屋上のベンチに横並びに座り持って来ているお弁当をそれぞれつまむ。
日によって並び方は違うがこの日はアリサ、自分、なのは、すずかと続いていた。
「あんたたちって、将来を考えてたりするの?」
そんな中、隣に居たアリサが午前中にあった授業の内容を反芻したかのように問いを投げかけて来た。
「まっ。私は両親が経営している会社を継ごうとは思っているんだけどね!」
と他の人が答える前にそのままアリサは慎ましやかな胸を張って答える。
「うーん。まださすがに将来のことは分からないの……」
「私もそうだねー。機械とか興味がある分野はあるけど、職業としてはまだ分からないかな」
と隣にいたなのはがにゃははと、その奥にいたすずかがあごに指を置きつつ、うーんと言いながら答える。
その結果が不満だったのか、両名の方を見て、むーとした表情を出して来た。
「なのはは翠屋と道場もあるんでしょ。そう言えば
「にゃはは。うん。まだやってるよー。お兄ちゃんとお姉ちゃんには全然追い付けないから大変なの……」
けど、少しずつ走れる距離が伸びているから楽しいの! となのはは言葉を伝える。
「ずっと続けているなんてあんたもタフよねぇ。もしかして……道場を継ぎたいの?」
「ううん。お兄ちゃん、お姉ちゃんには全然かなわないからさすがに……なの」
「ふーん。それじゃ、翠屋の方を継いだりしないの?」
うーん。となのはは悩んだ姿を見せる。
最終的には「お料理のお勉強もしているけど、まだよく分からないの」と言う形で話が終了した。
「それじゃ、あんたはどうなの?」
とこちらに指をさして聞いて来た。
んー。と悩んでいる振りをしてどう答えたもんかなと考えていると、
「あんたには。怖い思いもさせちゃったし……」
そうアリサは言ってちょっと間を開けた後、そっぽを向きながら言葉を続ける。
「もしそれがトラウマになっていたら大変だし……。その時には継いだ私の会社で雇ってあげてもいいわよ!」
と言って来た。
なるほど。これを伝えたかったんだなと考えを巡らせる。
いつも真ん中に座りたがる性格のアリサが端の方に座って来たのはこれを言いたかったのかと推測する。
授業を聞いてピンと来たのだろう。そして何故自分へその言葉を伝えたかったのかを考える。
恐らくは吊り橋効果もあったのだろう。
あの現場にて経験したことは恐怖しかなかっただろうし、その中で二人一緒にいたことは彼女にとって安心したことだろう。
それが自分への印象を高く評価してくれたのではないかと思う。
恋心という存在ではなく、元々意識にいた人が切っ掛けを伴い気になる人に変化した感じかな。
好意自体はもちろん嬉しい。ただ、頭の中では規定の路線を保てていることに安心する。
いざというときには利用する覚悟をする必要があるし、その時に容易にする準備は常に必要だ。
まぁ、子供心というのは移ろいやすいものでもあるし、この一時高まった気持ちは弱くなるだろうと考える。
あくまで仲良くのスタンスを崩さなければ、その後、気持ちも落ち着くだろうと思う。
あとは、アリサ本人が「迷惑を掛けた分を恩で返してやる!!」と男気溢れる行動をした可能性はあるが、まぁ、この年齢からそこまで責任を持った行動が出来るのは男気が溢れすぎてるし、そこまで考慮する必要は無いかと判断した。
なので、「ありがとう。もしお願いしたくなったらその時はよろしくね」と返事を無難に返した。
アリサが思った通りの返答ではなかったのか、ちょっとこちらをジト目で見た。
それでも伝えたことに満足したのか顔を照れたようにフン! とまたそっぽをむいてお弁当を食べることを再開する。
それを気まぐれな猫のようだなぁ。と愛玩的な動物を見る気持ちを持って優しくアリサを見つめていると、
パキッ
と小さく音が後ろの方から聞こえてきた。
おや? と思い、なのは側の方を見てみるとなのははこちらを笑顔で見てきた。
ふと、弁当箱を見てみると食べ終わったのか蓋は閉じている。
「どうしたの?」
となのはが笑顔で聞いてくる。
「いま、なにか音が聞こえなかった?」
なのはは、首をフルフルと振って「特になにも聞こえなかった」と言った風に伝えてくる。
んー。気のせいだったのかなと思い、すずかの方を見てみるとすずかも笑顔のままこちらを見てきた。
「そろそろ、食べちゃわないと時間が来ちゃうわよ」
すずかにも聞くか悩んでいたが、その前にアリサがこちらを急かしてくる。
まぁ、気のせいだったのだろう。と思いそのままご飯を食べて午後への時間を過ごすのであった。
__
……今の生存状況を確認してリリーはちょっと低いなと思った。
今回のグループも0の可能性が十分あり得ると思い残念がる。
なかなか思い通りに行かないものだとちょっとむーとした表情になってしまった。
これからなのだ。これから各々の世界にて各々の物語が少しずつ開始される。
創造され観測していた世界、幼いころに想像していたような世界、夢に見ていたような世界
そんな世界に行きたいと夢を見つつも時と共に忘れていた世界が改めて繰り広げられていくのは、それぞれが己の心を満たす世界のはずだ。
まぁ、全てが破滅に向かい続けるんだけどね……。
と言う突っ込みはさておきひとまず様子は続いてみていく必要があるため、そのまま観測を継続する。
その中でリリーは思う。
世界を救い英雄となった世界で欲望の限りをつくし破滅するのか。
世界を救うために抗い自滅して絶望するのか。
世界が破滅するその時まで何もせず悲観し恐怖に怯えるのか。
また、己が破滅するその時まで欲望の限りをつくし限りない性欲に溺れるのか。
傲慢、情欲、恐怖、悲観、絶望、憤怒、そのそれぞれの強い感情は無垢なる魂を震わせ染まる。
これからなのだ。これから起こりうる事象と欲と経験を
そこで力尽きたとしてもこちらは損しないし、もしこの経験を乗り越えられることが出来るのなら欲しいものへと一つ近づく。
まぁ、全部破裂しちゃって0になったらそれはそれで美味しく調理しなきゃね。と想像を膨らませていった。
にこやかな笑顔を見せ、リリーと自ら呼んだその存在はそのまま状況を見続けるのであった……。
__
ぼーっと授業を受けつつ考える。
年齢的にも1期目、俗に言う無印編が開始される時期だ。
アリサの誘拐事件が終わったあと、そのあとは大きな事件はなく無事に過ごすことが出来ている。
とは言え、別途な意味で様々なことは起こっているが…………それはちょっと割愛したいと考え、ひとまず棚にあげた。
ストーリー内容を簡単にまとめると
高町なのはが魔法と言う存在に出会い、ジュエルシードと呼ばれるロストロギアを巡りフェイト・テスタロッサと戦う。
最終的に二人は友達になるお話だ。
ただ、それに当たり数々の戦いやそれぞれの目的が存在する。
そこで考える。
今回のストーリーで危険なポイントは恐らくジュエルシードとプレシア・テスタロッサによって引き起こされる次元断層と言う災害だろう。
あの存在は世界がヤバイ時に失敗すると言っていた。
だけど、今回で言えば次元断層が起こり得ると言う内容であるとして、そのタイミングや失敗の原因に関しては、現段階でこちらは一切分からない。
もし、ジュエルシードを事前に回収した場合、どこかのタイミングでプレシア・テスタロッサが勝手に動き暴発されることも十分にありえる。
そうなると災害が発生しそうなポイントが不明になってしまい何も出来ず自滅と言うこともあり得るため、やはりそのポイントを事前に知っている所に合わせた方が無難だろうと考える。
自分という存在がある以上、ストーリーを完全になぞる事は出来ないがそれでも原作通りに近いようにして行った方がやはりその原因も判断しやすいと考える。
ただそうなると色々と問題も出てくる。
ユーノ・スクライア
レイジングハート
この辺りはなのはとの絡みが多いはずである。そして催眠が恐らく効かないと推測される。
ユーノは男性であるし、レイジングハートはインテリジェントシステムと言う名のAIだったはずだ。
確か……女性的な声であったはずだけど、それだけで使えるかと言われると正直疑問である。
まぁ、それに伴う継続対応を考えてみても……効かないを前提に考えた方がいい。
で、そうなってくると困るのが継続対応である。
どうしてもなのはの側にいることが多く、且つなのはが自主的に動いたとしても怪しまれる機会が多くなる。
レイジングハートにバレた時もペナルティがあるかは分からないが、試すのも危険だろう。
また、レイジングハート自身が動けなくてもその後のメンテナンスなど何処かで漏れる可能性はあり得るので、結局はここにもバレずに持っていく必要がある。
なので、最低でもこちらの存在を自然に溶け込ませることが出来る。理想としては
まぁ、どちらにせよこれはなのはが魔法と言う環境に触れない限り設定が難しいので、次へ考えを進める。
フェイト・テスタロッサ陣営とアースラ陣営だが、こちらは正直進行していかないと想定が立てづらい。
魔力の有無の件もあるし最初から絡めるかどうかも不明だ。
究極のところ、プレシア・テスタロッサへの催眠対応が出来れば今回の問題自体はある意味解決すると推測されるが、まず最初の段階からそこまで辿り着くこと自体、どう考えても難しいだろう。
フェイトからプレシアといった形で組む必要があるが、いきなりフェイトに催眠をかけて連れて行ったとしても余裕で怪しまれて対応されるのは間違いない。
向こうの攻撃を受けても終了だし、捕まって動けなくなったりすると時間経過のペナルティ発動で終了する。
怪しまれてフェイトを調べられたりでもしたらそれでも終了だ。
まぁ、もし仮に全て上手く出来たとしても今度はアースラ陣営との対決になり得るし、次のストーリーにて対応が破綻して終了するだろう。後を考えない対応としても無理すぎるしこれは現段階では切り捨てるしかない。
結局のところストーリーを着実に進行させていくしかないと言う結果に戻るため、いつもの通り情報を集めていくしか無いかと考えるのであった。
そうしてその時が近づき魔法少女リリカルなのはとしての幕が上がる。