うーん……うーん…………
「…………俺より弱いヤツに会いに行きたい」
「ご主人さま……? 何か言いましたか?」
爽やかな朝? から続く一日はそれはもう爽やかであるはずだった。
しかし、自分の頭の中は考えすぎた結果、バターみたいにトロケてしまっている。
最終的に出てきた内容が先程の言葉であった。
ボソっと呟いた言葉にもきっちり反応してくれるすずかさんはとても淑女であるのだけれど、そこはスルーしてくれればありがたい。
戯言を説明する恥ずかしさは、何時の時代も変わらないからだ。
さて。不審げに見てくるすずかを笑顔で躱しつつ、動く内容を頭に浮かべる。
まず動くべき内容としては、やはり『はやて対策』だろう。
恐らくもう少しすれば夜天の書の覚醒が始まりヴォルケンリッターの復活が始まるはずだ。
もう、復活しているのであれば……色んな意味で難易度も上がってしまうが、まだ無印編が終わったばかりなので、多少は猶予があると思っている。
ヴォルケンリッターの復活後の展開を想定する。
最初は問題無く、家族間の意識が強まるだろう。
はやて自身、家族愛に対して渇望しているため、順調に各人を取り込み不慣れながらも家族の一員として溶け込んでいくはずであった。
だが、その後、はやての病状が悪化する。
その解決策として、悪名高き闇の書としての覚醒を行うのだ。
覚醒するためには、魔法の源である「リンカーコア」の魔力が必要となる。
だが、リンカーコアの魔力を蒐集出来るのは、魔道士一人に対して一回のみであり、そのためヴォルケンリッター達は、奇襲と呼べる形で魔道士を手当たり次第、蒐集を掛けていった。
勿論、捕まっては意味がないので、時空管理局を極力欺く形で進めていく。
だが、とある魔道士と交戦することで、物語がスタートするのであった。
そのとある魔道士が「高町なのは」である。
ひとまずストーリー的にそのままであれば、最初の流れはこんな感じになるはずである。
ストーリー的にも、はやては無印編のフェイトと同様に、本人はどうあれ敵側のポジションとして存在している。
その為、ストーリーが開始されると非常に絡みづらいのも事実であった。
なので、接点を持つならばヴォルケンリッターが出現する前が無難であろう。
だが、ここで問題点がある。
はやては足に障害がありながらも身寄りの存在が無く一人で暮らしている。
何故、そのような状態でも生活が出来るのか?
それは『父の友人』と名乗る存在が支援していたからだ。
その父の友人と名乗る存在は、過去にあった「闇の書」の事件に携わっている人物。
時空管理局提督『ギル・グレアム』
クロノの父親でもあるクライド・ハラオウン。彼は過去にあった闇の書の事件において犠牲となり亡くなっている。
クライド・ハラオウンの上官でもあったギル・グレアムは、闇の書に対して終止符を打つために、はやてを監視……自身の管轄内に入れているのだ。
という訳で、はやてに気軽に接触を行うと間違いなく、その人物も調べられるだろう。
で、もし調査された結果、自分がリンディさんの管轄内、要するに時空管理局側の内側となるため、彼のそぐわない内容であれば間違いなく邪魔が入る。
そして、はやてと接触した目的を探られるだろう。
そうなってくると恐ろしく面倒でもあり、催眠と言うか『何かしている』と怪しまれるだけでも、こちらが一気に不利になる。
相手側はある意味でもエリートであるはずだ。物語的に彼の動きは単調になっていたのかもしれないが、それでもやはりその地位まで行くことが出来るのは基本的能力が高い証拠であろう。
その存在に対して、こちらの事を考えさせる切っ掛けを与えるのは有効な策ではないと考えていた。
とは言え、逆に行動しないと言うのも失策だと思っている。
何故ならただ単に普通にストーリーが進んで行ったら、破綻してしまうからだ。
基本のストーリーを進めつつも、選択肢と言う名の可能性を広めておく必要がある。
そのバランスが非常に面倒であった。
さて、どちらにせよ彼女には間違い無く、催眠下に入ってもらう事が必要だ。
後は、そのタイミングの調整である。
______________
「ねぇ……すずか。お願いがあるんだ」
授業と授業の合間の休憩時間。
人によっては準備等でドタバタするであろう時間の隙間を縫って、さり気なくすずかへ話かける。
二人で軽く会話をしても不自然じゃない感じで、今後の予定を詰めるのだ。
こくりっ。
すずかは、こちらが小さく発した声に対しての返事として軽く頷いてくれる。
そして優しい笑顔をこちらへ見せてくれた。
「もぅ〜宿題は自分でやらないと駄目だよ〜」
先程の会話から
当たり障りの無い内容として、会話を消化してくれており、誰かが会話を伺ったとしても影響の無い範囲内まで落とし込んでくれているのだ。
正直、年齢的に考えても脱帽すべき思考であり、かつ本人の素質の優秀さが垣間見れる瞬間でもあった。
そう言った空気が読めてそれに合わせた動きを見せてくれるだけでも、色んな意味で計算が立ってしまう。
勿論、本人の幼さによる経験不足はあるだろう。ただ、元々性格的にも慎重に考えて行動するタイプであり、周りの配慮へ気を配れるというのは実に素晴らしいと思う。
ただ、これが行き過ぎると何でも抱え込み、責務と言う名の鎖に縛られて身動きが取れないと言うことも多々ある。
その辺りは本人が悪いと言う話ではなく、環境も大きく影響するだろう。
なので、彼女自身が抱え込み過ぎないようにフォロー出来るよう立ち回りが必要であった。
それらはともかくとして、すずがが視線で訴えかける。
いつお伺いすればいいの?
と、もはや家に来るのは確定事項ばりの視線の強さである。
いや。まぁ、内容的に家に来て欲しい間違いはないんだけど……どうしてもその後を考えると……若干尻込みしてしまう。
要するに……ご褒美のお話である。
最近…………ほんの少しだけではあるが、すずかの希望するパターンの種類……ジャンル? が増えてきた感じがある。
まぁ……決してこちらに支障が出て負担をかける内容では無いので、すずかのストレス発散も兼ねて要望には出来る限り応えてはいるのだけれど。
あぁ……無限の精力が欲しい。
何言っているんだお前は? と言いたくなるような欲を持ってしまう。
……こちらの充填速度自体も確かに半端ないけど……それでも体力は一時的にごっそり持っていかれるので……思考する時間が減ってしまうのは、残念に感じてしまう。
ただ……もしも無限の精力があったら、それこそ快楽のお時間がインフィニティになりそうなので……結局は意味が無いか……と考えを破棄した。
そんな無駄な思考を行いながらも、すずかに返答を行う。
「そうだよね。昨日の
「だから、
トホホ的に残念な感じな仕草を見せつつも
夜、家、二人の発言の時にお互いの視線を重ねるように合わせて、本来伝えたい意図を強調させる。
すずかはその言葉にウンウンと頷くような仕草を見せてくれたので、こちらの内容は伝わっただろうと考える。
何時という制限は掛けない。時間の制限をかける時は、どうしてもその時間に来てほしいと言う事態のみにしていた。
何故なら命令に忠実に従った場合、こちらがイレギュラーの事態があったとき等、事態が混迷する可能性がある。
ようするに「二人きりで、内容を相談するために夜、家に来てほしい」と言う若干ふんわりした内容にさせることで、相手側に隙間を作るのだ。
こうすることで、すずか的に夜こちらの家に訪れた際、自分以外の人の気配があればまず入ってこない。
自分のみの時間をきちんと狙ってやってくるのである。
まぁ、この辺りが調整出来るのは、すずかの人並みはずれた察知能力+機敏が読める性格があって対応可能となる訳なので、誰にとっても有効であるとは限らないのが、残念であった。
そうして、お互いの確認を済ませた後、あはは〜と会話を笑いで終了させようとした時。
「なに? 奏、宿題忘れちゃったの?」
先程の会話を聞いていたのか、アリサが会話の割り込むように入ってきた。
「そうなんだよね。だからどうしようかなと……」
取り敢えず、これで会話を終わらせる訳には行かなくなった為、そのままアリサを加えて会話を継続する。
「しょうがないわねぇ。それじゃ……私が手伝ってあげるわ!!」
「たまにはっ……ふっ……ふた……」
ぽんっ。
最初の小気味の良い威勢の良さから、後半にかけるにつれて小さく口ごもるようになりながら言葉を伝えてきてくれるアリサ。
ただ、その小さな言葉を遮るように、すずかが軽い感じでアリサの肩を軽く触ってきた。
「アリサちゃん」
「なっ……なにっ……?」
「ダメだよ。宿題は
「ひぅ!? ……っ……そっ……そうね」
すずかとアリサで視線が交差しているため、お互いの表情がこちらから見えない。
とは言え、実際、内容が無い会話を終わらせる為か、すずかは多少強引ではあるが、会話に切り込んでくれた。
実際、現段階である宿題なんてものは、簡単なものであるため、すぐ終わっている。
これでアリサが手伝うと言う事態になったらなったで、何かしら対応が必要だったので、若干助かったのも事実であった。
とは言え、アリサの心遣いを無碍にするわけにも行かないので、フォローするべきだろう。
「アリサ。手伝うって言ってくれてありがとう。ただ、やっぱりすずかの言う通り自分でやらないとダメだよね」
「だけど……もし分からない所があったら、その時は相談していいかな?」
とアリサに向けて、優しい語り口調でフォローを行う。
まぁ……分からない所は無いので、これで話自体は終わりになる。
「しょうがないわね!! それじゃ、分からない所があったら真っ先に私に聞きなさいよ!」
フンスフンスと自身を誇張するような感じで、アリサは言葉を発してきた。
「うん。分かったよ」と相づちを打つ形で話を終了させて、すずかの席から離れて自分の席に戻る。
そんなこんながありつつ、チャイムがなり次の授業が開始されていくのだった。
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休憩時間は終わりに近づいてはいるが、まだ騒がしい教室の中で座っている少女が呟くような声が漏れる。
「むー。やっぱり……お勉強も頑張らないとダメなの……」
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