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お父さんが倒れた。
お兄ちゃんが言うには、ボディガードと言うお仕事で大変な怪我をしたらしい。
詳しいことは私には分からないけど、お父さんが大変な状態ということは分かった。
そこからお家の状況は大変だった……。
お父さんの看病、お店を開くお仕事、お母さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんもみんなみんな忙しく大変そうだった。
私も手伝えることは無いかお兄ちゃんに聞いたけど、頭を撫でられながらやんわりと断られてしまった。
まだ子供だからと言う焦りを抱え日々を過ごす。
お父さんの様子が安定するまではどんどん家庭も暗くなっていった。
夜中ふと起きた時に居間の電気がついていたので、見てみるとお母さんが一人で物思いにふけっている姿を見た。
子供ながらも声を掛ける空気じゃなかったので、そのまま部屋に戻りベッドに飛び込む。
夢を見る。
お父さんが居て、お母さんが居て、お兄ちゃんが居て、お姉ちゃんが居て私が居てみんなで笑いながらお話ししている夢だ。
私もみんなに構って構ってと飛びついたりして頭を撫でられる。
みんなの笑顔が嬉しかった。そして、私も嬉しかった。
目が覚める。
現実は変わらないままを実感する。
ホントは遊んで欲しかった。構って欲しかった。
けど、みんなが大変なのに私がわがままを言うわけにはいかないと心に決める。
そうして日々が過ぎる。
切っ掛けはお父さんの変化だった。峠を越したらしいとお兄ちゃんが言っていた。
内容はよく分からなかったが、お父さんの様子が良くなり始めたらしい。
久しぶりに家族のホッとした笑顔を見た。
私も笑顔を出した。
お父さんはまだ病院にいるけど、もう少しだ! と家族全員が頑張る。
私もわがままを言わず頑張らなきゃと考えた。
とは言っても私はすることも無いので、いい子でいるために今日も公園にいた。
家にいてもみんなが気を使ってしまうだろうから遊んでいるふりをする為、公園にいる。
けど、公園で他の子供達と一緒に遊ぶことは出来なかった。
要するに友達の作り方が分からなかった。
普通に一緒に遊べば良いかもと考えるけど、どうしても声をかける勇気を出せなかった。
もし、喧嘩になったらどうしよう。みんなに迷惑かけちゃう。
迷惑を掛ける……。
いい子である為には、みんなに迷惑をかける訳にはいかない。
ここに座っていれば何もしなくても迷惑をかけることは無い。
そう恐らく後に考えればそれは言い訳だろうが、その時はどうしても私は勇気を持てなかった。
寂しいなぁ……。
今日も私は空を見る。
今日も同じ日々が終わるんだろうなとちょっと大人びた考えで空を見る。
そんな時に声が聞こえた。
「ねぇ、君。ボーッとしているけど大丈夫かい?」
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声を掛けると高町なのはは、こちらをぱちくりとした瞳でこっちを見てきた。
「えっ? わ、私のこと?」
わたわたとそう喋ってこっちを見てくる。
……やっぱり近くで見てみてもやはり可愛いな。
子供ながらとは言え、アニメキャラ特有なのか普通に見ても可愛さは際立つ。
「そうだよ。何かボーっとしているから悩んでいるのかな? と思って声をかけてみたんだ」
子供同士の接触の仕方などもはや記憶の彼方だし、子供同士で仲良くなるなんてまずは喋って遊ぶしか思いつかないから、
それを実践すべく会話を続ける。
「えーっと……」
もじもじと高町なのはは言葉を濁し始める。
この時期は家族のゴタゴタで確か無鉄砲さはなりを潜めているはず。
恐らくは極度の人見知り状態なのだろう。
大人ならゆっくりと考えを聞き出そうとするだろうし、根気よく話を伺おうとするだろうが、
今も昔も、大人が子供に声を掛けるのは中々怪しさ爆発なので、よっぽどのことがない限りそう言うことは無いだろう。
まぁ、見た目は子供同士なので、そう言った気遣いは不要なのだが。
こう言った時は多少強引に行っても大丈夫かな。
「特に何も無いんだったら良かった。それじゃ、一緒に遊ばない? ここは初めて来たからよく分からないんだ」
無邪気を装いつつ、教えて教えて攻撃を仕掛ける。
「えっ……と……」
目をぐるぐるさせつつ混乱した表情でこちらをみてくる。
そうして見ているとちょっと落ち着いた様子になって来たので再度声を掛ける。
「ん? どうしたの?」
「私もあまりここで遊んだことが無いからよく分からないの……」
怒られる! と寂しげに見える子犬のような表情でこちらをみてくる。
優しく優しくけど、強引にと言う大人なら無駄に高いハードルを掲げつつ、子供ながらの無邪気で話を続ける。
「そうなんだー。それじゃあさ。一緒にこの公園を調べてみようよ!!」
柔らかく笑顔を向けならが、彼女の手をとる。
「えっ……?」
「ほらほらーそれじゃ、あっちに行ってみよー!!」
そう言って、高町なのはを連れ出した。
しばらく彼女と話をしながら、遊具を見つけ一緒に遊びつつ時間を過ごす。
その中で、改めて分かったことは家族が大変だと言うことが本人から聞くことができた。
だから迷惑にならないようにこの公園にいたと言うことも。
予想の展開通りなので、まずはその孤独感から埋め合わせていこう。
そう思いながらもやはり人と一緒に遊ぶと言う行為はすごく楽しい。
こっちはこっちでやはり飢えていたんだろうなと客観的に分析しつつ一緒に遊び続けた。
そうしてさらに時間が経過すると空も夕暮れになり、
「あ……もう夕方だ……そろそろお家に帰らないと……」
ちょっと寂しそうに彼女が呟いた。
「そっかー。それじゃ今日はここまでだね。明日もここにいるの?」
と声を掛けると彼女は
「え……? 明日も遊んでくれるの……?」
寂しさから期待がちょっと含まれた瞳を揺らして問いかけてきた。
「もちろんだよ! まだまだ全然調べ足りないし、明日も探索だー!!」
そう無邪気につげてあげる。
「分かった!! 明日もここにくるね!!」
と彼女は嬉しそうにこちらをみてきた。
そう言えば……
「そう言えば……僕の名前は鏡音奏って言うんだけど、君の名前を教えてもらっていいかな?」
「あ……そうだったね。うん。私の名前は高町なのはだよ!」
「そっかー。これで僕たちは友達同士だな! 改めてよろしくね!!」
そう言って手を出す。
彼女は目をぱちくりさせながらこっちを見て……理解が及んだのか
「うん!!」
とても綺麗な笑顔で手を差し出してきた。
高町なのはと別れて家に向かいながら考える。
とりあえず最初の接触は問題なくいけたと思う。
親御さんの復帰はいつになるかはまだ分からないが、しばらくは遊べる関係は維持出来るだろう。
復帰後に向こうに遊びに行けるくらいの仲になればその後の動きが楽になるはず。
あとは、どの辺りで催眠をかけるかだが、しばらくは遊んで本人も含め警戒心を取り除く必要がある。
恐らくだが、今日の出来事は家族にも話をするだろう。
確かあの兄妹は度を越した妹博愛主義者だったはず……。
まぁ、そうでなくても親心としてどう言った友達なのかは気になるはずだ。
そう考えると何回か様子を見にくると考えられる。
戦闘民族と考えれば、向こうが見ていることなどこっちには察知出来ないのは想像に難しくなく、隙を生むにはこっちは無害ですよー。と言った状況を作り上げる必要がある。
焦ってはいけないと気を引き締めつつ家についた。
そうして1週間……2週間と遊ぶ日数を重ねて行き、公園以外にも少し遊ぶ場所も増やして行った。
その中で恐らくは向こうの視察もあったと思うが、こうやって遊ぶことがおとがめ無しの状態っぽいので、問題は無いだろうと判断されたと信じたい。
ただ、こうやって高町なのはと接するとやはり魅力が強いことを実感する。
屈託無く笑う笑顔もそうだし、
ちょっとふてくされる顔、
正義感に満ち溢れた顔、
失敗したときに見せる恥ずかしげな顔、
コロコロと変わる表情も含め魅力を押し上げている。
物語の主人公であると言う事実を抜いてもやはり抜き出ていると思ってしまう。
なるべくしてなったと。
まぁ、要するに可愛い! と思いつつそんな思春期特有の感情は今はあってはならないので封をしつつ、無邪気に遊ぶことを継続した。
そうして日々を積み上げていったある日。
「お父さんが退院するの!!」
そう嬉しそうになのはが告げてきた。
一つのタイミングがきた。
そう心の中で冷静に判断しつつ話を進めようと考える。
良かった! と声を上げつつ祝福すると、
「それでね。奏くんのことをお父さんにお話ししたらお礼をしたいから今度家に連れてきなさいって……」
ちょっと恥ずかしい表情をしながらチラチラとこっちを見つつ言ってきた。
……?
お礼……? 娘に何しとんじゃ我! と言うお礼参り?
将来的には確かにバレたら何しとんじゃいと刺されてもしょうがない可能性が大だが、
現段階では何もしていないはずなので、今は何も言われないはず。
そう考えていたが、ふとシスコンという言葉を思い出す。
あの兄妹は親譲りか……。
恐らくは体のいい言葉で、こちらを呼び出して娘との交流状況を確認するつもりだろう。
さすがにここで断るのは後ろ暗いですと言わんばかりなので、断る選択肢は無い。
ただ、これは逆にチャンスでもある。
特に問題がおきなければ今後、自然に相手側の家にも入ることが出来る。
遊びと言う名目も立てられ両名が個室にいても不自然にならないので、催眠能力の使用がしやすくなる。
そう考えている時間がちょっとあった為か、なのはは若干悲しそうな表情を浮かべたので、慌てて言葉を繰り出す。
「そうなの? それじゃ、今度なのはの家に遊びに行こう! 楽しみだな!!」
そう無邪気に笑ってなのはに告げる。
すると悲しそうな表情から一変嬉しそうな表情を浮かべ
「うん!!」と頷いてくれた。
そうしてなのはの家に伺う日がやってくる。
うーん……やっぱり少し緊張はするな……。
あくまで子供同士とは言え、女性の家に伺うのはこちらとしても身構えてしまう。
気にしすぎとは言え、向こうもこちらを伺う可能性がある以上、色々と注意をしなければならない。
気構えを持ちつつ家のインターフォンを鳴らす。
インターフォンの音が鳴ったあと、少し待っているとパタパタとドアの向こう側から音が聞こえドアが開けられる。
「奏くん!! いらっしゃいなの!!」
と元気いっぱいの笑顔でなのはが向かい入れてくれた。
そのままなのはに手を引っ張られながら、居間に案内されると恐らく父親であろう人物が座っていてこちらを見てきた。
恐らくはあれが高町士郎なのだろう。
知っている知識はあまり無いが、御神真刀流と言う人外の剣術を操った後継者の一人でとにかく強いと言う事。
だけど、今回の怪我で恐らく引退になったはず。
つらつらと考えながらも挨拶を交わす。
「君が、奏君だね。はじめまして。なのはの父親の高町士郎って言うんだ。よろしくね」
そう言って、にこやかにこちらに挨拶をしてきた。
さすがに向こうの経験には及ばないだろうが、表面上はにこやかでもこちらを観察するような気配は感じられる。
見下す感はなさそうなので、恐らくは職業柄そうなのであろう。
「はじめまして。鏡音奏と言います。なのはさんとはよく一緒に遊んでもらっています」
と挨拶を述べるとなのはの方が目をぱちくりしながらこっちを見てきた。
恐らくは改まった言葉使いをしてきた事に驚きを見せたのだろう。
なのはに軽く目配せをして、してやったりの顔をすると、どう言う受け取り方をしたのか知らないが、
しばらくボーっとした後、やんやんと言いながら首を左右に振りはじめた。
いや……どういう受け取り方をしたんだよ……。
なのはの天然っぽいギャグなのか分からない状態を無視しつつ話は続く。
「ちゃんと挨拶出来るんだね。しっかりとした教育をされているのかな?」
探り探り
「そんなことは無いと思います……。お家は普通の家庭ですから。す、少し勉強してみたのですが……」
ちょっと照れ隠しをしつつも、慣れない敬語を使うという無駄に難易度が高い表現を意識して話を進める。
「そうなんだね。いやー中々どうに入った挨拶が出来るものだから、うちのなのはが心配になっちゃったよ」
あはは。と言いつつなのはの頭を撫ではじめた。
なのはは、もうー! と言いたげな表情で父親の方に抗議のような視線を向ける。
お互い仲が良いんだろうなと言うやりとりなので、良好な家庭環境なのだろう。
「あらあら。子供の成長は早いものですよ。気を抜くとあっという間に成長するんだから」
とのんびりな感じで声が聞こえ、奥から母親の高町桃子が現れた。
「はじめまして。なのはの母親の高町桃子です。奏くんよろしくね」
とにこやかな笑顔で声をかけてくれた。
「はじめまして。鏡音奏といいます。よろしくお願いします」
とぺこりと頭を下げる。
「可愛いわねー。うちのなのはと仲良く遊んであげてね」
そう言って頭を撫でてくれた。
恐らく大人になってからそういった撫でられる機会はなかった為、久しぶりに感じる心地いい感覚を味わいながらも話を続けた。
「はいっ!! なのは……さんと一緒に遊んで楽しいです!」
ちょっと背伸びをして、慣れない言葉で伝えようとするのは傍目から見て子供が使う分には微笑ましいものだ。
頭の中で警戒心が少しでも和らげば良いなと考える。
「あらー。ほんと可愛い。今度、喫茶店の方にも来てね。サービスしちゃうから」
と頭を再度撫でてくれた。
「ほんとはね。お兄ちゃんとお姉ちゃんも挨拶したかったんだけど、今日は忙しいので今度紹介するわね」
家族総出で挨拶とか……
結納する訳でもあるまいし……と一人突っ込みを入れるが、よく考えるとどれだけなのはを愛しているのかという事が分かり、ある意味の緊張感をもたらしてくれる。
そんな中、
「もうー。お父さんとお母さんとお話しばっかりしてダメなの!!」
とぷんぷんと怒る表情を見せて、私の部屋にいこっとこちらの手を取りなのはの部屋へと向かった。
あらあらーと桃子さんは見守る表情を見せ、士郎さんはにこやかながらも娘は渡さないよと無駄に対抗心を見せつけるような複雑な顔を見せながらなのはを見送った。
そうしてなのはの部屋に移動して中に入る。
ピンクを基調として、とは言ってもその色は主張せず綺麗に整頓された机とベッドそして中央にはテーブルが置いてある。
やっぱり女の子の部屋なんだな。
と考えつつ、テーブルを挟みお互い中央に座り話をしはじめた。
そうして、しばらく話をしていて途中、お茶とかよくある親御さんの差し込みのイベントを入れ、一息つける時間帯になってきた。
ある意味、チャンスなんだよな。
本当はもう何回かなのはの家に遊びに行き、警戒心をさらに落としておいた方が安全だということは、理解はしている。
だけど、今まで試した事が無い能力を使ってみたい心情、使ってもお試し的な感覚ですぐ戻すようにすれば問題ないだろう的に軽く考え実施しようと判断してしまった。
これがあまりにも軽率な判断だったと言うことも知らずに。