※この作品はR-18です。

9-nine- にじいろ「九天、春雪」   作:氷桜

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触れるその手は、暖かく。


私に、貴方を。

静かに、彼女を抱き留めて。

もう一度、耳に囁く。

吐息が耳元に触れて、少し身体を捩るのを見届けながら。

 

「良いんだな?」

 

その言葉が示すように、下腹部をぴたりと当てれば。

濡れそぼった何処かを指し示すように、彼女の手が招き入れる。

 

「……うん。 翔じゃなきゃ、嫌。」

 

彼女の腕は、俺を包み。

俺の腕は、彼女を離さないように抱えて。

それは、いつだったかの。

永(・)劫(・)の(・)別(・)れ(・)の時の格好にも似て。

 

身体を強く押し付ければ、少しだけの抵抗と。

それを破るような感覚を下半身に。

首の後ろ、丁度肩甲骨の間辺りに何かを突き立てられるような軽い痛み。

 

「…………ッ。」

「……はぁ、っ。」

 

お互いに、動かない。

希亜は、二(・)度(・)目(・)の(・)喪(・)失(・)に。

俺は、動いてしまえば直ぐに果ててしまうような感覚と。

彼女を気遣う、綯い交ぜになったような感情を押し殺していたから。

 

「…………ふ、ぅ。」

 

それから、どれくらいの時間が流れてか。

恐らく、実時間としてはほんの数分位。

けれど、俺達の間で共有していた時間は何倍にも、何分の一にも。

時間という感覚を何処かに置き去ってしまったように、互いが互いを感じていた。

 

目と目。

唇と唇。

肌と肌。

腕と腕。

指と指。

互いの秘部。

 

何方も動けないし、動かないけれど。

指の変化、時折重ねるような浅く繰り返す啄み(バードキス)。

背中の痛みが薄れてきた頃。

下半身が、今の状況が自然と思い始めていた頃になって。

 

「……だいじょうぶ、だから。」

「……ああ。」

 

小さい、彼女の声が耳に届く。

少し動かすだけで、文字通りに歯を食いしばる事が必要になるほどに。

脳内での経験と、肉体の経験が剥離する。

きっと、それは彼女も同じで。

幾度か、彼女とは肌を重ねたはずなのに。

痛みと快楽に、意識がかき乱される光景が目に入る。

 

「かけ……る……ッ……。」

 

ぎし、ぎしと音が鳴る。

軋む音と、吐息と、肌の熱と。

重なるそれらが、更に熱を加速させる。

 

胸元に舌を這わせる。

希亜が求めるままに、息が苦しくなるまで唇を重ねる。

 

互いの熱を、感じ続ける。

薄れない。

消えない。

目(・)の(・)前(・)の(・)彼(・)女(・)は(・)、(・)も(・)う(・)い(・)な(・)く(・)な(・)り(・)は(・)し(・)な(・)い(・)。

 

たん、たんと肌が当たり。

ぴちゃり、ぐちゅりと水音が跳ね。

声に、互いに快楽が混じり合い。

高昇り続けた熱を。

脚で、彼女は押し付ける。

 

いいのか、とか。

大丈夫なのか、とか。

そういったことは、既に頭から飛んでいた。

 

いけないと分かっているはずなのに。

初めだけは、初めてだけはと。

互いが離れることを、俺と彼女は認めずに。

 

そのまま、中へと白く濁ったモノを吐き出して。

 

荒い呼吸を重ねる俺と。

とろん、と。 潤んだ瞳で見つめる彼女は。

再び、唇を重ね合わせながら。

 

吐き出したばかりのはずの、下半身の熱が再び昇るのを感じていた。

彼女もまた。 失った何かを求めるように、もういっかい、と。

耳に囁き、歯を立てた。

 

甘く、冷たい湿り気を。

俺の全身で感じた、気がした。

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