※この作品はR-18です。

時を駆けた花聟   作:つくば

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不自然なストーリーだったのが気に食わず、改訂して戻ってまいりました。またよろしくお願い致します




時を駆けた花聟

ギシッ・・・ギシッ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ・・・あっ、ふ、ふうたろうくっ…ん!」

 

 

 

陽が照らさない暗い部屋。鳴り響くは、互いに肌をぶつけ合う官能的な音だけ

 

なぜ、なぜ俺はこの子を抱いているのだろう

自分の上で懸命に腰を振り、妖艶な目で喘ぐ彼女に、負けず劣らずの獣の目を向ける。言葉では形容し難い黒い欲望を抑えながら、ただただ奉仕してくれている彼女を見つめていた

 

歪んだ日常・関係が戻ることは無い

最初は本当に好奇心から来たものだった。この感情に至るまでの経緯は、誰にも共感されるものではない。そう断言できる程、特殊かつ例を見ないことだから

 

 

 

 

〜約1週間前〜

 

 

 

 

「そうです!私、良いこと思いつきました!せっかく相席になったんです」

 

「勉強、教えてくださいよ」

 

特徴的な赤い髪、お世辞にもいい趣味だとは言えない星のヘアピンのアクセサリー。それらを靡かせながら、前に座る彼女は、俺に向かって不躾に頼み込んできた

 

彼女は、この状況を何一つとして不自然には感じていないだろう

 

しかし、頼まれている俺はそうではない

 

俺はこの子を知っている。いや、正確には知っているなんてものじゃない

 

かけがえのない時間を過ごした彼女を、もとい、彼女達を忘れることなどできるはずもない

 

彼女達との出会いは、この台詞から始まっていたのだから

 

この図々しくも憎めない台詞を、俺はもう一度聞くことになるとは思ってもいなかった

 

つい数時間ほど前までは。

 

 

『人生に二度目はない』

 

 

それはそうだ。だからこそ後悔という文字が存在するのだ

 

こんな堅苦しいことを語り出したが、なにも哲学的な事が始まるわけでもなければ、なにかの論理について展開していくわけでもない。俺でさえそんな当たり前の事は理解したつもりでいた。そう。理解したつもりでいたのだが・・・

 

「・・・」

 

俺の目の前で、こんなイレギュラーなイベントが発生している以上、その言葉は信憑性に欠けるものとなってしまった

 

落ち着け、上杉風太郎。今こそ学年1位を誇る頭脳をフル回転させて考える時じゃないか

 

聞いたことのある台詞、煩わしいとさえ感じる学生の喧騒、俺に初対面かのように話しかけてくる彼女

 

極めつけは今日の日付だ

 

ここから導き出せる答えは――――

 

 

"タイムリープ"

 

 

それ以外考えられなかった。この際タイムスリップでもいい。時間が巻き戻っていることだけは間違いない

 

大掛かりなドッキリだと思いたかったが・・・

いつまで経っても『ドッキリ大成功』の看板が出てくることはなかった

 

「あの・・・」

 

長らく物思いに耽って、放置されていた彼女が困惑顔を浮かべている。その様子から、やはり意図的に行っているものではないと悟った

 

「・・・すまない、少し考えさせてもらってもいいか?」

 

「え、ええ、もちろんです。お願いしているのは私ですから」

 

本当は、遠慮などしなくても、互いに分かり合える間柄にまでなれたというのに

 

残酷な真実に胸を締め付けられ、歯を食いしばる。前世で後悔した決断を下すことはなく、未だに困惑顔の彼女に告げる

 

「・・・俺でよければ、解説してやるぞ」

 

その一言に、彼女は顔を明るくしてお礼を述べた

これが俗に言う『パラレルワールド』というものなのだろうか

 

どうやら、俺は新しい世界線を作ってしまったらしい

 

 

☆

 

 

初の家庭教師と言っていい仕事を終えて、らいはが待つ自宅へ歩き出す

 

なぜタイムリープしたのか、タイムリープした事実を受け入れたとしても、なぜ高校二年生のこの時期なのか

 

それこそ小学生六年生の荒れていた時期だったり、母親を亡くした頃だったりと、俺の人生におけるターニングポイントは他にもいくつかあった筈だ

 

これが単に神のイタズラや気まぐれだとするのならば、とんだ迷惑話だ

 

人が時間をかけて積み上げた信頼を、いとも容易く崩壊させるなど、悪趣味もいいところだ

 

「くそっ・・・」

 

自分以外は誰も通っていない道で、悪態をつく

 

どうにかできないものかと試行錯誤するも、帰り道を歩く間に答えが出ることはなかった

 

 

結局、打開策を見つける前に自宅へ辿り着いてしまった

 

「ただいま」

 

帰ってきたことを報告しつつ、扉を開ける

 

部屋には鼻をくすぐる香ばしい匂いが立ち込めており、キッチンにはオーバーオールを着たらいはの姿があった

 

「おかえりー!」

 

さっきまでの疲れと悩みが吹き飛びそうになるほど、全開の笑顔を覗かせてくれた

 

早速、食堂で推察したタイムリープの説が間違っていないかどうかを確かめるため、らいはに聞いてみた

 

「・・・なあ、親父が俺の新しいバイトを見つけたって言ってたよな」

 

俺の知る話なら、それは家庭教師の仕事だ

五月との再会が無意味になるなんてことは、まず無いだろう

 

「うん!家庭教師のお仕事だって!」

 

予想通りとは言え、変わりのない内容にほっと胸を撫で下ろす

 

「そうか、3日後からだよな?」

 

知っていることだからか、つい先走って話を進めてしまう。その様子を不思議に思ったらいはが尋ねてくる

 

「お兄ちゃんよく知ってるね、お父さんから聞いたの?」

 

「あ、ああ、親父が職場から電話を掛けてきてな、学校の帰り際に知ったんだ」

 

「へー、そっか・・・とりあえず頑張ってね!」

 

「ああ」

 

危ない危ない、もう少しでいらない事まで暴露してしまうところだった

 

少し自制しないとな・・・タイムリープをしたことを知られたら、何をされるかわかったものじゃない

 

しかし、逆に聞いてみたいこともあった

らいはからしたら変な質問かもしれないが、これだけは聞いておきたい

 

「らいは、もうひとつ聞いてもいいか?」

 

「ん?なにー?」

 

晩御飯を作る手を止めず、視線もこちらには向けずに声だけで反応を示した

 

トントントンとリズミカルに響く乾いた音だけが響く部屋で、らいはにこう切り出した

 

「もしも、もしもだぞ?」

 

不信感を持たせない為に、もしもの話だと強調して話を始める。急にこんな非現実的な話をし始める俺は、一体らいはにはどう映るのだろうか

 

「人生をやり直せるってわかったら・・・お前は何をしたい?」

 

先程まで鳴っていた、まな板に当たる包丁の音がピタリと止む。耳を疑いながらもこちらに向き直ってから、心配そうに俺の顔を覗き込んできた

 

「お、お兄ちゃん?急になに?」

 

「もしもって言っただろ?別にそんなに深く考えなくていい」

 

それだけ伝えると、顎に手を当てながら唸り始めた。少し考える素振りを見せてから、普段の明るい口調で答えを聞かせてくれた

 

「うーん、やっぱりさ、やりたかったこととか、出来なかったことを思いっ切りしてみたいよね!」

 

その答えを聞き、ふと頭に浮かぶのは――――

 

 

やはりあの五つ子だった

 

 

「そうか、ありがとうな」

 

「どういたしまして!」

 

自分がやりたかったこと、出来なかったこと

 

そんなものは数え切れない程ある

 

裕福で不自由のない暮らし、彼女や親しい友人と過ごす華やかな学園生活etc...

 

まあ挙げるだけ野暮だ。これは俺の欲求と言うよりは、人間誰しもが一度は求める理想というやつだな

 

かく言う俺も年頃の男子高校生だ。人並みに性欲や物欲はもちろんある。だが自分が置かれている立場や環境、性格も相まって、とてもじゃないが贅沢や高望みができる位置にはいなかった

 

 

 

(だったら・・・俺はもっと自分の欲求に忠実になってもいいのか?)

 

 

 

 

環境・性格・立場

 

それらが結びついて、前世まで無意識に眠らせていた本能が――――

 

 

 

 

 

 

皮肉にも、らいはの一言で目を覚ましてしまった

 

 

 

☆

 

 

 

タイムリープから2日後

 

一度過ごしたはずの日にちを跨ぎ、無駄だとはわかっていてもカレンダーを確認する。何度目を擦っても、日付や時間が変わることはなく、ため息をついてから学校へ向かう支度を整える

 

ため息こそついたが、俺にとっての問題は、タイムリープをしたこの事実ではなく、日常的に行われる授業なのだ

 

確かに勉強は好きだ。だが全く代わり映えのしていない授業を、あと最低でも2年は聞かされなければならない俺の気持ちにもなってくれ

 

既に高校を卒業できる学力まで達しているのにも関わらず、それが得になり得るかわからないこの状況においては、俺も項垂れる他ない

 

だがこんな不幸の中にも、利点があることに気が付いた

 

別になんでもいい、なんでもいいが、今回は例に全国模試を挙げるとしよう

 

五つ子に勉強を教えつつ、自分も結果を残さなくてはならない状況に置かれ、睡眠の取れない日々が続いていた

 

辛くて苦しい出来事だったが・・・それを今回のことに置き換えて考えてみよう

 

ここからは完全な予想故、賭けでもある

 

五月やらいはの仕草に台詞が何一つとして変わらなかったことから推測するに

 

 

模試の内容も変わらない可能性がある。ということだ

 

 

それこそさっき言っていた授業も、一言一句変わらずに進んでいたのだ

 

逆に変わることの方が稀なのかもしれない

これからも観察は必要な分、二度目ということもあり、アドバンテージもそれに比例して増えていくだろう

 

その点に関しての懸念は少ない

 

 

 

 

そしてもちろん、一番の問題は五つ子との関係だ

 

 

 

 

今まで通り普通に接して、今まで以上に友好な関係を築いていくのも悪くはないが・・・過程や達成感からか、どうしても――――

 

 

 

 

 

 

邪な考えばかりが浮かんでくる

 

 

 

 

 

『やりたかったこととか、出来なかったことを思いっ切りしてみたいよね!』

 

 

 

 

俺の・・・やりたいこと、か

 

 

 

「・・・二周目の人生くらい、開き直らせてもらおうかな」

 





5分後にもう1話投稿します。たくさんの方の感想お待ちしています
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