「かなで〜」
手を振り笑顔を綻ばせながら、小走りでこちらに近づいてくる少女。
こちらに近づいてくるにつれて……少しずつ走ってくるスピートが上がってきているような気がした。
「かなで〜っ!!」
もはや、目の前に来たときには全力疾走なんじゃないかと言わんばかりのスピードである。
そしてそれは距離がゼロになっても落ちることはなく、そのまま自身の身体へぶつかって来るのであった。
ぎゅ────っ!!
スピードが乗っていた体当たり……情熱的抱擁は、こちらの体内にあった息を喉から無理やり排出させられる。
そして、体当たりによる強い衝撃でノックバックも発生していたが、後方に吹き飛ぶ前に彼女の抱擁によって脱出不可……身体を補佐され、無事に転ぶ事無く彼女との抱擁が交わされた。
少しだけ大人びた表情や彼女の儚げな印象とは、別次元に感じるような圧倒的なスピードを持ちそれを活かしたパワーを伝える少女。
金色の麗人……フェイトであった。
「かなで〜かなで〜っ!!!!」
こうして胸に顔を擦り付けてくる彼女は、幼さを見せ年相応に感じさせる。
ギリギリギリ……ぎゅぅぅぅぅっ……
しかし、身体を締め上げてくる力は年相応では無かった。
だが、ここで『苦しい』などと言える訳はない。周りの目もあるのだ。
『男の子が女の子に負けた』と思われる。……男子としてのちっぽけなプライドはもう砕かれているが……更にズタズタにされたくはない。
だからこの位、何でもないさと言わんばかりの強がりを見せて、フェイトの頭を優しく撫でようとする。
なけなしの力を動員して動かしている手が震えてることなんて、誰が見ても明らかかも知れない。
だが……それを優しく見守ってくれるのが大人だろう!! と自分も知らないフリをしながらフェイトの頭を撫でるのであった……。
今回は、フェイト達の【継続対応】を実施するため、彼女らにミッドチルダへ訪問を実施していた。
リンディさんに連れられて、今の会合を果たしている。
フェイトはまだプレシア事件の重要参考人であり、本人の行動的自由はまだ得ることは出来ていない。
事件自体は本人の意思は無く、プレシアにより引き起こされた事件である為、最終的には管理局へ奉仕を行う形になるが、フェイトの行動自体はある程度自由になるはずである。
その辺りは、温度感も含めリンディさんに逐次状況の報告を貰っているのと実際に動いてもらっているで、大丈夫だと思っていた。
それとは別にこの【継続対応】は必要なため、こうして定期的に会うことを調整して貰っている。
まだフェイトは年齢的に言えば、保護されるべき存在である。なので、精神的な安定を保つ為、彼女が懐いている自分がこうして会うと言う名目を立てて上手く利用していた。
しかしその幼い彼女は、この後、管理局で使われる。
幼い少女を利用するという点では、自分も管理局もそう変わらないなと自虐的な思考が過ぎるが、どちらも結局は【足りない】と言う所を補うためのパーツであった。
まだ、管理局は彼らの成人的な価値観……クロノも含め年齢的に多少幼くてもその意思を尊重すると言う所はある意味で言えばマシなのかも知れない。
そういった点も考慮すれば、自分のクズ度は理解してしまうだろう。
世界を救いたいと言う大それた使命は持っていない。
自分が生き残りたいが故に世界を救わなければならないだけである。
だから自分が生き残る上で必要なものは利用する。
ただ、決して自分が生き残りたい為だけに、誰も彼もを不幸にはしたくないだけである。
自身から生まれる怒り等の負の感情は全て
そんなことを考えつつも、フェイトをしっかりと指であやしつける。
ふんわりと柔らかく指通りが良い金色の髪を堪能する。
段々と……彼女の方も落ち着いてきたのか、こちらを締め上げてくる力も弱まってくるのを感じた。
そうしてフェイトの擦り付けている顔を見て、【継続対応】が完了したことを確認する。
と言うか……見なくてもずっと擦り付けている間……すーはーの息が服を通して感じていたので…………まぁ、取り敢えず無事に終了したことと言うことで一息付く。
だが、まだ【継続対応】をする人が……1匹残っている。
さすがに別室……と言うか何かしらで二人になる必要があるので、タイミングが必要だ。
フェイトの近況を伺い、特に大きな支障が無いことを確認しながら機会を伺っていた。
そして……その時が訪れる。
「ちょっとおトイレに行ってきます」
その言葉を発しながらさり気なく移動を開始するが、フェイトも付いてこようとする。
いや、おトイレ行くだけだから。大丈夫だからと説得を行い、部屋から出る時にアルフへ視線を向けて瞳をバシバシと閉じながら合図を送る。
すると、こちらの動きを見てアルフは……ビクッ!! と大きく身体を反応させた後、ソワソワとした動きを見せる。
取り敢えずこちらの意図は通じただろうと思い部屋から移動する。
そして……頼む……自然な形で来て欲しい……と念じながらトイレがある場所へ向かうのであった。
トイレの入り口の所で、軽く待機する。
すると……「ご主人さまぁ……」と普段の姿から想像も付かないぐらい弱々しい声で、もじもじと身体を小さく捻じらせながら、こちらの様子を伺うアルフの姿があった。
それを見て、嗜虐心が加速してしまう。
さぁ…………アルフさんの躾のお時間です。
おトイレタイムのぉ……始まりだぁ!!!!
……
…………
……………………
そうして、【継続対応】を無事完了させたのであった。
そして……帰り道……自分はリンディさんにずっと強く肩を掴まれていたのは……誰に対してかは分からないが内緒である。
……
そんなこんなもありつつ、そろそろはやての出会いを演出しないといけない。
現段階では強い接触は持てない。だけど、【精液】を飲ませることが必要であった。
それを自然に演出出来る事はなにか。
そう…………
お茶会である。
すずかを中継点としてお茶会をする。
そこに自分も入り込み、さり気なく顔を合わせることで対応を行うのだ。
そうしてすずかと話し合ってその準備を進めていく。
まず参加者はすずか。はやて。そしてアリサ。最後に自分である。
アリサを加えたのは、これは自然なメンバーであるという認識を持たせるためだ。
アリサはご令嬢であるが、魔法と言う特殊な世界における状況下には、まだ存在していない。
彼女を追ったとしても何も出てこないことが分かるはずである。
そして、自分にも目が向けられるだろう。
そうなると高町なのはの情報に辿り着いて、フェイト、そしてプレシアの事件に容易にたどり着くはずだ。
となってくると怪しく感じてしまうのは自分である。
だが、自分は見た目は子供だ。すると考えられるのはそのチームの上層部……リンディさんやクロノにあたりをつけるはず。
しかし、その目的は見えない。
そうなると、まず行うのは情報収集。
判断するための材料集めである。
そうなると調べれば調べるほど、お茶会のメンバーが不自然に見えるだろう。
もし、
何も怪しい情報が出てこないご令嬢が二人。
そして、こちらの世界と繋がりはあるが、なんの戦闘力も無いヤツが一人。である。
もし、彼女の手駒として考えるなら、これでは何も事を起こすことなど出来ないであろう。
例えば最初から高町なのはやフェイトが居るとどうしても怪しい匂いが強くなってしまう。
戦闘能力がある彼女達が居ると警戒度が自然と高くなってしまいがちである。
これは第一印象が良くない。
怪しく無い空気を作りながら談笑を行うことで、それを繰り返し継続する。
そしてなのは。フェイト達の動きを見てもこのお茶会との連動性はない。
そうなってくると慎重に見ても警戒度は下がる。
更に彼女が闇の書と繋がりを知っているのは彼らだけである。
そして……仕込まれた動きではあるが、はやてが乗り気になるのだ。
継続して行っても特に不思議な理由は生まれない。
そうすれば、これに注視するより他に注意を払ったほうが効率が良いと判断するであろう。
これで一先ずは「はやて」への窓口を持ちながら、継続対応をある程度まで続けられる対応であると考えた。
とは言えこれは八神はやてが悪化するまでのひと繋ぎである。
その後はまた別途考慮すべきであった。
取り敢えずは、お茶会開始に向けて動いていく。
──そしてお茶会の当日
「はじめまして。鏡音奏です」
「……」
?
おや。はやての反応が…………
「……っぁ『ぴぴぴ』やっ…………………………」
ぴぴぴ……? 何の話なんだろうか?
言葉は発したが、こちらを見る視線は驚きに満ち溢れており、先程の挨拶の言葉すら届いていないようにみえる。
そして……先程の言葉だ。恐らくは……
後ろから「ちょっと……彼女大丈夫なの!? すずか?」聞こえる声。
そして「大丈夫だよ〜。はやてちゃんってちょっとお茶目なんだから」とのんびりと間延びした声で、アリサを落ち着かせるすずかの声。
そんな微妙な空気感の中、最初のお茶会がスタートするのであった。
「八神はやてでしゅ!? よろぅしゅうぅぅぅっ!?」
少しだけ落ち着いたはやては自己紹介をする。
しかし、カミカミの挨拶となり、名前以外は何となくしか相手に伝えられなかった。
しかし、
「アリサ・バニングスよっ!!」
「改めてよろしくね〜」
とさすがご令嬢のお二人。相手の焦りを問題にしない。
こういった経験も多かったのだろうか。普通に対応している様はある種の経験豊富さを感じさせた。
取り敢えず、彼女らの会話が少しずつ行われていく。
すずかが会話を優しく誘導して、はやての言葉を導く。
そしてアリサの圧をさり気なく緩めながら会話を繋げていった。
はやても元々は活発な性格である。
順調に会話が進んでいけば、お互い打ち解けるのも時間が掛からなかった。
自分は相槌ぐらいしかしてない……けどね。
それでも、言葉を発する度にはやてはビクッと身体を震わせてこちらを見てくる。
まぁ……この年代において初恋なんてものは、気恥ずかしいものであるはずだ。
そんな不自然な動きを華麗にスルーしてあげるのが大人なのである。
とは言え、彼女の視線は怯えているのなら、スルー等出来ず、ショックを受けてしまうのだけれど……。
彼女の視線は、こちらにも伝わるぐらいマジマジと『私、興味津々デス!!』と言わんばかりの熱視線である。
恐らくは、彼女の中に何かが生まれたという状況が周りにも見えるであろう。
それを監視者が見てくれれば、次も様子を伺っていくはずだ。
すると……分かってくるであろう。彼女の中に『恋』が生まれたということが。
それが結論として出てくれば、一先ずは大丈夫であるはずだ。
そんな事を考えながらも、はやてを含めて全員と会話を繋げていくのであった。
────お茶の準備が出来ましたよ〜
少しだけ無邪気さを感じさせる少女の声が聞こえた。
しかし作法はしっかりとお姉さまに仕込まれているのであろう。
しずしずと丁寧に運び込む動作はメイドの鏡であると言わんばかりに優雅であった。
ただ、時々お茶目過ぎるドジっ子を発揮させる時はあるけど……今回は問題無さそうであった。
そして、すずかがすっと立ち上がり、ファリンさんを部屋から下げさせる。
「今回は私が紅茶を入れるね〜♪」
と先ほどのファリンさんのように丁寧な動きをしながら紅茶をカップに注いでいった。
そして……
「奏くん。運ぶの手伝って欲しいな♪」と伝えてくる。
自分もすずかの元へ向かいティーが注がれたカップを見る。
するとすずかは可愛らしい笑顔で、ウンウンと頷きながらこれを運んでねと伝えてきた。
紅茶が置かれているトレンチを見やると置かれているカップは『3つ』であった。
おや? と思ってすずかを見やると……
「奏くんのはちょっと待っててね。甘いの苦手だと思うからこっちを入れるね♪」
そう言いながらフンフン♪ と音を口ずさむように紅茶を入れていく。
いや……それの疑問はあるんだけど、どれが『当たり』なの?
勿論、そんなことは素直に口には出せる訳が無い。
すずかにヘルプ!! と視線を向けるが、にっこりと笑顔で返されてくる。
「大丈夫だよ〜♪ マナーなんか氣にしないで『全部』ちゃんと配膳してくれれば……ね♪」
その瞬間全てを理解する。
口調は優しいが中身はとても優しくない。
ニッコリとその笑顔に潜むその悪戯な小悪魔の行動に戦慄を隠しきれなかった。
すずかさん……全部『当たり』って…………。
しかし、口に出すことは不可である。
「速くしなさいよー!!」と急かすアリサの声を聞きつつ……ええいままよと行動へ移すのであった。
「アリサお嬢様。こちらをどうぞ」
配膳する時は執事になりきる。その言葉にアリサは満足げにしながらカップを受け取るのであった。
そして
「はやてお嬢様。どうぞ」
とはやてにもカップを配置していく。
「あっ。あっっ……。ありはぁとなぁっ!?」
取り敢えずお礼の言葉を受け取りつつ、最後にすずかの位置へカップを置こうとすると……
お茶を入れていたはずのすずかがそこに座っていた。
何が起こったのかよく分からない。
あれ? あれ? 入れていたお茶は? と疑問に思って自席を見てみるとそこには綺麗に入れられた紅茶が湯気を立てて置かれていた。
え? あれ? 時間が加速した?
そんなことはある訳無いだろうと冷静な思考は伝えてくるが、それでも起こった現実は中々頭に入ってこなかった。
しかし、すずかは笑顔をこちらに向けてお茶を待っている。
なので……自分は頭を空っぽと言う名の現実逃避をしながら
「すずかお嬢様。お茶でございます」
丁寧に丁寧に彼女の目の前にカップを配置していくのであった。
「あら今日はいつもと違うのね?」
「そうなの。今日は趣向を凝らして見たんだ」
そんな会話を耳に入りつつ自席にあった紅茶を口に含む。
すっきりとした味わいと共に爽やかな風味を感じる。
恐らくはミント的な清涼的な葉も使われているのだろう。
細かい種類は良く分からないが、色々と細かく調整しているのがよく分かる味わいであった。
「うん! これはこれで美味しいわね。この
────ぞくっ
「ほんま美味しいわ……なんでこんな美味しいやろ?」
──────ぞくっぞくっ
「ふふっ♪ ちょっとだけ『特別』な入れ方をしたんだ〜♪」
とっても美味しいよね♪ とカップに口をつけるすずかを見る。
喉が動くその様を見て、背筋が震える。
罪悪感と精神的興奮は背筋を擽るようにゾクゾクとした感覚を引き起こす。
そして頭の中で『今、起こっている事実』を認識する。
自然と脳内を熱で焦がす。
身体はその事実で素直に反応を示すのであった。
「特別ってどんな入れ方をしたのよ?」
カップに口をつけ喉を潤わせた後、アリサはすずかに問い始める。
「それは秘密だよ〜。ちょっとだけ工夫して入れるようにしたんだ♪」
「ふ〜ん」
そんな会話の中でも彼女らはカップに口を付けて喉を鳴らす。
急に……なんか恥ずかしくなってきた……。
そんな興奮と冷静を上下する感覚を味わいながらお茶会は進んでいく。
「ほんまぁ……これぇ……美味しいわぁ♡」
そうして、本日の【継続対応】は完了したのであった。
…………どうやって? はご想像にお任せしたいです。先生。