※この作品はR-18です。

9-nine- にじいろ「九天、春雪」   作:氷桜

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その手が伸ばされたのは、君へ。

43.瞠目。~44.理想。の間の話。


九つの花言葉-Kujo Miyako01-
「……うん。」


 

彼女を初めて「九條都」と認識したのは。

ナインボールで出会った、可愛い店員さんを知ったずっと後だった。

 

彼女に声を掛けられて初めて認識し。

けれど、その程度の付き合い方で終わるはずだったのに。

 

俺が、彼女を意識しなかったのは何故だろう。

そう考えれば考えるほどに、思い付く答えはマイナス方面。

身の程に合わない。

彼女は高嶺の花で。

俺は、何処にでもいる人付き合いが苦手な一学生。

 

そんな。

同じ学校に通うクラスメイト、程度の繋がりしか無かったのに。

メビウスフェスから始まった、アーティファクト騒動から一月も経たない間に。

俺達は結ばれ。

 

そして、運命の悪戯として。

別の可能性を幾つも経て。

今、こうして腕の中にいる。

 

とくん、とくんと心臓が落ち着いて鳴っているのを感じた。

緊張しているのは俺だけなのか。

それとも、彼女もなのだろうか。

 

彼女特有の、何処か花を思わせる香りが漂った。

特に以前は匂いになんて注意を払っていなかったのに。

 

誰かがこうしてやってくるようになって。

何度も、手の中で。

何度も、目の前で。

失う度に残る、鉄錆にも似た特有の匂いを思い出す度に。

忘れないようにと、それぞれの香りを無意識に憶えていた。

 

「……翔、くん?」

「あ。 ……悪い、変だったか?」

「ううん。 ……私こそ、変じゃない?」

 

そうおずおずと問い掛ける彼女の目は潤み。

思い出すのは、ゲームセンター帰りのあの光景。

互いに、気持ちを吐露して。

す(・)れ(・)違(・)わ(・)ず(・)に(・)済(・)ん(・)だ(・)、あの時。

 

「何でだ?」

「汗臭いの……どうかな、って。」

「だから汗流してからにしようって言ったんだが……。」

「私は――――嫌いじゃ、ないよ?」

 

そう呟いている少女。

度重なる行為。

互いが互いを求め続けた日々。

 

蜜月と言うべきか、或いは肉欲に溺れていたと言うべきか。

私服姿で、制服姿で、喫茶店の服装で。

彼女は妙に勉強家で。

それに負けじと、ネット上で調べた行為で返すような。

対外的には、唯の彼氏と彼女。

本質的には、籍を入れていない夫婦のような関係。

 

そして、今。

もう一度結ばれようとしている俺達。

なら、返す答えは。

 

「……あのな。」

「ふぇ?」

「俺が、嫌だと思うか?」

 

顎を上に持ち上げて、眼と眼を合わせるように呟けば。

ちょっとの放心。

そして、漏れる答えと花のような笑顔。

 

「……ううん。」

「だったら、答えは要らないだろ。」

「……でも、翔くんの口から聞きたいな。」

 

この、我儘なお嬢様。

けれど、今は俺が独(・)り(・)占(・)め(・)出(・)来(・)る(・)。

そんな幸福を込めて。

 

「……都だったら、どんなのだって好きだよ。」

「……うん。」

 

唇を、自然に重ねた。

感じた匂いは――――ああ、そうだ。

薔薇の。

 

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