ちなみに自分がゼロの使い魔の小説を書くのは、これが初めてです。
ルイズが言っていた『神聖で美しく、そして強力な使い魔』……
あれ? それって邪神イリスにぴったりじゃね?
そのような発想からこの小説は生まれました(笑)
なお、この小説のイリスたんは擬人化します(もちろん、本来の姿にもなります)。
不定期更新になりますが、なるべく完結させていくので、どうか応援してくれると嬉しいです。
第1話『召喚された卵』
──それはゼロと呼ばれた少女と、邪神として恐れられた朱雀が織り成す軌跡の物語。
地球とは違う次元に存在する異界の地──ハルケギニア。
この日、トリスティン魔法学院ではメイジ達の春の進級試験が行われていた。
生徒達は『サモン・サーヴァント』と呼ばれる魔法によって自分の使い魔となる生き物を召喚し、契約を結ぶ。
しかし……未だに『サモン・サーヴァント』が成功しない一人の少女がいた。
少女の名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
一人の貴族にしてメイジである彼女には、ある悩みの種があった。
それは──
「何回失敗したら気が済むんだよ!」
「さすがは『ゼロ』のルイズだな!」
メイジであるのに魔法が使えないという致命的な問題。同級生からはゼロと呼ばれ、いつも馬鹿にされていた。
そんな彼女がメイジの基本である使い魔すら召喚できなければ、本当に退学となってしまう。
そして……ルイズの失敗はこの時既に数十回に達していた。
普通の失敗ならまだいいのだが、ルイズが魔法に失敗すると必ず爆発を起こす。その威力は凄まじく、取り分けルイズにしか使えない異常な力であった。
この爆発が起きる度に同級生からは非難されてきた。自分を馬鹿にする同級生を見返す為にも、今日は絶対に失敗する訳にはいかなかった。
何度目かの爆発が起きた後、担当教師のコルベールがルイズに声を掛ける。
「……ミス・ヴァリエール。非常に残念ですが、続きは明日にしましょう」
それはルイズに告げられた真意の言葉。
「……そんな、お願いです!! やらせて下さい!!」
今できないことが、明日できるとは思えなかった。
──だからこその言葉だ。
「私としても成功するまでやらせてあげたいですが、次の授業もあるのです。ここは聞き分けて下さい」
諭すような口調で言うコルベールに、涙を浮かべながらルイズは食い下がる。
「お願いします!! あと、あと一回だけでも!!」
ルイズとコルベールの視線が宙にて交差。そのまま無言でお互いの目を見つめ合う。
「ふぅ……分かりました。その代わり、あと一回だけですよ」
教え子の必死の懇願に折れたコルベールは、ルイズが集中できるように少し離れた場所まで移動し、ルイズの成功を祈って見守る事に。
(これで失敗したら、私はもう終わる……)
杖を下ろしたまま、ルイズは目を閉じて瞑想する。
(私の運命が不幸だったのか、それとも私自身がダメだったのか……)
ルイズにしてみれば、これは運命が与えた最後のチャンスである。
ルイズの目が開眼されると同時に、首を横に振ってその考えを否定する。
(ううん、失敗を恐れてはダメ。成功する事だけを考えるのよ)
失敗は許されない。自分に言い聞かせながら手の中でギュッと杖を握り締め、ルイズはキッと前方の広場を睨み付ける。
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ!! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!! 私は心より求め、訴える!!」
自分の使い魔となる生き物が現れる事だけを信じ、ルイズは高らかに呪文を詠唱する。
「我が導きに、応えなさい!!」
それと同時に、今までで最大の爆発が起こる。
砂煙が舞い、強烈な爆風がルイズの制服をはためかせる中、ルイズは目を逸らす事なく爆心地を凝視していた。
やがて砂煙が消えていき、爆心地となった広場にはクレーターが出来上がっている。
そしてそのクレーターの中心部には……
「えっ…‥? たま、ご……?」
そう──卵だ。
現れたのは普通に比べて遥かに大きいという以外は何の変哲もない卵。
最初、ルイズは何が起きたのか理解できなかった。
何故なら、ルイズの前に召喚されたのは幻獣でも亜人でも、ゴーレムでもエルフでも、ましてや人間でもなく──
「な、何よこれ……」
想定外の中でもとびきりの想定外。まったく予想だにしなかった展開にルイズはただ困惑するしかなかった。
「おい、ゼロのルイズが卵を召喚したぞ!」
「さすがはゼロのルイズだ! ていうか、せめて生まれている状態で使い魔召喚しろよ!」
ルイズの足下に転がっている卵を見て、爆笑する同級生たち。一方、目の前に現れた卵は相変わらずぴくりとも動かない。
もしかすると、この卵から使い魔となる生き物が出てくるのかとも考えてみたが、ルイズ以外の生徒が召喚した時は卵の状態ではなく成体のままで使い魔が直接召喚されていた為、ルイズはこの考えを放棄した。
では、改めてこの卵はいったい何なのか……
ルイズは自分の呼び出した卵にちょっとした興味を抱き、その卵の表面を恐る恐るといった様子で撫でてみる。
……が、一向に使い魔が出てくる気配はない。
さすがに痺れを切らしたのか、ルイズは付き添いのコルベールへと指示を仰ぐ。
「卵が現れるとは驚きですが、こうなっては仕方ありません。ミス・ヴァリエール。ここは一つ、先にこの卵を孵してみてはどうです?」
「でも、卵と契約するメイジなんて聞いたことありません!」
「……いえ、ミス・ヴァリエール。これは私の勝手な推測なのですが、恐らく卵が孵って何かしらの生き物が産まれなければ、使い魔そのものと契約できない──というものなのではないでしょうか?」
……なるほど、一理あるとルイズは思った。
だが、仮にそうだとすれば、何故自分だけが他に類を見ない方法なのだろうか。
(もしかして……実はとんでもない『当たり』を引いちゃったとか?)
いやまて、そう結論付けるには些かお粗末ではなかろうか。
万が一ということもある。
それで卵から出てきた使い魔が他の生徒の使い魔と大差なかったら当たりでも何でもないではないか。
それこそ、青髪の少女が召喚したようなドラゴンくらい立派であるなら嬉しい限りだが……
「どうしますか、ミス・ヴァリエール?」
ここでコルベールからの催促が入る。
それに対し、ルイズは……
「やる! やります! この卵は私が育てます!」
何を躊躇していたのだろう。何よりこれは生まれて初めて成功した魔法なのだ。
散々『ゼロ』と罵られ、同級生から虐められてきた自分がようやく成功させた魔法──
それで産まれてくる使い魔が何にせよ、まずは記念すべきパートナーとの出会いを感謝すべきだ。
そう思って、ルイズは改めて目の前の卵と向き合う。卵の中で眠っているであろう、自分の使い魔に向けて優しい声で囁き掛ける。
「あんたがどんな生き物かは産まれてみないとわからないけど……あんたはこれから私の使い魔になるの。だから、私がちゃんと育ててあげるから……」
ルイズが卵を大事に抱き抱えるのを確認して、コルベールが安堵の表情で言う。
「さぁ、これで全員の召喚は終わりました。時間が掛かってしまいましたね。今日はここまでとしましょう。各自、自分の使い魔の親睦を深めておくように。それではここで解散とします」
コルベールが解散を宣言した途端、ルイズ以外の生徒が一斉に空に浮かび上がる。
「ルイズ、お前はその卵を抱えて歩いてこいよ!」
「こいつ『フライ』はおろか、『レビテーション』さえまともにできないんだぜ!」
「その卵、あんたの使い魔にお似合いよ!」
同級生から浴びせられる爆笑混じりの罵声に、ルイズは彼らへの怒りと憎しみを強く胸に秘めるが、ふと自分の腕に抱かれている卵を見て我に返る。
「あ、あいつら……! 今に見てなさい! 私がこの卵を孵したら、あんたたちが束になっても勝てっこない使い魔を──神聖で美しく、そして強力な使い魔と契約してみんなを見返してやるんだから!」
飛び去っていく同級生達の後ろ姿を憎々しげに睨み付けながら、ルイズは静かに決意した。
──今度は自分が上に立つ番だ。
必ず、自分を馬鹿にして見下している者達を見返してやる……
ドクン……ドクン……
ルイズの腕の中、その卵は未だ覚醒しない。
ドクン……ドクン……
もし『それ』が復活したら、このハルケギニアに災厄が降り掛かるだろう。
何故なら、その卵には……
『虹の神様』の名を持つ『邪神』が封印されているのだから。