けれど、今だけは。
湯気が立ち込める空間に、水音が響く。
俺と、もう一人しかいないそんな場所。
本来は一人が当たり前の場所に混じる、ある種の異物。
それがどちらにとってのものなのかは扠置いて。
「ん……ッ」
ぴちゃり、ぴちゃりと。
液体が落ちるのではなく。
何かが降り注ぐだけではなく。
一人と一人が触れ合うからこそ立つ水音。
「…………。」
「……どうしたの、死んだ魚みたいな目ーして。」
「いや、何だろうな……。」
流されるにも程があると言うか。
本来は自制して然るべきっつーか。
色々とマイナスな感情だけが積み重なっていく。
此奴の願いを断るのを
過去に、同じことをしてしまった枝があるとはいえ。
「兄と妹」なのだから。
「男と女」ではなく。
――――それらを知ってこそ、禁忌と呼ぶのだというのを否が応でも理解している。
「気持ちよくない?」
「そういうストレートなこと言うのやめてくれません?」
「だってー。」
未だに位置は変わらずに。
俺の上に乗る天は、その体勢だからこそ視線を逸らすことを許さない。
時折前後し、自身の秘部と俺のモノを擦り合わせては声を漏らす。
そんなことを繰り返し、どれだけの時間が経ったのか。
数分――――ではない、と思うのだが。
「お兄ちゃん。」
「……何だよ。」
「嫌なら、良いよ?」
不安そうに見る目は、結局の所。
互いに
「……ぁー。 悪い……いや、謝るのも何か変なんだが。」
「こうしてられるだけでも、幸せなのは分かってるから。」
少し腰を浮かせれば、此奴の任意のタイミングで最後まで行ってしまえる。
けれど、それは此奴自身が望まない。
根底にあるのは、結局。
俺へ抱く感情が故だからこそ、自分本位のみで行動を起こさない。
受け入れられないと諦観を重ねていたからこそ、諦める選択肢を選ぶ手は軽く。
「そうじゃない。」
「……? え、じゃあ何?」
「お前がそんな苦しそうな顔する必要も無いってことだ。」
それら全てを諦めると、一度決めた以上。
こうして迷い続けるのも――――言ってしまえば、無駄な時間なのだ。
目の前の、
柔らかい肌が、腕を通して温度を伝える。
わ、と小さく漏れた声を無視して。
「天。」
「…………なぁに?」
「もう遅いからな。」
もう少し、方法はあったのだろうし。
もう少し、抱いていた理想はあったのだろう。
けれど、俺がしてやれると――――したいと思うのは、今ここで。
湯の浮力で、
抱き合うように、
少しばかりの抵抗の後に、何かを貫いた感覚があった。
――――たった二人になってしまった、ありえない枝の果てを
――――少しばかりの痛みと。 大多数の幸福を浮かべながら。
それが、どんな意味を持つのかは。
唯一他人に関係を言えないヒロイン、「新海天」。
「天」だけならば、どれだけ良かったんでしょうね。