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「50……60…………70っ」
金属がぶつかる音が晴天の青空に響きわたる。
場所的には公園の高台の一区間であり、そういった音が頻繁に響くには不自然な場所でもある。
だが早朝の今であれば、場所的にも人通りも無く大きな問題はなかった。
「80……90…………100…………」
指先に意識を集中し続ける。
意識が集中した指先から空間を伝って現れているのは私自身が生み出したピンク色の魔力。
大きさは私の握りこぶし1個分よりも少し大きいくらいで、形はまあるいボール状である。
それが私が思い浮かべているイメージに沿って宙に舞い、練習目標に対してぶつかり続けている。
練習目標は落ちていた空き缶である。
ごみのポイ捨てはご法度なのと憤りを感じつつも……リサイクルと言う名を借りて練習相手として活用している。
それがボール状の魔力がぶつかり、衝撃を生み出していった。
結果として、空き缶は宙に舞い続けている。
その光景は普通で考えれば、実行出来るはずのない事象。
すなわち魔法の実現である。
私、高町なのはは、少し前は普通の少女であった。
未来を妄想で固め、夢を膨らませ、望んだ将来を渇望する……欲しがる子供だった。
それがある日を境に変わったのだ。
魔法との出会い。
それとの出会い自体はとても大きな出来事であるのは間違いではないが、私自身の心としては
それはあくまで
だけど、ずっともやもやしていた道がそれで開けるのが分かったのだ。
「奏くんとの二人きりの世界」
彼と出会い芽吹いたその心。そしてそれはすくすくと成長しており、どこまでも湧き続けていくこの気持ち。
それを改めて自身の口で発言する事で、私の脳内が更に活性化されていくのだった。
どんどんと血液が熱くなるように感じられ、顔に熱が上がっていくのがわかる。
そして心もドクドクと弾むのだ。その心地良さは想像だけでも私の身をどこまでも焦がし続ける。
更に……お姉ちゃんから聞いた丹田と呼ばれる位置。お腹の辺りもムズムズとしたような感じで疼いてしまう。
お姉ちゃんが言うには、ここで力……氣と呼ばれる精神的な力を溜めるという術理? のようなことを教えてもらった。
ただ、その教えの言葉は、まるでお兄ちゃんのような言葉で教えてもらったので……多分、お兄ちゃんの受け売りなの……と思っている。
そして……私の場合は教えて貰った場所よりも少しだけ場所が違うのだ。
熱を持ち疼き続ける場所は、丹田よりも更に下の部分である……。
とは言え、場所的にそんな相違は無いため、細かい位置は誰にも相談はしていない。
恐らくは、そこが私の『丹田』と呼べる位置だったのだろうと思っている。
実際……その疼きは、私に溢れ続ける想いの力を増し続けているのだから。
……奏くんが近くに居ると……その力が激しく溢れ続けて暴走しちゃいそうになるのはたまにキズである。
しかし……私は世界の強さと言うのを教えられた。
ほんの少しの力だけでは、私の思い通りの世界は簡単に破壊されてしまう。
力無き自分が破れ、彼が他の誰かと一緒の世界を作られてしまう。と言う想像しただけで、私の脳内は恐怖と憤怒で塗りつぶされてしまう。
だけど、それは自分の未熟が招いてしまう出来事なのだ。
技が足りない。
知識が足りない。
財が足りない。
全てを退けられる力が足りない。
それらは、決して心だけでは乗り越えられないものであるということを経験してしまった。
だからこそ私は、
技術を学ぶ。
知識を学ぶ。
お金の稼ぎ方を経験する。
それらも含めて……私と彼の道を作る力を身につけるのだ。
そして私は今、魔法の練習をしている。
心がもっともっとと貪欲に求め続けていた。
想像を力に変え、指先よりも先端のイメージを絆ぐ。
そして細やかな糸を紡ぎ、沢山の針の穴を通すようなイメージを持って、その動きを一分違わずに実現出来るように腕を磨く。
まぁ…………けどぉ……もっとずっと永遠に磨きたいものはぁ…………やっぱりお口でぇ……
一瞬過ぎった光景は、想像によって補強され、お腹から感じる疼きの力を一気に強くなってしまう……。
ぽっ♡
あっ。いけない。そう思った時には遅かった。
空中に浮かび続けていた空き缶は重力に従い、地面へと落下する。
カランと鉄が地面とぶつかる音が響き、未熟な自分を知らしめるかのような気がした。
「レイジングハート。何回目だった?」
「312回です」
むー。圧倒的に足りない……。
アクセルシュートの精密射撃の練習が、たった300回程度で集中力を乱してしまうのはまだまだ未熟すぎる。
目指すは「永遠」。インフィニティ? である。意識せずとも反射的に「打ちたい所へ」どんな道も素通りして「ピンポイントに狙い撃つ」
それが出来て、初めて
それを考えていた時、ふと思ってしまう。
永遠と言う言葉は、やっぱりとても素晴らしい。
永遠。
ずっと。いつまでも。どこまでも。恒久的にある果ての果て。
入口も出口も無い、ずっとそこにある世界。
そこで
彼も私もお互いに甘美だろう。幸福だろう。と私の心は弾み続ける。
だから私はそれが実現出来る力をつけるため、むん。と心を引き締めて練習を続けていった。
……
…………
………………
………………………………
そろそろお時間が近づいてきているの。
丹田から生まれたキュンと感じた疼きの力。
ある意味で私のお腹時計が次の行動のお時間を告げてくれた。
世間のお時間的には早朝と呼べる時間である。
いそいそと身体についている汗を拭う。
そして、レイジングハートにお願いして簡易的風を生み出して貰い全体を乾かしていく。
更にアリサちゃんやすずかちゃんに教えて貰い、最近興味が生まれた石鹸の良い匂いがするボディミスト? を軽くつけた。
これもバランスが重要であるとアリサちゃんとすずかちゃんが熱弁していたので、注意しながら行っていく。
これらの行為は絶対に行わないといけないことである。
もし……匂いを嗅がれたときに汗臭いと言われたら……本気で宇宙まで魂が飛んで卒倒しちゃうので、きちんと身なりを整えるのだ。
そして匂いでも彼に私のイメージ……印象を持ってもらうことも重要である。
そうして準備が完了して、私は次の行動を開始した。
私、高町なのはは、小学3年生。
これから、とてもお楽しみのお時間なの。
気持ちの高ぶりを抑えきれず、私は彼のお家へと駆け出して行くのだった。
もしも……
まだこの時点では、二人きりの世界は永遠で完璧ではないけれど、未完成ながらも
私は……
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「おはよう!! 奏くん♪」
…………終わった……
ようやく終わってくれた……
最近思うことがある。
段々と時間が長くなっているような気がするのだ。
……何が? とは聞かないで欲しい。
朝なのに、精も根も尽き果てたくない。
「おはよう。なのは」
朝の挨拶はマナーである。
どんな状態でも一日の始まりとしては、やはりあるべきであろう。
自分の身はもはや彼女に吸われ尽くされ、食い尽くされた亡骸であろうとも、それはそれ。
それこそ干からびた挨拶などしようものなら、その後が更に大変だ。
看病と言う名の天国……いや……苦悶? が待っている。
干からびた状態から砂になりそうなくらいに献身的に尽くしてくれるのだ。
まぁ……それはさておき彼女の朝の挨拶は普通に行わないといけない。
こっちは朝の彼女の行為は知らない状態を維持しているのだ。
何故? ってこれも聞かないで欲しい。
開き直れらるとそれはそれで非常に厄介なのだ。
羞恥と言う理性のストッパーが無くなれば、無限回廊で転がりはじめた球体のように、ずっと転がるだけになる。
……
やめよう。この辺りは自分で結論を出している話だ。
A's編のストーリーが開始されれば上手く調整していく予定なので、それまで耐える……堪能? すべきである。
最終的に行為事態は止めようとすれば止められるし、自身が快楽の引き際を見間違えなければ大丈夫なのだ。
時々、身体が欲望に正直になりすぎて、溺れる位はご愛嬌である。
なのはは、朝の挨拶を終えて、朝食の準備をするためにキッチンへ向かっていった。
少しずつではあるが、桃子さんから習っているのであろう。
朝食のレパートリーも増えてきている。
だけど、時折、桃子さんの悪戯なのか、それとも彼女の料理を学びはじめた人特有の色々とお試ししたい好奇心なのか分からないが……
微妙に精が付くものが混じっているので注意が必要だ。
娘の教育方針を考え直して欲しいと思わんばかりである。
ちょっと多めのお肉とか朝としては重い程度のものであれば、まだ安心なのだけれど、
「これね。高町家秘伝の調味料なの!!」
とか言って謎の粉をかけられたりする。
どっち側の秘伝? と問い詰めたくなってしまう。
パティシエ側であればマシかもしれない。
戦闘民族側の秘伝であれば……怪しさが爆発である。
何故か食べ終わった後、非常に身体がポカポカを通り越してテンションまで高くなりそうな位に、体全体が熱くなる時もあった。
時にはある一部分だけ集中的に熱を持った時もある。
その時はその時で大変だった。
チラチラと顔を真赤にしつつも視線がそこに集中してくるのだ。
その彼女の仕草がまた劣情を煽ってくる。
しかし……そこに溺れると一方的に絡め取られる。
更に効果があったという実績が、彼女の行動を加速されるのだ。
次の日にも必ず同じものを入れてくる。
量は4倍位で。
それは流石に窘めたが、彼女の行動理念は変わることはない。
実際、健康的には違いないのだ。
食事によって身体の血液の循環をきちんと促し、身体全体へ栄養を届ける。
それは食事によって行われる身体のメンテナンスと言っていいかもしれない。
あわよくばワンチャン何かを狙っているレベルの所なので、子供らしいといえばらしいかもしれない。
……狙っている内容は子供らしくはないけど、と注釈はつくが……。
まぁ……これも朝の事象が離れれば、自然と離れるはずなので、取り敢えず今は凌ごうと思っている。
「今日の朝食は何かな?」
んーっとね。となのはの無邪気で無垢のような声を聞いた後、
「今日は南のお島で取れたお肉を焼いてみたの!!」
お母さんがね。お父さんに食べてもらったときに物凄くお父さんがパワーアップしたんだってと語ってくれた。
そう言われて、テーブルにあったお皿を見てみると、
どう見ても……ヘビ系のお肉? にしか見えない……。
ワンチャン、鰻系統かもしれないと希望を持ちつつも席に座った。
なのはは、じーっとこちらを伺って、はやく食べて♪ はやく食べてなの♪ と視線で訴えかける。
そうして朝食の時間が始まって……終わった。
その後のやり取りは……まぁ……自分の意志の勝利としよう。
そんなこんなもありつつ、お互い学校へ向かう準備を進めていったのだった。
こうして何気ない1日でもあり、これからを見据え下準備も込めた1日がスタートする。