少しだけ感じた匂いの元。
俺の家のシャンプーとかリンスとか。
そういったものとは当然違って。
けれど、確かに都の匂いだって感じるのに。
先程思ったことと、逆に。
感じるほどに、彼女を受け入れる度に。
そう思い、問い掛ける。
「なあ、都。」
「なぁに?」
糸が伸びる。
舌で巻き取る。
甘い、と感じるのはきっと気の所為。
気分でしか無いはずなのに。
ずっと前から、そう思っている。
「……何か、変えたか?」
そんな言葉を、ほんの十数センチの距離で問い掛ける。
目と目が触れる、と。
そんな表現をされるほどの距離で。
小さい吐息を、肌に感じる。
「……分かるの?」
「分かるさ。」
「……なんでだろ。 変かな、とも思うんだけど。」
「ああ。」
「嬉しい、って思っちゃった。」
はにかむ彼女の首元に、もう一度唇で触れて。
それを受け入れながら、彼女は耳元で囁き返す。
「……花言葉、って信じる?」
女の子らしいな、とも。
彼女らしくはないな、とも。
そんな風に思いながら。
「信じるかどうかって言われれば……どうかな。」
「だよ、ね。 女の子でも……知ってるかは、わかんないもん。」
胸元の、彼女の服を縛る部分を緩め。
はらり、と舞い落ち。
いつも着込んでいる上着と、彼女の特徴的なワンピースが顕になって。
上目遣いと、下目遣い。
彼女と、俺の視線が交差する。
「薔薇って……花言葉が、違うんだって。」
「違う?」
「一本、二本。 本数と……色と。」
「へえ……。」
耳から耳へ抜けていく。
彼女の、聞いていると落ち着く声が言葉を紡ぎ続けながら。
互いの服装を、脱がし合って。
「なら……。」
そんな会話と、身体中への口付けと。
互いが互いのものだと示す、周囲に言うためのように。
けれど、彼女の肌に痕を付けたくはなくて。
そんな、中途半端な感情で。
「どんな、意味なんだ?」
でも。
少しずつ、熱と。
そんな色んな行為を経て、赤くなっていく彼女を見て。
脳裏に浮かんだのは、赤というよりは。
少しだけ赤い、淡いピンクの花。
「……笑わない?」
「笑うかよ。」
「そう、だよね。」
さっきも聞いたのにね。
そうだよ。
声にならない声で、二人で共に抱きしめあって。
その言葉を切っ掛けに、大事な一線を踏み越えようとするように。
互いに、それを理解しているように。
都の言葉を待ちながら、下半身を擦り合わせ。
受け入れるように、行き先を彼女が導きながら。
「私の、名字。 九本の、薔薇でね。」
「……ああ。」
「いつでも、貴方を思っています――――って。」
唇と、言葉と、彼女と。
それらを、俺が受け入れるように。
俺と、君と、二人と。
何があっても、離れないように。
それは世界が変わっても、同じだよと。
そうして。
影は、重なって。
少しだけ、甘い声色と。
甘い、匂いが部屋を支配した。
甘ったるぅい……