさんもそんなことを言っていた。
「
「えっと、他の街とかには広めないでください」
「その辺は、分かっておるぞ」
本当に広めないでほしい。
そして、漁師さんたちが作ってくれた料理を食べていると、お皿に料理をのせたノアがやってくる。
「タカさん!」
口の中にはたくさん食べ物が入っている。僕はノアの膨らんだ
「な、なんですか?」
「美味しそうに食べているね、ノア♪」
「はい♪船に乗せてくれた上に、昼ごはんまで振る舞ってくれて、感謝しかありません。これも、タカさんがこの町を救ってくれたお陰ですね♪」
「喜んでくれたなら、良かったよ♪」
「そうだ。タカさん。わたし、あとで釣りを教わるんですよ。初めてだから、楽しみです。大きなお魚を釣り上げてみせますね」
なんでも、船に乗った子供たちが釣りをしたいと言い出したらしい。それで、午後からは魚釣りをすることになったらしい。
ノアは海をかなり満喫しているようだ。
「タカさんも釣りをするために、来たんですか?」
「僕はフィナとミサが船に乗りたいって言うから来ただけだよ」
「それなら、フィナもミサも一緒に釣りをしませんか?」
少し離れた場所で料理を食べているフィナとミサに尋ねる。
「釣りですか?私も、体験してみたいです」」
「わたしも、お魚を釣ってみたいです」
フィナとミサも釣りを体験したいらしい。
「誰が大きな魚を釣れるか、勝負をしませんか?お姉さまとシュリもするんですよ」
「好きにしたらいいよ」
「それなら、わしが教えてやろう。大きな魚が捕れる場所も誰よりも知っておるからのう」
そんなわけで、クロお爺ちゃんには船に乗せてもらうだけでなく、釣りも
それから、ティルミナさんに今日の予定を尋ねる。
「食事が終わったら、クマさんビルに帰って休むよ。船酔いをした子たちがいたからね」
こればかりは、船に乗ってみないと酔うか酔わないかは分からないからね。
「フィナとミサちゃんは大丈夫だったの?」
「わたしは大丈夫だったよ」
「わたしも大丈夫でした」
そういえば、2人とも大丈夫だったね。
昼食を終えると、それぞれの目的のために行動する。
クマさんビルへと帰るグループは、ティルミナさんとボウ院長先生とフェルネさんとセーノさんととリズさん、
釣りをするグループは僕とフィナとシュリとミサ、ノアとシア、ティリアとフローラ。
モリンさんとカリンさんとネリンと、ニーフさんとミル、ネル、ハル、メルの孤児院の年長組。
「では、ニーフさん。僕たちと夕食用のお魚を釣りましょう♪」
「そうですね。お昼は、漁師さんたちに材料や準備と、お世話になりましたからね♪」
夜ご飯は、僕たちがお魚を釣り上げて、おもてなしをするために、港まで行くと、ダモンさんがクロお爺ちゃんの姿を見つけ、声をかける。
「クロじい様。こんにちは。」
「うむ、おぬしも自分の船を出し、沖に出て、魚を釣りに行くぞ。おぬしは、
「え?えっ?ちょっ.....ちょっと、待ってください。俺の船は、今、やっと、今日のメンテナンスを終えたんですよ!それに、今から船を出したら、俺の明日の漁が出来なくなりますよ」
「そんなのは、休めばいいじゃろぅ」
クロお爺ちゃんの提案に困惑していると、ダモンさんを呼びに来たユウラさんの姿を見つけた。
「あなた。ほら、クロお爺ちゃんのお許しがでたんだから、船を出す準備をしなさい!」
「はい!」
ダモンさんの船の準備が整ったので、クロお爺ちゃんの船と一緒に沖に出る。
沖釣りに出て、夕方になり、ミリーラに
釣りの結果は、大漁だった。
夕食を町のみんなにアクアパッツァ、マグロやカツオの