【R18】無垢で無知な天使のエクシラちゃんと色々 作:GR/フィルン
この世界はフォリウムというらしい。
フォリウムは過去を記録するという特殊な世界だが、表向きは誰もが見知った普通の世界と変わらない。
種々雑多多様な存在が呼び寄せられたこの世界が定義する"普通"がなにかは定かではないが、いずれにしてもこの世界は表向き、少し不思議で普通のファンタジーだった。
天使であるエクシラはそんな"普通"の世界に人間の身体を受肉して降臨し、一人でも多くの人が天国へと行けるように導くべく日々務めを果たそうと奮闘しているのであった。
「さぁ、今日も引き続き人々の救済へと向かいましょう」
頭には青い帽子、白いレオタードをインナーとしてその上に青色のコートを羽織っており、左腕には黄色い腕章に見立てた天使の輪をはめている。足は股下10cm程の長さの白いソックスと焦げ茶色のブーツを履いていた。
顔つきは十分成人として見て差し支えない成熟感を醸し出しているが、それに対して身長は異様に低く、測ってみれば130センチあるかどうかというところだろう。
それでいてその胸部についた揺れ弾む物はたわわという程に豊かに実っていた。本来は着ている青いコートも前を閉じて着用するものなのだろう。だが胸が大きすぎて前が閉まらないためにコルセットを腰に巻いており、それによって更に乳が強調されてしまっている始末だった。
全体的にボディラインが色々出ており非常に格好として際どいが、彼女のいた天界では当たり前の格好の為に恥じらいも無ければ恥ずかしい恰好をしているという自覚も彼女にはなかった。
そう、天使である。
彼女は死後に天国へ行ける人間を1人でも多く増やすために天より使わされた至高の存在なのであった。彼女の目的は人間と直接関わる事で天に上がれないような人間の更生をすることになる。
その目的に合うが故に抜擢されたのか、性格は穏和で人間の暮らしや文化に関心が強く、まだ天界から降りてきたばかりであらゆる事が未体験だが、あらゆる物事に非常に積極的に取り組んでいき、困っている人や悪事を決して見過ごせずよく首を突っ込んでしまうのが困った性分ともいえた。
ただ、天使という存在を名乗るにしては、その能力は現世において特別秀でているというわけではない。使えるのは治療魔法と僅かばかりの神聖属性魔法で、力は見た目相応の非力なものだった。
天界では対悪魔戦闘部隊であり上位に居続ける実力者だが、現世への過度な干渉を防ぐため人間の肉体に入ってる間はその能力の殆どを制限されている為だった。
ちなみに余談ではあるが、その五感は人と比べてとても鋭敏で優れており、些細な刺激にも即座に反応してしまう。そして孕む事も出来る。
そんな彼女が降り立った、時に害虫などと呼ばれる様々な敵も現れるこの世界であるが、街の中は基本的には平和なもの。
その平和なはずの街中をエクシラが歩いていると、人通りの少ないとある宿屋の前でうずくまる男性をみかけた。
見れば男は小さく肩を震わせながら泣いているようだった。
「うっ、うっ……。俺は、俺は……、今晩どうしたら……っ。ううーーっ!」
「ど、どうしましたか!? なにかあったんですか!?」
切実そうなその様子にエクシラは思わず駆け寄って声をかけてしまう。
「うっ、ぐすっ、あ、アナタは……?」
「私はエクシラと申します。大変そうな様子ですけど、何かお困りですか?」
丁寧で優しい物言いに男性が一瞬それまでの涙を忘れハッと顔を上げる、目の前の小さな背丈の女性が自分の話しを聞こうとしてくれようとしている事に気付いたようだった。
そして、促されるままに彼は語り出した。
「実は、俺は今日この街に流れ着いたのですが、とりあえず身体を休めようと宿を取ろうとしたら、もう空いている部屋は二人部屋しかないので、一人の客は泊められないと断られてしまいまして……」
「え、そんなことが!」
「はい……。聞くところによると今日は日が悪いらしく、独り者では他だとしても宿を見つけるのは難しいだろう、と言われてしまい……」
「じゃ、じゃぁ、もしかしてアナタは今日泊まる場所が……?」
「ないんですよおおおおおお!!!!」
宿屋の前に、無常な男の叫びが響き渡ったのだった。
~ 〇 ~
少しして。
人に話しを聞いてもらえて落ち着いたのか、男性が立ち上がって息を吐く。
「はぁ、いつまでも落ち込んでいてもしょうがないですよね。話しを聞いてくれてありがとうございます。俺はマッサージ師のクイコミスキーと言います」
「はじめまして、クイコミスキーさん。改めて私はエクシラと言います」
目の前に差し出された大きな手を小さな手で握り返して、エクシラは微笑む。クイコミスキーは自分の大きな手の中に収まるほどの手を掴んだところで、目の前の女性の小さな背丈に改めて驚き、更にその身長とは裏腹に立派に成長した胸部に目を見張った。
そして握った手から視線を伸ばし、袖、肩、胸、腋、腰、股、太もも、足へと視線が落ちていく。
「どうしましたか?」
「あ、いや、アナタ……君は普段からこんなことを?」
「こんな?あぁ、困っている方を助けるのは私の務めですから!」
「あ、あぁ、困っている人を。それじゃ、その、その格好も、その為に……?」
クイコミスキーの視線が、エクシラのコルセットによって強調された立派な張りのあるおっぱいと、白いレオタードによって食い込みを見せる股間、ニーハイとの間で眩しく光る白い太ももへと順番に注がれる。
その視線の正体にエクシラは気づかなかったが、自分の服装をクイコミスキーが見ている事は分かったようだった。
「この格好がどこかおかしいですか?」
「い、いやその、少し、というか、大変魅力的な恰好だなと、思ってね、ハハハ」
「なるほど、それはありがとうございます! 私もこの服装はとても気に入っているんですよ! 困っている方の警戒心を解くために親しみやすい恰好をということで勧められたのですが、実際に色んな方の真剣なお悩みを深く聞くことが出来ていて、とても素晴らしい服だなと思っているんです!」
「な、なるほどね」
じろじろとした視線にもエクシラは動じることはない。
むしろ気になるならばお好きなだけどうぞとばかりに隠す様子を見せることすらなかった。
「クイコミスキーさんもこの服装に親しみをもっていただいているみたいですね!」
「あ、あぁ、でも、その、こんなことを言ってはなんだけど、そんな恰好をしていたら、いやらしい目で、見られることも、あるんじゃ……?」
およそ130センチほどしかない身長は目の前に立つクイコミスキーの胸の位置ほどにも満たない低身長ぷりでありながら、たっぷりと柔らかそうに実ったおっぱいを隠すこともなく、むしろ胸の下にコルセットをつけることで押し上げる程に強調したその格好は、男であれば視線を向けずにいることは中々容易なことではなかった。
当然、これまでもそんな目に合ってきたのではないかと、クイコミスキーが未だ距離感を測りかねながら言うが、エクシラにはその言葉の意味はピンと伝わっていないようだった。
「いやらしい目? あは、不思議なことを言う方ですね。私はほら、見ての通りの淫欲や欲情とは無関係の身体ですから、そんな目で見られたことなんてありませんよ! よしんばいたとしても、この通りきちんと服を着ていますので、裸であればいざ知らず、そんな目で見られるはずなどないですね!」
きっぱりと迷いなく言い切るエクシラ。その淀みの無さに思わずクイコミスキーも、なるほど、と反射的に返しながら頷いてしまうのだった。
だがエクシラは続けて、とはいえ、と言葉を続ける。
「とはいえ。この世にはまだまだ沢山の悩みや自分では解決できない問題を抱えた方が沢山いらっしゃいます。そういった方の中には時折、私のようなものにも気の迷いを起こす方もいますので、あまねく神の救済がもっと沢山必要なのだなと思っています! 私ももっと頑張らないと!」
「おぉー、すごい信念だ。こんな小さい身体なのに立派だね。って、気の……迷い……?それってもしかして……?」
「えっ……、うっ……」
クイコミスキーがエクシラの言葉の端に浮かんだ単語に疑問を持って投げ返す。それは思ったよりもピンポイントな返しだったようで、反射的にエクシラが言いよどむ。
そして、未だ握手の時に握られたままの片手を少し引くような素振りを見せながら、エクシラは身体をもじもじとくねらせて見せる。
「そ、その、初めて会った方に言うことではないですが、色々、あって……、人助けは本当に、大変な時もあるなって……思う時も……」
さっきまで自信満々に仁王立ちしていた太ももは、その食い込みを少しでも隠すように内股に閉じ、残った片手も股の辺りを隠そうとする様子を見せる。
どうやらこんな(エッチな)恰好をしているが、その格好がどう見られているかに無頓着なだけで、恥じらいが無いわけでも、ましてや性知識が無いわけでもないようだった。
クイコミスキーは思わず手の中にすっぽりと収まった女の子の手のひらの柔らかさを再度感じ、握る手に力が入ってしまう。
「つまり、それは……」
「い、いえ、違うんです! これは、その……! さっき路地裏で助けようとした人達になにかされたとかじゃ、なくて……!」
「え……?」
聞いてもいないことをぽろっと漏らしてしまうエクシラ。
「あ、ああああ、違うんです違うんです! 苦しそうな声が聞こえたので見に行ったら、いきなり腰を掴まれて、すごい力で無理矢理路地裏の奥に引き込まれたとかなんかじゃ、決してなくて!」
「えっ、えええ!?」
「ひあっ!? いえ、路地裏には男の人が三人と女の子が一人いて、女の子を助ける代わりに私を好きにするとか、両手両足をしっかり羽交い絞めにされながら言われたりしたことも全然なく!!」
「ちょ、ちょっとエクシラちゃん!?」
テンパったのか顔を赤く紅潮させ、目をぐるぐると混乱させながらまくしたてるエクシラ。さっきまでの人助けや神の救済を語る生真面目な様子を放り投げ、全く人に聞かせるにはあられもない話しを違う違うと言いながらどんどん説明していってしまう。
「実はさっきまで結構大変で、解放されたと思ったら代わる代わる男の人たちが現われて、何度も何度も路地裏から逃げようとしてもその度に捕まってしまって、その毎に私はもう口にも出せないようなことを際限無い程させられてたとか、そんな恥ずかしい事なんて全然させられたりしてないですので!!!」
「そ、そんなことが……(ごくり」
余りに赤裸々な告白に思わず唾を飲み込んでしまうクイコミスキー。
目の前の自分が手を掴んでしまっている女の子が、バタバタと反射的に走り出しそうになってしまいながら、逃げだすことも出来ずに全てを語ってしまった女の子が、今の今まで実は路地裏で散々凌辱され尽くした後だったということを知った彼の股間は自然と大きくなってしまう。
こんないたいけで、ついさっきまで溌剌としていた子が、恥ずかしげに己の痴態をまくしたてるその姿におっぱいとミニを性的な意味でこよなく愛する彼が反応しないわけがないのであった。
「エ、エクシラちゃん……」
「はひっ!?」
手の中にある女体の体温をますます握りしめるようにして思わずクイコミスキーは一歩彼女の方へと踏み出してしまう。
それは、いっそ無意識な衝動に依るものだった。
言い知れぬものを感じたのか、びくっとエクシラが身体を震わせる。
路頭に迷い思い悩む者とそれを優しく助ける者ではない、オスと、メスの、空気が二人の間に流れる。エクシラがどこまでそれを意識的に理解したかは定かではないが、クイコミスキーは間違いなく目の前の女性に対して性の臭いを感じてしまっていた。
更に一歩、距離を詰めるかと思い悩むクイコミスキー。
彼が反対の空いた手をエクシラに伸ばそうとした、その瞬間。
\リンゴーン!!!/
夕刻を告げる鐘の音があたりにけたたましく響き渡る。
グワーングワーンと反響し、いっそうるさいほどのその音は、怪しくなり出していた距離感を打ち壊し、クイコミスキーに現実を思い出させる。
「ああーーっ!! そういえば、今日の宿ーっ!!?」
「はっ!!! そうでしたね!!」
それまで握り続けていたエクシラの手からも手を離し、頭を抱えてしゃがみこんでしまうクイコミスキー。
「そうだったぁ。だめだぁ。もう俺には今日眠るところがどこにもないんだぁ。もう、もうこうなったら野宿しか……。街中では眠れないから、害虫が出るという街の外で、野宿をしないと……。うわああああああ、もうだめだああああああ!!!!」
悲劇的な末路を想像し、一気に絶望に打ちひしがれるマッサージ師クイコミスキー。闘う力を持たないしがないマッサージ師に過ぎない彼の運命のともし火は、今まさに消えようとしているのだった。
今の今まで二人とも忘れていたが。
だが、天使はいた。
目の前にいたのだ。
人の肉を得ている為に、天使の輪っかも羽根も持たない身であるが、紛れも無く天使であるところのエクシラは、眼前で悲嘆に暮れる子羊に迷いなく救いの手を差し伸べた。
「クイコミスキーさん」
「おしまいだああああああ!!」
「クイコミスキーさん」
「うわあああああああ!!」
「クイコミスキーさん!!!」
「へぶああぁっ!? はっ! エ、エクシラちゃん……?」
存外強い力で殴られた頬の痛みにハッとして、クイコミスキーが顔を上げる。すると、最初に声をかけてきた時と同じ慈悲の顔で、エクシラはクイコミスキーへと手を差し伸べていた。
「大丈夫です! クイコミスキーさん! まだ手はあります!!」
「え……?」
「クイコミスキーさんが宿に泊まれないのは一人だからですよね。二人でしたら泊まれる部屋はあると! それなら、私にお任せください! ここに、私がいます! 私がクイコミスキーさんと一緒に泊まれば、二人です! 二人なら泊まれます!」
「な、なるほど……?」
「ここのホテルの名前はなんというのですか? ラブホテル? 分かりました! クイコミスキーさん!」
「は、はい!」
「このラブホテルに、私と一緒に泊まりましょう!」
「えええええええ!!?」
「これでクイコミスキーさんは救われます! 万事解決です!!」
弱弱しく差し返されたクイコミスキーの手を力強く取り、エクシラが高らかに、そして清らかに宣言する。その姿は、小さい背丈ながら天使の名に恥じぬ後光さえ差しこみそうな程に立派な姿であった。
「おぉ……、おおぉおぉ……!! 天使様……っ!! 天使様だ! ありがとうございます……っ!!」
名乗っていないはずの天使の存在を幻視し、クイコミスキーが手を合わせ、エクシラの小さな手を両手でしっかりと握りこむ。そしてすりすりと両手を擦らせ、熱心に両手をこすらせ、クイコミスキーはエクシラのすべすべとした女子の手を堪能した。
かくして、手と手を取り合った、天使とマッサージ師は目の前の宿『ラブホテル』へと揃って足を踏み入れていったのだった。
「部屋を一つお願いします! 二名、宿泊です!!」
エクシラの可愛らしくも力強い声が、宿屋のロビーに木霊したのだった。
~ 〇 ~
天使エクシラとマッサージ師クイコミスキーは、宿の人間に案内され、部屋へと入る。
「ひっひっひっ。部屋は防音になってるからねぇ。どうぞ好きなだけ頑張っておくんなさいよ。ひっひっひっ」
そう言いながら、怪しげな老婆としか言いようのない宿の人間は二人を部屋の前に置いて去っていく。
「宿屋といえば後はもう寝るしかないと思いますが、何を頑張るのか不思議ですね」
「そ、そうだね。エクシラちゃん。後はもう"寝る"だけだもんね」
ロビーで部屋を取った時から、怪しげな視線をずっと向けられていたが、エクシラはその正体に気付くことは無いまま、案内された部屋へと踏み入る。
「あ、ベッドは一つなんですね」
部屋のほとんどがベッドという間違ったサイズ感の部屋だった。
それほど広くない部屋でありながら、ベッドだけは異常に広く、二人が並んで寝転がっても十二分な広さがありそうだった。
「さて……」
エクシラは部屋の中にととっと入ってから、クイコミスキーの方を振り返る。
「寝ますか!」
「早いね!?」
高らかに言い切ったエクシラに反射的にクイコミスキーが言葉を返す。
「もう寝るのかい? まだ夜には大分早いけど」
「とはいえ、もう宿に入ってしまいましたし。後は寝るだけ、ですよね?」
何の不思議もないとばかりにエクシラは言い切る。とはいえ、普段泊まることのない部屋に少しは興味があるようで、中を色々と物色し始める。
「わー、人間の宿にはこんなのもあるんですねー。む、四角いビニールの袋が。なんでしょうこれは? 中には……、何やら袋状のゴムが入ってますね。ん? これって……」
なにやら一人で色々見ているエクシラの後ろで、クイコミスキーは様々な考えが頭の中に去来しながら、そっと後ろ手に部屋のカギを、カチャリ、と締める。
エクシラは気づいていないが、これでこの部屋は密室空間。
この手の宿特有として窓は広くは開けられないようになっている為、それほど広くも無いこの部屋から出る為には今閉めたばかりのドアから出るしかなかった。
ここまでの急な流れで理解が追い付いていなかったが、クイコミスキーはここにきて明確に状況を把握する。
連れ込み宿に自分の胸元ほどしか背丈は無いが、胸だけはとても立派に育った女子と二人きりで部屋にいる。彼女は性経験も性知識もあるようだが、どこか危機感が薄く、この状況であっても、身の危険を感じている様子はない。
だが、クイコミスキーの鼻は確かに嗅ぎ取っていた。エクシラの股の間から漂ってくる雌の匂いを。
ハメられ自分がメスであることを既に身体に刻まれている女の性を。
ここまでの話しの流れで、恐らくはエクシラがこの後クイコミスキーが企んでいるような展開を望んだ上で、この状況に持ち込んだようには見えなかった。どこか自分を人間とは別の存在として捉えているかのような感覚で、この狭い部屋の中で性欲旺盛な男と二人っきりでいても、なんら危機を感じずに平然としているようだった。
彼女がはっきりと語ったわけではないので、クイコミスキーはまだ分かっていないが、実際エクシラは自分が、自分の肢体が、おっぱいが、先程困難の窮地から救った男性にとって欲情の対象になるとはまるで思ってもいなかった。
天使である自分に対して、人間がそんな感情を抱くはずがないと。
これまで幾度も「そうではない結果」を味合わされているにも関わらず、エクシラは依然としてその点に疑問を持つことはないようだった。
無防備にベッドの下を確かめたりして、レオタードが食い込んだお尻をふりふりとクイコミスキーに見せたりしているが、全く持って彼を誘っている気はないのだった。
「なるほど! 少し変わった間取りですけど、要は寝ることを第一にしているわけですね。面白いです」
「エクシラちゃん」
「ひゃわわい!?」
立ち上がって頷いていたエクシラのすぐ背後から、クイコミスキーが声をかける。
「ど、どうしたんですか? クイコミスキーさん」
「いや、慌てて宿に入ったはいいものの、なんだかんだ言って寝るにはまだ早い時間だよね」
「んー、寝るしかないとは思いますが、確かにその通りですね?」
クイコミスキーの言葉にエクシラは一応頷いてみせる。
「それで、さっきからエクシラちゃんを見ていて思ったんだけど。ずばりエクシラちゃん! 疲れているね!」
「……っはっ!!!」
ババーン、と眼前に指を突きつけられてはっとするエクシラ。
それもそのはずだった。
エクシラはクイコミスキーと出会うほんのちょっと前までは、街の路地裏でたくさんの悪漢たちに陵辱され続けていたのだから。人を救うという、存在意義とも言える大命の為に強くあらんとしていたが、実際は人間の肉を持つ身体はかなり疲労を感じてしまっていたのだった。
「よく分かりましたね!」
「まぁね、これでもマッサージ師だからね。それでエクシラちゃんさえよければ、俺の窮地を救ってくれたお礼としてマッサージをさせてもらいたいんだけれども、どうかな」
「マッサージ……」
エクシラがクイコミスキーの言葉を反芻する。
さすがにこんな男と女が二人だけしかいない、他の誰からの干渉もない密室で、男に身体を触らせるなど抵抗があることだったか、とクイコミスキーが内心少しだけ思い悩む。彼としては、状況は文句ないほど完璧な環境で、目の前の警戒心の弱そうな雌のちんまりとした体躯と反して立派なオッパイには、先程からの止まらぬ勃起を鎮める気も起こさないほどに欲情を誘うものだった。
当然、彼とて助けられた恩義は真摯に感じていた。
まったくの隙が無ければ、本当にこのままただ眠ってしまい、翌朝お礼を言って別れるだけもありだろうと、心の片隅で、ほんの片隅で思っていないこともなかった。
「(無論、怪しまれない程度にあらゆる手を尽くしたうえでそれでもガードが固ければ諦める、という程度のものだがね!)」
恩義は感じつつも本能には忠実。非合法マッサージ師として表の世界では生きられぬ道を歩んできた彼からすればそれは当然の思考と選択だった。
それもこれもエクシラ次第。
まずは初手としてこのマッサージの申し出にどう対応するのかで、その後の動きを決めよう、とクイコミスキーは内心考えていたのだった。
短い間に思考を確認したクイコミスキーの前で、エクシラはしばらく考えた後、うん、と小さく頷いた。
「マッサージ。実は興味あります」
「おや?」
「ですが、いいんでしょうか。助けたお礼にマッサージなど、まるで私が最初からそれを狙っていたかのようではないでしょうか」
「(んんー!むしろ逆だと思うんだけどなー!) いあいあ、これは純粋な感謝の気持ちだよ。気兼ねなく受け取ってもらえた方が俺も助けられたことを負担に感じなくて済むからね」
思った以上にあっさりと許したエクシラにクイコミスキーは心の中でほくそ笑む。
「(これは……、いける!!)」
となれば、話は早かった。
突然、手早くエクシラの前で服を脱ぎ始める。
「な、なにをするんですか!?」
当然慌てるエクシラ。だが、クイコミスキーは平然と答えるのだった。
「あぁ、施術衣に着替えさせてもらおうかなと。ここはご覧の通り狭い部屋だから、ちょっとだけ失礼させてもらってね」
「あ、あぁ、なるほど着替えですか」
「ははは、まさかいきなり全裸に俺がなるとでも? さすがにそんなことしないさ」
外も歩ける恰好から、色々と取り出しやすい施術衣に着替える。
見ればエクシラも脱いだ方がいいのかと、逡巡しているようだった。
「……私も、同じように……?」
「あー、エクシラちゃんはそのまま、そのままで」
「あ、私は着替えなくていいんですか?」
「大丈夫大丈夫。俺は着衣ックスの方が好き……、じゃなくて脱がせたりしたらいやらしい目的があるみたいだろ。だから俺はそれぐらいの薄着だったら脱がせずにヤるようにしてるんだ。だから気にせずベッドに寝てくれないか」
「分かりました」
クイコミスキーの言葉に思いのほか素直にベッドへと寝そべるエクシラ。
「ですが、本当にいいのでしょうか。私ばっかり楽させてもらっては申し訳ないような気も……」
「あーあー、いいからいいから。俺も最近人を揉んでなくてうずうずしてたからさ、言ったらこれも俺のリハビリみたいなものってことで、つまりは人助けだって思ってもらえればさ」
「な、なるほど。練習台というか、マッサージにむしろ協力するというわけですね。それなら納得です!クイコミスキーさんのマッサージの練習に協力させてもらいますね!」
「あぁ、話が早くて助かるよ。それじゃぁ、どれっと……」
思った以上にどうにでも出来そうな雰囲気にニンマリとして、ベッドにうつぶせになったエクシラの背後から手をワキワキとさせて近寄って軽くのしかかる。
そしてまずは手始め、とばかりに肩から背中にかけて、普通に揉んでマッサージ師らしく確かめてみる。
「んっ」
「おや、もしかして今までマッサージを受けたことがない?」
「んんっ。そうですね。今までそういった人間の文化に触れることはありませんでしたので……」
少し押しただけで反射的に出てきた声を聞いて、クイコミスキーがなるほど、と思う。
つまり、マッサージに対して無知であるならば何を言っても信じてしまうだろう、ということだった。
「なるほどね。まぁ、俺に任せておいてくれよ。ちゃんとヤらせてもらうからさ」
「んっ。はい。ありがとうございます……っ」
「ところでエクシラちゃん。結構肩とか凝ってるねー。たまに首とか重かったりしない?」
「首が?すいません、んんっ、そういうのは今まで感じたことは無くて」
人間の身体にまだ慣れていないため、そこまでの感覚を得たことはないようだった。
だが、クイコミスキーが少し揉むだけで随分と満足そうなため息を吐いて、身体の力をゆっくりと抜いていく。
「はー……。マッサージがこれほど気持ちいいものだとは、知りませんでした。んっ、なんだか心地いい感じで、眠くなってしまいそうな、ぐらいですね……」
「あー、マッサージ中に寝ちゃう人もいるね。エクシラちゃんも眠かったら寝ちゃってもいいよ。身体はしっかりもみほぐしておくからさ」
「ほんとですか。では、少しお言葉に甘えて…………。すー……」
「えっ、もう!?」
揉みながらクイコミスキーが驚くほどの速さでエクシラは目を閉じて寝息を立て始めてしまう。
まだ、揉み始めて5分と立っていないはずだった。
「すー……、すー……」
「ほんとに寝ちゃった……。こりゃよっぽど疲れてたのかな」
恐らくはマッセージの効果というよりは、横になったがために溜まっていた疲労が溢れて眠てしまっていたということだろう。一応はそのまま少し揉み進めてみるが、エクシラの寝はあっという間に深いところまで行ってしまったようで、起きそうな気配は一向に感じられなくなってしまった。
試しにふにふにと柔らかそうなほっぺたを突いてみるが、小さな声で「ん……っ」と言うだけで反応を明確に返してくる様子は無かった。
「ありゃ、エクシラちゃーん。寝ちゃったのかーい? あんまり無防備に寝すぎちゃうと、俺もちょっとマッサージを真剣にやりすぎちゃうかもしれないよー?」
「すー……っ、すぅー……っ」
「えいっ」
「んあ」
試しに白レオタードに包まれて今はうつぶせに半分歪んでいるエクシラのおっぱいを指先でつついてみる。
だが、エクシラは小さな声を上げただけでやはり起きそうになかった。
「こりゃ。思った以上にあっという間に隙だらけになったな……。どれどれ」
深くどこまでも深く眠るエクシラを見て、長年の経験からイけそうだなと踏んだクイコミスキーは方針を決定する。
「ヤるか」
彼はシンプルにそう、決意したのだった。