プロローグ
何も感じない
指先の感覚が無い
むしろ腕や足の感覚すらない
黒い世界のなかで漂う
時間の感覚すら感じられない
思考すら……
……ふと目の前に光が現れる
そこに吸い込まれるように意識が飛んだ
―No.59492-072–530420025252-❇︎❇︎❇︎……︎-❇︎❇︎❇︎0101
解凍
目蓋の上から光を感じる
目蓋?
……腕、足の感覚がある
久しぶりのような元からある形なのか、困惑する。
そんな思考をしながら目蓋を開ける。
ひらけた世界が飛び込み
眠りから目が覚めたときに感じる眩しい光を感じながら周りを見渡す。
真っ白な世界
周りには何もなくただ広く真っ白な地面が続いている
「ここは? 一体どこなんだ……」
全く知らない世界を見ながら思考を回そうとすると
「はーい! おめでと~!! 君は選ばれました! ぱちぱち~」
そんな声が聞こえたと同時に
ぽんっ! と擬音語がつきそうな感じでいきなり小さな女の子が現れた。
小さいと言っても自身の身長の半分位だろうか……
髪の色は漆黒で艶を持たせたよに煌びやかに輝いている。
長さはセミロングくらいだろうか、それが赤い瞳とあって少女ながらも妖艶さ淫靡さを感じられた。
別に性衝動というよりかは雰囲気がそうさせているだけであるけれど、タブーに触れるような背徳感が背筋を貫く。
ただ少女の背中に黒い翼があってそれがぴこぴこと動いている時点で、まともな人間ではないだろうと想像がつくのだが……。
「選ばれたってどう言うこと?」
とりあえず少女が喋った内容を聞こうとする。
すると少女は翼を動かし、体を浮き上がらせる。
体が浮くと言う摩訶不思議な現象を見て驚きを隠せず、目を見開いて彼女を見ていると自分の目線の高さまで顔を合わせて言い始めた。
「あー細かいことは置いておいて、君にはあることをして貰います」
「ええっ?」
会話が成立しているかどうかと言う感じで、彼女は一方的に話を始める。
「あることと言うのは、とある世界に行ってある意味のハーレムを築いて貰います!! やったね!!」
「???」
さらに訳が分からない事を言い始めた。
少女は自分の顔をじっと見ながら呟く。
「うーん。理解度はあまり良くなさそう……ま! いっか!! こう言うのは数が勝負だからね!!」
と独り言のように呟いて話を続けた。
「ハーレムを作るにあたって君にはとある能力を……」
「ちょっと、ちょっと待ってくれ!!」
話を続けようとする少女の言葉を遮り、言葉を続ける。
「いきなりハーレムとか……意味が分からない事を言い始める前にここは一体どこなんだ?」
困惑しか出てこないが全く意味がわからないよりかは、現状を把握しないと取り返しが付かない気がして、少女を問い詰めようとする。
「むっ!! ……まぁ、大体がこんな反応だったの忘れてた……。うーん。そんじゃ、少し現状を説明するね!!」
最初少女は話を遮らされてムッとした表情を見せたが、少し考えた表情を見せて不本意ながらな表情を浮かべながら、話を続け始めた。
「まずは、君は分からないかもしれないけど、君は死んでしまいました!! 残念。シクシクだね!!」
「はっ??」
死んだ?? 何故?? どうして??
自分の記憶を思い出そうとしても、うまく記憶がまとまらず、困惑を重ねてしまう。
そんな気持ちを無視しているような感じで、少女はもう少し体を浮き上がらせて、得意気な顔を見せつつ話を続けた。
「そして、君は魂のような存在となり、ここに呼ばれたのね。ここは……まぁ、ある意味死後のような世界」
「死後の世界……」
「そ!! まぁ、本来なら死んだ魂は生きていた人生の精算を見て次の魂の紡ぎの世界へ組み込まれるんだけど……」
輪廻転生と言う意味だろうか……記憶を探ろうにも余り思い出せない現状だが、宗教はあまり信仰していないはずと言う気持ちが先立つ。
だけど、まさか死後の世界が存在するとは思いもよらなかった。
と言うのも自分の根底に感じられるのは、死と言うのは動物的思考がある意味正しいと思っていて魂と言う存在の考えはある意味否定はしないが、結局死と言うのは脳が死に体が死にタンパク質の塊になってしまい、その本人自体は世界から消え終わると言う何も救いはない状況。
だからこそ本能では人は子孫を残し、自分と言う存在を遥か彼方まで記憶として残そうとするのではないか。
と思っている。
まぁ、そんな考えは人それぞれで他の考えを否定するつもりは全くないが自分はそれを根底に感じられてしまうので、こう言った死後の存在と言うのは正直疑わしく感じられてしまう。
そんな気持ちを考慮せず、と言うか全く気づかないであろう考えを思いながら少女は話を続けた。
「さっきも言った通り君は選ばれたので、次の紡ぎには参加せずに今回の話があるってことだね!!」
「今回の話ってさっき言っていたハーレムを作るってこと?」
「そっ!!」
まるで君にはご褒美をあげるよ!! って顔を浮かべつつぱちぱちーっと拍手をしてきた。
「いや、全然まるで意味がわからないんだけど……なんでハーレムを作らないといけないの?」
「えー?? 男の夢ってハーレムで酒池肉林をすることじゃないの??」
「いや……ある意味は正しいのかもしれないけど…………」
ある意味の否定は出来ないと言うか……極論を突きつけられた気持ちだ……。
「でしょ!! だからある意味手取り早くハーレムを作れるように君に能力を与えて、とある世界に行ってもらおうと思うんだ!!」
にこにことしながら、少女は話としては似つかわしくない話をしてきた。
「待てよ……これって……」
こう言う話ってある意味……聞いたことがあるような。
聞いたことがあると言うか読んだことがあると言うか……
ハッとして、
読んだことがある。
曖昧な記憶の中おそらく自身が好んでよく読んでいたと言う概念のみが、思い起こされてくる。
異世界転生
そうだ!
よくある一般人(ときには有名人)が異世界と言う名の別次元にいき、己の知識、力、アイテムなどを駆使しつつ無双すると言うお話をよく読んでいた記憶が思い起こされる。
あくまで読んでいたと言う概念のみなのだが……一つ思い出せただけでも進展があったのは、嬉しい気持ちが湧き上がる。
と言うことはある意味よくあるハプニングはあるとはいえ、基本的にはイージーに進めることが出来るのではないか?
あの少女が神本体なのかそれとも使いの者かは知らないけれど、言うにはハーレムを築く為とは言っていたのと、能力を与えると言っていたので恐らくはチート能力だと思う。
確かに選ばれたなら幸せになるはずなのでは、とどんどん思考を重ねていくと。
「ん? 反応が薄いけど、ずっと考え込んでどうしたの?」
少女はそう言いながら自分の顔を覗き込むように喋ってきた。
「ん……。あぁごめん。戸惑って色々と考えてしまったけど、もう大丈夫だ」
「そっかー! ならもう大丈夫なんだよね!! それじゃ、早速……」
「待ってくれ!? 考えていたことが大丈夫であって、話自体はまだまだ突っ込み所満載だよ!!」
慌てて少女が何かしようとしていた所を大きな声で中断させる。
「えー? もう良くない?? 大丈夫だったんでしょ??」
「いや、だから考えが纏まっただけで、話自体は全然分からないよ……」
「むー。じゃあ、他に聞きたいことはあるの??」
少女は若干むくれながら話を促してきた。
……考えろ。
確かに良くある転生者物語だとして本当にそれで良いのだろうか。
ここのパターンは大まかに分けたとして、
1.良くわからないまま転生させられて実地学習をさせられる
2.話を聞いた上で、実情を把握しつつ交渉などなどを行いプラスの材料を貰い転生する
結局はどっちも上手くいくのが物語であるのだが、それでも事前に知るのと知らないのでは、雲泥の差があると思うのが、一般の考えだと思う。
が、しかし話を聞けるまたは交渉が出来る相手なのだろうか……?
上手く行くパターンとしては、神が
「間違って殺しちゃった! たくさん特典あげるから許してね! てへ♡」
とか言って許しをこう代わりに特典を与えるパターンだけど、
本当にそんな上手い話はあるだろうか
逆の立場で考えてみた場合、
自分は相手とは次元が違う存在であるのにも関わらず、下等の存在に対して謝ると言うことはまずあり得ない。
例えば間違って、存在を気づかないままアリを踏み潰したとして、アリに謝るだろうか。
コミュニケーションが取れる存在じゃないと謝らないのであれば、家畜として生きている存在を殺して自分の糧とする行為は謝るべきなのか。
自分としての答えは否
そもそも会話が出来たとしても、人は人を下に見たときにはどこまでも残酷になれるのは良くある話と思う。
他の生物としても罪悪感を感じた上で、あくまで祭り上げて奉じる存在として和らげる行為はあるだろう。
だけど、あくまで殺したことに対しては表向きに謝る気はないだろう。
だってそれは
自分たちは生きていく為に必要なことであるから
まぁ、この辺りは極論を持って臨むのであれば、反論は出来ると思うけど、結局は、植物、昆虫、微生物も含め生きているもの以外を摂取して生きる行為と言うのは、正直難しさは半端ないだろう。
かと言って、この手の話は平行線にしかならないと思うので、自分の根底を持つしか無いと思うのだが、それでも考えれば考えるほど、上位の存在が下位の存在に謝るのは大多数的にあり得ないだろうと思う。
閑話休題
それはそれとして、話は進めないといけないだろう。
口調に関しては、砕いた口調でやってしまったと思ったが今のところ相手側が不快に思っていない感じなので、急に変えると不審を与える可能性も考慮しつつ様子を見て調整できればと思う。
いきなり切れるとかをしない限り大丈夫だと思いたい。
少女のむーとした表情のままこちらを伺っているので、まずは柔らかく問を進めようと考えた。
「まずは、死んだってことだけど、どう言う死因だったの?」
「えーっとね」
少女はパッと手から電子機器の端末ようなものを取り出して操作をする。
死後の世界って電子機器があるんだ……
究極どうでも良いようなことを考えていると、少女は目的を見つけたのか目を輝かせる。
「死因はね。隕石が落ちて来ちゃって全滅だね」
「は?」
「だーかーらー隕石が落ちて来ちゃったので、その星の人類は死んじゃったの!!」
衝撃だ……
衝撃すぎる……
他の星に人類って存在するんだ……とか思考を放棄したことを考えつつ、もはやなんも言えねぇと言う表情を前面に出しながら言葉を出した。
「あぁ……そうなんだ……まぁ痛みを感じずに死ぬのはマシだったのかな……?」
「さぁ? これで質問は終わり?」
「待って待って。聞きたいことはまだあるよ」
「えー。もう良く無い? パッと次行きたいんだけど……」
引き続きむーとした表情をして言って来ているので、慌てて次の質問を考える。
とりあえず、そんな長くは持ちそうに無いと思うので、どんなに困惑しても前提を仮定として進めないといけないな。
仮に死亡から転生して、ハーレムを作るとして、
なぜ自分が
他の世界で
ハーレムが作る必要があるのか
あたりを聞き出さないといけないと考える。
……と言うか冷静さを持続出来るのはここが死後の世界のせいなのかな?
どうでも良いことを考えつつ質問を出す。
「最初に戻るんだけど、選ばれたって何かあったの?」
「えー? 選ばれたってだけで喜ぶ人が多いのにそこ引っかかっちゃうの?」
少女はうーむと悩む表情を見せつつふらふらと周りを飛びながら言葉を発する。
「運かなぁ。見る限り特に悪いこともせず良いこともせずって感じだし、どちらかと言えば陰に染まりそうだから可能性としてだね」
「陰? それってどう言う意味?」
「うーん。説明がめんどくさいから説明しなーい!!」
あははと言いながら少女は飛び回る。
これは突っ込んでも良いものだろうか……
相手の行動ひとつで色々と変えられる可能性があるともどかしい。
___
少女は対象を見つつ相手側に伝わらないように小さく呟く
「うーん。感情の起伏が乏しいかな。大体勘違いした人はこの辺りで……」
無謀にも突っかかり霧散するんだけどね。
漏れた魂はそれはそれで美味。
そんなことを考えつつ、首を傾げながら対象を見る
まだ解凍されたばかりの魂。
無垢と言うにはほど遠いが、何色にも染まっていない状態
これをある程度染めることがひとつの目的
まぁ、それ以上の可能性はなきにしもあらずだが、それは対象の成長次第だろう。
やらないと行けないと言う考えを植えつけて飛んでもらわないとなので、程々に思考を誘導させつつ、話を進めようと考えるが……
ま、どう言う風に転んでもこっちには損はないから、考え過ぎずに行こう!!
持ち前の適当さを発揮して次の言葉を発した。
__
「ま、宝くじがあたった見たいな感じで良いと思うよ。そこを深く考えてもしょうがないね。選ばれたと言う結果が重要なだけ」
「そうなのか?」
決められた過程に対する結果がランダムと言うことは、自分だけではなく他にも候補がある。
そうすると自分だけ言うよりたまたま合致する何かがあったのだろう。
そして他にも候補あると言うことは特段自分に対する唯一無二の有利性は見込みが薄い。
下手に勘違いでブッ込むとろくなことにならなそうだ……。
要するに就職試験の書類審査に合格した程度だろうとあたりをつける。
勘違いして伺うと余裕で面接落ち。お祈りの手紙をもらうことになる。
貰うだけで済めば良いけど……。
ろくなことを考えつつ、少女を伺うとこちらに向けて笑顔を見せつつ口を開く。
「そ! だから運が良かったと思えば良いよ! 一生分の運だね!! 死んじゃったからもう使いようがないけど」
けたけたと笑いながら飛び回った。
……とりあえず、気にせず話を進めよう。と気を引き締める。
「次の世界ってどう言うことかな?」
うーんと考えた姿を見せて少女は話はじめた。
「次の世界って言うのは君が元々いた世界では無く、他の世界に行ってもらうってことなんだけど……」
「それはよくある話として、ファンタジーの世界見たいな感じなの?」
「お! 良く知っているね!! そうそう。そんな感じ。ただ、完全に君が思っているファンタジーとは言えないかもしれないだけどね」
??
どう言うことだ?
困惑を浮かべてしまった顔を見て少女はピッと人指先を立てて
「君の記憶の中で、完全に知っているとは言えない世界をピックアップしてそこからランダムに行ってもらうから。君の世界に無かった魔法とかある世界じゃないかもしれないね」
だからファンタジーとは言えないと言うことさ。
と少女はドヤ顔でそう言ってきた。
「……そこで何故ハーレムを作る必要があるんだい?」
おろっと少女はせっかくのドヤ顔を流されてしまった肩透かしの動きを見せてきた。
そしてすぐ体勢を作り直して、言葉を伝えてくる。
「それはさっきも言ったけど、ハーレムって男の夢なんでしょ。だったらその夢が簡単に叶うなら作ってみたいと思わない?」
確かに数ある夢の中の一つとしてたくさんの女性に好かれたいと言うのは存在するだろうけど……
「男の夢と言うのは否定しないけど、それを希望するかどうかは別問題と思うよ……」
「そうなの? まぁ、いいじゃん!! 欲望の限りを尽くして色々と気持ちいいことしたいでしょ?」
純愛主義者では無いけど……こう言うふうに強制っぽいのを言われるとどうしても美人局感が強く見える。
微妙な顔をしていると少女はしびれを切らしたように言葉を発してきた。
「あーもう!! なんか煮え切らない態度だなぁ!! せっかくのチャンスなのにやらないの??」
その言葉にふと疑問をぶつける。
「やらないと言う選択肢はあり得るの?」
その言葉を聞いて少女はキャッキャと言う感じで、自分の周りを飛びながら
「やらないと言うことは出来るよー。だけどー」
だけど……?
「その時には残念だけど、君は
キシシと笑いながら少女は告げてきた。
強制じゃねぇか……
と脳内で突っ込みを入れつつ考える。
自殺願望が無ければ、自分の存在を維持するために言うことを聞かないといけないらしい。
まぁ、今は死んでいるですけどね……
とは言え、自分と言う存在を持って再度生きる事が出来るのであれば、それに越したことは無い。
個人的に生きて幸せな生活を送りたいと言うのは人として間違ってはいないと思う。
今の世界とは別のファンタジーに近い世界と言う事(現存の世界滅んでいるみたいだし……)なので、文明が発展し過ぎて無ければ何かしらのアドバンテージはあるだろうから、
多少は賭けの要素が強くても大外れはなさそうと検討する。
どちらにせよ受けるしかない状況なので、言い訳の部類に入るだろうが、納得出来るレベルかどうかは考えないと精神が落ち着かない。
「で、受けるってことでいいんだよね?」
「……状況的に受けるしかないんだろうな」
少女はにぱっと笑いながら
「それじゃ、契約成立ってことで!!」
と言って手のひらをこちらに向けてきた。
そうすると手のひらから真っ赤な光が溢れてこちらを照らし出す。
その瞬間
「あづっ!!!」
左手首に熱く痛みが走り出す。
痛みは一瞬であったが、いきなりな展開に声が漏れた。
光が収まり痛みを走った左手首を見てみると、そこには腕時計を付けたように手首一周する真っ赤な刺青のようなものが掘り込まれていた。
「ではでは、簡単だけどその能力について説明するね!!」
よしよしと上手く行ったと言う表情を見せながら少女は話をしてきた。
「能力?」
そう言えば、最初に能力を与えるとかどうかと言っていたが……
「そ!! 簡単にハーレムを作れるように君には素晴らしい能力が与えられたんだ!!」
ドヤっと少女はそう伝えてくる。
能力……俗に言うチートだろうか。
「その能力を使うのは簡単!! 相手を左手の人差し指で1分指して相手のフルネームを言って……」
そう言って、少女はこちらを指差す
「相手から返事があるとなんと!! 何でも言うことを聞いてくれるのです!!」
ばーんと指差し銃でこちらを撃ち抜く表現をして言ってきた。
……チートだな。
そう思い自身の人差し指を見る。
なんでも言うことを聞くと言うのは、言葉通りなら恐ろしいくらいのアドバンテージだ……。
「まぁ、使うにあたり簡単な注意事項は必要なんだけど、これは転生したあとに説明されるから……(多分」
ボソっとちょっと不吉なことを言ったので、そこを聞こうとする前に少女は話を続けてしまった。
「ではでは、それじゃハーレム作り頑張ってね!!」
そう言って、再度こちらに手のひらをかざしてくる。
今度は青色の光が輝き出し、こちらを照らし出した。
そうすると自身の体全体が薄くなるように消え始めてきた。
展開が早過ぎて、戸惑うがもはや動き始めてしまったのはどうしようもなさそうだ……。
ならせめて、
「そう言えば、遅れて申し訳ないんだけど、君の名前を教えてもらっても良いかな?」
自分の名前は……
実際、自分の名前が思い出せないと言う状況は、急に叫びたくなるような不安しか湧き上がらず、焦燥感が募っていくのだが、ふと取り乱してもしょうがないと言う一周回った考えに行きつきひとまずは後回しにしようと棚を上げる。
そんな心が吹き荒れた状態ではあったが、相手の少女はこちらの様子に気づく事もなく、
「え? うーん……名前かぁ……」
と悩んでいるそぶりを見せてきた。
名前を教えるのは不都合にあたるのだろうか……?
少女はこちらに手のひらをかざしつつもうーむと悩む姿を見せてくる。
だがそれも一瞬で、
「ま! いっか!!」
と結論を出したみたいだ。
「私の名前はリリーって名前だよ」
ドヤっとそう告げてくる。
「リリー……」
特に記憶にピンとこない名前だった。
……ハズレだったのかな
何かしら刺激になれば良かったのだが、特に都合の良い展開にはならなかったので残念に感じる。
「そ! まぁ次会うのは……いつになるか良く分からないけどね」
てへっと少女はそう言って来た。
転生後、会う事があるのか?
上手く考えがまとまらないまま……自身の身体が消えはじめる。
「それじゃ、ハーレム作り頑張ってね!!!」
最後にリリーはそう言った……。
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「ふうっ……」
手のひらの光を収めて、正面を見るとそこには何も残っていなかった。
「よしっ。転送成功っと」
いえーいと身体を伸ばしつつ辺りを見渡して、指をぱちんと行うと、白い世界が崩れ去る。
崩れ去った世界の後には、まるで実験場のような機械と硝子に覆われた世界が存在した。
ま、実験場そのままなんだけどね。
脳内に突っ込みを入れつつ、出口の方を向きそこから移動を開始した。
「さてさて、今回はどこまで
ありきたりな食糧としての無垢な魂
絶望に染まった魂
絶望に抗いつぶれた魂
絶望を越えた魂
そして……
まぁ、そこまでは行かないにしても少しは美味しく美味しく育ってほしいところではある。
崩壊されるはずの世界にてどこまで深く潜れるだろうか。
ふんふん~と出口の扉を開け移動する。
「楽しみだなぁ~♪」
そうリリーは呟いた。
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