万事休す。八方塞がり。お手上げ
これ以外の言葉で、今のこの状況を説明できる言葉なんて存在するのか。純新無垢で穢れを知らない幼い妹の前で、逢い引きをしていた現場など、到底見せていいものではない。証拠を隠滅しようとする以前の問題だ。倫理観が欠けてたなんてものでは、言い訳がましいにも程がある
「おにいちゃん?・・・あれ、にのさん、は・・・?」
口調と視線の先を見るに、まだ完全に目覚めたわけではなさそうだ。そして最悪の事態を避ける為に、布団の中でしていたことが功を奏したらしい。眼を擦って余所見をしている間に、身体で覆って、半裸の二乃を隠すことに成功する
「もしかして…バレてない?」
「なんとかだけどな…とりあえず、俺が服を着てらいはを寝かしつけるから…隙を見て布団に帰ってくれないか?」
「りょ、りょうかい」
幸い、俺は服全てを脱いでいたわけではないので、トランクスとズボンを履けば事を荒立てずに済ませられる。服を着て、らいはの視線が俺の布団に行かないように、身体で視線を遮る
「二乃なら、暑いから外に行くって言ってたぞ。散歩でもしてるんじゃないか?」
「う〜ん・・・いま、なんじ?」
「まだ夜中の3時だぞ。体調崩してんだから、もう少しだけ寝てような」
「は〜い・・・」
胸の辺りを軽くトントンと一定のリズムで叩いやるうちに、寝息も規則的になっていった。最後まで油断はせずに、二乃を布団に返した結果、疲労がどっと押し寄せて、登校時間ぎりぎりまで眠ってしまった
お天道様が見てる。そんな諺の真意を体現した朝方から数時間後。なんとか不祥事もバレることなく今に至る。心情的ななにかから来ているだけかもしれないが、心做しか昼下がりの風が冷たい
「ん、んんぅ〜・・・完全に寝不足だ」
「うーえすーぎさーん」
「午後は起きてられるかどうか…」
「うえすぎさーん?」
「徹夜も考えものだな」
「ふうたろうくーん!」
当然気付いている。気付かないわけがない。だから敢えてこうして疲れたアピールをしているというのに、なぜこんなに健気に話しかける気になるのだろう。無視してることがどことなく申し訳なくなってくる
「……なんだ」
「ようやく反応を見せましたね!お疲れなんですか?」
「お前の見るに堪えない成績のおかげでな。朝まで資料作りをしてたんだ」
「へ、へぇ〜……それは大変ですね!」
「なぜ他人事」
現実逃避にも限度ってものがある。その逃れ方はさすがに考え直した方がいいと思うぞ
「それより!風太郎君に聞きたいことがあるのです!」
「手短にな」
「・・・わかりました。手短にお話するためです。失礼します!」
「おわっ!」
その刹那、四葉に抱き着かれる。昨日の二乃との行為が頭を過ぎってしまったせいで、無意識に四葉と二乃の身体が重なった
「聞きたいことと、この行動はどう繋がってくるんだ」
「動かないでください!」
どう考えても叱られる立場ではないのに、その一喝で身体が強ばってしまう。いや、普通に叱られる立場にある人間だった
「・・・やっぱり」
一人、譫言のようになにかに納得した四葉。話を聞く前に鳥肌が立ったような気がする
「二乃の匂いがします」
開いた口が塞がらないとはこのことだ。鋭すぎる勘と犬のような嗅覚。これは一体どこから突っ込めば正解なんだろうか。いや、正確に言えば非があるのは俺だから・・・突っ込む資格はない
「お前の思い過ごしだ」
「この匂いは二乃の香水と同じですよ?間違えるはずがありません」
一難去ってまた一難。立て続けに押し寄せるピンチの波。そのリボンはお人好しの証みたいなものじゃなかったか?本当に俺の知る四葉か?
「・・・わかったよ。素直に言えばいいんだな」
「そうですそうです。話した方が楽なこともありますからね!」
観念した俺は、四葉に事の顛末を話した
「――――てな感じだ。これで合点はいったか?」
当然、一部の出来事を隠蔽しながら。だが
「むむむ…腑に落ちないところはありますけど…らいはちゃんを出されると弱いです」
「らいはにも確認してもらっても構わないぞ」
「…遠慮しておきます。可愛いらいはちゃんを疑うなんて罪悪感が出てしまうので」
「俺にはその罪悪感は湧かないんだな」
「当たり前ですよ!」
さて、どこからが当たり前だったのか。怒らないで優しく解説してくれと懇願しても、自分で考えろの一点張りだった。優秀な頭脳はその為にあるわけじゃないんだが
根気強く粘りを見せるも、話を逸らすように四葉は別件の話を始める
「一旦その事は置いといて…上杉さんに朗報があるのです!」
風に揺れる頭のリボン。大抵ロクなことを考えていない時に揺れるのがあのリボンなのだ。諦めの境地に立ち、悟りを開く覚悟で聞くのが一番の対処法
「朗報の意味は知ってて言ってるんだよな?」
「…私をなんだと思ってるんですか?」
「留年候補生」
「あー!言いましたね?!そこは…え、えーと…お、おぶらると?に包むところですよ!」
「オブラートな」
やはり心配になってきた。悟りを開く余地も与えてくれないのはさすがに予想外が過ぎた
「もうわかったから…早く朗報とやらを聞かせてくれよ」
「逸らしたのは上杉さんなんですが…」
一進一退の攻防。そして実にならないスッカスカな内容の集会。そろそろ投げやりにならざるを得ない
「俺が悪かったから。話を進めてくれ…」
「少し雑なのが気になりますが…わかりました」
長い茶番を経て、漸く本題にありついた。やたらと真面目な表情をしたかと思えば、煮え切らない喋り方に戻った
「その…来週のこと、なんですが…」
「来週?」
なにかあったかなと、頭の中にある記憶を断片的に繋げて、話題の中心であるイベントについて思い出した
「林間学校か?」
「…そうです。林間学校で、その…上杉さんと踊りたいって仰ってる方がいましてですね…」
それも察するに、結びの伝説のことを指しているのだろう。伝説にかこつけて、その場のテンションに任せて一生を誓うのは未だにどうかとも思うが、ロマンチストな高校生にはありがちな若気の至り
バカにしているわけではないが、それだけで一生を添い遂げられるなら安いものだ。話がよすぎると感じているのは俺だけじゃないはず…というかそうであってほしい
「林間学校でダンスか…俺には合わねえよ」
「そんなことないと思いますよ?」
「…やめてくれ。そんな気にはなれないんだ」
「そう、ですか…」
「すまないな。そいつにはそう伝えといてくれ」
「い、いえ…大丈夫ですよ」
そう言うと、四葉はスカートを正して立ち上がった。ゆっくりのその場を立ち去ろうとするのだが、扉を閉めて姿を消す前に、一言だけ告げた
「考え、変わったら教えてくださいね」
「……ああ」
やっぱり。今日は一段と風が冷たい
☆
いくらその場を乗り切ったとは言っても、四葉に向けられた疑いの目というのは中々払拭できないもので
家庭教師と自分の成績維持でさえ激務だというのに、四女の監視の目が光っていることは考えたくない
今日だって、逃げ込むように二乃の部屋へ転がり込んでいた
「あの…妹ちゃん、大丈夫…だった?」
所狭しと配置された人形や家具が空疎に感じられる程、状況を掴めずにいた。既にらいはのことがあった事後な上、四葉のやたらと執拗い詮索…何故だ、凄く嫌な予感がする
「今朝は元気に学校へ行ったぞ。昨日はありがとうな」
「い、いいけど…ああなったのは私の責任でもあるから…フー君に迷惑かけないようにしなくちゃって思って…」
詮索されっぱなしの日々が続いていたが所以の出来心で、今の言葉だけで二乃がオアシスに見えてきた
何度も言って理解はしてくれているとは思うが、前世との対応の差がサブリミナル効果を生み出しているのかもしれない
性懲りも無く。俺はまた二乃に手を伸ばしてしまう
☆
「あっ…き、きのうの、きょ、うなのにぃ…」
ほぼ無理やり、興奮していきり立っていた愚息を二乃に挿し入れていた。やはり制服姿というのは唆るものがある。夢見心地のよい枕のような肢体は、こちらの性欲をどこまでも貪欲にしてくれる
そして、寝バックで犯していたその最中、わかった事がひとつだけあった。充分に濡れきっていない秘部に挿入れた時の反応が、新たな可能性を見出していた
「二乃…ひとつ、いいか?」
「あ、んっ♡…なぁ、に?」
「…お前――実はMだったりしないか?」
割と意を決して言った事だが、二乃にも思い当たる節があるのか。都合が悪そうに枕に顔を埋めて誤魔化す
「っ……な、なんのこと、かしら」
「……本当に、心当たりはないのか?」
「ほん、と…よ!」
必死な顔を見て、またひとつ。俺の手は好奇心が衝動に駆られた
――――パシン!!!
「ひうっ!!♡」
たまたま手の近くにあった、女子高生の健康的でムチムチの太腿を掌で叩いただけなのだが…もしかしたら、もしかするかもしれん
「あっ、いまのはちがくて、あ、あのっ…その…」
弁明をして躍起している彼女だが、この可能性については前世から考えていたことだ。ここにきて属性付与とは…
「…へー、何が違うん、だっ!」
「ぅあん!!♡」
一体どこからこんなに魅惑的な甘いボイスが出ているのか。はたまたストーカー紛いの行動をした時の低い声はどこから出ていたのか。謎は深まるばかりだ
最近、二乃に対する戦力差が逆転した気がする。猫撫で声を上げる美女を前にして、一点集中放火式バズーカの装填が完了してしまう
「まぁ…この際、お前の性癖はどうでもいいよなっ」
「う、うるひゃい…ばかっ…ばかぁ…」
言いたいことすら満足に言えない舌は、ただただ男根を奮い立たせるだけ。そして腰を打付ける力を強めただけで、こんな大きな声で鳴くのだから。男冥利に尽きるの一言
端的且つ率直な感想で…二乃が可愛いすぎる
「あぁぁあ♡……イっちゃうぅぅ♡イっちゃうからぁぁ!!♡」
涙と汗で湿った、大事そうに抱えた枕に力を集中するばかりではなく、体内に生成されている子種全てを搾り取ろうとするかの如く膣圧が上がった。ここに来て一段とギアを上げた腟内は、キツいなんて言葉すら生温く感じる締め上げ具合だ
今だってこんな余裕ぶって見えているかもしれないが、気を抜いた刹那に意識が飛びそうになる程度には、頭に血が上っている
絶頂とともにノックアウトなんて不名誉な結末だけは避ける為、意識が朦朧とする前に腰をフルスロットルさせる
「だめっ…そんなはげしくされたら…わた、しっ!!!♡♡」
「は、っ…二乃ぉ!!」
「かっ…あ、あぁぁぁぁ♡♡……ふーくんの、あついぃぃ♡♡♡」
ひくひくと痙攣しながらも、二乃と共に果てた。昨晩の反省を活かすどころか、真っ先にその教訓を殺していることに気付いたのは後の祭り
こうなってしまっては吹っ切れる以外に道が見当たらない。というか直線一本道しかない道を、どうやって迂回すればいいんだ
わかりずらい比喩だが、今はそんな状況
「二乃…口、開けてくれ」
☆
「はむっ、ちゅぷ、んん、ふむぅ…」
背徳的な行為のアフターは、俗に言うお掃除フェラ。あんな意地悪までされた後だというのに、この忠誠心は見上げたものだ
どうすれば気持ちよくさせられるのか、そんな様子で顔を覗き込む姿がなんとも卑猥で、それでいて美しい。ここかここかと小さな舌で攻めてくるも、フェラで達するにはまだ根本的なテクニックが足りていないみたいだ
しかし昨夜は違ったことを思い出した。2人とも興奮のさなかに、あまりされ慣れていないフェラを施行されたことと、不意打ちの襲撃のような感覚に陥ったせいで達したと考えれば、なんら可笑しくはない
そこは本人も薄々勘づいていたようで、そうとわかるや否や、羞恥心を捨てたように顔を窄めて、鈴口に残留していた精液を口に含んだ。仕上げには根元から先端まで、徹底的に舌を這わすのだった
「……フェラ、好きになったのか?」
頼んだことであるが、拒否する素振りすら見せないことに驚きを隠せずにいた
「……ん、ぷはっ、あむっ…」
「それは肯定と見なしていいのか…?」
果たしてこれは黙秘というに値するのか。目は口ほどに物を言うとはこのこと。明らかに目が泳いでいた。そしてこの反応で確信に変わった。やはり二乃はMの素質を持っている。普段は強気で高飛車な女の子が、性癖は隠れMだったなんて知られたら…男が黙っている筈がない
国家機密並の情報を抱えた気分だ。悪くない
「…はい、早く服を着ましょ?」
何事も無かったかのような顔。事実は認めなければ、公にならないとでも思っているのか…プライドの高さだけはご健在らしい
「それでね、フー君にお願いがあるの」
なんかもう無視されてるのかなってレベルで話が粛々と進んでいく。この次女には翻弄されてばかりだ
「…お前には借りがあるからな。できることなら手伝うよ」
らいはの看病のこともあって、この時の俺は…願いとやらを軽く考えていた
「――――私と、踊ってくれませんか?」