フェイトと一緒に家に入る。
家の前に居たフェイトを見てあまりにも寂しくなっている顔、そして儚くも健気に感じたその雰囲気を感じてしまったので、衝動のままにそれらの解消へ向けて行動を行ってしまったが、これは反省すべき点も多いだろう。
本来は念のためバルディッシュの有無を確認すべきだと思うし、周りが居ないとは言え短慮に行動してしまった所は反省すべきだと思う。
家の中で移動中もずっと引っ付いているフェイトの頭を優しく撫でても特に離れる行動も無いので結果的には問題なかったが後々それが致命傷になる可能性もあるので、今後は注意すべきだと思う。
ただ、正直、個人的には衝動のままに行動したのは後悔していない。
あの状況で冷静な対応をするのは自分自身に嫌気が差しそうである。勿論、必要に応じて時には突き放す行動もしないといけないのは理解出来ているし、その覚悟もあるつもりだ。
しかし、フェイト自身はまだ甘えたい年頃でもあるのだ。そこまで危険が無い中で、それをある意味突き放す行動を行うのは出来なかったのだと思っている。
まぁ……もう少し上手く行動出来るようにしたいと思ってはいるので、心をコントロール出来るよう改めて気合を入れ直すのであった。
居間に到着してもフェイトはずっとこちらの体にぴったりとくっ付いている。
常に体が触れている状況はフェイトのその暖かい体温を感じられてしまう。
そしてフェイトの顔はずっとこちらの体に埋めるかのようにピタッと吸い付いていた。
ひとまず「座るよ」と声を掛けて一緒に居間のソファに座った。
フェイトは顔を埋めたままでも問題なく一緒に座ったのを見て器用なものだなぁ……。と少し謎の感動が出てしまった。
座ったままフェイトの頭をよしよしという感じで撫で続ける。そして時折、「大丈夫だよ。フェイト」と何が大丈夫だかよく分からないが、とにかく励ましの言葉を伝えて落ち着くまで待ち続けた。
どのくらい時間が経ったのだろうか……。そろそろ引っ付いている腕とかも正座を続けていたように血流が妨げられ、あの痺れるような感覚を引き起こしそうである。
しかし、無理に引き剥がすことも出来ないので落ち着く様子を見るまでは自由にさせ続けるつもりであった。
そこから余り時間は掛からずしがみ付いていた力が弱まり、フェイトはゆっくりと顔を起こしてこちらを見てくるのであった。
顔をあげたフェイトを改めてじっと見つめてみる。
先ほどとは変わって顔の血色がしっかりと戻り悲しげな印象がなくなっているように見える。恐らくは匂いを嗅いで安心したのであろう。
こういうと変態っぽく感じてしまうが……それはともかく気持ちが戻ってきたのを確認出来て一安心である。
儚げな印象や悲しみの表情は消え失せ、揺り籠で安心している子供のように無垢な笑顔をこちらに見せてくる。
そして少しずつ潤み始めているその瞳は何かを訴えているようにも感じられた。
どうしたものかと考えていたが、フェイトはこちらが何も動かないことに痺れを切らしたのか改めて自分の肩の部分へ顔を預ける。
顔は横向きになり、自分の首筋の部分にフェイトの吐息がくすぐるようにかかってくる。
それはフェイトを抱っこをしている感覚になる。更にフェイトの身体の香りがこちらに強く感じられてしまうのだ。
その少女の蕩けるような甘い香りは強く抱きしめたい衝動を引き起こすが流石に自重すべきであろうと考え「フェイト。落ち着いたかい?」と声をかける。
フェイトはそのままの姿勢でコクリと頭を動かしてくれる。
ひとまず色々とこのままの姿勢では大変なことになるので、少し体を離そうとフェイトを優しく引き離そうとした。
その瞬間、フェイトは嫌がるかの如くこちらに抱きついていた腕や顔を更に強くしてきた。
そしてイヤイヤと言うかの如く顔をこちらの体に擦り付けてくる。
ぐえっと心の中で声が出てしまうくらいその力は強くそれを引き剥がそうと思ったら一苦労するであろう事は容易に分かってしまった。
ただ、さらに強く抱きしめて来ているので、よりフェイトの匂いは強くなる。
一体、匂いで安心するのはどっちなんだろうと言わんばかりにフェイトの香りに酔いそうになる。
本当に我慢が効かなくなる前に話を進めようと思い、とりあえずそのままの格好で話をするのであった。
「何があったの?」とフェイトに問う。
フェイトは小さく呟くように「アルフが居なくなっちゃった……」とこちらに伝え、ぎゅっとこちらに更に抱きつく力を強くしてきた。
アルフが居なくなってやはり心が追い込まれていたのであろう。再度、空気が悲しみに包まれそうになる前に、フェイトの柔らかくしっとりと濡れたような金色の髪を手で撫で上げてあげる。
フェイトはその手を嬉しそうに受け入れてくれる。まるで猫のように目を細めるその仕草は、こちらの手の感触を楽しんでいるようにも感じられた。
そして、
「大丈夫だよ。アルフはフェイトを決して見捨てたりなんかしていない」
「アルフは居なくなった訳ではなく、今、こっちからお願いをして動いて貰っているよ」
と髪を撫であげながら伝える。
まずはアルフがちゃんと居ることを伝え、こちらの意思で動いて貰っている趣旨を伝えることでアルフは裏切っていないフォローを入れておく。
元々心優しい少女でもあるフェイトはフォローが無くてもアルフと再会して問題なく再度仲良くなるであろう事は想像に難しく無いのだが、それでもフォローを入れておいた方がフェイトの心の負担も減るだろうと考えて伝えたのであった。
フェイトはその言葉を聞き、ゆっくりと顔をこちらの正面に移動させる。
先ほどの悲しみを表現したかのように瞳はより潤いを増してはいたが、こちらの言葉を聞いて「ホント?」と首を傾げながらこちらに聞くような表情を浮かべてくる。
それを見て優しく笑顔を向けて本当だよと伝える。
するとフェイトは「良かった……」とにへらっと言う感じで表情を崩して笑顔を浮かべた。
それは本当に無垢でありつつもその年齢にあった少女の笑顔である。
いつも凛とした表情とは別な面を見せてくるフェイトは新しい魅力をどんどんこちらに魅せてくれるのだ。
その魅力にやられたかのように、ついこちらからもフェイトを抱きしめてしまう。
フェイトは笑顔でその行為を無条件で受けて入れてくれるのであった。
そして、しばらく抱き合っていたがさすがに頭が冷静になってくる。
ゆっくりとこちらから抱きしめていた力を弱め、フェイトへ向き直る。
フェイトは若干苦しかったのか顔が少し赤くなっているようにも感じられる。そして窮屈な状態から解放されたためか息を大きく吸い込むようにしていた。
少し強くしすぎたかと改めて反省しつつ、お互いに落ち着いたので本来の道筋に戻すべく話を行う。
「フェイト。僕からお願いがあるんだけど、聞いてくれるかな?」
そう告げるとフェイトは一瞬目をパチクリさせた後、いつもの可愛い笑顔をこちらに向けて
「うん! 任せて!」
と返事をしてくれるのであった。
自重する心は鍛えるべきだな……。と今後も何回も思いそうな事項を考えつつ改めて気を引き締めた。
本日はなのは達と一緒にアリサの家にて遊ぶ予定である。
そしてなのはには事前にアルフの存在っぽいのが居る旨を伝えていた。
アースラ側にそれを報告してもらうためである。
なのは側には恐らく戦闘があり得るためアースラ側からの捕捉がそれなりにされているだろうが、自分が知っている事実を報告しておいた方が無難であるためそれをお願いする。
もちろん、自分側の捕捉はリンディさんにお願いしている事とそもそもデバイスや魔力が殆どが無いので労力をかけないように監視対象外として動いて貰っている。
ただ、今回、偶然ではあるが発見してしまった事実が出来てしまったため今後は注意するべきではあるが……何とか誤魔化しつつ対応していくしかないかと割り切った。
ちなみになのはにアルフと思われる存在の旨を話した際、やたらなのはが不機嫌になってしまいそのご機嫌取りが大変だった……。
恐らく勝手にフェイトに繋がる手がかりを見つけてしまった事が不満だったのだろうと考えているが、中々機嫌が戻らない。
そのため、今度一緒に特訓をする旨を約束させられてしまった。それ自体は別に構わないのだけど……なのはの特訓は魔法メインなので自分が役に立てるか非常に不安である。
しかし、約束をした瞬間になのはの機嫌が戻り先ほどの不機嫌な様子は演技のようにも感じられてしまった……。一先ずは機嫌が戻ったことでよしとしようと心を落ち着けさせる。
そうしてアリサの家に向かいアルフとなのは達が会う状況になった。
ユーノがフォローする形で、なのはとアルフの間を取り持ち会話を進めさせる。
アルフにはまずそちらの状況を聞かれたらフェイトの状況を説明して助けを求めるように伝えてある。
いきなり素直に寝返れと言うと何の理由もなく寝返る可能性もあり、そうなるとアースラ側はあからさまに不自然だと感じるだろう。
その為、アルフもちゃんと理由を持って寝返る対応をしておく必要がある。
この辺りも大丈夫ではあると思ってはいたが、何があるか分からないので念のための対応であった。
恐らく念話で会話を繰り広げているであろう。……そろそろ自分も念話に参加出来るようにしておかないといけないなと思うが、解決方法があるのか今度リンディさんに聞いてみようと思う。
そうして改めてフェイトが主軸ではなく、プレシア・テスタロッサが大元であると伝えられた。
アースラ側はリンディさんの指示のもと、ジュエルシードの回収からプレシア・テスタロッサの捕縛へと対応が変更される。
どちらにしてもアースラに攻撃してきた事実で捕縛する事は可能であると判断もあってのことであった。
なのはにどうしたい? と言う形で質問を行う。なのはは事情を聞いた結果なのか「フェイトちゃんともう一度ちゃんとお話ししたい」と言う主人公にあるべき熱さを持って参加を決意していた。
そうして、場所はあの二人がお互い膨大な魔力を伴い向き合っていた、海が見える公園。
海鳴臨海公園にて、なのはとフェイトが再度向き合うのであった。