今回はついにイリスが“あの必殺技”を放つ!?
そしてイリスの様子がおかしなことに……
今回より、本編はR18版に完全移行しました!
R18になってもよろしくお願いします!
アンリエッタがルイズの部屋で思い出話に花を咲かせている頃……
魔法学院本塔の五階に位置する宝物庫の固く閉ざされた扉の前では、黒いフードで素顔を隠した怪しげな人影があった。
「チッ……コルベールの言ってた通り、扉には固定化の魔法が掛けられているようだね」
この人影の人物こそ、『土くれ』の二つ名で呼ばれ、ハルケギニアの貴族を恐怖に陥れたメイジの盗賊──土くれのフーケである。
フーケは宝があると聞けばどこにでも姿を現し、得意の土系統魔法『錬金』を上手く駆使してメイジの貴族相手に盗みを働く。
黒いフードとローブで正体を隠し、神出鬼没で大胆不敵な大泥棒を自称する。
そして今日もまた、フーケは噂に聞いたトリステイン魔法学院に眠る宝『破壊の杖』を盗み出そうと企んでいた。
「さすが、魔法学院本塔の壁だね……私の『錬金』が効かないのは事前に調査済みだったけど、まさかここまで分厚い壁だなんて……」
昼間ここで現場の下見をしていた際にたまたまコルベールと出会ったフーケは、自慢の美貌でコルベールを色仕掛けで落とし、魔法学院の壁は物理衝撃による破壊が弱点であると聞き出した。
しかしこの壁は些か分厚過ぎる。
これではフーケが創り出すゴーレムでも破壊できるかどうか……
「どうしたもんかねぇ」
フーケが宝物庫の前で悩んでいると、不意に誰かに声を掛けられた。
「──宝への入口はすぐそこだが、ネズミの入る隙間もない強大な壁に阻まれ、扉の前で行ったり来たり……ふむ。どうやらお困りのようだ」
「ッ!? だ、誰だい!?」
フーケが慌てて声のした方に振り返ると、そこには……
「盗みに入る前の現場の下見調査、ご苦労なことだ。だが、その扉を開けることは君ではできんよ」
「なっ……!? あんたは確か……!」
目の前に立っていた人物の姿を見て、驚きを隠せないフーケ。
──それもそのはず。
「ククク……我が名はガイガン。アンリエッタ姫殿下に仕える護衛騎士だ」
フーケの前に現れたのは、なんとガイガンだったのだから。
アンリエッタ専属の護衛騎士……
ある意味フーケが今一番出会いたくない人物でもある。
「ガイガン……姫様護衛の宮廷騎士がこんな真夜中の学院を歩き回って何をしてるんだい?」
冷や汗を掻きながらフーケはガイガンに問い掛ける。
「なに、夜の散歩と洒落込んでみただけだ。姫は姫で懐かしの友と語らいたいようだし、私は暇を持て余してこうして独り歩いていた──という訳だ」
カツン、カツンという金属が地面に当たるような足音を響かせながら、ガイガンはフーケの隣に並び立つ。
「……手を貸そうか。土くれのフーケ、いや──ミス・ロングビル。それとも、マチルダ・オブ・サウスゴータと呼んだ方が正しいかな?」
しばらく宝物庫の扉を見つめていたガイガンが不意に呟いた。
「!? は……ははっ、参ったね……あんたには何もかもお見通しって訳かい」
フーケは一瞬驚いた顔でガイガンを見たが、すぐに力無く笑うと、黒いフードを外してその素顔を曝し、両手を挙げて降参のポーズを取った。
黒いフードを取ったフーケの素顔……
その正体はあろうことか、トリステイン魔法学院でオールド・オスマンの秘書をやっているミス・ロングビルだった。
フーケがロングビルとしての変装で掛けていた眼鏡を外し、束ねていた緑色の髪も解いて本当の──マチルダとしての顔に戻る。
「ふむ。その方が君らしくて似合っているな」
フーケ──否、マチルダの素顔を見てもまるで動揺しないガイガンがふと感想を言う。
その言葉に、マチルダは思わず目を丸くしてしまう。
「あんた……本当に何者だい? 長年フーケをやっていた盗賊の私に気配一つ感じさせずに背後を取るなんて、ただ者じゃないんだろう?」
「……さて、どうだろうな。私は遥か遠い大地からこのトリステインという地に降り立ち、城にいたアンリエッタ姫に運良く拾われただけ……籠の中の鳥でしかない姫殿下と同じく、ギドラ皇帝に従うだけの操り人形などではない、真の自由を探し求めているだけの孤独な騎士に過ぎん」
そんな独り言を呟くガイガンの黒い鉄仮面からは感情など一切読み取れない。
相変わらず、コホーという不気味な呼吸音を鳴らすだけだ。
「……あんたも訳ありってことかい」
ガイガンの独白を黙って聞いていたマチルダは何かを悟ったように頷いた。
そうしている内に、ガイガンはマチルダを無視して宝物庫の前に進んで分厚い壁を右手でコンコンと軽く叩いてみる。
固定化が掛けられた壁の強度を確かめているのだ。
「なるほど……この程度なら私でも破壊できるな」
そしてある程度の強度がわかったのか、ガイガンはすぐ後ろに立っていたマチルダに声を掛けた。
「……さて、フーケ。私も君の悪事に協力しよう。だが、そのかわり──」
そう言ったガイガンは、何故だか内心でクククと笑っていた。
そして時間は現在に戻る。
互いの利益が一致した為に手を組んだガイガンとフーケは建物の中から中庭へと移動し、宝物庫のすぐ近くの壁の前に移動していた。
「本当にやるんだね?」
再び黒いフードで素顔を隠したフーケがガイガンに改めて確認する。
「ああ。ここでイリスの力量を見定める」
フーケはガイガンの言葉に頷くと、手慣れた動作で中庭の土からゴーレムを創り出す。そのゴーレムは30メイルほどの大きさで、ゴーレムの肩にフーケとガイガンはそれぞれ飛び乗った。
「私の攻撃にタイミングを合わせろ」
そう言うなり、ガイガンはゴーレムの肩から勢いよく飛び出した。風を纏ったガイガンは宝物庫の壁に向かって突っ込み、鉄仮面から覗かせるサングラスのような真っ赤な単眼で壁に狙いを付ける。
「……そこだ! ギガリューム・クラスター!!」
刹那、不気味に光り輝く単眼から散弾状の破壊光線が放たれる。それは固定化の魔法が施された宝物庫の壁をいとも容易く破壊する。
寝静まった学院内に響き渡る轟音。
そんな中、ゴーレムの肩から飛び降りたフーケが颯爽と宝物庫の中に消えていくのを見て、ガイガンはニヤリと内心で笑う。
……とその時、こちらに向かって走ってくる人影が。
「……来たか、イリスよ」
中庭に降り立ったガイガンがゴーレムの真下で背後へと振り返る。
「ガイガン……奇遇ね。こんなところで会うなんて。これから夜の散歩っていうには、その土くれのガラクタはちょっと人騒がせじゃない?」
「ガラクタ……? ふむ。お前は何か勘違いしているようだ。私がここにいたのは全くの偶然だ。私が先ほど中庭を歩いていたところに、このゴーレムが大地より現れたのだよ」
言いながら、イリスのもとに歩み寄るガイガン。
「それを信じろって言うの?」
イリスは怪訝そうにガイガンを睨み付け、次に巨大なゴーレムを見上げる。
「フッ……お前の判断に任せる」
対してガイガンは腰に差した鉤爪状の双剣『ブラディー・トリガー』をゆっくりとした余裕ある仕草で引き抜く。
「………」
「………」
交差する両者の視線。
その直後、宝物庫の傍で待機していたゴーレムが動き出し、いきなりイリスとガイガン目掛けて豪腕を振り下ろしてきた。
ゴーレムの攻撃を横に跳んですばやく回避するイリスとガイガン。
巨大な拳が地面にめり込み、直前までイリスとガイガンが立っていた場所はこれまた巨大なクレーターが出来上がっている。
「ふぅん……面白いじゃない」
「イリス、私の動きについて来い!」
「偉そうに命令しないで! あなたこそ、私の動きについて来てよね!」
言い合い、イリスとガイガンは二人同時にその拳へ飛び乗ると、二人並んでゴーレムの腕を駆け上がっていく。
「いくぞ……我が刃にて敵を斬り伏せる!」
「接近戦……なら、あの技を試させてもらう!」
両者共に、いよいよゴーレムの右肩へと到達する。
「受けよ必殺! ブラディー・トリガー!」
目にも止まらぬガイガンの二刀の斬撃がゴーレムを切り刻んでいく中、イリスはガイガンには目もくれずに右肩から高く跳び上がる。
「ガメラ、いくよ……バニシング・クロー!」
宣言と同時にゴーレムの顔面へと急接近するイリス。その圧倒的なスピードはまさしく赤い流星。
イリスの右手が真っ赤な炎に包まれ、それはそのままゴーレムの顔面を力強く掴む。
「燃え尽き砕け散れ──ハァッ!!」
自分の力を灼熱の右手『バニシング・クロー』へと集中させ、イリスは一気に前進するスピードを加速。
その結果あっという間に『バニシング・クロー』はゴーレムの顔面を貫通、粉砕し、凄まじい爆発音と同時に土塊が周囲に散乱した。
その様子を見て、ガイガンが感嘆の声を上げる。
「ほぅ……それが地球の守護神が使ったという一か八かの必殺技か。まさか君の手で君を殺したガメラの技を見せてもらえるとは驚かされたよ」
そこにイリスがやり切った顔で中庭に着地して見せる。
「意外と呆気なかったわね」
つまらなそうに呟くイリス。
「それより、ガイガン。あなたにはまだ聞きたいことが──」
「フッ。やはり甘いな、イリス。戦場で敵に背後を見せるとは愚かだ」
刹那、ガイガンに歩み寄ろうとしたイリスは巨大な土腕に殴り飛ばされてしまう。
「くっ、こいつまだ……!?」
空中で瞬時に受け身を取り、イリスは上から下まで元通りに再生したゴーレムに向き直る。
「さぁ、イリス! お前の力をこのガイガンに見せてみろ!」
「うるさい! 言われなくたって……やってやるわよっ!」
怒ったように言うと、イリスは4本のテンタクランサーを駆使してゴーレムを突き刺し、解体していく。
しかし土がある限り何度でも再生する無敵のゴーレムを前に、イリスは激しい苛立ちを覚えていた。
とそこに……
「ガイガン!」
「イリスさま!」
アンリエッタとシエスタがほぼ同時に中庭へと駆け付けた。
「アンリエッタか……」
駆け寄ってきたアンリエッタを見て渋い顔を見せるガイガン。
「ガイガン、この騒ぎはどういう事です? まさか、あのゴーレムはあなたが……?」
「いや、どうやら最近噂のフーケという賊のようだ。私とイリスで食い止めているが、果たしてイリスはあのゴーレムを倒せるかどうか……」
ガイガンがそう言う間にも、イリスはゴーレムにしつこく攻撃を受けて身動きが取れない。
そのうち容赦ない袋叩きに対する苛立ちが極限まで高まった時、イリスの怒りがかつてないほどに膨れ上がった。
(ククク……そうだイリス。もっと怒れ。怒り狂ってしまえ。さすれば怒りの感情がお前を爆発的に強くする。怒りで覚醒するのだ。お前が隠している邪神の潜在力をこの私に見せてみろ!)
テンタクランサーでゴーレムを破壊した直後に土から復活してくるゴーレムに殴られ傷付くイリスの姿を傍観しながら、ガイガンは内心ほくそ笑む。
「あわわ、どうしよう……イリスさまが本気で怒ってる……勾玉からイリスさまの怒りの感情が伝わってくるみたい……こ、こわいですぅ」
不安げな表情で戦闘を見守るシエスタが胸に手を当てて握りしめた勾玉もまた、イリスの感情と同調してかつてないほどに光り輝いている。
「ずーっとイライラしてるのよ……地球でのガメラから始まって、デストロイアやビオランテ、キングコングにゴーレムといい──今まで戦ってきた怪獣相手に苦戦する無様な私自身にッ!!」
ここでついにイリスの怒りが爆発。イリスの全身を包み込むように、小さな虹色の光が一つに集まっていく。
「あれはもしや──マナか!?」
目の前で始まった光景にガイガンも驚愕してしまう。
「ガメラにできたなら、私にだってできるはず……!」
言いながら、イリスの身体にハルケギニアのマナが吸収されていく。それは次第に巨大な火の球となってイリスの前方に形成されようとしている。
「イリス!?」
とそこに、ルイズとモンモランシーの二人が中庭に駆け付けてくる。
「ちょっ!? あんた何やってんのよ!」
イリスの周囲に集まった大量のマナを見てルイズが怒鳴るが、怒りに燃え上がるイリスには油を注ぐようだ。
「黙って見てて! こいつを跡形もなく消し飛ばしてやるんだから!」
「や、やめてイリス! お、落ち着きなさいって! そんな巨大化した特大ファイヤーボールみたいなの発射したら、イリスだって大変な目に遭うわ!」
ルイズとモンモランシー、それにシエスタの三人が焦った表情でイリスを必死で説得を試みる──が、イリスはそれらの声を無視した。
「ウルティメイト・プラズマァァ!!」
イリスの叫びに呼応し、一つに集束されたマナが勢いよくゴーレム目掛けて発射される。
大きさこそガメラの『ウルティメイト・プラズマ』には遠く及ばないが、地球のマナよりも濃厚なハルケギニアのマナで形成されたイリスの『ウルティメイト・プラズマ』は小柄ながらにとんでもない破壊力を秘めていた。
イリスとゴーレムを中心に大爆発が発生。誰も彼もが言葉を出せずに見ている事しかできない。
爆弾でも投下されたような凄まじい衝撃が中庭のすべてを激しく揺るがし、爆光と爆風で地面の土は空へと舞い上がり、フーケの作ったゴーレムは跡形もなく消滅。その周囲を爆煙が包み込む。
「驚いたものだ……邪神イリス。彼女の潜在能力は未知数だ。イリスは常に進化している……!」
アンリエッタやルイズ達を安全な場所まで避難させたガイガンが静かに口を開く。その真っ赤な目は未だに爆煙の中心を見据えて離さない。
「イリスは? ねぇ、イリスはどうなったの!?」
ガイガンの傍にいたルイズがガイガンに向かって叫ぶが、ガイガンは黙って爆煙の中を指差した。
「イリス……?」
爆煙の中から小さな人影が立っているのが見え、ルイズ達はフーケかと警戒する。しかしそこにいたのは……
「イリス! ──えっ!?」
「うそ……そんな!?」
「イリスさま!?」
──イリスであって、イリスではなかった。爆煙が晴れ、巨大クレーターの中心に立っていたのは──
「「「……子供の姿に戻ってる……」」」
大人ではなく子供の姿になったイリスの姿。着ていた服は爆発の衝撃で消え去り、生まれたままの裸身で活動を停止している。
大人から子供へと退化したイリスを目の当たりにし、開いた口が塞がらないルイズ、シエスタ、モンモランシーの三人。
一方、わけがわからないという顔でルイズ達とイリスを交互に見比べては、頭上に?マークを幾つも出しているアンリエッタ。
そんな中、ガイガンが静かに呟いた。
「……おそらく、マナを消費する際に力を使い過ぎ、初めて撃ったウルティメイト・プラズマの反動で成長していた身体が一気に退化、幼児化したのだろう」
そう言っている間にも、イリスはふらふらっとした危ない足取りでルイズ達の方に歩いてくるではないか。
「イリス!」
他のみんながショックで動けない中、ルイズが誰よりも先にイリスのもとまで駆け付け、ボロボロになったイリスの小さな身体をその華奢な腕で力強く抱きしめた。
「イリス! お願い! 目を──お願いだから目を覚ましてよぉ!」
イリスを抱きしめたまま、その場に泣き崩れるルイズ。
「ううっ……だ、れ……?」
うっすらと目を開けたイリス。しかしその真っ赤な瞳にルイズの姿は映っていない。
「イリス!? わたしよ! ルイズよ! よかった……無事だったのね」
「ルイ、ズ……? 何だか、よく、わからないけど……疲れちゃった、みたい……お願いだから、少し……休ませ、て……」
顔と声を震わせながらイリスはルイズの前で力なく告げると、ガクッとその小さな白い手を地面に落とす。
「えっ……うそ……イリス!?」
まさか、イリスが死んだのでは……?
ルイズは瀕死のイリスを起こそうと身体を激しく揺さぶって呼び掛けるが、イリスからの返事はない。
「やだ! やだやだ、そんなのやだぁ! 起きてイリス! こんなところで死なないで! お願いだからわたしを独りにしないで──目を覚ましてぇ、イリス!!」
静まり返った夜の中庭でルイズは泣き続ける。
周囲は荒れ果て、草花は奪われ──
そんな中、イリスは疲れた表情でルイズの抱く腕の中、無意識の空間を漂っていた。
(わたしは……だれ?)
次回予告(ウソ予告)
フーケのゴーレムを倒したイリス。
しかし、ウルティメイト・プラズマの代償にイリスは今までの記憶を失ってしまった!!
その間にも学院ではフーケ討伐隊が結成され、イリスとルイズ、シエスタとモンモランシー、ロングビルとガイガンが同行する。
フーケのアジトに向かいながら、ルイズ達はあの手この手でイリスの記憶を取り戻そうとするが……?
素直で心優しい天使な乙女に生まれ変わったイリスは、ルイズ達の魔の手から逃げられるのか!?
そしてフーケ討伐の行方は……?
次回、『生まれ変わったイリス』
ルイズ「ほら、昔のイリスはわたしやシエスタ、モンモランシーにこ~んなことやってたんだから!」
イリス「わ……わたし、そんなエッチなことしませんからっ!」
シエスタ「あっ……こっちのイリスさまも新鮮でいいかも」
モンモランシー「か、かわいいじゃない……天使なイリスとの妄想だけで軽く七回は死ねるわ」
イリス「ひぃっ! や、やだ……何だかみんな顔が怖いよぉ……」
ガイガン・ロングビル「「いや、あの……ねぇ、それよりフーケ討伐は?」」
三人娘「「「あっ」」」
次回もまた見てね!