また、この話は映画でのイリスやガメラ、綾奈に関する作者の独自設定や自己解釈が入ります。
イリスはこんなキャラじゃないだろ!と思われても仕方ないかもしれません。
なので、前書きで先に読者の皆さんに謝罪しておきますm(_ _)m
あの後、教師のシュヴルーズが重傷により医務室へと運ばれた為、授業は中止、自習となった。
当然、どこの世界にも自習と言われてそれに従うような生徒は優等生を除いて誰一人いない訳で、生徒達はみんな帰っていった。
ルイズは罰として魔法無しで教室の後片付けを命じられ、一人で黙々と掃除をする。
そんなルイズの様子を、席に座ったままイリスは黙って見ているだけ。
動こうともしない自分の使い魔の姿を見て、ルイズは遂にキレた。
「ちょっと!! なんであんたは手伝わないのよ!!」
ルイズはワナワナと怒りに震える。
「主人の不始末は使い魔の不始末なの!! わかったなら手伝いなさい!!」
主人の憤慨に対し、イリスはようやく無数の触手を動かして掃除に参加する。
重苦しい沈黙の中、二人は終始無言で教室の片付けをしていく。
しばらくすると黙っていられなくなったのか、ルイズが唐突に口を開いた。
「……わかったでしょ? わたしが『ゼロ』って呼ばれている理由……」
イリスは鳴き声一つ出さずにルイズの後ろ姿を一瞥。
見ると、落ち込んでいたルイズの肩が小刻みに震えていた。
泣いているのだと理解したイリスは、それでも黙って掃除を続ける。
「そうよ、わたしは魔法の成功率ゼロ%。おかげで付いた渾名がゼロゼロゼロ!! 『ゼロ』のルイズ!!」
自嘲しながら皮肉を漏らすルイズ。
「……笑っちゃうわよね。魔法も使えない貴族のくせにメイジなんか気取ってさ!!」
目に大粒の涙を浮かべ、自暴自棄になって叫ぶ。
それでもイリスは黙ったまま教室を片付けていく。
そんなイリスの態度に、ルイズは今まで我慢してきた鬱憤を爆発させる。
「さっきから黙ってないで、なんとか言いなさいよ!! なんで何も言わないの!? なんで笑わないの!? わたしのこと、『ゼロ』のルイズって馬鹿にすればいいじゃない!!」
大粒の涙を滝のようにぼろぼろと流し、ルイズは顔を赤くして叫ぶ。
『ルイズ……まほう、使えないの?』
ここにきて、ようやくルイズの心に話し掛けるイリス。
「使えるように頑張ってるわよ!! 何度も何度も!! 同級生から馬鹿にされないように、同級生達を見返してやる為に、誰よりもいっぱい勉強して努力して、学年で一番の成績もとった!!」
溢れる涙が止まらない。
「でも魔法だけはいくらやっても爆発のオンパレード!! どうして……?」
真っ赤に泣き腫らした目でイリスを睨み付ける。
「……ねぇ、どうして……!? どうしてわたしじゃダメなの!? わたしだって立派な貴族なのよ!? なのに、なんで……」
今まで掃除をしながら黙って聞いていたイリスはようやくその触手を止めてルイズのもとに向かう。
「わたしはただ、誰かにわたしのことを認めてもらいたかっただけなのに……!!」
それはルイズが初めて見せる心の想い。
「けど、誰もわたしを見てくれない……!!」
ルイズの渇いた叫びが、イリスの秘められた想いと重なる。
「わたしを『ゼロ』としか見てくれない……!! 『ルイズ』って名前で呼んですらくれない……!! わたしにはルイズって名前があるのに!!」
ゼロと邪神。
イリスという名前を綾奈からもらい、イリスは名前を呼ばれる度にこの名前が好きになっていた。
……しかし、綾奈はそんなイリスの気持ちを裏切った。
寂しい思いをさせないと言ったのに。
もう離れないと言ったのに。
ずっと傍にいてくれるって言ったのに。
あれだけ育ててガメラへの復讐を成し遂げようとしていた綾奈は、あろうことか倒すべき敵であるガメラの味方に寝返った。
今思えば、化け物のイリスを受け入れてくれたのは綾奈が最初で最後だった。
綾奈以外の人間は、その姿を見ると必ず恐怖を抱き、イリスに敵意を向けてきた。
玩具のような武器で抵抗してきた人間の群れは、彼らに対して何も悪いことをしていなかったにも関わらず、いきなりイリスに向かって銃を発砲し、人間の敵ということで殺そうとしてきた。
そして空中に飛んで人間のしつこい攻撃から逃げ回っていたイリスの前に突如現れた地球の守護神ーーガメラ。
ガメラもまた、ギャオスと同じくイリスを人間の敵として認識していた。
それでも人間がガメラを攻撃してくれたことで何とか振り切ることに成功し、イリスは綾奈が待つ京都に逃げ向かった。
京都に向かう途中、イリスは綾奈への想いで心が満ち溢れていた。
綾奈だけは自分を敵として見ない。
綾奈だけは自分を邪神やギャオスとは呼ばないで、イリスという名前で呼んでくれる。
ガメラを倒せば、綾奈は頑張った自分をきっと褒めてくれる。
綾奈だけが、イリスの全存在を認めてくれる。
イリスはそれだけを頼りに、綾奈のもとに向かったのだ。
そして始まるガメラとの最終決戦。
ガメラの容赦ない攻撃をテンタクランサーと超音波メスで弾き防いでいたイリスは、その攻撃の間にもガメラに自分の無罪を訴え続けた。
しかしガメラは既に大勢の人間を殺したイリスの存在を認めなかった。
それでもイリスは何とかして自分が人間の敵ではないことをガメラに伝える為、
自分がガメラに倒されないように手加減しつつ戦ったが、ガメラとの話し合いは決裂。
イリスはガメラを倒したが、倒れ伏したガメラにトドメを刺さないで見逃した。
綾奈だけがすべてのイリスには、ガメラを殺すつもりなんて最初からなかった。
だからあの場でガメラを見逃したことで、綾奈は自分を受け入れて融合してくれるとイリスは願った。
そして綾奈との融合は今度こそ成功したかに思えた。
ところが復活したガメラのラッシング・クローを直撃し、イリスは重傷を負う。
何度も綾奈との融合を邪魔されたことでイリスは完全にブチ切れ、ガメラを本気で攻撃した。
しかし昔から様々な敵と戦って戦闘慣れしていたガメラの方が一枚上手だった。
ガメラのバニシング・フィストによるカウンターを腹部に受け、イリスは心の中で最期まで綾奈の名前を泣きながら呼び続け、そのまま爆発した。
ーーそして現在、二度目の生を与えられたイリスは綾奈と同じく自分を受け入れてくれる人間の少女の前にいる。
『ルイズ……イリスと同じ……?』
誰かに自分を認めてもらいたい。
その為に頑張って一人で努力を続けた。
しかし周りの人間は否定し、二人の周りにはいつしか誰もいなくなった。
幼い時から孤独を抱える二人。
故に、友達(話し相手)もいない。
誰も二人を救ってはくれないのだ……
教壇に座り込んで泣き続けるルイズ。
『ルイズ……泣かないで』
ルイズの頬を伝う涙をペロペロと舐めながら、イリスが悲しい声で鳴く。
「あんた……もしかしてわたしを元気付ける為に……」
またもルイズの頬を涙が伝うが、これは先ほどの涙とは違うとイリスは感じ取る。
「ありがとうね、イリス。それと、ごめんね……イリスに八つ当たりしちゃって」
……嬉し涙だ。
「……ねぇ、イリスはわたしを否定しないの?」
唐突に、ルイズが呟く。
『できないよ……そんなこと。だって、ルイズはイリスと同じだったから』
それはイリスの本心から出た言葉だった。
その証拠に、今のイリスはルイズの前で自分を偽っていたカタコトの喋り方をせず、ちゃんとルイズの使い魔として普通の言葉で交信していた。
その間にも、イリスは無数の触手を伸ばしてルイズを取り囲んでいく。
『これからは、ちゃんと使い魔をやるから……誰かがルイズを傷つけたり悲しませたりしたら、イリスがそいつらをすべて倒すから』
そう言って、触手でルイズをそっと抱き締める。
『だから……だからお願い。ずっとイリスの傍にいて』
その優しい温もりに、ルイズはまたしても涙を流す。
「イリス、あったかいね……」
ぽつり呟き、ルイズはそっと瞳を閉じて体の力を抜く。
そしてーーついに融合が始まった。
正午の教室で二人は絡み合う。
誰もいない教室の真ん中で、じゅるじゅるというーーイリスの触手が何かを吸っているようなーーそんな音が響く。
「すごいわ、イリス。んっ……あんっ、こんなに大きくなるなんて……」
『うん、すごいよぉ……ルイズが、ルイズがイリスの中に入ってくるみたい……!』
すると突然、イリスの体に刻まれたルーンが輝き、教室内に虹色の閃光が満ち溢れていく。
「はぁ、はぁ、はぁ……綾奈の時にはこんな感じしなかったのに……ルイズは綾奈よりもすごいよ」
じゅるじゅるという音が、いつの間にかちゅぱちゅぱという音に変わっている。
「えっ……? あ、あんた今普通に喋ってーーっていうか、えっ? えぇっ!?」
「今まで騙していてごめんね。でも、おかしいなぁ……ほんとはこんな進化はしないはずだったんだけど」
困惑気味に言いつつ、ルイズの体を『両手』で抱き締めたまま、イリスは頭に?マークを浮かべる。
「うーんと、なんかね? 使い魔のルーンが邪魔してルイズと融合させてくれないみたいなの」
「ゆ、融合!? っていうか進化ってなによぉぉぉ!?」
あまりに突然の出来事に、ルイズは訳もわからず叫ぶのだった……
ーーさて、午前の授業も全て終わり、ルイズとイリスは食堂に向かっていた。
昼食の時間である。
泣き疲れて空腹なのか、ルイズは食堂に入ってくるなり、さっさと椅子に座り込む。
そしてチラッと、ルイズは食堂の入口に視線を向ける。
その視線の先には、入口に隠れてそーっと顔を覗かせている少女が。
ルイズはその少女を見てクスッと笑うと、おいでと手招きして少女を呼ぶ。
ゆっくりと、食堂に入ってくる少女。
腰の辺りまで伸びた見事な銀髪を靡かせ、その不安げな瞳は黄色とオレンジの中間色のようだ。
ルイズの着ている制服と同じ制服を着用し、ルイズの方に向かってまっすぐ歩いてくる。
胸はルイズと仲良くなれる大きさだ。
何も知らない人間が見れば、その美少女は完璧に学院の生徒の一人だ。
事実、見知らぬ美少女の登場に何人かの男子生徒はざわざわと騒いでいる。
「ルイズ……」
食堂にいる者達の注目を集める中、その生徒らしき少女はルイズの前に辿り着く。
「いらっしゃい。わたしが貸してあげたその制服、よく似合ってるわよ。サイズもわたしとピッタリね」
少女を自分の隣の席に座らせ、にっこりと微笑むルイズ。
「うん。でも……」
「もうっ、まだ気にしてるの?」
言って、ルイズは少女の眼前で指先をビシッと差し出す。
「いい? あんたは今、わたしが特別に心と体を受け入れてあげたことで『人間体』に進化したんだから、人間らしく振る舞いなさい」
ルイズの出した命令に少女、いやーー『イリス人間体』は小さく頷いた。
……さて、あの後教室で何が起きたのかを説明するとしよう。
ルイズは心と体を捧げ、イリスを受け入れた。
それにより、イリスは綾奈との融合の時には感じられなかった不思議な感覚を得る。
ルイズが言うには、主人と使い魔どちらか一方が死なない限りは一生離れられないーールイズ曰く『愛の鎖』とも言うべき絆で強く結ばれているのだとか。
だから主人は使い魔を次第に愛していくようになり、使い魔も次第に主人のことが大好きになる。
これぞ愛の魔法とも言うべきか。
ーー何はともあれ、ルーンの力で物理的な融合は拒絶され、結果的に二人は一つになれなかった。
しかしルイズはイリスの体内に取り込まれ、そこで触手による遺伝子吸収が行われた。
ルイズとイリスの感覚が繋がったことで、融合そのものには一応成功していたのだ。
すると、どうなるのか……?
ルイズの遺伝子を吸収したイリスは爆発的な自己進化を遂げ、その姿を変えてしまった。
そのとき、不思議なことが起こった。
ーーとでも言うべきか。
ルイズの中に眠る強大な力を感じ取ったイリスは、気付いたら人間の美少女の姿になっていた。
しかし、ただの人間ではない。
四本の触手『テンタクランサー』が少女の両肩から突起のように飛び出して生えており、背中からもグロテスクで大きい翼が突き破るように生えている。
化け物でありながら、人の形をした『それ』は、無表情でルイズを見下ろしている。
二人だけの教室に舞い降りた全裸の銀髪黄眼の貧乳美少女ーーその名もイリス人間体。
両肩からテンタクランサーを展開させ、背中の翼で体勢を調整しつつ、ふわふわと空中に浮かんでいる。
その翼は半透明の膜で作られているのか、綺麗な虹色に光り輝いており、まるで神様のような美しさだと放心状態のルイズは無意識に思った。
あの後、イリスが目の前で人間になったことでしばらく放心状態だったルイズは、イリスのテンタクランサーにペチペチと叩かれて覚醒し、慌てて全裸のイリスを連れて自分の部屋に急いだ。
そして部屋に入るなり、予備の制服と下着を着用させる。
その間にルイズは破れてしまったパンツの代わりを新しく穿き直し、着替え終えたイリスをベッドに座らせる。
それから午前中の授業をすべてサボったルイズは、ひたすらイリスと話し合った。
イリスは生前のことも含め、すべてをルイズに告白。
するといつの間にか感極まって涙を流していたイリスをルイズも泣きながら優しく抱き締め、これからは自分がイリスの傍にいてあげると約束。
こうして、ルイズとイリスは本当の意味で主人と使い魔の関係になったのだった。
次回はいよいよゼロの使い魔恒例イベントの一つ、ギーシュとの決闘!!
そしてルイズに続く2人目のメインヒロイン、シエスタの初登場も!
そして皆さんお待ちかねのイリス戦闘シーンも!
次回もお楽しみに!!