※この作品はR-18です。

夜のデイジィとアベル(一)カザーブの初夜   作:江崎栄一

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一二 朝

「アベル……」

 ベッドに大の字になって眠るアベルの肩に手を押し当て、軽く揺さぶった。

 時計の針は十二時ちょうどを差している。こんなに遅くまで寝ていたのは初めてかもしれない。今までの冒険の日々では常に次の目的地へと先を急いでいたから、朝起きてすぐに出発するなどということがザラだった。

 昨夜は何時に眠ったのか、時計を見る余裕もなかったのでわからない。休みながらじっくりと四回もしたので、多分かなり遅い時間だっただろう。きっとあたしは満たされて、疲れ切って眠りに入ったのだろう。

 十分長い睡眠が取れたおかげで頭はスッキリとしていた。

「デイジィ……?」

 アベルは寝ぼけ眼で目を覚ました。目を擦りながら、すぐに上半身を起こす。下半身には薄手のシーツが被さっているが、その下には何も身に纏っていない。引き締まった腹の下、浮き出た腰の出っ張りが見える。

 昨夜の延々と続く痴態により、もはや下着すら身に付ける意味に疑問を感じ、二回目以降の小休止の際は二人とも裸のままだった。結局その流れで、裸のまま眠ってしまったというわけだ。

 幸いにもアベルより先に目を覚ましたあたしは、とりあえず部屋着を身につけ、顔を洗って髪をとかしておいた。

「もうお昼だぞ。いつまで寝てるんだ?」

 あたしはトランクスをアベルに向かって放り投げた。それを寝ぼけ顔で受けたアベルは、シーツに隠れてそそくさと履いた。昨夜はよほど精を使い果たしたのか、げっそりとした顔をしている。

 あたしはグラスに水を注いで、ベッドに胡座をかくアベルに手渡した。アベルは口をゆすぎながら数回に分けてグラスの水を飲んだ。

「ありがとう……」

 アベルは遠慮がちにあたしを見上げてお礼を言った。

「おはよう、アベル」

 なんだか照れ臭かった。

 昨夜はあれほど自分を曝け出して激しく肌を重ねたというのに、一晩経ってみれば、その出来事が夢だったかのように感じる。目の前にいる男には、身体の隅々まで見られ、触られたのだ。それなのにこうやって見つめあっていると恥ずかしくなる。やはり、ずっと友人のように思っていた意識が抜け切れていないのだろう。

「おはよう、デイジィ……。不思議な感覚だよ。目を覚ましたら目の前にお前がいるなんてさ。これからはこれが毎日続くんだな……凄く、嬉しいよ」

 あたしはグラスを受け取ってサイドテーブルに置いた。アベルの左隣に腰を下ろして、開いた肩にもたれかかった。

「ああ、あたしも同じ感覚さ。昨日のことがウソみたいだ……。だって……あんたがあんなに激しく求めるなんてさ……」

 あたしは両の乳房に掌を当て、上目遣いでアベルを見上げた。

「お前を抱きしめたら頭が熱くなって、自分を抑えられなくなってしまったんだ……ごめん」

 アベルは照れ笑いを浮かべながら言った。

「ちょっと怖かった……。あたし、こういうこと慣れてないのに……アベルは容赦しないんだからさ」

「オイラもどうしてあんなに乱暴になってしまうのかわからない……多分ずっと前からお前のことが欲しくてたまらなかったんだろうな。本当はお前のことがずっと好きだったんだ。でもまさか皆んなと一緒に冒険してるときにこんなことするわけにはいかないしさ。昨日は我慢の限界だったのかもしれない」

 アベルはそっとあたしの左肩を抱いて引き寄せた。

「最高の夜だったよ、デイジィ……ずっとお前と一緒にいたい」

 その言葉を聞いて、あたしの胸に再び締め付けられるような快感が走った。

「ああ……ずっと離さないでいてくれ」

 あたしの肩を抱くアベルの腕に力が籠った。アベルはベッドに仰向けに倒れ込みながら、あたしを胸板に押さえつけるように抱きしめた。

 あたしは目を瞑って、その胸板に頬を付ける。そして左脚を持ち上げて、アベルの腰に回した。脚に力を入れて、離れてしまった下半身を密着させた。

「あ……!」

 膝がアベルの下腹部を越えようとしたとき、硬いものが内腿に当たった。トランクスの股の部分が内側から大きく押し上げられ、山のように盛り上がっていた。

「お前って奴は、朝からエッチなんだな……。今から、したいのか……?」

 アベルは右手で顔を覆い隠して横を向いて恥ずかしそうにした。

 アベルがしたいと言うのなら、あたしには拒む理由はない。でも、この男の際限なく溢れ出る欲望を全て受け止めていたら、いくらあたしでも身体がもたないだろう。実際、昨夜は声をあげ過ぎたせいで喉が痛いし。

「ち、違うんだ……男の身体ってこういうものなんだよ……。寝起きはこうなってしまうんだ」

 アベルはあたしを押しやり、身体を離した。こっちに背中を向けて横向きに寝転がる。

 怒ってしまったのだろうか。あたしは心配になって、その背中に胸をつけて抱きついた。

「アベル……じゃあ、夜になったらしような」

「……ああ」

 そう言って、しばらく無言で寝転がっていた。

 今日はカザーブで初めて迎える昼間。まだどういう町なのかわからないが、涼しくて適度に活気もあり、悪くなさそう。これから外出して昼飯にするのもいいだろう。

 そのあと何をするかは考えていない。ここに何日滞在するか、次にどこへ行くか、それすらも。これからアベルと二人でゆっくり考えればいいだろう。宛のない旅なんだ。

 今までずっと苦労ばかりしてきたアベルとあたしにも、こういう安らぎの日々があっていいはずだ。

 あたしは、これから始まるアベルとの人生に胸を躍らせていた。

 

完

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