静かに、彼女を抱き留めて。
もう一度、耳に囁く。
吐息が耳元に触れて、少し身体を捩るのを見届けながら。
「良いんだな?」
その言葉が示すように、下腹部をぴたりと当てれば。
濡れそぼった何処かを指し示すように、彼女の手が招き入れる。
「……うん。 翔じゃなきゃ、嫌。」
彼女の腕は、俺を包み。
俺の腕は、彼女を離さないように抱えて。
それは、いつだったかの。
身体を強く押し付ければ、少しだけの抵抗と。
それを破るような感覚を下半身に。
首の後ろ、丁度肩甲骨の間辺りに何かを突き立てられるような軽い痛み。
「…………ッ。」
「……はぁ、っ。」
お互いに、動かない。
希亜は、
俺は、動いてしまえば直ぐに果ててしまうような感覚と。
彼女を気遣う、綯い交ぜになったような感情を押し殺していたから。
「…………ふ、ぅ。」
それから、どれくらいの時間が流れてか。
恐らく、実時間としてはほんの数分位。
けれど、俺達の間で共有していた時間は何倍にも、何分の一にも。
時間という感覚を何処かに置き去ってしまったように、互いが互いを感じていた。
目と目。
唇と唇。
肌と肌。
腕と腕。
指と指。
互いの秘部。
何方も動けないし、動かないけれど。
指の変化、時折重ねるような
背中の痛みが薄れてきた頃。
下半身が、今の状況が自然と思い始めていた頃になって。
「……だいじょうぶ、だから。」
「……ああ。」
小さい、彼女の声が耳に届く。
少し動かすだけで、文字通りに歯を食いしばる事が必要になるほどに。
脳内での経験と、肉体の経験が剥離する。
きっと、それは彼女も同じで。
幾度か、彼女とは肌を重ねたはずなのに。
痛みと快楽に、意識がかき乱される光景が目に入る。
「かけ……る……ッ……。」
ぎし、ぎしと音が鳴る。
軋む音と、吐息と、肌の熱と。
重なるそれらが、更に熱を加速させる。
胸元に舌を這わせる。
希亜が求めるままに、息が苦しくなるまで唇を重ねる。
互いの熱を、感じ続ける。
薄れない。
消えない。
たん、たんと肌が当たり。
ぴちゃり、ぐちゅりと水音が跳ね。
声に、互いに快楽が混じり合い。
高昇り続けた熱を。
脚で、彼女は押し付ける。
いいのか、とか。
大丈夫なのか、とか。
そういったことは、既に頭から飛んでいた。
いけないと分かっているはずなのに。
初めだけは、初めてだけはと。
互いが離れることを、俺と彼女は認めずに。
そのまま、中へと白く濁ったモノを吐き出して。
荒い呼吸を重ねる俺と。
とろん、と。 潤んだ瞳で見つめる彼女は。
再び、唇を重ね合わせながら。
吐き出したばかりのはずの、下半身の熱が再び昇るのを感じていた。
彼女もまた。 失った何かを求めるように、もういっかい、と。
耳に囁き、歯を立てた。
甘く、冷たい湿り気を。
俺の全身で感じた、気がした。