最新話となります!
いよいよギーシュとの決闘イベントが終了し、ストーリーは新展開へと進みます!
そして新たな怪獣の存在も明らかに……?
イリスが観衆を前に人間態・戦闘形態へと変貌を遂げようとしている頃、学院長室ではオスマンとコルベールが何やら真剣な表情で話し合っている最中だった。
「……では、村を襲った犯人はどこかへと姿を消したのじゃな?」
ギラギラと光る目でコルベールを見据えるオスマン。
「は、はい。現場に駆け付けた騎士が村を訪れた時には既にその姿がなかったとの情報が……」
「ふむ……して、その村の住人は?」
「そ、それが……事件当時たまたま村を離れていて助かった数人以外は全員が白骨化した状態で見つかったと……」
言って、コルベールは青ざめた表情で俯く。
「……そうか」
コルベールからの報告を聞いたオスマンは、疲れた様子で椅子に座り込む。
とその時、ドアの外からコンコンとノック音が。
「誰じゃ?」
「私です。ロングビルです」
「入りたまえ」
ドアを開け、ロングビルが姿を現す。
「何かあったのかね?」
「はい。ヴェストリの広場で、生徒が決闘騒ぎを起こしました。何人か教師が止めに入ろうとしたのですが、生徒達に阻まれて近付けないようです」
決闘が起きたというのに、随分と落ち着き払った様子のロングビル。
そこはさすが学院長の秘書といったところか。
「まったく……暇を持て余した貴族ほど質の悪い生き物はおらんわい。で、誰が暴れておるんじゃ?」
「1人はギーシュ・ド・グラモン。2年生のドット・メイジです」
「あぁ、グラモンとこのバカ息子か。親父に似てかなりの女好きなようじゃからのう。大方、女の子の取り合いじゃろう。それで相手は?」
とここで、ロングビルの口の動きが止まる。
言いにくいことなのだろうか。
ロングビルは軽く深呼吸をしてから、一気に言い伝える。
「それが……決闘は彼が平民のメイドを相手に指名して行われたようですが……戦っている相手はそのメイドではなく、代理として選ばれたミス・ヴァリエールの使い魔です」
ロングビルからの報告に、オスマンとコルベールは顔を見合わせる。
「教師陣は決闘を止めるために、『眠りの鐘』の使用許可を求めていますが……」
「アホか。たかが子供の喧嘩を止めるのに、秘宝を使う必要などなかろうが。放っておきなさい」
「わかりました」
そう言ってロングビルが部屋を出ていったのを確認し、オスマンは杖を振るう。
すると壁に掛けられた大きな鏡に、ヴェストリの広場の様子が映し出される。
「さて、あの使い魔をミス・ヴァリエールが制御できるかどうか……まずはお手並み拝見と行こうかの」
そして舞台は再びヴェストリの広場。
そこでは今、戦闘形態へと変貌を遂げたイリスが両肩から生えた四本の触手『テンタクランサー』を使ってギーシュのワルキューレ六体を一方的に破壊していた。
「テンタクランサーには、こういう使い方もあるんだから!」
まずは不用意に接近してきたワルキューレの右腕をテンタクランサーで突き刺し、その強過ぎる威力で右腕ごと宙へと吹き飛ばされたワルキューレの剣を別のテンタクランサーが掴み取り、その剣を利用して槍を手にしたワルキューレを斬り捨てる。
「アハハ♪ 仲良く潰れちゃえ♪」
それと同時に三本目のテンタクランサーが右腕の欠けたワルキューレの胴体に巻き付くと、その間にイリス目掛けて斧を振り下ろそうとしていたワルキューレに向かって力の限りぶつける。
それによってその二体のワルキューレは強く叩き付けられ、そのまま粉砕されて動かなくなった。
「さてと、この玩具は激しくされるのが好きみたいだからーー徹底的に突きまくって壊してあげる!」
その様子を見るまでもなく、イリスは四本目のテンタクランサーで残るワルキューレを突きまくって滅多刺しにし、そのワルキューレは原型を留めないままその場で沈黙。
これで四体のワルキューレが僅か数秒足らずで倒されたことに。
「ここから先はこの剣いらないや」
続いてイリスはテンタクランサーが掴んでいた青銅の剣を五体目のワルキューレに向かって放り投げる。
「あっ、そうだ! せっかくの人間態なんだし、肉弾戦でもやろうか。えーと、たしかこんな感じで……よーい、どんっ!」
と同時に背中に生えた翼を大きく広げ、足裏を爆発させて一気に加速。
その途中、四本のテンタクランサーを地面に勢いよく突き刺したかと思えば、最高速度に達したイリスは常人の目には見えない超スピードで地面を強く蹴り上げて前方にジャンプ。
「ウフフ……アハハハハ♪ 何これ楽しいな♪」
今のイリスの気分としては、四本のテンタクランサーを使った即席ブランコに初めて乗った子供だろうか。
その反動を利用して六体目のワルキューレを遥か彼方へと両足で蹴り飛ばし、風に乗ったワルキューレはやがて学院の壁に全面衝突した。
最後に青銅の剣を放り投げた五体目のワルキューレの眼前に一瞬で迫り来ると、最後のワルキューレにニコッと笑ってからその頭部をがっしりと掴む。
「おまえの頭、わたしのこの手で握り潰してあげるよぉ!!」
怖いくらい狂気的な笑顔で言うと、イリスはワルキューレの頭部を掴んでいた右手にふんっ!、と力を入れる。
その直後、ワルキューレの頭部がバキバキという音を立てて次第にぐぐっと潰されていく。
「そうだ♪ ここでちょっと新しい技でもやってみようかな? なんかこの体、結構気に入っちゃった♪ どうせしばらくはこの姿で戦うことになるだろうし」
握り潰されていくワルキューレの頭部を見て何やら閃いたのか、イリスは頭部を掴む掌から槍状の突起『スピア・アブソーバ』を勢いよく射出すると、その手甲はワルキューレの頭部を貫通。
「まだまだいくよぉ! 拳の槍で射止める! 新必殺! パルマフィオキーナ!」
それを確認すると、イリスは掌から射出したスピア・アブソーバを再び腕の中に引っ込め、再射出。
「それ! それ! それ! それ! アハハハハハハ!!」
それをリズムよく何度も繰り返し、ワルキューレの頭部は見るも無惨な状態に。
「それ! それーーあれ? もうおしまい?」
もう飽きたと言うように、イリスの激しい攻撃がふと止まる。
「なぁんだ、つまんない。楽しませたのはせいぜい数秒ちょっとかぁ……残念」
がっかりとした様子で呟き、イリスはワルキューレの頭部に突き刺さっていたスピア・アブソーバを引き抜く。
「もう壊れていいよ」
直後にグシャッという音が響き、最後に残ったワルキューレはイリスによって頭部を握り潰されてしまう。
「さてと……これで残るはおまえだけだね、ギーシュ」
当初想像した光景とはまったく異なる展開である為か、広場に集まった観衆は声も出せずに呆然とイリスの無双を見ていた。
そんな中、イリスは自分の体に違和感を覚えていた。
「うーん、なんだか体の調子がいいみたい。この姿で戦うのはこれが初めてだけど、さっきからテンタクランサーの動きもいいし」
ワルキューレを倒した四本のテンタクランサーを自分のもとに戻すと、確かめるようにイリスは自分の体を確認する。
すると、イリスに刻まれた使い魔のルーンが光り輝いているではないか。
……なるほど、恐らくこれが原因か。
イリスはルーンが自分に与える影響をひとまず理解すると、右腕をスッとギーシュへと向けてまっすぐ伸ばす。
「スピア・アブソーバ」
イリスがそう宣言すると、人間の幼女サイズの白く華奢な腕だった組織が急速に変化し、一瞬で右腕が槍状の突起のような手甲へと変化する。
目の前で人間の腕が槍状の手甲に変わったのを見て、観衆は思わず息を呑む。
しかしその直後、イリスが一番最初にテンタクランサーで頭部を吹き飛ばしたワルキューレが、手にした剣でいきなりイリスの体を勢いよく斬り付けた。
その瞬間、ルイズやシエスタをはじめとする何人もの女子達が悲鳴を上げる。
ルイズから借りた学生服が次第に鮮血で染まっていく。
しかし傷を負ったイリス本人はたいしたことなさそうに口を開く。
「へぇ……そのワルキューレ、頭が無くても動いたりできるんだ」
妙なところで感心したかと思えば、イリスはそのワルキューレに向かって音波からの振動攻撃『超音波メス』を放つ。
テンタクランサーから放たれた超音波メスを至近距離でまともに直撃したワルキューレは見るも無惨に切り刻まれ、今度こそ本当にその動きを完全停止した。
「なっ、なんだ今のは!?」
「見えなかった……! この俺の目にも!」
「『風』系統の魔法ーーいや、あれは先住魔法か!?」
イリスが使った超音波メスを見て、再び観衆がざわめき始める。
「今の攻撃は痛かったかな」
その言葉のわりにはたいして痛そうにしていないイリス。
「でも、そんな不意打ちでわたしを倒せると思ったら大間違いだよ」
言って、イリスはギーシュを睨み付ける。
その赤く発光した瞳には明確な殺意が宿っているようだ。
「わ、悪かったよ……いくらメイジでもドットに過ぎない僕じゃ、とてもじゃないけど君には勝てそうにない」
やがて、自分の敗北を悟ったギーシュは、覚悟を決めたような表情でイリスに向かって歩き始める。
そして……
「ーー『参った』。僕の完敗だ」
ギーシュはすんなりと自分の敗北を認め、イリスの前でその頭を下げた。
その潔さに、呆然としていた観衆からは次第にギーシュへの賞賛と拍手が広がっていく。
「よく頑張ったぞ、ギーシュ!」
「意外とかっこいいとこあるじゃないか!」
「見直したわよ! ただの二股野郎じゃなかったのね!」
みんなの反応ぶりに、頭を下げていたギーシュは内心で安堵の息を吐く。
(まさか僕が自ら負けを認めるなんてね……まぁでも、これで僕の評判は元通りだろう)
……何を隠そう、ギーシュは最初からこの決闘を自分への友好度上げくらいにしか見ていなかった。
先ほどの二股騒動で一時は貴族としての立場が危ぶまれたが、結果的にイリスを利用して自分の評判を取り戻したのだ。
決闘には負けたが、すべてがギーシュの描くシナリオ通りに事が進んでいた。
「……参った? 何それ、おいしいの?」
……そう、この時までは。
刹那、ズシュッという鋭く尖った何かが柔らかい肉を突き刺したようなーーそんな音が響き渡る。
そして……
「……ぐふっ」
イリスの目の前に立っていたギーシュの口からは何故か吐血が。
「えっ……何が……?」
突然の出来事に訳もわからず、ギーシュは混乱。
そんなギーシュの真っ白な学生服が見る見るうちに鮮血で染まっていく。
ここにきて、ようやくギーシュの身に何が起きたのかを理解した観衆。
飛び交う悲鳴と怒号。
それを無視して、イリスは次第に真っ青な顔になっていくギーシュに笑い掛ける。
「どう? 自分の中の何かが吸い取られていく感じがするでしょ?」
そうしている間にもスピア・アブソーバは容赦なくギーシュの胸に突き刺さり、そこから体液がイリスへと送り込まれていく。
「ぁ……ううっ……うあぁ……」
まるで強い風に体が吸い込まれているような錯覚に陥り、意識朦朧とするギーシュは自分の生命が目の前の幼女に奪い取られていくのを感じ取った。
「やめてぇぇぇぇぇぇ!!」
その時、イリスのもとに泣き顔のルイズが駆け付ける。
「もうやめて!! あんたが強いのはよくわかったから!! ここにいる誰もがあんたには勝てないから!! だからイリス……お願いだから殺さないで!!」
泣き叫ぶルイズはイリスのスピア・アブソーバを両腕でがっしりと握り、ギーシュから引き剥がそうとする。
「ルイズ、邪魔をするつもり?」
そう言ってルイズを睥睨するイリスの表情はギーシュへの怒りで満ちている。
「だけどこいつは、悪いことしてないシエスタを傷付けた! ルイズを『ゼロ』と馬鹿にした! 許せるものか絶対に……!!」
怒りを爆発させたイリスは吸い込む力をさらに強める。
今やハンサムだったギーシュの顔は酷く痩せこけ、ミイラ化まで残り数秒というところ。
「やめてイリス! ギーシュを殺しちゃダメ! どうしてわたしの言うことを聞かないの……!?」
ルイズはとうとうその場に泣き崩れてしまう。
あぁ、やはりダメなのか……
ルイズは目の前で行われる惨劇を止めることができない。
イリスを召喚して喜んだのも束の間、所詮『ゼロ』であることに変わりはないのだ……
(ギーシュ、みんな……ごめんなさい)
ルイズは心の中でギーシュとみんなに謝ると、諦めたように瞳を閉じーー
「イリスさま、おやめください」
ーーようとした直後、ルイズの脳裏にシエスタの声がはっきりと聞こえてきた。
ハッとしたルイズが目を見開くと、隣にはいつの間にかシエスタが。
「シエスタも邪魔するの? わたしはルイズとシエスタの為にこいつを懲らしめているのに」
「……イリスさま、あなたのやっていることは悪いことなんですよ? それで私やミス・ヴァリエールが喜ぶとでも?」
どうやら珍しく怒っているようだ。
「これが悪いこと? ルイズとシエスタ、わたしを褒めてくれないの?」
シエスタに説教されてムッときたのか、イリスはシエスタを不満気に見つめて反発する。
「少なくとも、今のイリスさまは褒められませんね」
そう言い、シエスタはルイズの隣に立ってイリスを諭す。
「いいですか? 私やミス・ヴァリエールの願いは誰かを傷付けたり、誰かを悲しませたりすることじゃないんです」
優しく言うシエスタの言葉に、ルイズが同調する。
「ねぇ、イリス。愛っていうのはね、誰かを傷付けたり悲しませたりすることじゃないの。いつまでも仲良く、相手を思いやる気持ち……それが愛なの」
「思いやる気持ち……? 愛ってなに……? わたし、全然わからない!!」
シエスタとルイズの言っている事が理解できないイリス。
まだ生まれたばかりの子供に過ぎないイリスには、二人の言わんとしている事は怪獣として理解に苦しむのだ。
「ならよく見なさい! 好きな人を思いやる気持ちーーギーシュとモンモランシーのあの姿を見なさい!」
ルイズがイリスに向かって叫ぶと、黙って後ろを指差す。
イリスが釣られて後ろを見ると、スピア・アブソーバが胸部に突き刺さったままの瀕死のギーシュに、泣き濡れた真っ赤な顔のモンモランシーが駆け寄って抱きついているではないか。
「ギーシュ! ギーシュ……!」
弱々しいギーシュをしっかりと抱き締めて泣きじゃくるモンモランシー。
先ほどギーシュと破局したばかりのモンモランシーが、人前を無視してあんなにもギーシュを思いやる純粋な姿。
だからこそ、イリスはギーシュとモンモランシーが理解できない。
「どうして……? モンモランシーはギーシュのことを嫌いになったんじゃ……?」
困惑顔でイリスは呟く。
あれだけ派手な別れ方をしたというのに、モンモランシーもちゃっかり決闘を見に来ていた辺り、何だかんだでギーシュのことが心配で気になっていたのだろう。
「や、やぁ……モンモランシー……すまない……君にはかっこ悪いところを……見せてしまったね」
弱々しい表情でモンモランシーに微笑み掛けるギーシュ。
その霞んだ瞳からは既に光が消え、恐らく目の前のモンモランシーすらはっきりと見えていないだろう。
「僕は幸せ者だ……こんな目に遭って、やっと思い知ったよ……僕には君みたいな……素敵な彼女がずっと傍にいてくれていたんだと……ありがとう、モンモランシー。そしてすまない……ケティのこととメイドのことはちゃんと謝る。だから……ごめんよ、モンモランシー」
にも関わらず、ギーシュはモンモランシーが自分の為に来てくれた事を感じ取って嬉し涙を流している。
「バカ! バカバカバカ!! あなたって本当にサイテーな大バカよ!! 死ぬんじゃないかと思って心配したんだから!!」
力の籠もっていないパンチでギーシュの体をポカポカと殴りながら、モンモランシーは感極まって泣き崩れてしまった。
「……ね? 誰かを好きになって、誰かに愛されるーーあれが愛なのよ」
ギーシュとモンモランシーの感動的な場面に貰い泣きしていたのだろう。
泣き顔のルイズが優しくイリスに言う。
その隣では、同じくシエスタが涙を流しつつ二人の愛を祝福していた。
「ギーシュとモンモランシーのあれが愛……じゃあ、わたしがいま感じているーー何て言ったらいいのかわからないこの気持ち……これも愛なの?」
……誰もその答えは教えなかった。
だけども、今のイリスにはギーシュを殺そうという、あの時感じた怒りや憎しみの気持ちは既にどこかへと消え去っていた。
その証拠に、イリスの頬を涙が静かに伝う。
イリスはギーシュの胸部からスピア・アブソーバを引き抜くと、変貌した腕を人間の腕へと戻す。
続いて倒れているギーシュとモンモランシーのところに歩み寄ると、イリスは頭を下げて二人に謝罪した。
「あの、その……ごめんなさい」
慣れていない為に、謝ることが恥ずかしいのだろう。
ところが、モンモランシーはイリスの謝罪を許さない。
「ごめんなさいですって!? 誰のせいでこんなことになったと思っているのよ!!」
モンモランシーは泣き顔のまま、鋭い目付きで睨んでからイリスに怒鳴り散らす。
その間にも、瀕死のギーシュは決闘を見届けた水のメイジ達によって医務室へと運ばれていく。
「あぅ……」
モンモランシーに怒られ、イリスは何も言えなくなってしまう。
「えっと……わたし、決闘している時は確かにギーシュを殺そうと思ってた。だけど、今はギーシュを殺そうだなんて思っていないよ……?」
申し訳なさそうな態度で、イリスはモンモランシーの表情を窺いながら話す。
「それで私が許してあげるとでも?」
モンモランシーにツンと言われ、イリスはまたも暗い表情で俯く。
「あぅ……その、本当にごめんなさい……モンモランシーお姉ちゃん」
最後は泣き顔と上目遣いというコンボで、イリスはモンモランシーの心に揺さぶりを掛ける。
すると……
「……ふんっ!」
涙に濡れた顔をイリスから逸らすと、モンモランシーは顔を赤らめてイリスを睥睨して告げる。
「ルイズ! 後でこの子を私の部屋に連れて来なさい! ちゃんと一人でよ! ……そしたら、ギーシュとのことは考えてあげてもいいわよ」
モンモランシーの物言いに泣き顔だったイリスは顔を明るくすると、モンモランシーに抱きついた。
「ありがとう、お姉ちゃん!」
「で、でも! まだイリスのやったことを許した訳じゃないんだから! あなたの処遇は後日、ギーシュと相談して決めるから! そのつもりでね!」
モンモランシーの出した条件にイリスは笑顔で頷くと、今度は二人のやり取りを傍で見ていたルイズとシエスタに向かって思いっきり抱きついた。
「ルイズ! シエスタ! わたし、頑張ったよ!」
「こら、イリス。さっきモンモランシーに言われたばかりでしょ? ギーシュも悪かったけど、あれはさすがにやり過ぎよ」
そう言ったルイズに額をコツンとデコピンされ、イリスはしゅんとなる。
確かに二股したギーシュも悪いが、ギーシュを殺し掛けたイリスにも非がある為、ここはイリスの勾玉を所持する巫女候補のシエスタが割って入る。
「イリスさまも今回のことでやってはいけないことがよくわかったと思いますし、ミス・ヴァリエールもミス・モンモランシも大目に見てあげてくれないでしょうか……?」
シエスタに頼まれ、ルイズとモンモランシーはしばらくお互いに顔を見合わせた後、二人揃って盛大に溜息を吐いた。
「もう、ルイズもメイドも、みんなイリスに甘いのね。それじゃあ、どうする? 『ゼロ』の……って、もうルイズは『ゼロ』じゃないわね」
「ふふっ。ありがとう、モンモランシー。そうねぇ……こうなっちゃったものは仕方ないか。だけどね、イリス。ここにいるみんなを悲しませた罰で、しばらくはモンモランシーの言うことをなるべく聞いてあげるのよ?」
そう言ったルイズとモンモランシーがその後、お互いに恥ずかしそうに握手を交わしつつ仲直りした為、イリスは嬉しく思ってシエスタを巻き込んでルイズとモンモランシーの腕をぶんぶん振り回し、二人がシエスタを含めて友達の関係になった事を祝福するのだった。
その一部始終を学院長室から見ていたオスマンとコルベール。
オスマンが杖を振るうと、ヴェストリの広場の映像は消え、元の学院長室の壁に戻った。
「なんとか彼女達は仲直りできたみたいですね」
「うむ。これもミス・ヴァリエールが働かせた機転のおかげじゃな。何はともあれ、イリスはあの娘達といる限り、これから先も悪の手に堕ちることはなかろう」
「ですが、オールド・オスマン。確かに彼女はあの場で言っていましたよね……自分のことを『邪神』と」
コルベールの指摘に重苦しく頷くオスマン。
「『邪神』……まさしくイリスはあの神話の中に登場する『災厄の邪神』なのじゃろうな」
「と、言うことはイリスと対をなす『破壊の邪神』も実在すると……?」
「コルベール君。わしはあの神話は本物じゃろうと考えている。このハルケギニアに古くから伝わる怪獣伝説じゃ」
ーー怪獣伝説。
それはーーハルケギニアに古くから伝わる怪獣達の伝説。
山よりも巨大な怪獣が数多く存在し、それらの怪獣がハルケギニアの外ーーつまりは宇宙からやって来る恐るべし怪獣達から星を守る為に戦い、ハルケギニアの各地を跳梁跋扈していた頃の神話。
ーーその昔、ハルケギニアを守護する伝説の怪獣がいた。
天を守護する守護神ギドラ。
海を守護する守護神モスラ。
陸を守護する守護神バラゴン。
この三体は伝説のメイジ『ブリミル』より『護国三聖獣』と称され、ブリミルや虚無の使い魔と共に凶悪な宇宙怪獣と戦ったとされている伝説の存在。
護国三聖獣が現在も眠っているとされる一部の国ではブリミルと並んで神と崇められ、メイジだけでなく平民からも大切にされてきた。
ハルケギニアが滅亡の危機に直面した時、長い封印から覚醒してハルケギニアの生態系を守護するというが、現在までに護国三聖獣がこの地に蘇った事は一度限りしかない。
そんな伝説の怪獣達とは別に、ハルケギニアにはもう一つ、次のような伝承がある。
ーー虚無の担い手が導きし運命の刻。
異界より『災厄の邪神』と『破壊の魔神』は降臨せん。
朱き邪神と紅き魔神が戦いの中にて出会いし時、滅びゆく定めの破壊神は今一度蘇らん。
破壊神の復活はハルケギニアに新たな破壊を呼ぶであろう。
しかし、破壊神が齎す破壊はハルケギニアにあってハルケギニアに非ず。
ハルケギニアを食い尽くすモノ、隕石に乗って宇宙より舞い降りし時、ハルケギニアの三聖獣は幾千の時を経て再びこの地に蘇らん。
三聖獣を従えし者、今こそ虚無に目覚め、伝説は蘇らん。
虚無の担い手はハルケギニアの守護神を従え、虚無の力を以て宇宙怪獣を倒さん。
この者、やがてハルケギニアの神話を創りし英雄となりて。
その誇り高き名、未来永劫に語り継がれるであろう。
ーーハルケギニアの怪獣伝説。
それは、かつて起きた神話のこと。
そして、これから起きる神話のこと。
「……のぅ、コルベール君」
「何ですか? オールド・オスマン」
「ミス・ヴァリエールはこれから先、どのような過酷な人生を歩むのじゃろうな」
「……私にはわかりません」
言って、コルベールはしかし……と続ける。
「今はただ、あの幸せそうなミス・ヴァリエールの未来を信じましょう。教師の私達には、こうして生徒のことを想うしかできないのですから」
「……そうじゃな。わしもミス・ヴァリエールとあの使い魔を信じておるよ」
え~、インフルエンザは無事に完治しました(^_^)
心配をお掛けしてすみませんでした(^_^;)
次回はいよいよイリス初めてのお出かけ!!
街へと繰り出すイリス&ルイズ!
そこで出会うデルフリンガー!
シエスタやモンモランシー、キュルケ&タバサも登場!
次回、5人の可愛い女の子達を相手に、イリスが街中で暴走します(笑)
久しぶりのエロもあるでよ!←
次回もまた見てね!!